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帰り道

 

 ウカ様とお話しした後あたしはすぐに家に帰った。っといても神社の隣だから徒歩2分くらい?


「ただいまー」

 玄関で靴を脱いでると台所からお母さんが顔をだす。そしていきなりというか…わかってはいたけどー。


「おかえり。綾乃!あんた神様になったんだって?」

 やっぱりね…。近所のおばさん言いふらしたなー。めんどいなぁほんとに…。しばらくこんなのが続くと思うとうんざりするよ。


「うん。まあねーでも朝起きたらいきなりなってたからー。あたしにもよくわかんないよ」

 あたしは正直に答えた。だってそう言うしかないじゃん?何すればいいかもわかんないしね?


「あら?そうなの?パパの出世とかお願いしたら出来る?」

 はあ…とりあえず今は出来ませんねー力の使い方とかあたしわかんないしー。てか娘に頼むなよ!


「さあ?何の神様かもいまいちわかってないから今はむりでーす」

 あたしは適当に答えた。めんどくさいし。これって神様として失格かな?だいじょぶだよね?たぶん…。ついでに神社の事も言っておくか…後でいうとまた面倒だし…。


「あーそうだ。お母さーんあのねー隣のね神社の神様がねー。あたしにそこの神社くれたよー」

 って言ったらお母さんが固まった。石のように。目を丸くして。まあ、ふつうそうなるよね?私が逆だったら固まるもん。


「あ…あんた!ちゃんとお礼言ったの!?どうしましょう?何かお供え物でも持って行った方がいいかしら?」

 

 や…ずれてるし!もしもし?おかあさん?お供え物って…もうすでにあたしの社だからあたしにお供え物することになるんですがー!わかってますかー!?でもウカ様とりあえず居るって言ってたからあたしが持っていけばいいか?


「うん。ちゃんと言ったよ。ウカ様っていうのその神様。お稲荷様なんだって。しかもあたしが学校行ってる間とか代わりに御社護ってくれるって」

 ウカ様ってほんとやさしいよね。お隣の神社がウカ様の神社でよかったよー。


「ならなおさら何かお供え物持って行かなきゃだめでしょ!お稲荷様ってことはやっぱりいなり寿司かしら?油揚げないわ。どーしましょう?綾乃!あんた田口商店行って油揚げ買ってきなさい」


 我が家のお母様は少しテンパってますね。どうか落ち着いてください。お願いします。


 なんか今逆らうと怖そうだから行くか…めんどくさいけど。

 あたしは、はいはいと答えるととりあえず自分の部屋で制服からジャージに着替えた。だってジャージ楽なんだもん。こんな田舎町でオシャレとか逆に浮くしー。


 あたしはサンダル履いて家を出た。田口商店までは家から徒歩15分ほど。のんびり歩いて向う。

 しばらく歩くと小さなスーパーが見えてきた。田口商店だ。中はお肉屋さん、八百屋さん、魚屋さんみたいに別れてて、あたしはその中の惣菜屋さんで油揚げ数袋と笹かまぼこ1つ買った。笹かまぼこはあたし用食べながら帰る。


 家を出たときはまだ少し明るかったけど辺りはもう暗くなっていた。電灯もまばらで途中砂利道とかあるから来た時よりもゆっくり帰る。暗くてもこんな田舎町だ。変質者とか見かけたこともないし、聞いたこともないから別に怖くない。

 それに神様になった影響なのか夜道もよく見える。今日は晴れていて月も綺麗だ。そんな風にお月見しながら(笹かまぼこ食べつつ)帰ってたらちょうど砂利道の所で軽くつまづいた。転ばなかったけどね。ちゃんと前向いて歩かないといかんなーっと思ったその時。


「転んだら食っちまうぞ」


 後ろから低い声が聞こえた。あたしはぎょっとして後ろを振り返った。

 

 だけど誰も居ない。


(なに?今の??)

 

 あたしは怖くなって前を向いて速度を上げようとした。

 神様だって怖いものは怖いんだもん!


「おい!無視すんなよ!」


 後ろから今度は苛立つような低い声であたしを呼んだ。

 

 なに?なに?怖くて振り向けないよー!

 確実に後ろに誰かいる…。あたしは怖いけど足を止めてゆっくり振り返った…。


 あれ?やっぱり誰もいない…。周りを見たけど何もない。なんなのよー!こわいよー!鳥肌が立ってるよ!

