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大地の宝石  作者: 森宮 スミレ
〜第二章 磨かれる原石〜
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来寇 6

「カール様!!」

 教室の一つに留まり読書に勤しんでいた青年は、その声に反応を見せない。まるで聞こえていないかの様だ。

 学園内を必死に探しまわり目的の人物を見付けると、クラリスは縋り付く様に駆け寄った。

「どういうことですか? 私は、候補生には相応しくないと」

「…………」

 校長に言われた言葉を、クラリスは混乱しながらも繰り返す。それに驚くでもなく、表情を変えるでもなく、ただ静かに本に視線を落とすカールにクラリスも瞬時に理解した。この男は、最初から知っていたと。背を駆け抜けた絶望感は、けれど彼ならきっと何とかしてくれるだろう、という甘い考えを引き起こす。

「教えて下さい。何故ですか?」

「……何故かと」

 漸く発せられた声は静かで、そして冷たかった。それに気付ける程の余裕はクラリスには残されていないが。

「学園側がそう判断したのなら、不相応だっただけのこと」

「待って下さい。貴方は、私と手を組むと仰ったではありませんか! 私が地位を手にする事に助力して下さると」

 話しが違う、と食って掛かるクラリスに、カールはそれでも視線を向けない。

「手を組むとは言った。だが、その事に関して言葉を発した覚えは無い」

 言われてクラリスもはっとした。この男の言っている事が正しいことを思い出したからだ。そこでグッと拳を握る。

 ダメだ。ここは押さえねば。冷静になり、この男を何としても繋ぎ止めておかねば。それが、今の自分の唯一の生命線だから。

「分かりました。では、私は自分の力で候補生となってみせます」

「……ほぅ。何をしようと言うのだ?」

「他の生徒達を焚き付ければ、教師達はどうとでもなる。その為に彼等の心を掴んだのだから。貴方の力は借りません。でも、私は貴方を信用して良いのですね?」

「言った筈だ。それは其方次第だと」

 もう用は終わったとカールは席を立ち、後ろ姿をクラリスに強く見据えられながら教室を後にした。




 悔しい。今までにこれ程の敗北感があっただろうか。自尊心を徹底的に叩き潰されたかのようだ。それもこれも、あの地味な少女の所為。こんな筈ではなかった。こうなる筈ではなかったのに。

 今にも叫び出したくなる程の苛立ちを何とか制し、クラリスは自室の扉を開ける。その視線に映ったのは、茎に白い紙が結びつけられた一輪の薔薇。机に置かれたそれに気付くと同時に飛びつき中を確認したクラリスは、途端眉を潜めた。

 これは、自分へ当てられた指示だ。この指示には絶対に従えと言われここまで来た。それを違えたことはない。けれど、今度ばかりは腑に落ちない部分があった。その内容の意図が読み取れない。

 ここへ来る際も自分は何も聞かされず、ただ出された指示に従えと。そうすれば、自分の望みも叶うと言われた。

 姿を決して見せない者の次なる命令に、初めてクラリスは疑問を抱く。けれど、自分はこの指示には逆らえない。言われた通り実行に移すのみだ。





 夜、寮へ戻ってきたセリアは廊下で思わず立ち止まった。咄嗟に隠れた物陰からそっと窺えば、自室の前で一人の女生徒が佇んでいる。遠くてはっきりとは見れないが、それでも雰囲気からしてよろしくない。

 今の自分の現状から、こういった事は仕方ないのかもしれないが、これは出て行っても良いのだろうか。というより、行くしかないだろう。

 出来るだけ他生徒との衝突は避けたかったのだが。と、意を決して足を踏み出そうとした瞬間、生徒が動いた。途端、セリアは足を無理やり地面に縫い付け、もう一度陰に隠れる。てっきり待ち伏せされた上に何か言われるのかと覚悟したセリアだが、何もせずに立ち去ってくれたことにホッと胸を撫で下ろした。

