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正し屋本舗へおいでなさい  作者: ちゅるぎ
潜入?!男子高校
63/83

きっかけは告白?

 とりあえず、どんどん自分で首を絞めている気がします。なむ。

.








 白いシーツの上でゴソゴソと緩慢に動く様子を認めて、ほっと息を吐く。





葵先生や封魔には大丈夫だって言われてたけど実際に目にするのと聞くだけじゃ、全然違う。

水の中で力なくゆらゆら揺れていた姿が徐々に薄れて書き換えられていくのが何より嬉しくて。

 うっかり緩みはじめていた感情は、涙に変換されそうになった。

でもそれを意地で堪えて小さく息を吐くことで気持ちを落ち着かせ、視線を上げる。



まず目に飛び込んできた色は『白』と『肌色』の2色。



 どうやら着替えている途中だったらしい。

まさしく、ベッドの上で上半身を起こして白いTシャツに腕を通している途中だった。

んで私の立ち位置からは背中と脇腹の辺りが見えた。


私は恥ずかしくもなんともないんだけど、人の気配に気づいたのか靖十郎の表情が硬く険しくなっていく。

その変化にどうしたものかと困っていると慎重に振り向いた靖十郎と目が合った。



(えーと、とりあえず笑っとこう)



 “元気そうで良かった”という意味も込めて笑顔を浮かべたのを彼はバッチリ認識したらしい。

訝しげだった顔は私と目があった瞬間――――――…瞬く間に真っ赤に変色した。


 うっかり「どこに赤くなる要素があるのさ?!」とツッコミをいれそうになったけど、ぐっと押さえ込む。

もしかしたら赤くなるような要素があるんだろうか?と何気なく周囲を探ってみたものの…至って普通の保健室だ。

はて?と改めて首をかしげた私の脳みそに動揺を詰め混んだ靖十郎の悲鳴が貫通した。






「う、うわぁああぁっ?!い、今すぐ着替える!!ちょっ…う、ううう後ろっ!」



「後ろ?ああ、後ろむいてればいいの?……べ、別にそこまで動揺しなくても」



「誰だって着替え見られたら恥ずかしいだろ!」





 ぶっちゃけ私は恥ずかしくないんですけど…と言いかけて口をつぐんだ。

性別がバレるのはまずいもんね。ふつーに仕事してる時だったら恥ずかしくないんだけどなぁ…?

好きな人とかに見られるのは恥ずかしいけど、別に友達とか家族とかに見られたところでなんの影響もないし。




「……その割に薄着だよね、普段」



「そ、それはいいんだよ!ココロの準備ってやつが必要なんだっ!」



「心の準備かぁ…それなら多少はわかるけど(肌すべすべで無駄なお肉だってついてない)いい身体してるんだからもっと堂々としてればいいのに」



「いっ?!い、いい身体ァ!?おっ、お、おぉおおま、お、お俺は普通だからな!お前がソッチ方面だったのか?!」





 物凄い動揺し、何故か靖十郎はベッドの隅っこで私を警戒している。

Tシャツにトランクスという格好のまま胸の前でシーツを抱いてる様は中々にシュールだ。

もーしもーしと声をかけてみたんだけど、うん。全く聞いてない。





「百歩譲ってそーゆー関係になったとしても出来ればオレがリードし…ってナニ考えてるんだオレぇぇえぇぇええ!!ちっげーよ!そーじゃなくって、もっとこう、雰囲気のあるところで――――ってそれもちげーって!!しっかりしろッ、オレ!!」



頭を抱えて苦悩する靖十郎の姿を呆れながら落ち着くのを待つことにした。

いやー、だって私に止められるとは思えないし。

え?面倒だなんてちょっとしか思ってないよ!ほ~んのちょこっとだけしか思ってないもんね。


「あー、もー。どーすりゃいいんだよ、オレ」


 頭を抱えて大人しくなったのを見計らって近寄ってみる。

このままずーと放って置かれるのも嫌だしね。

なにより事態が進まないんだよ。

お仕事で潜入している身としてはプールの中で起こったことも把握しておきたいし。





「お取り込み中申し訳ないんだけど、靖十郎のいう“そっち”ってどっち?俺は隠さなきゃいけない事情があるわけじゃないんだからって意味だったんだけど………って、なんで今度はそんなに落ち込んでんの?!」



「いや、なんでも…その、疑って悪かった。そーだよな、幾ら男っぽくなくてもそーだよな」






 Tシャツを着て、ハーフパンツを履いた靖十郎が元気にベッドの上で突っ伏した。

なんかよくわからないけど彼が猛烈に反省しているのと凹んでることだけは分かったよ!

そんなに不意打ちで半裸を見られたことがショックだったらしい。

俺は気にしてないよ、と伝えると靖十郎は今のをなかったことにする方向で処理するようだ。

…私も結婚適齢期の女として君の行動を見習おうと思う。

とてもじゃないけど私には想像どころか実行なんて出来そうにもない貴重なお手本になりました。




(男子高校生に負ける女子力ってどーなの、私)




 ははは、と乾いた笑いが漏れて――――ぱたりと髪から雫が落ちた。

この時に改めて自分がプールに飛び込んだことを思い出して急に着替えたい!シャワー浴びたい!という欲求が育ち始める。

消毒液の匂いが殆どわからないくらいに塩素臭いんだよね。

 これは一刻も早く詳細を聞いてシャワーを浴びないと!

