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大地の宝石  作者: 森宮 スミレ
 〜 短章 〜
82/171

  絵本


 昔々あるところで、小さな国が誕生しました。けれど生まれたばかりのその国の大地は枯れ、豊かな恵はまだ訪れません。人々は、苦しい日々を懸命に過ごしていました。


 その様子に、その国の王様は酷く悲しまれ、女神フィシタルに尋ねました。

「女神フィシタルよ。どうすれば私の国にも繁栄が訪れるのでしょうか?」

 その必死な問いかけに、女神フィシタルは言いました。

「もし貴方が私の神殿を見つけることが出来たなら、貴方に永遠の栄光を約束します」

「どうすれば貴方の神殿は見つかるのですか?」

「この国で、最も輝く宝石を見つけなさい。その宝石の光が貴方を導くでしょう」

 女神フィシタルに言われ、王様は早速宝石を探す旅に出ました。


 道を歩く王様は、会う人皆に聞きます。

「この国で最も輝く宝石を知らないか?」

 けれど、誰に聞いても首を振るばかり。なかなか宝石は見つかりません。それでも王様は諦めないと誓いました。


 生まれたばかりのその国の、多くの道は森や岩に覆われ、草や木が生い茂り、中々先へ進めません。助けを求めようにも、町の人々は貧しく、とてもそんな余裕はありませんでした。


 それでも王様は懸命に宝石を探しました。



 ある時、王様は足を止めました。氾濫した川に橋が流されてしまったのです。その周りでは、他にも多くの人が、川を渡れずに困っています。


 王様は何とかしようと考えますが、どうしたらよいか解りません。そうして橋の前で立ち尽くしていると、一人の青い服の若者が声を掛けてきました。

「王様、どうしたのですか?」

 王様はその青い服の若者に、川を渡れずに困っていると話します。

「それでは、川上の方に大きな岩があります。それを押してみて下さい」


 王様は若者に言われた通り、川上へ向かいました。青い服の若者も一緒です。

 近くへ行くと、そこには本当に岩がありました。それを、王様と若者は一緒になって川の方へ向かって押します。すると、大きな岩は転がり始め、更に大きな岩にぶつかりました。すると、ぶつかった岩も転がり始め、更に更に大きな岩にもぶつかりました。そうしてどんどんと大きな岩が転がって行くと、岩は全て川の中へと落ちました。岩によって流れを塞き止められた川は、大きな湖になりました。


「どうです?王様」

 川がなくなったので、王様は先へ進めます。川の前で困っていた人々も、とても喜んでいます。微笑む若者に、王様はお礼を言いました。


「ところで、君はこの国で最も輝く宝石を持っていないか?」

「最も輝く宝石?……どうしてそのようなことを聞くのですか?」

 若者に尋ねられ、王様もそれに答えます。

「その宝石が、私に女神フィシタルの神殿を指し示してくれるのだ。そうすれば、この国も繁栄を迎えることが出来る。それで、君は宝石を持っていないか?」

 そう聞くと、若者は静かに答えました。

「いいえ、王様。私は宝石を持っていません。でも、女神の神殿の場所なら知っています」

「本当か!?」

 王様が驚いて聞き返すと、若者はゆっくりと頷きます。そんな若者に、王様は言いました。

「どうか、私をそこへ連れて行ってくれ」

「解りました。この国の為にも、王様のお力となれるのなら」


 そうして、二人で女神の神殿を目指すことになりました。



 その道中、王様と若者は色々な場所へ行きました。そして、その度に困難が立ちはだかります。けれど、そのどれもを二人で力を合わせて乗り越えました。

 時には流行病から町を救ったり、時には人々の争いを鎮めたり。日照りに困る田畑に水を引いたり、食べ物がなくて苦しむ村に種を分けたり。



 そうしているうちに、二人は漸く女神の神殿に辿り着きました。その神殿は、この世の物とは思えぬ程美しく光っていました。その美しさに王様が見惚れていると、青い服の若者が声を掛けます。

「漸く辿り着きましたね」

 そう言う若者を見て、王様は驚きました。神殿の光をその身に受けた若者が、まるで宝石の様に輝いているのです。


 ニッコリと微笑む若者の後ろには、今まで王様が歩いて来た道が見えます。そこからは、今まで若者と王様が二人で助けた沢山の人々が見渡せます。もうそこは以前の荒れた大地ではありません。豊かな繁栄を手にした、幸せな国が広がっていました。


 喜ぶ王様の前に再び女神フィシタルが現れます。王様と若者のお陰で豊かになった国に、女神は約束通り、永遠の栄光を授けました。



 そうして、王様に導かれ国は繁栄を手にしました。王様の傍らには、女神フィシタルと、青い服の若者がいつまでも寄り添っていたそうです。






  絵本『クルダス創世記』より

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