来寇 5
その日、誰よりも先に異変に気付いたのは、ハンスだった。まあ、その頃には他の生徒達も異状を察知し、身を切る程の緊張感に痛む胃をどうにか押さえようと奮闘していたのだが。
教室を漂う空気は、未だかつて誰も経験した事が無い程殺伐としたもので、息を吸うのすら戸惑われた。
そんな中、セリアも同じ様に肩に掛かる重圧に、冷や汗を流していた。
一体、何があったというのだろう。視線をソロリと動かせば、お互い言葉はなくとも空気だけで決闘でもしているのでは、と疑いたくなるほど険悪な雰囲気のランとカール。この二人の間の不仲はいつものことだが、この様にお互い一言も発さないままなんて初めてだ。普段なら、これでもかという程壮絶な舌戦を繰り広げるのに。
冷や汗を流す生徒達と違い、ハンスは非常に気味悪がっていた。
可笑しい。授業がこの様に何事もなく進むなんて。しかも、この二人が明らかに仲違いをしている時に、何も起こらないなんて、どう考えても可笑しい。これは絶対に何かが起こる前兆だ。今度は一体何を企んでいるんだコイツ等は。と一人、終わりの見えない問答と格闘していた。
こんな時には、さっさと教え子達から離れるに限る。と咄嗟に下した判断を、授業終了の鐘が鳴ったのを良い事にハンスは即実行に移した。しかし、残念ながら脱出に成功したのは彼だけ。少しでも空気を揺らす様な行いをすれば、途端に殺されてしまうのでは、と誰も動けずに居た。
そんな緊迫した場で、セリアが恐る恐る立ち上がる。そしてあまり刺激しないように、静かに事の元凶である一人に近寄った。
「えっと……ラン?」
僅かに反応しゆっくりとこちらを向いたランの目は、何処か殺気立っていた。ひいいっ!と、内心で声にならない悲鳴を上げたセリアだが、ここで負ける訳にはいかない。
「な、なにかあったのでござりまするか?」
「いや。何も無い」
「はぁ。さようでございますか」
勇敢にも口にした疑問は、三秒で撃沈された。ならば仕方ない。出来れば避けたいと思っていたが、魔人様にも聞いてみるか。と、背を向けたセリアの腕を、ランが咄嗟に掴んだ。
突然動きを制されたことに驚いて振り返れば、真剣な瞳で射抜かれる。どうしたのだ? と首を傾げれば、グイッとその手を引かれた。
「今は移動しよう」
「へっ?」
唐突な言葉に目を見開けば、そのまま掴まれた手をグイグイ引かれ、あっという間に教室の外へ連れ出されてしまった。ま、待ってくれっ!と内心で叫ぶも、ランは全く聞いていない。聞こえる筈もないのだが。
そのまま真っ直ぐ歩くランに、セリアも漸く制止するという手段を思い出す。
「ちょっ!ラン!?」
「………」
「待ってったら。カールと何かあったの?」
「何も無い」
「だったら、少し落ち着いてよ」
「私は冷静だ」
ならばなぜこんな状況になっているのだ!?とセリアは突っ込もうとするが、そんな暇はない。とにかく、今はせめて手だけでも離してもらわねば。
足を急がせるランにズルズルと引き摺られながら、セリアは懸命にこの状態から脱却しようと思考を巡らせていた。
まるで嵐の様に教室を出て行った二人をイアン等も困惑した様子で追う。それに続いて、他の生徒達も逃げるようにして席を立った。
最後に残ったのは未だに冷めた表情のカールと、授業の開始からにこやかに栗毛の地味な少女を眺めていたクラリスだけだ。彼女はスッと瞳を細めると、また可笑しそうに笑い声を洩らした。
「クスッ。本当に、ランスロット様達はセリアさんが可愛いみたいですね」
「…………」
「申し出を受け入れて下さった時は、少し驚きましたけど。でも、昨日の事で貴方を信用する気になりました」
カールの表情からは、相変わらず感情の一切が見られない。瞳を閉じてしまっているため、最早その意図すら読み取れず、けれどクラリスは構うことなく続けた。
「いくら能力があってもそれを活かすことが出来なければ、それは無能も同じ」
