表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大地の宝石  作者: 森宮 スミレ
〜第二章 磨かれる原石〜
62/171

来寇 2

 マリオス候補生達に任せる、ということは当然、授業も彼等と一緒ということになる。そのことは既に了解済みな筈なのだが、神聖とも言えるマリオス候補生クラスにまた妙な女が入って来た、と他生徒からの視線は厳しいものだった。けれど当のクラリスは、そんなこと全く気にした様子もみせず、教室の後ろで静かに授業を見学する姿勢を取っている。セリアも初めは教室を走る緊張に、ハラハラとしていたが、あの女生徒達を容易く宥めてしまったクラリスの器量を思い出し、大丈夫だろう、と結論付けた。

「じゃあ、前回の続きね……」

 珍しく授業に参加しているクルーセルの言葉に、セリアも授業に意識を向ける。クルーセルの瞳が何処か楽しげに細められていることに気付かぬまま。




「この場合、商業地区警備の強化を進めるべきだ」

「それより、補助金制度の確立に当てるべきよ」

 飛び交う意見と議論に、毎度の事ながらハンスは頬を引き攣らせた。これでは授業が進まない。いや、ある意味大いに進んでいるのだが、そういう問題ではない。普段通り授業中の議論は、自分にも手が出せない程発展してしまった。諫めようと思えば出来なくはないのだが、それでこの生徒達が口を閉じることはあり得ない。

 まったく。校長も何を考えて、このクラスに転入希望の者を放り込んだのか。これでは彼女にとっても参考にならないのではないか。

 そう思ったハンスがチラリとクラリスの方を見やれば、黒髪の少女は意外な事に例の三人の議論を、真剣な表情で見詰めている。かと思ったら、徐に立ち上がり教室の前へ移動してきた。

「宜しければ、私も参加させて戴けますでしょうか?」

「はっ!?」

 驚いたのはハンスだけでなく、それまで議論を交わしていた三人は勿論、教室中がクラリスに視線を移した。それに臆する事無く、クラリスは当然と言った様子で資料を手に取る。

「私でしたら、医療機関への援助にも視野を向けるべきかと思いますが」

 クラリスは自分の意見を述べると、その根拠となり得る理由を明確に提示してきた。その事に、周りは衝撃を受けたように静まり返る。

「……なるほど。それなりに興味深い意見だ」

 最初に反応したのはカールだ。その言葉を皮切りに、正気に戻ったランとセリアを交え、議論は更に続いた。




 ランスロット、カールハインツの議論に参戦した新参者の登場は、瞬く間に学園中に広まることになる。それは、当然の如く波紋を呼んだ。




「おい、聞いたか?」

「例の転入生がカールハインツ様達に意見したって話だろ」

「まだ正式な生徒ではないんじゃ?」

「あのベアリットだけでも十分目障りだというのに」

 廊下でコソコソと話している積もりなのだろうが、五人程の男子生徒の話し声はそれなりに響いていた。けれど、それに気付いていない生徒達は、安心して陰口を叩いていた積もりだったのだろう。だから、後ろから近付く気配に気付かなかったのか。

「私に何か?」

 唐突に聞こえた声に、男子生徒達も飛び上がった。驚いて振り返れば、そこにはまさに今話題に上がっていた人物がニッコリと微笑んでいる。

「お話しがあるようでしたら、どうぞ」

「な、なにを!?」

 言われた男子生徒達は、半分腰を抜かしたように唖然とする。けれど、そこは貴族のプライドが疼いたのか、キッと目つきを厳しくすると目の前に立つ人物。クラリス・シュライエに向き直った。




