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正し屋本舗へおいでなさい  作者: ちゅるぎ
九死に一生を得る、迷子
8/83

洒落にならない森林探索

 森と海なら、必要最低限の装備で生きていけると思う。



食べ物は冬以外ならいっぱいあるしね!おすすめは秋と春。

調理いらないのは圧倒的に秋。夏は蚊がいそうだからマジ勘弁。

.











  どうやら私は、大変な場所に不法投棄されたようです。











 クレーターみたいな場所から脱出した私は、とりあえず、色々考えた。

最終目標は、旅館で食べる美味しい甘味。

とりあえずの目標は川を見つけること、川が見つかったら寝やすそうな場所を確保することだ。

 あと、できるだけ食料も確保したい。

食料確保っていっても、食べられそうな木の実がとれる木はなさそうだし、山菜も食用野草もなさそうだから川で魚を捕まえるしかない。蔦みたいなのがあるからそれで罠を作った方がよさそう。


 なんで私が食べられそうな山の幸を知っているのかといえば、私が田舎に住んでいたから。


いや、田舎に住んでると娯楽が少ないからついつい、こー、山とか川で色々採取するのが楽しくて楽しくて。山菜とり、秋の果物狩り(山ぶどうとか栗とかね)、キノコ狩りなどなど、ホントに食べられるものと食べられないモノ、ついでに現代社会には到底必要ないよーなサバイバル術が自然に身についたわけです。あんまり嬉しくないけど、有難い。






「森の中なのに、なんでこんなにマイナスイオンを放出することを放棄してるのさ」






 大体、変だと思うんだよね。


私の知ってる森は、ここと同じくらい木が沢山生えてても、陽の光が差し込んでた。

鳥の声も、虫の鳴き声も、木の葉がこすれあって出す心地い音も…――――






「(ここには、ない)」







 それだけじゃなくて、この森は他の森とは“根本的なもの”が違ってるような気がする。

一体何が違うんだろうと歩きながら考えた。幸い、時間だけはたくさんあったから。


 歩いて、歩いて……気まぐれに携帯で時間を確認したらスタート地点から2時間近く歩いていた。

水の流れる音はまだ聞こえない。

耳が拾う音といえば、枯葉の上を歩く私の足音や自分の呼吸音くらい。


足を止めると、しぃん、と耳が痛くなるくらいの静寂に包まれるのが嫌で私は五分だけ近くにあった岩に腰を下ろして休んだ後、また地図と方位磁石を頼りに歩き始める。


 山歩きには慣れてるからまだ疲れてはいないけど、少なくても日が沈む前に川を見つけたい。

雨が降ってる時に、水の近くにいるのは危ないけどそうでない限りは川辺で野宿するのが一番いいって教わった。理由はいざという時の飲み水が確保できるからだ。

それに、きれいな川だったら魚も捕れるし、水辺でとれる食用野草は結構多い。






「あ……そ、っか。変だ変だって思ってたけど、生きてないんだ、この森」





 いろんなものが、生きてない。


 厳密に言えば森―――…木とか森を構成してる一つ一つ自体は生きてる。

例えば、土の中の微生物とか大嫌いなミミズとかね?確認してないけど、きっといるはず。

あー、うーん、上手に言えないけど、生き生きしたマイナスイオン溢れる森じゃないのは確かだ。










できるだけ長居はしたくないのでキリキリ歩こうと思います。

ええ、キリキリ歩きますとも。














◇◇◇










 決意を固めて歩くこと三時間、時刻は午後3時30分。





 ご飯を食べるのを我慢して無心で歩いた甲斐があって、うっすら水の音が聞こえてきた。

ちなみにご飯(カ〇リー〇イト、チョコ味!結構好きなんだよね)は一日2本。それで計算すると12日は持つ計算だ。本当はもっと食べたいけど、何があるかわからないし、無事にたどり着けるかどうかわからないから余裕をもって置くにこしたことはない。