だからこそ、自分の入学と同時に彼女はきっと今の地位を失う。能力だけを持った人間なら、幾らでも居るのだ。大事なのはそれをどう使うか。そして、どれだけのものを勝ち取れるかだ。
「自分が持って生まれたものを、まるで理解していないわ。きっと他の候補生様方もそれが珍しかったのでしょう」
才能と能力を最大限に活かし、今の地位を自ら手に入れた候補生達からしてみれば、セリアはきっと珍獣の様な存在だったのだろう。そう呟き、クラリスは栗毛の地味な少女の席に視線を戻す。
能力だけなら、確かに立派なものを持っている。周りにしてみれば、惜しい人材だったのだろう。だからこそ校長も候補生達も、彼女を今の地位にまで持ち上げた。けれど、自分がこの学園へ入学すれば、その必要も無くなる。彼女に取って代わる存在など幾らでも居ると、誰もが気付く筈だ。
オロオロと彷徨う迷子の様な少女と、前を見据え目標を持った自分と。能力が同じだけなら、どちらを選ぶかなど、考える必要もない。
「学園に入学すれば、私はマリオス候補生になるわ」
その言葉に、カールはゆっくりと瞳を開いた。その瞳はこれまでにない程冷たく、そのバイオレットの色すら凍って見える。
「そうすれば、王宮に一歩近づける。より高みへ行けるわ」
「…………」
一人、自分の未来の姿を想像し高揚するクラリスに、カールはたったの一言も発しない。その視線すら、ただの一度も向けなかった。そのことに、クラリスは気付いていないが。
「…………」
「………………はぁ」
未だに険悪な空気を纏っているランにチラリと視線を送っては、セリアは溜め息を付いていた。
「何かあったの?」
「う〜ん。何かあったと聞かれてもね……」
こっそりとルネに問えば、なんとも微妙は答え。誰に聞いてもこの調子で、全く教えてくれそうにない。まあ、言い辛い事ならば仕方ないし、無理に聞き出そうとは思わないが。
けれどやはり心配だ。どんなに仲違いをしていても、その時はお互い議論で決着を付けようとする二人が、この様に口も開かず相手を見もしないなんて。
一人で眉を寄せるセリアを見兼ねたのか、イアンがフッと短く息を吐いた。
「セリア。悪いが、少し用事を頼まれてくれるか?」
「へっ?」
「図書室から持って来て貰いたい本があるんだよ」
「えっと……わ、分かった」
イアンが幾つかの本の名を挙げると、迷いながらも取り敢えずそれに頷いた。さり気なく、自分がこの場から遠ざけられたのは、セリアにも分かる。きっと彼等だけで話したいことがあるのだろうと納得すると、セリアはそそくさと温室から出た。
頼まれた図書は、どれも図書室の奥まった位置にあるものだ。恐らく、棚の位置を把握した上で、本を挙げたのだろう。それが遠くにあればあるほど、時間を掛けろという意味。セリアは、普段ののんびりさに拍車を掛けたように、のらりくらりと本棚を目指した。
適当に時間を潰して、話が終わった頃に戻れば良いか。と考え、セリアは暇を潰すようにぶらりとその辺の棚を物色してみる。そうしていると、首筋にチクリとした視線を感じた。気になって振り返ってみれば、遠くからチラリチラリとこちらを窺う生徒が数名。その他にも視線を感じるが、どれも似た様なものだ。
何処か嘲りを含んだそれに、セリアは何事もなかったようにまた視線を棚に戻す。それが気に入らなかったのか、視線は更に強まった。それにセリアは何となく嫌な予感を覚えるが、取り敢えず今は気にしないことにする。
そうしてセリアが棚から棚へ移動していると、突然何かに後ろから衝突され、思わず蹌踉けてしまった。咄嗟のことにセリアは近くの閲覧机に反射的にしがみつく。けれど、その所為で運悪く積まれていた本の山が、床にぶちまけられてしまった。
やってしまった、と考える暇も無く、周りからクスクスと忍び笑いが聞こえる。ハッと後ろを振り返れば、数名の男子生徒がこちらを睨みつけていた。
「突っ立っていられるのは邪魔だ」
「はっ!あっ、えっと……すみませんでした」
