表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/350

閑話:幼少期の終わり

文章追加しました

 南皮の街を陳蘭を伴いぶらつく。昼は適当に屋台で買い食いである。


「あんまり無駄遣いしちゃ、駄目ですよ」

「ふ。小遣いってのは無駄なことに遣うもんだ。それに金持ってる奴が金使わないと経済が回らん。だから、持てる者である俺は金を遣うというのはもはや義務ですらあるのだよ。

 というわけであの餃子も試してみようそうしよう」

「もう、二郎様ってば・・・」


 陳蘭のお小言をBGMにしながら街の徘徊を続行する。ほんと、毎回付き合せて悪いなーとか思ったりもする。まあ、それがお役目と言ってしまえばそれだけのことなのだろうがよく付き合ってくれるものである。

 と、陳蘭が足を止めてなにやら見ている。


「どったの」

「い、いえ、すみません。あっちに、ほら」

「ん」


 見ると流しの芸人だろうか。琵琶を伴奏に女芸人が歌を歌っていた。終わるとちっちゃな女の子がおひねりを集めに籠をもって駆け回る。ふーんと思いながら小銭を投げてやる。

 こういった娯楽的な階層が目立つということはそれだけ民の生活が豊かになっているという証左だ。緩みそうな口を引き締めてエンドユーザーにリサーチをかけるとしよう。


「そんなに歌、上手かったか?」

「いえ、そうじゃないんですけど、その、綺麗だな、って」

「あー、衣装な。着飾ってるしなー」

「なんか、いいなあって思って」


 なるほど。芸事そのものだけではなく、その装飾も憧憬の対象、と。なるほど。これは見落としてたな。華やかだからこそ憧れる。言われてみれば当たり前ではあるのだが。

 これは陳蘭にご褒美をあげなければ、と熱い使命感を覚える。


「今度、ああいうの仕立ててもらうか」

「ふぇ?い、いいです。どうせ似合わないし」


 顔を赤くしてぶんぶんと手を振る陳蘭。んなこたないと思うんだけどなぁ。  まー、一般的に女の子が着飾るなんてまだ結婚の時くらいだからなあ。なんとか普通に女の子がおしゃれできるくらいには発展させたいねえ。


「あ、あの、ほんとにいいですからね?」

「ん、まあ、そのうち、な」


 陳蘭が綺麗なおべべお望みとあらば全力で叶えてやらねばなるまいて。ククク。


「話聞いてます?」


 聞いてるとも。陳蘭がちらちらと目移りするくらいにアクセサリーとかも充実してきているってことを認識するくらいにはな!


 と、歩き出そうした俺に声がかけられる。


「あ~ら、二郎さん、珍しいですわね。てっきり隠遁されていたかと思いましたわ」

「あ、アニキだ、ひっさしぶりー!」

「ご無沙汰しております」


 意外なところで麗羽様たちに出くわした。三人とも美幼女が美少女にランクアップしている。これが実に目の保養であり、感慨深いものがある。これは唾つけとくべきでしたよねぇ・・・。


「ええと。俺だってたまには仕事します、よ?」

「・・・まあ、猪々子さんよりはされるでしょうね」

「あー、姫ってば。アタイだってアニキよりは頑張るっての!ひっでーなー」


 斗詩が俺たちのやり取りにくすくす、と笑う。・・・これでも仕事で来たのは本当なんだけどね。


「麹義のねーちゃんに報告書出しにきたとこだったんだわ」


 うげ、と猪々子が呻く。うん、何を思ってもいいけど声に出すなよ扱いに困るし。

 麹義のねーちゃんは二十年近く前の匈奴の大侵攻の時から常に第一線を張り袁家の防衛線を張り続ける知勇兼備のウルトラスーパーな名将、レジェンドである。一朝事あらば、袁家軍の総大将は間違いなくねーちゃんだろう。猪々子にとっては口うるさい先達でしかないだろうが、実際たいした人なのだ。

 政戦両略に長けており、特にその政治力は隔絶。魑魅魍魎湧く袁家において後背からの圧力を援護へと変え、前面の敵を討つなんぞ凡百にできるものかよ。

 少なくとも俺には無理な芸当を鼻歌混じりにやってのけるねーちゃんはガチで英傑的な存在であるのは確定的に明らか。間違っても喧嘩を売ってはいけない。俺なんて媚びを売りまくりのバーゲンセールであるし。

 

「そうだアニキ、用事済んだんだろ?」

「おうよ」

「じゃあ手合わせしようぜー」

「話が見えん」


 なんだこの脳筋美少女。アタイより強い奴に会いに行く、とか言って旅にでも出そうだなおい。


「だってアニキー、あれじゃん?梁剛隊で百人抜きをしたじゃん!」

「なんで猪々子がそれを知ってるんだよ・・・」


 結構、年単位で昔のことなんですがねえ。


「えー、武官の間では結構広まってるぜー?

 紀家の後継は武においても抜きん出ていたってな!語り草ってやつ?」

「どーせ身内だから箔付けにインチキしたとかいう噂も出てるだろ」

「へー、よく知ってるなー。でも信じる奴はほとんどいないね。

 あの梁剛隊の面子が。絶対にそんなことするもんかい。

 まあ、アタイはアニキがものっすごく強いのは知ってたけどな!」

「買いかぶりもいいとこだっての」


 俺は強いと盲目的に信じてくれるのは嬉しいのだがねえ。小さい頃に相撲で勝ったくらいで、なあ。


「だから、また手合せしてよー。ねーってばさー」


 可愛くおねだりしてくる姿に心がグラリとするのを押さえつける。のだが。その内容がねえ。


「あーら、いいじゃありませんこと?」

「ちょっとぉ、これ止める立場でしょうが麗羽様は・・・。

 やるにしても得物はなしですよ?怪我してもいいことないですし」


 まあ、麗羽様がゴーサインを出した以上、それは決定事項なわけである。練兵場に移動し、構える。まあ、まだ武力全盛期ではないだろうし、なんとかなる、かな?

 なると、いいなぁ。


※この後、滅茶苦茶苦戦した。


 これ、ガチで猪々子の基礎スペック半端ないって!完璧に決まった上四方固めをブリッジで跳ね返すとか・・・そんなんできひんやん普通!





育った

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