「驚いたね。今日の授業は」

「ええ。ランとカールの気迫を見ても平然とされていた方は、セリア殿以来ですから」

 花に水をやりながら頬を緩めるルネに、ザウルも同意を返す。

 実際、クラリスの発言は、カールが耳を貸す程までに的を得ていた。こんなこと、滅多に起こる事ではない。校長の言っていた情報も、好い加減ではなかったようだ。

「正式に転入したら、きっと楽しくなるんじゃないかな」

「……だといいんだけどよ」

「どうしたの? イアン」

 何処か難しそうな顔をしたイアンに、ルネも首を傾げる。普段の彼ならば、こういうことは真っ先に面白がるだろうに。それでなくとも、新顔とは直ぐにでも親しくなろうと言い出す彼が。

 ルネの質問に、イアンは眉間に皺を寄せたまま俯いていた顔を上げた。

「アロスクロテーヌ学園ってのは、俺の昔の知り合いが通ってるんだが、気になる噂があってな」

「どんな?」

「一部の生徒に絶対君主って囁かれてる程の女が居るらしいんだよ」

「絶対君主?」

 イアンの言葉に、ルネも思わず聞き返した。隣のザウルも一瞬何の事か、と目を丸くする。絶対君主と言えば、権力を象徴するような言葉だ。けれど、それを女に対して使うとは、中々想像が出来ない。

「それが、クラリス殿だと?」

「解んねえ。でも今日のあれ見たら、ただのお嬢様じゃねえような気がしてな」

 マリオス候補生の議論に、なんの躊躇もなく介入したのだ。彼女がただの深窓の令嬢でないことは十分解った。しかもそれだけの器量があれば、絶対君主の名が付いて廻ることも納得出来る。クラリスがそうだと決まった訳ではないが……


「あの、誰かいる?」

 考えに耽っていた所に響いたその声で、現実に引き戻される。ハッと我に返ったイアンは自分を呼び戻した原因へ向き直った。まあ、確認などしなくとも声の主など知れているが。

「セリア。どうかしたのか?」

「えっと……クラリスさんと逸れちゃって。ここに来てないかな、と」

 目的の人物を探してキョロキョロとするセリアに、ルネがここには来ていないよ、と答える。それを聞いてセリアは当てが外れた所為か、見るからにがっくりと肩を落としてしまった。

 イアンは堪らずクッと喉の奥で笑いを洩らす。そういえば、ランとカールの議論にズバズバと意見する者でも、こういうのも居たな。他者に君主と呼ばれるにはほど遠い女が。

 真偽も明らかでない噂だ。やはり自分の考え過ぎだろうか、とイアンも先程までの疑念を頭の隅に追いやる。とはいっても、やはり多少気になるので、確認するくらいはしてもいいかもしれないが。


 クラリスと逸れてしまったセリアは、ここにも居ないのか、と肩を落としたまま、他に彼女の行きそうな場所を脳内に思い浮かべる。

「何処に行っちゃったんだろ?」

「ちょっと心配だね。まだ学園に慣れてないんだし」

 セリアも初めは何度もこの学園で迷っているのだ。その構造の広さはよく知っている。そんな中、案内すると言っておいて逸れてしまったのは心苦しい。

「……やっぱりもう一回探しに行って来る」

「あっ!セリア」

 ルネの呼ぶ声も虚しく、セリアは再び温室の外へ飛び出して行ってしまった。相変わらず、落ち着きの無い。まるで小動物が逃げるように小さくなっていく後ろ姿を、候補生達の視線が困り顔で追う。


 そうして温室の出口を眺めていると、今度はそこから別の人物が現れた。相変わらずの涼しげな表情は、その内心を読み取ることを許さない。静かに動く影に、ルネが明るい声を掛けた。

「あれっ、カール。ランは?」

「私はあれの守役ではない」

「そう。まだ図書室で資料集めしてるんだ」

「…………」

 素っ気無い言葉を正確に読み取るルネに、銀髪の青年の眉も僅かに動く。さも当然のように言われるのは、やはり面白くない。まあ、外れてもいないので否定する必要もないが。そんなカールの心を理解しているのか、ルネは相変わらずニコニコと微笑んでいる。

「それより、あれはまた何をしている?」

「セリアのこと? クラリスを探しに行ったんだよ」

「……そうか」

 途端にスッと瞳を細め、入って来たばかりの扉へ向かうカールを、ルネが慌てたように呼び止める。

「カール!?」

「私は戻る」

「えっ?」

 唐突なカールの行動を、ルネだけでなくイアンやザウルまで目を見開いて見送る。特に呼び止める理由はないが、まるでセリアを追って行ったようではないか。彼があんな風に行動するとは、よっぽど気になることでもあったのだろうか?

