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新しい家族

  「ただいまー」

 あたしは玄関の扉を開いて言った。鈴音は後ろに隠れてるよ。あーもー可愛いなあ。

 この愛い奴め!と脳内でウカお姉ちゃんっぽく鈴音にツッコミを入れてたらお母さんが出てきました。


 「おかえり、ずいぶん遅かったわねえ。ご飯食べちゃったわよ」

 「うん。あたしご飯いらないー」

 「ちょっと綾乃?あんたお酒臭いよ?どうしたの?」

 

 あちゃー。そりゃばれるよね?日本酒ラッパ飲みしてたし…。どうしようかなー?正直に言うしかないか…。

 

 「うんと、ウカお姉ちゃんが、あ、隣のお稲荷さまね。そのウカお姉ちゃんが、お前はもう人間ではなくて神なのだから酒くらい飲めって、神には酒だって、お酒を飲むと神通力が上がるんだって、それでお供えのお酒飲んできたの。でも全然酔っぱらってないよ?ジュースみたいだったし、お酒でお腹いっぱいになっちゃった」

 「あら?そうなの?神様ならいいのかしら?」

 「うんうん。それとね。この子あたしのお使いの狐の鈴音。今日から一緒に暮らすね」


 お酒と一緒に鈴音の事もさらっと流してみたよ。我が母上ならきっと大丈夫!…なはず。

 あたしがお母さんに顔色を窺っていると訝しげな顔であたしの手の先を見てる。あれ?計算外そんな反応は求めてませんよー。あたしの予想では「あらあら?かわいい子ねえ」みたいな和やかな反応を期待してたんですが…。


 「鈴音ちゃん?どこかしら?」

 

 「……え?」

 

 「…あ!」 


 あ!そうかー!わかりました!

 ふっふっふ…謎はすべて解けたっ!ビシッ!

 今の鈴音は人間には見えないんだ…。あたしは普通に見えるから全く気にしてなかったよー。

 あたしは鈴音の前にしゃがんで聞いてみた。

 

 「鈴音。なんだけ?アレ…。顕現?だっけ?できるかな?」

 「うん…」


 鈴音小さく頷くと目を閉じた。すると鈴音の身体が淡く光る。鈴音の神力だ。

 これで普通の人間にも見えるはず…。

 お母さんを見ると少し驚いてる。そりゃそうだよね?いきなり何も無いところから子供が出てくるんだもん。慣れてないからと言うかふつう驚くよね?でもすぐに笑顔になったよ。鈴音可愛いからねー。鈴音の可愛さにひれ伏すがいい夏森家!あっはっはー!


 「あらあら?かわいい娘ねえ。この子が鈴音ちゃん?今日からうちの子ね?」

 「うん。うちの末っ子って事でよろしく。あと鈴音はまだあたしのそばから離れちゃいけないから、学校にも連れて行くよ。鈴音。この人があたしのお母さんだよ。鈴音もお母さんって呼んでいいからね」

 「…おかあさん」


 鈴音はおかあさんと何度か呟いて頷いてる。さてっとそれじゃ、サクッと鈴音の事を皆に紹介してきちゃおうかな?皆って家族の事ね。お父さんと愚弟とお兄ちゃんね。


 「お父さんとひろ兄帰ってきてる?」

 「居間に皆いるわよ」

 「よし!鈴音。もう少し我慢してね。鈴音の新しい家族に挨拶しなくちゃね。いこ」 


 あたしは鈴音の手を引いてリビングに向かう。コンとギンの事はまだ言ってない。というか教えても見えないからねー。今どこに居るかって?ちゃんと足元に居ますよ。本当は紹介したいんだけどね…こればかりはどうにも出来ないなー。もしかしたらウカお姉ちゃんなら見せる方法知ってるかもしれないけど…。今度聞いてみようかな。せっかくだし見せてあげたいしね。


 「ただいまー。お父さん、宏兄、知也。見て見て!新しい家族で妹の鈴音だよん」

 「うん。綾乃お帰り。可愛い子だね。よろしく」

 「おかえりって…は?」

 「…え?」

 「ついでに知也とお母さんは知ってると思うけど、あたし神様はじめました」

 「うん。それはママから聞いてるよ」

 「…綾乃。それマジなのか?てか妹って…」

 「マジだよマジー。妹は妹だよ。本当はあたしのお使いの狐さんなんだけど、家族と同じくらい大事にしたいから、なら家族にしちゃえ的な?だめかな?お母さんもいいって言ってるし可愛いし良いじゃん。ね?」


 お父さんだけ驚いてない…。さすが母上の相方…。宏兄はちょっと困惑してるかなー。知也は鈴音の事じっと見てる。こらこらそんなに見つめると鈴音が怯えるでしょうが!この子人見知りなんだからね。そんなあたしはみんなの出かたを待つ。


 「…いや。父さんと母さんが良いなら俺は構わない」

 「姉ちゃん!鈴音っておれより年下だよね?おれお兄ちゃん?」

 「そだよー。知也はお兄ちゃんなんだから鈴音の事いじめちゃ駄目だかんね。お父さんはどお?」

 「ああ、構わないよ。鈴音ちゃん、僕の事はおとうさんって呼んでいいからね。僕も鈴音と呼ぼう」

 