明らかに向こうがぶつかって来たのだが、確かにぼんやりしていた自分にも非はあると思い、ここは素直に謝罪しておく。なにより、下手に反抗して面倒事を起こすのは御免だ。
セリアが頭を下げると、男子生徒達はそのまま去って行った。それを見送ったセリアは、はぁっと息を吐き出す。とにかく、床に散らばった本を集めなくては。転がっている数がそれなりであることから、自分は随分と本の積まれていた机に突進してしまったようだ。彼等もそれを狙っていたのかもしれない。
最近、こういった事が続くのだ。マリオス候補生になった直後は、生徒達の嫉妬こそあったが、ここまでされることは少なかった。むしろ、候補生になる前の方が多かった程だ。それが、ここ数日で激増している。まあ、仕方ないと言えばそうなのだが。
「セリアさん!?」
ちまちまと本を拾っていると、後ろから驚いた様な声が聞こえた。視線を向ければ、ヨークが慌てたようにこちらへ駆け寄って来る。
「大丈夫ですか?」
「あっ!はい。すみません。ちょっとぼんやりしていて」
ハハハ、とセリアが軽く笑えば、ヨークは困ったように瞳を細め、セリアの横に膝を付いた。そして、床に散乱している本に手を伸ばす。驚いたセリアが慌ててそれを制止しようとするが、ヨークは手を止めようとはせず、更には心配げに微笑まれてしまった。
「すみません……」
「いえ。それより、お怪我は無かったですか?」
「あ、はい。もう全然」
手伝わせてしまったことに罪悪感を感じながら、セリアは平気だということを精一杯表す。腕をぶんぶんと振り回す姿にヨークも安心したようで、ホッと表情を緩ませた。しかし直ぐに心配そうに表情を曇らせる。
「本当に大丈夫ですか?どうも最近、貴方の周りが穏やかでないように感じるのですが……」
近頃はあまりよくない噂も聞く。生徒間のいざこざであるし、彼女は候補生なのだから心配のしすぎかもしれないが。けれど、本人がやはり何処となく頼りないので、こちらも余計に気になってしまうのだ。
言われたセリアはギクッとした。しかし必死に平静を装い、笑みを作る。
「へ、平気でありますですよ。特に何もありません」
「……そうですか……もし、何かあったら遠慮せずに言って下さい」
ただでさえ、見ていなければ危なっかしいのに。それでも、大丈夫と言われてしまえば、自分は見守ることしか出来ない。多少の手助けは出来るかもしれないが、それでは根本的な解決にはならないだろう。
ヨークは立ち上がると、最後にもう一言だけ付け足した。
「あまり無理はしないで下さいね」
「は、はい。ありがとうございました」
どうやら心配を掛けてしまったようだ。セリアは申し訳なく思うと、精一杯の笑顔を作ってから、去って行くヨークと反対の方角へ歩き出した。
軽いノックの音が響いた扉を、校長はジッと見詰める。許可を出すと同時に、黒髪の娘が笑顔で廊下から現れた。
「お呼びですか。校長先生」
「うん。よく来てくれたね、クラリス君」
校長の呼び出しを聞いたクラリスは、己の勝利を自覚した。いや、初めから自分が敗れる姿など想像する積もりもないのだろう。
凛とした表情の下に勝ち誇った笑みを隠すクラリスを前に、校長は話を切り出した。
「どうかね? この学園は気に入ったかい」
「はい。以前からの憧れが、更に強くなりました」
「そうか。もう随分馴染んでいると聞いたよ。きっと、君の人柄が好かれたんだね」
「いえ。皆様がとても良くして下さるお陰です」
校長の優しげな口調に、顔には出さないがクラリスの自信は更に増して行く。それを助長するように、校長も笑みを向けた。
「生徒達の信頼もあるようだし、今の所は入学に何の問題も無いと思っているよ」
「ありがとうございます」
その言葉に、クラリスは恭しく一礼して見せた。勝利を得た時の高揚が、胸に心地よく染み渡っていく。
内心で必死に笑いを堪えるクラリスに、それまで笑顔だっと校長は、一瞬の内に瞳に鋭さを宿した。