 けれど、そうなると彼女は一体何をしていたのだろう、と考える。単純に待ち伏せに飽きた、という訳でもなさそうだったが。


 疑問が次には嫌な予感を呼び、セリアは思わず自室の横の扉を叩いていた。数秒の後、中から不機嫌そうに出て来たのは、青髪を弄るアンナだ。眉を寄せた彼女は、地味な隣人の来訪を驚くでもなく、用件を聞くでもなく、真っ先に告げた。

「数分前に来て、貴方の部屋の扉を確認してたわよ」

「えっ!? あ、ありがとう」

「それじゃあ。間違っても、私にまで被害が出ないように何とかして頂戴」

「た、多分大丈夫だと思うけど……努力します」

 言葉を発する前に、自分の質問が分かっていたかのように答えたアンナに面食らってしまう。けれど、まあアンナならそれも不思議ではないか。と微妙な理由で納得すると、セリアは漸く自室へ戻った。


 アンナの言葉通りなら、その理由は恐らく……

 今までは特に害が無いので、気にしてなかったが、段々と嫌がらせもエスカレートしてきている。はあ、と疲れ切った溜め息を吐くと、セリアはボスッと枕に突っ伏し、数秒で瞼を閉じることに成功した。








 数日が経ったにも関わらず、何の成果も上げられないことにクラリスは焦りを感じていた。あの紙の指示通りに動いたが、記されていた様な物は発見出来ていない。自分が直接動いては目立つからと人を使っている為、この目で確認した訳ではないが。

 けれど、何時までもこのままでは居られない。幾ら冴えないと言っても、彼女は仮にもマリオス候補生だ。もしかしたら、自分のしている事に気付いているかも。


「クラリス様の演説聞きましたわ。とても素晴らしくて、私も大いに賛成です」

 目の前で嬉々として語る数名の生徒達に、我に返ったクラリスは咄嗟に笑顔を貼付ける。けれど、内心ではこちらにも焦りを感じていた。

 生徒達の支持は、圧倒的に増えている。自分こそが候補生に相応しいと、この学園の誰もが認めた。教師達でさえそれは同じだ。けれど、未だに事態が好転する兆しは見えない。それがクラリスの不安を更に煽っていた。

 彼女がこの学園に来てから、二週間程が過ぎようとしている。その短い間に、これだけ生徒達の心を掴むのは並大抵のことではない。本人が自負する通り、彼女にはそれだけの力があった。だからこそ、初めての誤算に焦りを隠せないのだ。


 そんな彼女の元に、また一輪の薔薇が届いた。





 目の前で珍しく真剣に思い悩む様子を見せるルネに、セリアは首を傾げる。温室へ到着した少女に気付くと、ルネは嬉しそうに顔を上げた。

「セリア。待ってたよ」

「どうかしたの?」

「うん。ちょっとこっちの花壇に植える苗を考えてたんだけどね」

 何が良いと思う? と聞かれ、セリアは戸惑った。急に聞かれても、自分は花に詳しい方ではない。それよりも、ルネ本人が判断した方が絶対に良いのでは。

 そうは思うものの、セリアは一応思いついた花の名を挙げてみた。

「じゃあユリ、とかは?」

「ほらぁ、やっぱり」

 セリアの答えと同時に、ルネは責める様な視線を反対の方向に飛ばした。その先では、視線を泳がせているイアン。

「僕が同じこと聞いたら、イアンはトマトはどうかって言ったんだよ。僕の花壇を畑と間違えてるよ」

 珍しく声に不機嫌の色を混ぜたルネは、自分の花壇を畑扱いされた事に多少自尊心を傷つけられたようだ。何と言っても、この見事な花々を丹精込めて世話しているのだ。その中に野菜を混じらせるのは、彼の美学にそぐわなかったらしい。

「流石のセリアでも、ちゃんと花の名前を言ってくれたのに」

「俺はただ、それなら腹にも溜まるし、一石二鳥だと思って……」

 何だかさり気なく失礼なことを言われたような気がするが、今は口にしないでおこうとセリアは決める。確かに、この温室にトマトは似合わないかもしれない。というより、イアンは食べるつもりだったのか。