 よっしゃああっ!じゃあ鈴音はうちの末っ子って事で!一家の大黒柱の許可が下りたのでひとまず安心。


 「鈴音。お父さんはもうわかるね?後は…。あそこのソファーに座ってる大きいのがひろ、メガネかけて真面目そうだけど実はヲタクの宏兄ね。ほんで、隣の小さいのが知也、生意気で可愛くないけど知也も鈴音のお兄ちゃんだよ。もしいじめられたらお姉ちゃんに言うんだよ?お姉ちゃんが天罰与えるからね!」

 「…おい。ヲタクは余計だ!鈴音。困った事があれば何でも言えよ。な?」

 「姉ちゃん!おれはいじめたりなんかしないぞ!ちゃんと妹を守る!」

 「おお?なんか二人ともノリノリじゃん。あたしは正直に紹介しただけだよん。そだ!みんな鈴音の耳と尻尾の事は気にしないでね。一応隠せるんだけどさ、そこ萌え要素だからそのままにさせるからねー。それと基本的に鈴音はあたしから離れちゃいけないので鈴音一人にお買いものとか頼んじゃだめ。その時はあたしも行くからね」

 「…と。…。…おとうさん。……宏お兄ちゃん。……知也…お兄ちゃん」


 あたしが夏森家の男子達の相手をしていると、それまで後ろで隠れていた鈴音が一生懸命に指を折りながら、新しい家族の名前を繰り返し覚えていた。

 …鈴音さん。もうその仕草でご飯何杯でもいけちゃいますよ!うっ…鼻血が出そう。

 あたしは我慢しきれず鈴音を抱きしめた。もうほんんんとうに可愛いいいいいい!鈴音のおでこにあたしのおでこを付けてぐりぐりする。


 「ところでさ、さっきから言おうと思っていたんだけどよ。綾乃。お前…酒臭いぞ?」

 「えー!姉ちゃんお酒飲んだの?不良だ!不良ー!」

 「う゛…やっぱばれたか…。いいんだもんー。ウカお姉ちゃんが…んと、隣のお稲荷様のウカお姉ちゃんが飲んでいいって言ったんだもん!あたしは神さまだからいいんだって、むしろお酒は神さまのエネルギー源の一つだから飲みなさいって言ってたもん」

 「なるほど…なんか納得した。だけど飲むのは夜だけにしろよな。酒臭いまま学校とか行くなよ。恥ずかしいし一々説明するのもめんどくさいだろ?」

 「わかってるよー。御社の中以外で飲まないよ」


 よし。鈴音の紹介も終わったしそろそろ部屋に戻ろうかな。鈴音も疲れてるだろうしね。鈴音はまだ家族の名前を繰り返してた。何でこんなにかわいいの?ねえ?


 「あたし達部屋に戻るね。鈴音行こう」

 「…ふあ?…お姉ちゃん、なあに?」

 「あたしの部屋が今日から鈴音の部屋だよ。お姉ちゃんと一緒だよ」


 あたしはコクリと頷く鈴音の手を引いて、リビングを出て二階に上がる。二階の一番奥の部屋があたし達の部屋だ。扉にはひらがなであやのと書かれたプレートがぶら下がってる。近いうちにすずねと書き足さないとね。扉を開けると部屋の正面にベッドがあって左に机がある。丁度、机がある方向が南側。床には水色のカーペットと小さな丸いテーブルと2つのクッション。ベッドにはクマとウサギのぬいぐるみが置いてある。シンプルだけどこれがあたしの部屋だ。


 「ここが今日から鈴音とあたしの部屋ね。ベッドは一つしかないから一緒ね」

 「…べっど?」

 「んーと、お布団の事だよ。これの事」

 

 あたしはベッドに腰掛けた。鈴音も真似して腰掛ける。鈴音はベッドが珍しいのか、スプリングが面白いのか身体を揺らしてる。そっか…この子、伏見から出たことないって言ってたもんね…。今日は色々ありすぎて目が回ったんじゃないかな?まあ、それはあたしも同じだけどね。今日いきなり神様になっていろんな事がありすぎた。でも幼い鈴音にとっては、きっとあたし以上に目まぐるしい日だったと思う。だってずっと伏見から出られなかったのに、いきなり外に出されて新しい家族まで出来ちゃったんだよ?あたしだったら間違いなく目が回ってるね。

 あたしは隣に腰掛けてる鈴音の頭を優しくなでた。鈴音はきょとんとした顔であたしを見上げた。そんな鈴音を見てあたしは優しく微笑んだ。安心したのかな?鈴音もほほ笑んだ。あたしに見せる初めての笑顔だ。愛おしいな。本当に。


 「鈴音。今日は疲れたでしょ?寝ようか?」

 「…うん。…お姉ちゃん」


 あたし達はベッドの上向かい合って眠る。コンとギンはあたし達を挟むようにベッドの上で丸くなってる。

 





 幸せな生活が明日からまた始まる。

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