「入学の際に担任になるだろうヨーク君も、君の事を褒めていたからね」
「……っ?」
クラリスは、一瞬何の事かと疑問符を浮かべた。マリオス候補生の担任はクルーセル、もしくはハンスだった筈だ。そのどちらでもない教師が、自分の担任とはどういうことだろうか。
「校長先生。私は、マリオス候補生クラスへの転入を希望していましたが」
「ああ、そうだったね。しかし、今回は君の転学をどうするかの問題だよ。その件は、君が入学してから再度検討することになるだろう」
「ま、待って下さい!」
まるで当然のように述べる校長の言葉に、クラリスの心は冷水浴びせられたように急速に冷えていった。
どういうことだ!? 自分は候補生クラスには不適切だと見なされているのか。いや、そんな筈はない。この学園での自分の行動は完璧だった。何処を取っても、なんの問題も無い筈である。なのに、なぜ。
自分が候補生になることを疑いもしいなかったからこそ、クラリスの焦りは大きかった。
「私は、マリオス候補生としても役目を果たす自信があります」
「確かに、君の実力は聞いているよ」
「候補生として認めて下されば、必ずご期待に答えてみせます」
必死に食い下がるクラリスを、校長はジッと見据えた。
「……クラリス君」
胃に響くような、威圧的な声にクラリスはハッと我に返り口を閉じる。けれどやはり納得がいかない。
顔を青白くするクラリスの前で、校長はその視線を黒髪の娘から離さなかった。その威厳をたたえた瞳に一度捉われたら、相手が誰であっても彼が許すまで逃れることは不可能だろう。
「君の能力や熱意は認めよう。しかし、今回は諦めて貰うことになる」
「……では、学園に転入した際に、もう一度考えて戴けるということでしょうか?」
「勿論検討はする。が、必ずしも君の望む結果になるとは限らない。それだけは覚えていてくれるね」
「……!?」
驚愕したようにクラリスが視線を上げれば、校長の瞳は冗談を言っている風ではなく、極めて真剣だった。
「ラン。さっきのだと流石にセリアが心配するよ」
「やはり、こうなってしまいましたか」
先程から続く非難めいた視線を、ランは甘んじて受け入れている。自分でも、多少頭に血が上っていたと反省しているのだ。だからといって、あの場で安易にセリアをカールに近づけたくはなかった。
「とにかく、セリアが気付く前になんとかしないとな」
「彼女が聞けば、きっと傷つく」
「まあ、自分を追い落とそうとしてる奴がいるなんて、聞きたい話じゃねえよな」
これからもし、セリアがマリオスになるのなら、こんな事は日常茶飯事になるだろう。だから、ここで自分達が余計に手を出すことは、もしかしたら間違っているのかもしれない。本当は、彼女の力で周りをも黙らせるべきなのだろう。
けれど、そうは分かっていても、出来るだけ彼女を遠ざけたいと考えてしまう。警戒心の欠片も無いセリアには、こういった悪意や野心とは、無縁の場所に居て欲しい。
「ったく。あのお嬢さんも厄介なことしてくれるぜ」
「セリア殿は、ご存知ではないのでしょうか?」
「多分な」
聞けば、きっと多少の動揺を見せるだろう。セリアはすぐに顔に出るのだから。けれど今の所、いたって普段と同じだ。ならば、このまま知らないでいてくれれば。
「知ってるよ……」
突然後方から聞こえた声に、候補生達は全員飛び上がった。声の先ではキョトンとした顔のセリアが、小首を傾げている。それだけを見れば普段と何ら変わりない様子だが。
「セリア。知っているとは、どういう意味だ?」
「えっと、クラリスさんの事でしょ? 私より彼女の方が候補生らしいって」
「……!?」
立ち聞きする積もりはなかったが、自分が入って来ても続いていた候補生達の会話は、自然と耳に入ってしまった。彼等が自分はそのことを知らないと思っていたらしかったので、事実を明かしただけなのだが。なぜ、そんなに驚いた顔をするのだろう?
