表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正し屋本舗へおいでなさい  作者: ちゅるぎ
九死に一生を得る、迷子
17/83

洒落にならない遭遇2

犬が好きです。

しかも、小型犬じゃなくって中型~大型が好きです。

柴犬は文句なしに可愛い。

大型犬はゴールデンレトリーバーがいい。

.








 きっと生き物は、一人では生きていけないように出来ている。








 私は今、炎の中にいた。


正確には炎のようなものに囲まれている、だけど。

夢の中で焼き殺されるなんて正直、御免被ごめんこうむりたいけど、その可能性は大いにありえるので正直笑えない。


 ぐるりと私を取り囲んでいる炎(この場合は人魂?)の中には赤黒くなっているものもあった。

赤黒いものの一つに注意していると、唯一赤黒さを残していた中心部分の色が濃くなって――――…闇に溶けてしまいそうになった、そのタイミングで突然、掻き消えた。


真っ暗な景色に同化したのかな?とか見間違いかもしれないと思ったりもしたけど、どちらでもないことはスグに分かった。


 恨み辛み、妬みや呪いの言葉に紛れて聞こえる、悲痛な、もしくは声にならない絶叫。


驚いて周りと見渡すと、なんとなく目に止まった大きな橙色と赤の中間といった色合いの人魂が、散って消えた。ぐにゃりと上下に潰されて、飛び散った小さな火が消えるより早くソレはこの空間から永遠に消えてしまう。






(なんか、今のって……なにかに、食べられちゃったみたい、な)






 何となく、近所の犬が大きなお肉を嬉しそうにガブリと食べていた時のことを思い出した。


確か、山で迷子になっていた飼い主を見事見つけて、救助隊を呼んだご褒美、だった気がする。

あんまり高くはないお肉だとはいっていたけど、豚だか牛だかのお肉の塊だった。

それにかぶりついて、嬉しそうに尻尾を振ってたっけー……可愛かったなぁ。


ってそれどころじゃないよね、この状況!





 ぽっかりと空いたスペースには、いつの間にか別の人魂が浮かんでいた。


それは弱々しい橙色だったのに、周りの影響を受けてかじわじわと外側から赤く変色していく。

水彩絵の具が溶け込んでくような不思議な光景。

きっと、こんな状況と火が人魂っぽくなければ綺麗だと思えるんじゃないかなー……普通にキャンプファイヤーとか花火とかそういう系統だと本当に綺麗だと思う。大変そうだけど。






ポカーンとしている間にも私と人魂の距離はじわじわと縮まって、1m近くはあったはずの私とひと玉との距離は半分は確実に縮まっていた。

 嬉しくない。ものすごく嬉しくない!!





「って、ちょっと待った!さっきから食べられてる頻度高くなってない!?っつか、色が全体的に黒ずんできてるよーな……獣っぽい声も、うっすらどころか明らかに混じってるし」





 勘弁してください。本当に。

夢の中なのに、夢の中だって分かっているのに物凄くリアルな危機感を覚えた私は再び一心不乱に目を覚ませ目を覚ませと祈った。祈る通り越して、もうなんか念じまくってた。下手したら一種の呪いだ。






「う、うわぁぁぁああん!!もーなんで目ェ覚まさないの!私の馬鹿!寝に汚いにも限度っちゅーもんがあるでしょーが!!本体的な私から起きろって指令が出てるんだからちゃんと起きてよおぉおぉお!!二度と胃の中に甘いものいれてやんないんだか………ひぃいぃぃいいいいい!!ちょっと、ちょっとまって火の玉!!さっきより近づくペース早くなってません?!当社比で確実に1.5倍は早くなってますから!マジ勘弁!ほんとにすいませんごめんなさい!私日頃の行いが特別悪いわけじゃないんで見逃してください、なんなら毎日なんかしますから!一日3回は食べてたオヤツも1日1回に減らすからぁぁぁあああぁあ!!」





ゆーるーしーてぇぇぇぇぇえ!!と半泣きになりながら土下座をした。

 誠意を表すのに土下座は最上級のスタイルだって死んだおじいちゃんが言ってたもん!酔っ払うと必ず「ばーさんに“ぷろぽぉず”した時もこれが一番聞いたんだぞ!」っていってた!ばーちゃんは「道端で泣きながら土下座されて可哀想になっちゃったのよね~、犬を拾った感じかしら?」って笑ってたけど!