 でも、やっぱりお腹は空くから、飴玉を一つ口に入れてる。レモン味です、うま~。


ちなみに飴玉とチョコレートが食料の中に入ってました。

流石です。遭難したとき、これらがあるのとないのとじゃ生存率がごばーっと違うってテレビの特集でいってたし間違いないと思う。






「なーんか、疲れてるせいかもしれないけど……歩けば歩くほど、空気がでろでろ~んってなってるような」






 つまりは、山を登れば登るほどに、なんだか凄く空気が澱んでいく気がする。


暗さは森の中で目が覚めた時よりも深まって、空を仰いでも生い茂ったよくわからない木の葉っぱで殆ど空は見えなかった。木ばっかりだし、似たような風景ばっかりだから方向感覚もおかしくなってきてて、自分がどこを歩いてるのかわからなくなることが結構ある。


 幸い、方位磁石と地図があるからいいんだけど、もしこれで何も持たずにはいったら完全に迷子だ。

食べ物になりそうなものも一切ないし、雨が降らなければ水の確保も難しい。

いや、そもそもこんな暗い森の中に入ろうって人間の気がしれないよ。

私みたいに不法投棄されたならともかく。






 文句と森に関する疑問をぶつぶつ口にしながら(だって寂しいんだもん!なーんにもないんだよ?!)、水音がする方へ歩いくこと30分、突然、なんの前触れもなく黒い、影が遠くの方で揺れた気がした。

進行方向だからこのままいけばよく見えるはずなんだけど……なんだか、凄く、近づきたくない。


 近づけば近づくほど、シルエットがはっきりしてきて、ものすごく、嫌な予感しかしない。







 太い木の枝から垂れ下がるひも状のモノの先端には大きな、そう――――――― 人の、形をした黒いモノが音もなく、ぶら下がってる。 

頭では見えてるものが人だったものなのはわかってるんだけど、そう簡単に認めたくなくてこの目で確かめるまでは前方の黒いモノについては深く考えないことにした。



 黒い影に近くづくごとに、変な汗が滲み出てくる。

知らないうちに体をできるだけ縮めて、影から身を守るような姿勢で歩いていることにふと気づく。





「(もうこれ以上、近寄りたくないけど……でも、知らないといけない気が、する)」




 歩きながら、ぼんやりとこの森について考えてたんだけど、たぶん…この森は“裏・雲仙岳うんせんだけ 樹海じゅかい”だと思う。


 正し屋がある縁町から車で3時間くらいかかる場所に“雲仙岳”って名前の山があった筈だ。

この山は日本の絶景50選に選ばれるくらい有名だから流石の私でも知ってたんだよね。

 この山、実は双子山になってるんだけど……正面にある雲仙岳のすぐ後ろにほとんど同じ大きさの、でも、雰囲気が真逆の山がある。

その山は通称“裏・雲仙岳 樹海”っていわれていて、自殺の名所中の名所としてある意味、雲仙岳よりも有名なんだけど……。






「す、須川さぁ~ん……な、なんでこんなとこに置いてくのー?!うぅ、黒いのあれだよね、絶対ぜったいアレだよね?!こんなとこで野宿するのほんとに勘弁して欲しいんですけど」







 裏・層仙岳はときどき、テレビで取り上げられる。

勿論、ニュースでもあるけど主に心霊番組で。

自殺の名所って基本的に、そーゆー特集で取り上げられることが多いみたいなんだけど、この山に限って必ず何かの映像や写真が撮れてるみたい。





「は、ははは……これはあれだよね、確実にお化けいるパターンだよね。間違いないよね」





自殺の名所=仏さんごろごろ。

超有名心霊スポット=お化けさんごろごろ。

うぅ、今日の夜は寝ないほうがいいかな?でも歩きっぱなしだから絶対寝ちゃう。





「(朝まで熟睡できればいいけど、金縛りとか初体験しちゃったらどうしよう!?須川さんに呪文的なもの聞いておくべきだった…?あ、でも確かバッグの中に御守りが入ってた……ってやっぱりどー考えても心霊スポット決定だ)」






 がっくりと肩を落として項垂れたところで助けてくれる人なんてどこにもいないんだけど、落ち込むくらいは自由にさせてほしい。


 半泣きになりながら鞄の中から御守りを取り出して、手首にしっかり結びつける。

その上で落とさないように握りしめて、じりじりと黒い物体と間合いを取りながら前進してくことを決めた。女は度胸だ!根性だ!