 すると足元から声がした。


「ここだ!ここだ!」

 

 あたしはゆっくりと下を見た…。そこには…。




 小さな犬がいた。




 黒くて小さな瞳。もふもふの毛皮。丸まった尻尾。どこをどう見ても小型犬の【ポメラニアン】にしか見えない。 

 なにコレかわゆ!!!


 あたしは恐怖心から一転。一気にもふもふしたい衝動にかられたよー。だって小型犬だよ?しかももふもふのポメちゃんだよ?抱かなくてどーするのー。普通抱くでしょ?もふもふするでしょ?もうね我慢の限界です。鼻汁出ちゃいますよー。


 気付いた時にはソレを抱き上げ思いのままに頬ずりいました。彼?の意志無視して。


「あー!もふもふかわゆー!お持ち帰りしたいー!」

「やめろー!俺様は恐ろしい狼の妖怪オクリイヌだぞ!」


 なんか悲鳴上げながら何か言ってるけど。あたしにはきこえなーい。もふもふーきもちいー。


 あたしはひとしきりもふもふ堪能した後、彼?を降ろしてあげた。まだ物足りないけどねっ!

 降ろされたポメちゃんは、少しげっそりしてる気がするけどきっと気のせいだね。


 彼?はハッハッと舌を出して。疲れ切った表情であたしにいった。

「おい!おまえ!今回は転ばなかったから見逃してやるけどな。今度転んだらお前の魂食っちまうからな!」

「え?魂を食う?なにそれ?ってかなんでしゃべれるの?」

 俺様は犬じゃねえ!といって自分の説明を始めた。


 なんでも彼はオクリイヌとかオクリオオカミという妖怪で夜道を歩いている人について行き転んだところをぱくっと食べちゃう妖怪なんだってー。なにソレ怖い。でもポメちゃん…あなた何言ってもかわいい子犬にしか見えませんよ?まじで。

 あたしは心の中で勝手に彼の事をポメちゃんと名付けた。変更は認めません。神様権限です。だって目の前のオクリイヌさんかわゆすぎるんだもん!あたしは悪くない!


「でも、たぶんあたしの事は食べれないと思うよ?神様だし」

 っていったら驚いてた。ものすごく。

「お前みたいな弱そうなやつが神なわけないだろ!」


 どうやら信じてくれないみたい。だからね少し神力出してみたよ。ポメちゃんが消えない程度に。そしたら信じてくれました。ものすごく納得いかない顔で。


「あたしの自己紹介まだだったね。今朝神様に成ったばかりの夏森綾乃だよ。よろしくね」

 あたしは自己紹介してあたしの社はあそこだよって丁寧におしえた。


「お前…あそこって…。めちゃくちゃ怖い女神のウカノミタマの社だろ?お前みたいな神が気軽に入れるわけないだろ?」

 え?怖いって?めちゃくちゃ優しいですけど?お姉ちゃんみたいであたし大好きですけど?

「怖くないよー。ウカ様すごく優しいよー?あたしに社くれてお留守番までしてくれるんだよ?」


「おまえ気に入られたのか…。しょうがない、お前にはもう手は出さねーよ。俺様も暇じゃねえんだ次の獲物さがさねーとなもう行くぜ。じゃあな」


 ポメちゃんはあたしの横を通り過ぎて夜の闇に消えていきそうになった。あたしはそれを止めた。ポメちゃんはなんだよ?ってめんどくさそうに振り返った。


「ねえねえ。次の獲物ってさー。やっぱり食べちゃうの?魂」

「あたりまえだろ!俺様はそういう妖怪なんだからな」


 だめだろー?人たべちゃー?魂でもさー。ねー?


「禁止ー!食べるの禁止ー!これからは食べちゃダメです」

「は?食べなきゃ俺様も生きていけないんだよ!」


 んー…そりゃそうだよねー…。んー…どうしよう…。あたしは考えたよ。頭をフルに使ってさー。


「じゃあさ。あたしに時々もふもふさせてくれたら食べてもいいよ。ただし一人につき少しだけね。全部はダメ。もしもいやだって言うなら、このままあたしがお持ち帰りします。あなたのこと」


 ポメちゃんが青ざめた。毛が逆立ってる。そんな姿もかわゆーなんですがー。

 でも渋々納得してくれたよ。もふもふは出来るし、人にも迷惑掛からないし(たぶん)あたしきっと良い事した!



 これからもふもふ出来ると思うと幸せだなー。神様になって初めてよかったって思えた出来事でした。






 ちなみに魂は全部食べられなければ食べられても時間がたてば元に戻るんだって、ウカ様が言ってたから間違いないと思うよ。よかったよかった。

  

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