 傍から見たら、凄く間抜けすぎる光景だったとは思う。

だって火の玉サークルにペコペコ半泣きで頭を下げてるんだもんね……土下座で。



急加速した火の玉にビビっている私をあざ笑うかのように火の玉は、笑い声や怒鳴り声、恨み辛みの呪いっぽい声を発しながら近づいてくる。

 獣の唸り声も、消えては増える火の玉も徐々に大きくなっていってそれが手を伸ばせば届くような距離に来た時……




(あ、私の人生終わった)




 冗談抜きでそう思った。

近づいてくる悲鳴すら、なんだかもう嘲笑にしか聞こえない。

もしくは生贄を前にして喜びまくってる悪魔的な何かの声だ。


土下座スタイルから開き直って、ぼんやりとその場で正座をした。

あぐらでも書いてやろうかと思ったけど、正座の方がコンパクトなので却下だ。

これでもまだ現世に未練があるので最後まで些細な抵抗をしてやろうと思ったのだ。ふふん!





人生短かったなーとか考えていると、どこからともなく、聞き覚えのある音が耳に飛び込んできた。


控えめではあったけど、それは確かに聞き覚えのある音。

思わず、その場で立ち上がりかけて、人魂が近くにあることを思い出した。

危ない、危ない。



 結局、膝立ちの姿勢で落ち着いた私はパッと視線を周囲に巡らせた。

必死に周りを見てみるけど、火の玉しかみえなくて“うわぁ”と人事みたいな声が漏れる。

でも、まだ小さな声は聞こえているから、炎の壁のように立ちふさがるソレらの僅かな隙間から必死に探した。





(だぁぁあっ、もーっ!火の玉、ほんとに邪魔くさい!!)





焦りながら一つの音を探す私を嘲笑うように、火の玉のものと思われる声たちが大きくなる。

それに比例して獣の唸り声や消えていく火の玉も増えたり、減ったりを繰り返す。





「ッ、ええい!!チカチカチカチカして目に優しくないッ!!ちゅーん!チュン、ちゅん~~!!どこー?!」





 聞こえたのはチッチッチというチュンの鳴き声だった。


小さくて聞き取りにくかったけど、でも間違いなくチュンの鳴き声だ。

雀の鳴き声の区別するなんて器用な真似ができるとは思わないけど、頭にパッと浮かんだのはチュンの姿で、きっと、チュンの声なんだと思う。

 そもそも、雀に知り合いなんてチュンくらいしかいないし。






声を張り上げてチュンを呼び続けていると、手の甲に物凄い痛みが走った。



……表現するなら、チクッビリッ!って感じ。

一点集中型の痛みだったよ!

思わず飛び上がった位だし、絶対血ィでてる。

だってなんかそーゆー痛みだった。





にしたって、ちょっとした虐めですか?コレ。

私、夢の中とはいえ頑張ってたとおもうんですけども……足りませんでした?

頑張って山歩きして、怖い夢見たんだからご褒美位くれてもいいと思うんだよね。

囲むんなら火の玉じゃなくってケーキとか大福とかにしてよ、私の脳みそ!!

















 痛みを猛烈に伝えてくる手の甲は、じんわりと血が滲んでいるのが見えた。


暗闇だけど、肌が露出しているところは白くぼんやりと浮き上がってるのでかろうじて、その白いところにプクッとしたものがある。

間違いなく、血だ。バッチリ出血してる。

うぅ……なんか血を見たら益々(ますます)痛くなってきちゃったんですけど。




「ちゅん!」



「……あのね、エッヘンって胸張られても凄く、痛いです」



「ちちちちちっ、ちゅんちゅんちゅん!!」



「うん、ごめん。何言ってるのかわかんないんだ……でも、今度どっかで鳥語講座とか見かけたらやってみるよ」




 ちょっと、というか結構痛いけど可愛いから許すことにした。

撫で撫でと頭を撫でながら、ふと顔を上げる。

いや、別にここでそういえばさっきの人魂はどうなったんだろーとか思ったわけじゃないよ!

別に忘れてたわけでもないよ!







「あ、あれ…もしかして私、起きた…?」







 自分が起きた自覚がなかったからビックリした。

多分、起きた自覚がなかったのは夢と同じくらい真っ暗だったからだと思う。





や、流石に周り明るいのにまだ寝てるんだわ~うふふ、みたいな自体にはならないよ?ホントだよ?!




 




ちょっと尻切れトンボ気味。

むむむ・・・、でも一応“悪夢”はここで終わりです。悪夢は、ですけど。


ここまで読んでくださってありがとうございました!次こそ頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