 普段ならカールの事を一番理解しているかもしれないルネでも、今の彼の真意を計ることは出来ず、混乱したように小さくなる後ろ姿を眺めていた。






 校舎の前にある広場は、多くの生徒が行き交う。今はそこに、小さいながらも人集りが出来ていた。その輪の中心に立つ黒髪の女生徒は、誇らしげに顔を高く上げている。その周りを囲む生徒達は、憧れや尊敬の色を瞳に宿し、彼女の言葉に耳を傾けていた。


 暫くして生徒達の輪が解散したと同時に、クラリスは少し離れた場所に静かに佇むプラチナブロンドの青年を見付けた。ジッとこちらを見据えるバイオレットの瞳を、クラリスの空色の瞳が見返す。途端にピンと張った空気にクラリスは気付かぬふりを決め、向きを変えた足を動かした。その姿を追う事なく、カールはゆっくりと瞼を下ろす。

「カール!!」

 途端に聞こえた声に思考を中断され、弱冠の不満を覚えたカールは眉を寄せ後ろを睨んだ。苛立ちを含んだ視線が向いたことにセリアは一瞬怯むが、すぐに用件を伝える。

「えっと、クラリスさんを見なかった?」

「……知らん」

 尋ねた問いを一刀両断されてしまい、セリアは落胆する。一体何処へ行ったのだろう。今日も学園の案内をすることになっていたのだが。授業が終わって少ししてから急に姿を消してしまったクラリスに、セリアは内心で頭を抱える。

 次は何処を探そうか、と思案するセリアに、カールは冷たく言い放った。

「捨て置け……」

「でも、そんな」

「お前と違い、己の身の世話くらい出来るだろう」

「なっ? なんですって!」

 気に障る様な言いっぷりと、神経を逆撫でするように鼻で笑ったカールに、セリアも流石にカチンとくる。咄嗟に反応し大きな声を出すと、再びあの冷えた目で見下ろされた。

「何か誤りでもあるか?」

「わ、私だって……」

 その後に続く言葉が出て来ず、セリアも言葉に詰まる。実際、今までに掛けた迷惑の数々を考えると、先程のカールの言葉に言い返そうにも強くは出来ない。そのことに悔しさを覚え、思わず視線にも力が入る。けれど、そんなものをカールが怖がる筈もなく、再び鼻で笑われ一蹴された。

「用が無いなら戻れ。私は忙しい」

「あっ!」

 それ以上はセリアに目もくれず、カールはそのまま歩き出してしまった。けれどセリアにしてみれば、言い負かされた感が残るまま別れるのは何となく面白くない。けれど、わざわざ後を追う程のことでもない様な気もする。

 これだけ探しても居ないのだ。もしかしたらクラリスにも用事が出来たのかもしれない。彼女には、自分達は殆どを温室で過ごすことは伝えてある。それに、昨日のあの様子からして、自分がそこまで心配する必要も無いような気がして来た。そういう意味では、やはりカールの言葉が正しいような気がして、更になんだか悔しい気持ちになってしまう。

 はぁっ、と深く息を吐くと、セリアは諦め温室へ戻るべく踵を返した。




「セリア、おかえり。クラリスは見つかった?」

「ううん。何処にも居なくて」

 歩き回った所為か、何処となく疲れた様子のセリアを、ルネ達は再び温かく迎えた。その空気に、セリアも思わずホッとしてしまう。まだクラリスを心配する様子にルネも困り顔で、大丈夫だろう、と安心させる様に言った。その際、セリアだったら心配だけど、と余計な一言も付け足して。それが先程のカールの言葉と重なり、セリアも焦ったように切り返す。