「自分も聞かれたのですが、花には詳しくなくて」

「それに、ランはあの調子だし……」

 言われて思い出すのは、今この場に居ない、非常に険悪な雰囲気のラン。今日も授業は何事もなく平和に過ぎ、カールとランの間の空気は殺伐としていた。こんな状態が三日以上続くなんて、本当に何があったのだろう。

 カールもこの温室に顔を見せなくなったし。理由を聞いてみたくとも、何故かずっと会話すら出来ていない。それが、ランが邪魔している所為だと、セリアは気付いていないが。


 それでイアンに意見を求めたところで、先程のトマト発言が出たという訳だ。もう一度ルネがイアンに視線を移せば、やはりバツが悪そうに頭を掻いていた。

「そ、そういやユリって言えば、ペトロフのペンダントにもなかったか?」

 途端に話を逸らしにかかったイアンに、セリアは苦笑しながら頷いた。そして徐に鞄に手を伸ばし中を探る。その様子に、イアンは僅かに目を見開いた。

「まさか、まだ持ち歩いてんのか」

「そ、そういう訳じゃないんだけど。まあ、色々とあって……」

 まさか、先日部屋へ侵入しようとしていた生徒を見付けた為、それから幾つかの貴重品は暫く持ち歩くことにした、とは言えない。

 軽く笑いながら首飾りを差し出したセリアに、イアンは訝しげに眉を寄せながらそれを受け取る。

「けど、本当にペトロフは何考えてたんだろうな」

「今となっては、確認する術は無くなってしまいましたから」

 未だに首飾りは、ただの首飾りのままだ。意味深に笑ってみせたペトロフは、自分達に何を言いたかったのか。


「そういえば、ユリの種類ってまだ調べてないよね?」

「種類?」

「ユリにも色々あるから」

 ルネの言葉に、セリアはペンダントに彫られている花に視線を移した。あまり詳しくないが、どうやらここに彫られているユリにも名があるようだ。とそこで気付く。もしかしたら花の種類にも何か鍵が隠されているかもしれないではないか。その点をすっかり見落としていた。

「私、ちょっと図書室から図鑑持って来る」

「お、おい……」

 思い立ったら即行動。待てというイアン達の言葉も虚しく、セリアはとっとと温室を出て行ってしまった。その姿に候補生達は苦笑する。相変わらず、落ち着きというものを知らない。

「まあ、いつものアイツだけどな」

 手の中に残った首飾りが、軽い音を鳴らすのを聞きながら、候補生達は彼女が戻るのを待つことにした。




 どういうことだ。前回の指示に続いて、今回もまた真意の推し量れない内容だった。詳細を問おうにも、自分はこれを送って来る者が誰なのか知らされていない。だからといって、意味も解らず従うには、あまり不可解すぎる。

 思い悩んでいると、偶然にも目的の人物が視界に入った。こちらのことなどまるで知らないといった風の呑気な様子。その姿に、クラリスはグッと肩に力を入れた。


「セリアさん!」

「は、はい!!」

 突然名を呼ばれたことに、セリアは大きく反応する。声の主のクラリスは、キリリとした眉を寄せ、何処かよろしくない雰囲気を醸し出していた。

 一体、彼女が自分に何用だろう。疑問に思いながら彼女を見遣れば、真剣な瞳を返された。

「貴方と少しお話しがしたいのです。お付き合い願えますか?」

「わ、私……ですか?」

「はい」

 どうしたのだろう。何時もの凛とした態度はそのままだが、何処か不安が垣間見える。余裕の無いその様は、何かあったのだろうかという疑いを与えた。

 セリアは首を傾げるが、真剣な様子の申し出を無下に断る訳にも行かず。頭の片隅で温室に居る候補生達に胸の内でひっそりと謝ると、歩き出すクラリスの後を、何の迷いも無く追った。






