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くにさきたすく氏作品への二次創作品

奇妙なお店の奇妙なシステム!?

作者: 鳥越 暁

くにさきたすくさんの『かえるでかえる』と言う作品の二次創作品。

たすくさんに敬意と感謝を申し上げます。

 私は喫茶店で雨宿りがてらコーヒーを飲んでいた。

 頬杖つきながら外を見ていると一軒のお店から若い男が出てきた。その男は雨が降っているというのに傘もささずにうろうろしている。

 あの男は何をしているのだろう? この雨の中、(くさむらなんかを覗いている。変質者? 見た目はそうは見えないけどなぁ。

 あっ! 何かを捕まえた?


 その男はまた出てきた店に戻って行った。

 やがてその男はなにやら大事そうに小袋を抱えて出てきた。何を買ったんだろうか? そもそもあのお店は何のお店?あのお店が気になって仕方がない。

 私はそそくさと会計を済ませ、そのお店に向かった。お店の名前は『カエルdeカエル』、変な名前だ。



 お店の中に入ると店名の意味が分かった。どこもかしこもカエル、カエル、カエルだ! カエルの置物、カエルのカレンダー、カエルが描かれた掛け軸、カエルのおもちゃ……。

 なんなの!? このお店は!?


 多くのカエル商品に囲まれて唖然としていると、店の奥から大きなカエル…… のような中年男が顔を出した。不思議そうな顔をしている。


 「何してるん? 」


 どうやら店の主人らしいその男が問い掛けてきた。


 「あ、あのぅ。このお店ってなんなんですか? 」


 「ん? 何ってカエル雑貨の店やけど。」


 「そ、そうですよね。本当にカエルばっかりですね。」


 「まあな。日々商品は増えよるよ。」


 カエル雑貨というのはそんなに需要があるものだろうか? 私の知らない間に密かなブームになっていたりするのかしら。


 私は子供のころから生き物が好きで、中学では生き物クラブに、大学でも動植物研究会に所属していた。カエルにもそれなりに詳しい。


 「ここの小物ってリアルですね。これはヤマアカガエル、こっちはダゴガエルにモリアオガエル。あれ? これはアマミアオガエル? 」


 「おう。よう知ってんなあ。そうや、それは手に入れるのに苦労したで。」


 店の主人は嬉しそうにカエルの置物を眺めながら言った。ここの商品は本当にリアルだった。食玩といわれるお菓子のおまけについているフィギアに精巧な生き物シリーズがあったけれど、それ以上に精巧だ。博物館の展示用の模型以上に思えた。


 値段を見ると高い。アマミアオガエルの置物は五千円の札が付いている。でも、ここまで精巧に作られた物は他にないように思える。

 私はこの置物が無性に欲しくなった。思い切って買うことにした。


 「あの、このアマミアオガエルください。」


 「おう。いい物選ぶね。五千カエルだけど、千カエルまけてやるよ。四千カエルだ。」


 「えっ? カエル? 」


 「ああ、四千カエル! 」


 よく見ると値札の表示は『円』ではなかった。円の死角に囲まれたところに点がある。言われてみるとカエルを記号化した感じだ。


 「あのう……。よく分からないんですけど、カエルの単位って? 」


 店の主人は『ふ~ぅ』とため息をついて言った。


 「なんだ、あんたもか!? 千カエルはアマガエル一匹だよ。ヒキガエルだと捕まえやすいから五百カエル。ここの物はカエルと交換なんや。」


 私はからかわれているのかと思った。だけど店の主人は真面目な顔をしている。

 そうか! さっきの若い男は雨の叢でカエルを探していたんだわ。


 「あの、今は持っていないので今度持ってきます。それまでこれ取っておいてください。ちなみにトウキョウダルマガエルだと何匹ですか? 」


 「おう、やっぱり詳しいな、あんた。トウキョウダルマはいるところにはいるから二千カエルだ。」


 「分かりました。明日持ってきますから。」


 そう言って店を出た。私はこの変わった店を気に入っていた。




 次の日、郊外の田んぼで捕まえたトウキョウダルマガエル二匹を持って『カエルdeカエル』に持参した。一匹は右前脚に一箇所黒班がある。


 「おじさんっ! はい、トウキョウダルマガエル二匹! 」


 「おう、仕事が早いね~。どれどれ? うん、確かにトウキョウダルマ二匹。じゃあ、これな! 」


 店の主人は手慣れた手つきでアマミアオガエルの置物を手にして包装してくれる。包装紙も、リボンも、手提げ袋もカエルがプリントされている。こだわりがすごいなあ。


 おじさんは改めてトウキョウダルマガエルをつまむと『にやっ』と笑うと一匹づつ別々のカエルの形の甕に放り込んだ。カエル達はどうなるのだろうと不思議に思って聞いてみた。


 「あの、カエル達はどうするんですか? 」


 「ん? ふふふ、それは企業秘密やわ~。教えられへん。」


 店の主人は思わせぶりな顔をしていた。



 それから度々お店に顔出すようになり、今じゃすっかり常連だ。あの若い男にも何度か会ったし、他にもよく目にする人もいる。固定客をしっかりと持っているようだ。


 ある時、店に新しい置物が増えていた。それはトウキョウダルマガエルの置物だった。やっぱりリアルだった。

 私の目はその置物の一点に釘づけになっていた。生きているようにリアルなトウキョウダルマガエルの置物の右前脚に一点の黒班があった。


 【えっ! このカエルって!! ひょっとしてここの商品は!? 】


 ぞっとして鳥肌が立っていた。




 「おう、そうだ! お譲ちゃん、今度な姉妹店ができたんや。猫好きやったら行ってみてな。システムはここと変わらへんさかい。」


 店の主人が差し出したチラシには『ネコdeネコ』とあった。そして商品の値段が千ネコと書いてあった。ここと同じシステム…… 鳥肌は治まらなかった……。

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