「そ、そんなに頼りなくないよ」

「……お前、それ本気で言ってないよな?」

 呆れたようなイアンの視線に、グッと言葉が詰まるものの、ここで負けては意味がない。とセリアも食い下がる。

「私だって、それなりに気をつけて……」

「今まで何回危ない目にあった?」

「だからって……学園の中なんだし平気よ」

「すぐに飛び出して行くじゃねえか」

 言い返す度に、ズバズバと耳に痛い言葉で反論され、セリアもついに閉口する。迷惑を掛けて来た上に、心配させていた自覚が一応はあるらしく、強く反発も出来ない。

 ううっ、と唸りながら不満がありそうなセリアの頭を、イアンがポンッと軽く叩く。

「ほらっ。怒ってねえで、飯に行こうぜ」

 気付けば既に日が沈み始めていた。確かに、そろそろ寮へ戻った方がいいだろう。渋々だが小さく頷くと、また子供をあやす様に頭をよしよしと撫でられた。そのことに、どうしても納得しかねる。

 唇を尖らせたままのセリアの背を押し、候補生は揃って食堂へ来たが、その前でセリアが一度寮へ戻ると言い出した。手に持ったままの鞄を置いてきたいのだ。候補生達には先に入っているように頼み、セリアは一旦、寮へと足を急がせた。


 自室に戻ったセリアの目に、ふと机の上に置いたままの例のペンダントが目に留まる。昨晩、机の引き出しに仕舞うのを忘れてしまっていたのだ。沈んで行く夕日の色を映すそれを、ぼんやりとしたまま手に取る。

 あの夜から、一体何度こうしたことだろうか。その度に沸き上がる疑問に、胸が焦りを見出す。どうやっても、これの持つ意味が解らないのだ。何かが隠されているのか、そうではないのか。ペトロフの茶番の一つだとしても、真剣に手渡されたコレを、簡単に忘れることは出来ない。

「ちょっと……」

 急に聞こえた声と扉が開く音に、セリアは飛び上がる。部屋の主である筈のセリアの返答を待つ事なく開かれた扉から、人工的な明かりが入り込んできた。

 驚いて確認すれば、扉の前に立っているのは青髪を弄る隣人。いったいどうしたのだ、と瞳を見開けば、僅かに苛立った顔を向けられた。

「さっきから呼んでいるのに気付かないから。悪いけど、開けさせてもらったわ」

「あっ!!ご、ごめんなさい」

 ペンダントの事ばかり考えていた所為で、まったく気付かなかった。窓の外を見遣れば、日もすっかり沈んでしまっているではないか。不可抗力とはいえ、無視する形になってしまったのは申し訳ない。慌てて謝罪すると、アンナは眉間に寄せた皺を解きながら、一つ短く息を吐き出した。

「下でちょっと面倒なことになってるから、貴方に何とかしてもらおうと思って」

「へっ!?」

 食堂へ来てくれ、とアンナに急かされたセリアは、慌てて部屋を出る羽目になってしまった。その所為で、未だにペンダントを手に持ったままだが、どうしようかと悩む。今更部屋へ戻ってこれを仕舞って来る時間はない。そんなことをすれば、目の前の隣人から再び睨みを頂戴しそうである。それに、既に扉の前で待たせてしまったようなので、これ以上は忍びない。まあ直ぐに戻ってくれば良いか、とセリアはさり気なく手をポケットに突っ込んだ。



 多少急ぎ足で進むアンナに付いて行った先で見た物に、セリアは頬を引き攣らせた。

「その言葉、訂正して貰おうか。カールハインツ」

「私は事実を述べたまでだ。違うか? ランスロット」

 お互いを絶対に曲げぬカールとランが、飽きもせずに舌戦を繰り広げている。普段の光景に等しい一幕だが、どうやらアンナが気にしていたのはそこではなく、その周りに出来た人集りのようだ。言われてそちらに目をやれば、確かに食堂の一角を占拠しているようなもの。食事をしようと思ったアンナの前に、それが立ちはだかり、かなり迷惑していたようだ。