 温室の外から聞こえた大声に、ルネ達も何事かと顔を上げる。扉に駆け寄って外を確認すれば、二人の青年が、威厳たっぷりに向かい合っていた。

「そこを退けと言ったのだ」

「私は何の用だと聞いている」

「貴様には関係ない」

「ならば私も、ここを通す積もりはない!」

 今にも殴り合いを始めるのでは、という程緊迫した状態の二人に、候補生達が慌てて仲裁に入った。

「お前等、何やってるんだよ」

「お二人共、とにかく落ち着いて下さい」

 互いに飛びかからん勢いで言い争いの間に割って入り、取り敢えずことを収めようとした。しかし、何分相手に非が有ると信じて疑わない二人だ。そんな彼等に、幾ら何を言っても聞く筈がない。

其奴そやつが己の身の程を弁えれば良いだけだ」

「その男が何を考えているのか、はっきりさせれば全て解決する」

 その後も、ああでもない、こうでもない、と繰り返す二人を、イアンとザウルが必死に引きはがした。

「ああ、ったく!今セリアが居ねえんだから、二人共大人しくしろって」

 仲裁役がいなくなった途端にこれだ。セリアがこの学園に来る以前はどうしていたのか、もはや思い出せない。それほど、彼女は自分達に取って大きな存在になっていた。


 イアンの言葉から栗毛の少女が不在なことを読み取ったカールは、その麗しい顔に似合わず舌打ちした。

「まあまあ。セリアが戻って来るまで中で待ってよう。それまで、カールもちゃんと説明してね」

 セリアが図書室へ行った事を告げたルネが、カールに何があったかを尋ねる。初めこそ、話す積もりはないと言いたげなカールだったが、ルネに再度問われ漸く口を開いた。

「あの女の動きが目立ってきた」

「あの女って、クラリスのこと?」

 首を傾げるルネにカールは静かに頷く。

「見張っていれば黒幕の尻尾を掴めると思ったが、あの女は捨て駒に過ぎんらしい」

「はっ? おい。黒幕って何のことだよ」

「何も考えていなかったか。本当に、目出度めでたい頭だな」

 心底呆れたという口調にイアンも眉を顰めるが、カールの言っている事に見当が付かないだけに、下手な反論は出来ない。

「お前達は何も感じなかったのか。あの女が来たのはレイダーの一件の直後。明らかに作為的なものを感じる」

「それは……」

「だが敵もそれほど馬鹿ではなかった。足の付くやり方はしていない」

「ちょっと待てよ!幾らクラリス・シュライエが来た時期や行動が目立つからって、なにもそこまで……」

 確かに、カールに言われてみれば急な転入希望者の来訪が知らされたのは、レイダーの死から一週間も経っていない。そのクラリスが、セリアに取って代わろうとしている姿勢も確かに気になる。だからといって、カールのそれは勘繰り過ぎではないだろうか。

「ただそれだけなら、私も疑いはしなかった。だが、あの女の後ろには明らかに影がある」

「どういうことだよ?」

「こちらの事を、あの女は初めから知り過ぎていた。だからこそ、あの様に行動を起こしたのだろう」


 セリアの性格や今の評価があったからこそ、クラリスの主張は学園の生徒達に支持された。しかし、もしセリアが人望も厚く尊敬も集めていれば、クラリスの存在は逆に疎ましく見えただろう。女性初のマリオス候補生など、生徒達に慕われている印象の方がむしろ強い。

 更に、普通に考えて敵には回したくない程の実力者でもある筈だ。クラリスにとって幸運だが、セリアが好戦的でない性格であった事も大きい。

 だが、セリアはあまり存在の知られている人間ではない。女マリオス候補生の詳細な情報は、あまり公開されていない筈なのだ。本人が目立たぬ地味な娘なので、これは仕方ないが。

「だがあの女は何の迷いも無く行動に移した。あれのことを事前に聞かされていたのだろう」

 それだけでなく、クラリスの動きは的確だった。端から見ただけでは気付かないかもしれないが、彼女は最も効果的な動きを繰り返し、今の立場を得たのだ。候補生を敵に回さない方法も的確であった。偶然にしては出来過ぎている。