普段なら絶対に出来ないけど、今なら禪を気にしないでのんびりシャワー浴びられるし。




「靖十郎、とりあえず無事でよかった」



「―――――…おう」




照れくさそうに、でも確かに笑顔を浮かべて私を見る彼に自然と私の表情も緩む。

こんな笑顔を浮かべられるなら大丈夫だろう。死にかけてる時に笑える人って少ないし。




「その、封魔から聞いた。オレを助けてくれたのが優だって」




「助けたなんて大層なもんじゃないから気にしないでよ。ほんと“偶々(たまたま)”対処法を知ってただけだしさ!んで、呼吸止まってた感想は?」



「んげ?!マジで死にかけてたのかよ!うっわ、こえぇ」




 体を震わせて腕を摩る姿は何処か危機感が薄く見えて、日常に戻ってきたという実感を得る。

本人は本当に『冗談じゃない!』って心境なんだろう。

そりゃーそうだよね…自分が今まで半分死にかけてたって聞いたんだもん。

悪寒の一つや二つ感じてもらわないと困る。


 靖十郎は暫く恐怖に身悶えていたものの会話を重ねるごとに普段と変わらない調子に戻ってきた。

本当はすぐにでも色々聞きたかったけど、流石に…ねぇ?

まぁ落ち着いたみたいだし今なら聞いても大丈夫だろう。



「(さーて、靖十郎が何処まで覚えてるのか気になるけど……聞いてみないとわかんないし)」




 肝心の靖十郎は頭を抱えて唸っている。

何かを思い出したみたいなんだけど…正直、聞いていいものかどうか物凄く迷う光景だ。


 それに聞く内容が内容だし、正直あんまり気は乗らない。


本当は、覚えないのが一番いい。

『正し屋』としては記憶がバッチリあって何らかの情報を得られた方がいいに決まってるんだけど…彼が“なに”を見たのかはわからないけど、見た記憶がない方が、きっといい。


 修行の時に見た動物霊とか神様は可愛かったし優しかったりしたから大歓迎なんだけど…悪いことしてるのにもちゃんとした理由があるし。


問題なのは“ヒトだったもの”の方だ。


苦手だていうのもあるんだろうけど…性質たちが悪いのは明らかで。

正当な主張だと思えるものもあったのは確かだけど、逆恨みや一方的で身勝手な都合も多かった。

 「被害者」として依頼してきた人が過去に「加害者」であったことが分かったこともある。

勿論、そーゆーのは自分に都合の悪いことは話さない人が殆ど。

これは「契約違反」に当たるし、契約する時にも念を押して説明してるからこちらに非は一切ない。


 そーいや、須川さんが悪質だとして依頼解決後に警察へ連絡したこともあったなぁ。

…契約違反金としてかなりの額のお金を受け取ってからだけどね。

お金がないとかうそぶく依頼者もいたけど、多くは聞かないで欲しい。

最終的に必ず提示した金額が収められています…――――とだけ言っておく。





「靖、十郎…きいてもいいかな?」





 掛けた声は、震えていた。


なんとか笑顔で言葉をかけて――――どう切り出すか少し考える。

怖かったであろう事柄をわざわざ思い出させるのはかなり心苦しい。

それでも…聞かなきゃいけないんだけどね。





「泳ぐの得意そうだった靖十郎が溺れたの、信じられないんだ」




 口に出して、彼の顔を見た瞬間に後悔した。

何かあった?と聞く前に何かあったことを知る。

それも、きっと彼にとって良くないことがあったと公言しているようなものだ。

 青ざめた顔と体にかけられたシーツを震える手で握り締めていた。

やっぱりいいや、と口にしたことを撤回する前に靖十郎がゆっくりと顔を上げる。





「優、あのさ……話したいことがあるんだけど、いいか?」



「いぃいッ!?え、お、おうとも!」





 予想もしてなかった言葉に妙な返事になった。

慌てて繕ってみたけど、靖十郎は全く気にしていないらしい。

嬉しいようなちょっとさみしいような…複雑な気分です。

 



「えーと、その…話なんだけど…どーゆー話し?」




 真剣な顔で私を見る靖十郎に促されるように、傍にあった丸椅子に腰掛けた。

相変わらずぽたぽたとズボンの裾から水滴が落ちるのがわかった。

腰を落ち着けたからか、じんわりと疲れが滲み出てきてそれを紛らわせるように頭を振る。

加減がわからなくてちょっと気合入れすぎたっていうのもあるんだとおもうけど…話聞いてまとめたらちょっと昼寝しよう。

そーでもしないと夜の探索で使い物にならないの確定だもん。


 深刻な顔をしたクラスメイトと全身プールの水まみれな私。

その間をふわりと夏の匂いを含んだ風が通り抜け、消え際に私達の頬を撫でていく。

何気なくそちらへ顔を向けると窓が少しだけ空いていて、白いレースのカーテンが揺れていた。

…なんとなく見覚えのあるのは気のせいだろうか。後で葵先生に自作なのかきいてみよう。





「変な事、言ってるっていう自覚はあるしオカシイと思うかもしれないけど聞いて欲しい」






寛ぎモードに片足を突っ込んでいた私を現実の世界に戻したのは、思いつめたような彼の声。






 追い詰められたような声には――――…不安と怯え、そして期待に似た感情が込められているような気がした。

鮮やかな夕日に似た瞳にはどこかで見たような気がする。

どこだっけー?と内心首をかしげる私に、靖十郎が最大級の爆弾を透過した。







「 オレ、実は幽霊だとかお化けが見えるんだ 」














ちょっとまて。

今、なんか聞いちゃいけないことを聞いた気がする。














.

 ここまで読んでくださってありがとうございました!

続き…できるだけ早くうpしたいけど…うーぬ。


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