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凡人とネコミミモード

 みしり、と軋む身体を引きずりながら歩いているとネコミミフードを被った貧乳が歩いてきた。

 俺を見て呆れたような顔をする。おう、笑えよ。


「アンタ……。ただでさえ冴えない顔がひどいことになってるわよ

 控えめに言って、正視に堪えないわね」

「いきなりごあいさつだな。

 いいんだよ、男は顔じゃねえ。大事なのは心意気、っつうだろうよ」

「なによ、じゃあ女は顔だってこと?

 ああ、嫌だ嫌だ汚らわしい。どうして男ってこう、下半身でものを考えるのかしら」


 顔をしかめながらつんつんと腫れてるとこをつついてくる。やめてください結構痛いです。だから揉まないでマジで痛いんだってば。


「論理が飛躍していると思うんだ。それと痛いから触らないで。

 いやほんと痛いから強めにつついたりしないでお願いします」


 ふうん。

 と、どうでもよさそうな表情だし興味ないのだったらやめてください。ほんと痛いの。

 いちち、と顔をしかめる俺に問いかけてくる。

 こいつ、本当に人の痛み分からないのだろうな。いつかお尻ぺんぺん赤ペン先生にしてやる。

 ……矯正してやる!嬌声をあげさせてやる!しないけどね。できるはずもないし、ここは閻魔帳に記しておくだけにとどめようそうしよう(ここまでの思考0.72秒)。


「というかなんで春蘭と遠乗りに出かけて帰ってきて……。

 そんな襤褸ボロになってるのかしら。

 まあ、アンタの品性からしたら丁度いいかもしれないけれども」

「いちいち発言に罵詈雑言を混ぜるなっての。

 これはね。その春蘭にぼこぼこにされたの」


 絶句と暫しの沈黙。


「はあ?なに、アンタあんな脳みそが筋肉でできてるようなのに欲情したの?」

「どうしてそうなる」


 流石にその発想はなかった。どういう思考回路だ。

 いや、春蘭自体は美人さんだと思うしスタイルもこうね。豊穣系だよね。目の前の兵站じゃなく平坦な地平線とは違ってさ!

 やっぱりさ、と思うのです。おにゃのこは抱きしめたときにね、こうね。ふっくらとした柔らかさが欲しいと思うのよ俺としては。

 とも言えず。

 そして俺の沈黙をどう解釈したか目の前のネコミミ(貧、もしくは無)はその言を連ねていく。


「アンタのことだから劣情に身を任せて襲いかかったんでしょう。

 それで返り討ちにされたんでしょう」

「どうしてそうなるよ」

「他に考えようなんてないじゃないの」


 本気でこれを言ってるのが怖い。


「違うっての。春蘭はさ、単に……。

 そうだな。気晴らしに付き合ってくれただけだよ」


 いささか善意の押し付け的なとこはあったかもだけどね。ありがたいと思える範疇ですだよ。


「はあ?何でアンタの気晴らしでアンタがぼこぼこにされてんのよ。

 それじゃ春蘭の気晴らしになるじゃない」

「いや、だからね」


 この微妙な案件、説明しづらいよねえ。


「アンタ。まさか……」


 ずざ、と数歩後ずさるネコミミである。おう、中々のフットワークじゃないか。

 などと思っていたらなんだろう。道に落ちている汚物でも眺めるような目つきで俺を見る。


「殴られて悦ぶ変態だったのね。

 寄らないで、汚らわしい」


 待て。


「俺にそんな特殊な性癖はない!

 いたって普通だ!」

「酔っ払いに限って酔ってないって言うのよね。

 ほんと、いっぺん死ねばいいのに」


 違うっての。

何だか……何を言っても無駄な気もするが、変な噂が流れるのは勘弁願いたいし。そして、そんなプレイに付き合わせたとあっては春蘭の名誉にも関わる。多分。

 だから誠心誠意説明をする。した。伝わった、と思う。思え。伝われ。伝えた。


「はあ。

 ……本当に脳みそが筋肉でできてるのね。

 理解できないし、しようとも思わないわ」

「そうかもなあ」


 ネコミミらしいその言に苦笑する。

 体育会系のノリって文化系からしたら謎だよな。

 両者の間には越えられない溝があるのだろう、きっと多分maybeめいびー


「はあ、いいわ、こっちに来なさい」

「ん?」

「そのまま華琳様と夕食を共にさせるわけにはいかないでしょう。

 ちょっとは見れるようにしてあげるって言ってるのよ」


 どうやら、手当てをしてくれるらしい。


「何を呆けてるのよ、さっさと来なさいってば」

「いや、むしろもっとみっともなくして笑いものにするのかと思ったんだが」

「……華琳様の視界にそんな汚物を見せるわけにもいかないでしょうが」


 なんか今度はぷりぷりと怒り出した。

 なんかよく分かんねえなあ。

 まあ、いいや。


「お言葉に甘えるよ、ありがとな」

「いいからさっさと来なさい!」


 へいへいほー。


「あ、荀彧ネコミミが手当してくれるわけじゃないんだ」

「当たり前でしょう。何でアンタなんかの手当てをしないといけないのよ」


 干からびた虫の死骸でも見るような目つきはどうかと思うの。

 とはいえ。


「そりゃそうか、別にお前は医者でもなんでもないしな」

「簡単な医術の心得くらいはあるけどね」


 なんと。それってこの時代に限らずレアスキルやぞ。


「あるのかよ!」

「当たり前じゃない。華琳様のお手当なんて他の者に任せられるものですか!」


 むむむ。なるほどと思うがそのための努力とか考えると頭が下がるわ。下げないけど。

 それをあっちも知ってるだろうし、こんくらいの態度にならざるを得ないのだよなあ。

 いや、もっと親しくしたいとかはないのです。ほんと。


「ま、忙しいとこありがとね」

「何よ、気味が悪いわね」


 実際、通常の業務に加えて流民の対処やら何やらで大変なはずなのだ。

 罵詈雑言は……まあ、そのストレスのはけ口ということにしておこう。

 ってなんで俺がストレスのはけ口にならんといかんのだ。

 流石に温厚な俺も思うところはあるのよ。あるからね。あるってば。

 ってもういねえよ。

 まあ、この思いネコミミにとどけーって感じでもないし。いっか。多分素だし。

 いや、それもどうかとは思うけどね。


 まあ、色々話したし、割と目的は果たされた。果たした。


 ……結局天の御使い云々については基本「待ち」だ。

 御使いを擁立した奴らがこの噂を流した黒幕と考えていいだろう。

 フェイクの御使いを複数立てて信憑性を低めることも考えた。しかしそれでは黒幕が見えない。単なる詐欺師まで出てこられると流石に対応が間に合わない。


 俺も華琳もそんな勢力に心当たりがない以上、まずは情報を集めるべきだ。

 沮授にもその旨連絡せんといかんな。

 まあ、母流龍九商会のネットワークを使えばほぼ確実に伝わるだろう。


 さて、明日には陳留を発つ。

 洛陽か、涼州か、どっちに行こうかなあ。


※地理的に考えて洛陽になりました


ネコミミモード。分かる人にだけ分かればいいというスタンスです。

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