「だからって……」

「理由はどうあれ、レイダーの件が関連し、あれを狙ってあの女が送られて来たことは疑い様がない。他にも不審な動きは確認している」

「そんな」

「そこの男も、気付いていたからこそあれに軟禁紛いのことをしていたのだろう」

 バイオレットの瞳がチラリと見遣った方角に、その場の全員がランに視線を移す。確かに、未だに眉を寄せているランだが、カールの言葉に否定はしなかった。

「だからといって、お前のやり方には賛成出来ない」

「貴様は何処までも甘い考えだな。敵はあぶり出し息の根を止めなければ、同じことを繰り返すだけだ」

「しかし、お前がセリアの敵に回るようなことをしたのは事実だろう」

 自分の行動に怒りを見せるランに、カールは何処までも冷えた視線を投げる。

「横でのんびりと指を銜えていた貴様が何を言う」

「もし、クラリス嬢の主張が他の生徒に本当に根付いたらどうする積もりだったんだ」

「その時は、それがあれの実力だったというだけの話だ」

「その強引なやり方が問題だと言っている!」

 また口論を始めようとする二人を、イアンが慌てて制止した。

「ちょっと待てよ。っていうと何か?お前等は二人共最初からクラリスを疑ってたのか?」

 非常に不本意だが、と表情から窺える程眉を寄せる二人は、それでもゆっくりと頷いた。

 ならばあそこまで仲違いする必要は皆無だったのでは。確かにやり方は違えど、目的は同じだったのだ。だとしたら、多少協力しても良かった筈だ。

 二人の不仲に思わず呆れてしまいそうになるが、今はそんな場合ではないだろう。

「それは分かったよ。でも、じゃあカールは何でここに来たの? クラリスを見張ってたんでしょう」

「その女の動きが不自然になってきた。敵が動いたと見て良いだろう。危機感の欠片も無いあれが、どの様にして敵の手に落ちるのかを見届けに来ただけだ」

 あくまでも、セリアに警告に来たとは言わない積もりらしい。全くもって素直でない。


 予想外の事実に候補生達は困惑の色を示した。クラリスが己の野望を秘めてこの学園へ来たことは知っていたが、その裏にそんな影があったとは。

「でも、何でまたセリアなの?」

「私が知るか。レイダーとの間に何があったかは、あれに聞けば良かろう」

 結局、セリアはどうやっても厄介事を惹き付ける運命にあるらしい。肩を落とす候補生達を他所に、ランはまだ不安な表情を見せていた。

「内部に間諜が居るのは確かだろう。だから、彼女には不用意に出歩くなと言ってあるのに」

「あれがそんな言葉に従うと思う方が愚かだがな。身を潜めるだけで何が解決する訳でもあるまい」

「それは我々がどうにかすればよいことだ。彼女は巻き込むべきではない」

「敵の狙いがあれである時点で、首を突っ込むなと言われるべきは貴様ではないか?」

「ならばそれはお前も同じだろう」

 口論などしている場合ではないのに。ここ数日絶縁も近い状態が続いていた所為か、久方ぶりに宿敵に出会した二人は、普段以上に饒舌であった。もうこの二人は好きにさせて置く方が良いだろう。そう判断し、ルネ達はそれぞれ確認しあう。

「じゃあ、やっぱり学園内に……」

「ええ。そう考えた方が良いかもしれません」

 彼等も、全く考えていなかった訳ではないらしく、二人の急な話もすんなりと受け止めている。やはり、彼等も候補生と言ったところか。

「学園の中でそう滅多なことはしないだろうが、クラリスが動いたってのは気になるな」

「うん。セリアが戻って来たら、ちゃんと話す必要があるね」


 そう判断した候補生達の居る温室にセリアが戻るのは、ずっと後になるが。




クソッ!たかがこんな物の為に、ここまでするのか!?

これに一体何の意味があるっていうんだよ。これ以上アイツを危険な目に合わせたくないだけだってのに。



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