「貴方なら、なんとか出来るでしょう」

「そ、そんな。なんとかと言われても」

 いつものこととはいえ、あんな舌戦の中に突っ込んで行けと言うのか。そんな、慈悲も情けもない。こう言ってはなんだが、凄く面倒臭い。というより、何故自分なのだ。

 と、今の所この世でランとカールの舌戦に突入出来る唯一の人間であることを自覚していないセリアは、大いに戸惑っていた。けれど、横に立つ隣人にさっさとしろ、と目で押された為、渋々ながら人集りに近付く。しかしどうしたものか。進もうにも人が多い。幾つもの背中に阻まれ、中々二人の所まで辿り着けない。

「ひえっ!?」

 オロオロとしていたら、案の定人に押され、セリアは盛大に尻餅を付いた。普段から二人が言い争いをする度にそれなりの人が集まって来るが、ここまでとは珍しい。などと思いながらも立ち上がろうとすると、後ろから急に声がした。

「セリアちゃん! 大丈夫!?」

「へっ!?クルーセル先生?」

「怪我はない?」

「い、いえいえ。まったく平気です」

 突然のクルーセルの登場に驚きながらも、セリアは平気なことを示すために勢い良く立ち上がった。少しバランスを崩して転んだ程度だ。そこまで心配して貰う程のことでもない。

「クルーセル先生はどうしてここに?」

「それがね。クラリスちゃんの様子を見に来たんだけど……」

「ああ、そうでしたか」

 なるほど。教師である彼がわざわざここに来たのはその為だったのか、とセリアも納得した。のだが、ちょっとした平穏を楽しむ間もなく手をグイッと引かれる。ええっ!?と驚いて見上げれば、クルーセルが実に楽しそうに自分の手を引き、周りの生徒を掻き分けて人集りの中心へ近付いていくではないか。そうして漸く諸悪の根源の前に出た途端、ポイッと二人の前に放り出された。バッと後ろを振り向けば、頑張れっ!と声援を送られる。教師でありながら、この騒動を自分で止めようという考えはまったくないようだ。サアッと血の気が失せるのを感じながら、セリアは冗談じゃない!と内心悲鳴を上げた。

「セリア?」

「フン……」

 さり気なく逃げようとした途端、二人に存在を認知されてしまい、セリアは逃げ場を失った。




「ううっ……疲れた」

 二人の言い合いが何とか治まった頃には、セリアは殆どの体力を使い果たしていた。周りの生徒達はあの二人はさも立派な事を言っているのだろう、といった顔をしているが、実際の所まったくそんなことはない。

 いや、確かに彼等の議題に対する草案や意見は立派だ。十分尊敬に値するし、マリオス候補生として誇れるだろう。けれど、あそこまで派手な論戦にする必要は、はっきり言って皆無だ。ようは二人が少しでもお互いの意見を聞き入れさえすれば済む話であり、ちょっと相手の言葉に耳を貸しさえすればよいだけ。あそこまで頑なに相手をねじ伏せ自分の意見が正しいと主張するから、あんな舌戦になってしまうが。


 はぁっと深い溜め息を吐いて、今日はもう寝るか、とセリアが寝台に近付くとあることに気がつく。ハッとして制服を探ると、セリアは顔を青くした。ポケットに入れた筈のペンダントが無いのだ。

 な、何故だ!部屋を出る前、確かにここに入れたのに。そこで思い出す。もしや、転んだ時にポケットから飛び出てしまったのだろうか。これはまずい。と思った時にはセリアは自室を飛び出していた。




彼が、考えの深い方だということは知っています。それを、何時もご自分の胸の内に留めている。それをけれど、今回のことは少し合点が行きません。それは自分だけでは無い筈ですし。特に、ランが……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