表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正し屋本舗へおいでなさい  作者: ちゅるぎ
潜入?!男子高校
79/83

 別視点 「焦燥+克服=密」 前編

 たまに、封魔視点とかいれたいんですが話が進まなそうなのでやっぱり彼になるという…。

いや、書きやすいんです。かなり。


長いので前後編にわけました。



 ごろんとベッドの上に寝転がる。



シャワーを浴びたせいで髪が濡れているけど、気にせずに天井を見上げた。

隣のベッドでは封魔が壁に背を預けて『世界各国の旬と果物』というそこそこ分厚い本を険しい顔で読んでいる。

時々、携帯に視線が行くのをみると完全に集中してるってわけじゃなさそうだ。

そんなルームメイトを横目にため息を吐いてルームメイトと同じように携帯を手に取る。

メールも着信もなく静かな小型の通信機器を睨みつけて――――…一つ、決心した。

ベッドから跳ね起きて、封魔のベッドへ近づく。



「…封魔」


「へいへい。そろそろだろーと思ったよ。準備するのは懐中電灯くらいか?」


「おう。持ち物は電灯と携帯だけでいいだろ。舎監の須川先生―――は出張中だっけ?代理の葵ちゃんにも会いに行かねぇと。その後に優の部屋にいって戻ってきてないか生徒会チョーに確認する」



すっげぇ、気はのらないけど。


 思い切り顔をしかめつつ口に出すと封魔が驚いたように目を見開いていた。

オレは自分でも自覚しているくらいに生徒会長が苦手だ。

姿を見るだけで悪寒が走る。

同じ授業を受けているだけで空気の温度が下がってる気がするし、見たくないものが突然出てきたりして不気味なんだよ。

だから、話しかけるなんて以ての外。

ぶっちゃけ近づきたくもない。




「オレは生徒会チョーがすっげぇ苦手だけどさ、封魔も優も普通に話してんじゃん。それで、いつもオレに気ぃ使ってくれてるのわかるから…ダチになれるかどうかはわかんねぇけど、知る努力くらいはしなきゃならないって思ったんだ」


「なるほどな。お前が努力してくれてんのはわかってたけどよ、あんまり無理することはねぇさ。俺も優も人間の好き嫌い位あるし、苦手な奴はどーやったって苦手なんだしよ。全部好みを揃えるのがダチってわけじゃねぇだろ」


「さんきゅ。でもさ、優が来てから少し…生徒会チョーがいる時に感じる悪寒がなくなってきたんだ。今はちょっと寒いっていうかひんやりする感じはするけど普通になってきたし」