「君は、なんとも思わないのか?」
「何を?」
「知っているなら、この意味が解るだろう!」
どこか凄みを含ませたランの声に、セリアも思わず怯んでしまう。一体、なんだと言うのだ。
「君が今の立場を追われる結果になるかもしれないということだ!」
「えっと……それはそうだけど……」
「だったら何故そんなに冷静でいられる?」
ランは冷静というが、焦る理由がセリアには分からない。それに、何故ここまで彼等が怒るのかも。
「でも、それはその方が国にとっても有益だからなんじゃ……」
別に自分は、今の地位に執着はしていない。もし本当にクラリスの言葉の通りになれば、きっとそれはその方が国の為になると判断されたからだろう。それならば、自分もその決定に賛成する。
確かに、折角認めてもらえた候補生の地位に未練が無い訳ではない。けれど、もしクラリスの方が国の益に繋がるのなら迷う必要はないのだ。
元々、自分は候補生になる為に学園に入学した訳ではない。マリオスになる為に候補生になった訳でもない。国の力になりたいと望み、その結果今の地位にいるだけだ。もしかしたら、クラリスの足がかりとなる為に、自分は候補生になったのかもしれないではないか。
「どうなるかはまだ分からないけど。でも、少しでも国の為になるならその方が……」
いいのでは? と淡々と述べるセリアに、候補生達は言葉が出ない。これは、鈍感というのか、危機感がないというのか。とにかく、自分達の予想を悉く打ち砕いた少女は、相変わらずのほほんとしている。
けれどそこで思い出す。この少女は、元々こういう性格だったと。警戒心が皆無のくせに、国の為に己の身を危険に曝してまで突進する。口を開けば国の為、国の為、と他の事にはまるで無欲の少女だったと。
「それに、私だって自分から候補生の地位を降りる積もりはないよ」
国の為と判断されたなら何の躊躇もしないが、それまでは自分も易々と軍配を譲る気はない。それなりに抵抗はする。その上で、どうすべきか周りに是非とも見極めて貰おうではないか。それこそ、国にとって最も有益となるように。
『覚悟はあるのか』と聞いたペトロフの言葉が頭の中で木霊する。きっと、彼の言っていた覚悟の中には、これも含まれているのだろう。『時代は血を求める』正にその通りだ。本当に流血沙汰にまではならないだろうが、それなりの争いの心構えはするべきだろう。しかし、それも覚悟の上だ。争うことを望む訳ではないが、避けて通ろうとも、無傷で終わらそうとも思っていない。
まるで何でもないことの様に地味な少女が語ると、イアンは大きく溜め息を吐いた。
「まったく。お前って奴は……」
スッと手を伸ばしその栗毛の頭を力強く撫で回す。本人は驚いて必死に逃れようとしているが、そんな可愛い抵抗、イアンには無に等しい。
自分達の心配が、いかにこの少女に取っては小さなことか、改めて思い知らされた。この少女に取って、地位や立場など目に入らないのだ。ただ、国の為になるかならないか、それだけ。己の身など少しも顧みない。だからこそ、自分達がこの少女を護らなければ。
「本当に、セリアって面白いね」
柔らかい天使の微笑みと共に言われた言葉にセリアは、多少複雑な顔をした。
いよいよ、動き出したみたいだね。彼の言ってる事が本当なら、僕達も腹を決めないと。出来るだけ、この学園に争いを持ってきたくはない。でも、そうも言っていられないよね。
これがどういう意味か、解ってない訳じゃないよ。