 よ、よし!須川さんからの御守りだから絶対効果はある!……筈。








「って、あ、あれ?あの黒っこいの何処どこいったんだろ……?まさか移動した、なん、て、ことはないよね……?!」








 恐る恐る、背後を確かめる。

ゆーっくりゆぅ~っくり振り返ってみたけど、何もなくてホッとした。心底ほっとしたよ!

で、今度は正面を向くときも細心の警戒心を持って振り向いた。

 だって、よくあるパターンでしょ?後ろ向いた時は何もいないんだけど正面向いたらドーン!ってパターン。あれはないわー、ほんとないわー!!





「ハッ?!も、もももももしかしたら、さっきのって死体じゃなくて……えーと、えーと」






 じわじわと物凄い汗が全身から吹き出てきた。

あ、あれー。なんかすごい寒いんですけど。

御守りを持つ手が震える、ついでに足も思い出したみたいにガクブルしてきた。





「や、やっぱり、お、おおおおぉお、おば、お化け……?」




うひょあぁぁぁぁああ、と奇声が体の底から吹き出て声になった。

声が出るとようやく生まれたての小鹿的なことになってた足も動き始める。

 方位磁石と地図を左手に握りしめ、右手には御守りをがっつりもったまま、お化け(仮)がいた場所から逃走を図る。

好き好んでお化けのいるところにいようとする人間の気がしれないよ!!


 全力疾走して、走りに走って、筋力の限界を悟ったところで私はそのまま崩れ落ちた。

服が汚れるとかもーどーでもいい。

息がしにくいどころか、息を吸い込む度に肺が「つかれたよー!はたらかせんなよー!」って悲鳴を上げてる。つまり、痛い。息苦しいんじゃなくて、痛い。こればっかりは運動が得意な人にはわかるまい。








「っゴホ…げほッ、ぜひゅー……う、運動…ぜひゅー……不足、だ」







 深呼吸を繰り返して、ようやく状況判断ができるまで回復した。

冷や汗じゃないある意味健康的な汗をぬぐって、よろけつつも立ち上がって、現在地を見渡す。



 相変わらず木はあるけど、さっき私を取り囲んでた木とは少し、雰囲気が違う。

それに土も少しだけ砂っぽいし、小石が多く混じってる。

なにより、水の音が近くから聞こえてくることを考えると、ほんの数m先に川がある筈だ。






「な、何とか今日中に見つかった……ええと、次は寝床探して、乾燥した木拾って、ついでに蔦で罠をつく…あ、でもその前に魚が住んでそうな川かどうか確認しないと。あーもー、ほんとよかった」








 実は、今日中に川が見つかるかどうかわからなかったんだよね。

だからすごく嬉しかったんだけど……この時の私は、すっかり忘れていた。

私がいるのが、かなり特殊だってことも、ついさっき見たモノのことも。




 















 たぶん、これからが私にとっての本当の始まり。





















 前のが少し短かったのでちょっと長め?に…と思ったんですが、書いてる最中は長く感じても、いざ読むと短い罠w

これから少しずつホラー要素がはいってきます、おそらく。


ここまで読んでくださってありがとうございます!

次もまた、頑張りますのでよければお付き合いくださいませ~。



PS.お気に入りの件数が1件から2件になっていることに気付きました。

ありがたや~、ありがたや~。すかさず拝み倒したのは言うまでもないと思います。うぅ、うれしすぎる!がんばんべー!!

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