変わったのはプールの一件があってからだ。

少しずつ何かが変わってきているのがわかる。

多分、だけどオレの霊をみる力も強くなってきている気がした。


 無意識に手首のパワーストーンを握り締める。

これはプールで死にかけた週の休みに街へ行った時、優と一緒に買った。

これを買って身につけるようになってから生徒会チョーが近くにいても霊をみることがなくなったんだ。

…意識すれば見えるから視る力がなくなったわけじゃなさそうだけど。



「そーいや、禪をみて鳥肌立てなくなったな。そんじゃ、善は急げってことで葵ちゃんに許可もらってくるか。何だかんだで優の事心配してるだろうし反対はしねーだろ」



そう言うや否や封魔はベッドから降りて、机に本を置いたあとベッドの脇に備え付けられている懐中電灯を手にとった。

 この懐中電灯、災害時に使えるようにってことで自家発電式。

取っ手みたいなのをグルグル回せばいくらでも光がつくっていう…いや、まぁそれはいいんだけど。



「後は…行く途中にでも優をどこかで見なかったか聞いてみるか。この寮で優のこと敵視してるような奴はいなかったが、まぁ…お前のファンにはあんまり好かれてねぇだろ」



外に出る為の準備としてポケットに虫除けスプレーを入れた封魔はうんざりした顔。

オレも思い当たる節はある。


 優とは出来るだけ一緒に行動するようにしてたから害らしい害はなかったと思う。

本当ならオレだってこんな苦労したかないけど…共学だと色々支障がでるし。



「だけどさ、優だってオレと似たような状況だっただろ?そっちの線はねぇのかよ」


「そーいやそうだわな。まぁ、あんなポワンポワンした生き物に手ぇ出すほど飢えてる奴らなんて――――…いるか」


「いるだろ、そりゃ。うっえ゛~、想像しただけで気色悪ぃ!最近、優の写真が出回ってんのには気づいてんだろ?」



思いっきり顔をしかめつつ、脳裏をよぎるのは廊下や他の寮の奴から耳に入ってきた情報。

優は学校でも一番小さいし目立つから何かと注目を集める。

 編入したての頃は注目してただけでも、話をしたり聴いたりすることで興味をもたれたらしい。

はじめっから容姿に惚れ込んだ奴もいるみたいだし…オレも人のこといえないけど大変だよな、優も。

ぶるっと色々なことを思い出して悪寒が駆け抜けたが何とかやり過ごした。

隣で気の毒そうな視線を封魔のヤツが向けてきているけど今更だ。


 部屋を出て擦れ違う寮生たちから情報収集をしつつ舎監室へ向かう。

途中で厨房によっておばちゃんに『弁当』を作って貰った。

家の事情で飯が食べられなかったと伝えるとおばちゃんたちは二つ返事で了承してくれた。

なんでも小さい優のことを心配してくれてたらしい。

多少横に丸くなっても可愛いだろうと賑やかに笑いながら話してたけど、優はショックうけそうだから黙っておくことにする。


 舎監室へ向かうまでの間、いろんなヤツに声をかけたけど優についての情報はなかった。

最後に寮で部屋に戻っていくのを見たのが最後の目撃情報だ。



(マジで何処に行ったんだよ、優)



思わずこぼれそうになった声はため息に換えて、あまり訪れることのない部屋の前で足を止めた。

舎監室、というプレートが付けられた自分たちの部屋のドアよりもしっかりした造りのノックすると普段保健室で聞くことのできる声が応える。




「ん?珍しいな、二人とも。怪我したってわけじゃなさそうだし…どうした?」



 保健室にいるときと変わらない白衣姿の葵ちゃんが読んでいたらしい本を机に伏せる。

近づいてきた葵ちゃんは普段と変わらない様子だったから知らないのかもしれない。

部屋へオレ達を招き入れて、なにか飲むか?と普段通りに問いかける葵ちゃんに無性に苛立ちが募る。

葵ちゃんは何も悪くない。

わかってるけど、どうしようもなく余裕がなくて普段通りに振る舞えない。



「葵ちゃん!葵ちゃんは優がどこに行ったか知らないか?!アイツ、晩飯にも来てなかったんだ。寮の部屋に戻ったのは見たヤツはいるけど部屋から出てったのを見たヤツはいないし…風邪とか具合が悪いっていうなら見舞いくらいしたい。なんか知ってたら教えて欲しいんだ」



「葵ちゃんが知らねぇってんなら、このあと禪のヤツに会って居場所を知らないか聞こうと思ってる。それで部屋にいりゃーいいんだけどよ…いなかったら問題になるだろ?こっそり探す許可をくんねェか?勿論、舎監任されてるってのは承知の上だし、反対するのも葵ちゃんの立場から言えば当然だ。規則があるってことはそれなりのことが昔あったってことだろうからな」



焦りが先立って上手く言葉にできないオレとは逆に封魔は冷静だった。

オレ達がしようとしている行動を説明して、無理だと分かっていても許可が欲しいと頼んでいる。

 流石に葵ちゃんだって学校の先生してる訳だしさ、見逃すわけにはいかないってことくらい頭の良くないオレにだってわかる。

何かあった時に、責任とらされるのは葵ちゃんだろうし。


 普段の話しかけやすい表情から真剣味を帯びた顔に変わった葵ちゃんは、オレ達の顔を見比べる。

嘘はついてないとわかったのか小さくため息をついた。

億劫そうに髪をガシガシと掻いて、天井を仰いだあと真っ直ぐにオレらの目を見て落ち着かせるように話し始める。



「お前らの意見はわかった。仲のいい友達が心配なのはわかるが…なにもそんなに必死になることはないんじゃないか?まだ真行寺院にも話を聞いてないんだろう。心当たりがあるとしたって、ルームメイトが何も言ってこないんだ。大丈夫だと思うのが普通だろ」



何がそんなに不安なんだ、とパッと見た感じは呆れたような目を向けられた。

でも、口元が少しだけ上がっていて何処か嬉しそうな顔に見えたのはオレだけじゃなかったらしい。

茶化すわけでもなくキチンとオレ達の言葉を信じて一緒に考えてくれる先生っていうのは貴重だ。




「…確かに、葵ちゃんの言うとおりそう考えんのが“普通”だろォな。けどよ、最近イロイロ可笑しいだろ、いつも以上に。今まで以上に」


「オレ、優がオレみたいな目にあってるんじゃないかって気になって仕方ないんだ。昨日から少し様子がおかしかったし…なんにもなければないでいい。オレらがトチって罰則受けるハメになっても葵ちゃんに迷惑かかんねぇように何とかするから…っ!だから、お願いしますっ、葵先生!」



なんの躊躇もなく最期の言葉がスラリと出てきた。


 この時既に腹は決まっていたらしい。

生徒会長が苦手だとかそんなこと以上に、胸騒ぎがするんだ。

落ち着かなくて、気になって、心配でどうしようもない。

勢いよく頭を下げたオレに続いて――――…封魔までもが頭を下げていた。


 これにはビックリしたけど、封魔と目が合う。

ニヤリと口の端を上げて笑う顔を見る限りでは封魔もオレと同じ気持ちなんだとこの時改めて感じる。

葵ちゃんが許可をくれるまで何時間でも頭を下げ続けてやろうと誓って拳を握り締めた。




「――――…あーもー!!分かった!お前らの気持ちは十分わかった!ったく、しゃーねぇな。いいか?真行寺院に聞いて部屋にいたら直ぐに自分たちの部屋に戻って自習しろよ。いいな?」



「え、いいのか?!マジでありがとな、葵ちゃん!恩にきるぜっ!」



「ったく。お前らの恩を積み重ねたらマンションでも立ちそうだよ、ホントに。ただし!これだけは守ってもらうが、お前ら点呼までには帰れよ。そのあと外に出るなら俺に言え。いいな?それから今回のは特別措置っ。言いふらすんじゃないぞ。あと、見つかっても俺の名前は出してくれるなよ?」



ニヤリと笑う葵ちゃんはちょっとした悪い大人に見えた。

ただ、事情を話して彼が納得してくれれば少しの事には目を瞑ってくれることもある有難い存在だ。

勿論、間違ってることは間違ってるってはっきり言うけどさ。

この学校にはそういう教師が結構多くて、将来こんな大人になりたいって思う奴は多い。

快諾してくれた葵ちゃんのいる舎監室を出た俺たちは真っ直ぐに生徒会長の部屋に向かう。



「にしても、結構あっさり許可でたな」


「俺もびっくりした。でもさ、葵ちゃんも心配してたってことだろ?ほら、何かと気にかけてたみたいだし」




だよなぁ、と何処か不思議そうな顔をしている封魔に首をかしげつつ歩き慣れた寮への道を進む。

少しだけ足取りが軽かった。



優が、どこにいて何をしているのかなんて全く知らずに…

 変なところで区切りました。

も、文字数の関係です!大体、4000~5000字くらいを目安にしてます。

このくらいが一番読みやすい気がするんです、ハイ。


では、後編も気が向きましたら目を通してくださると幸いです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