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大地の宝石  作者: 森宮 スミレ
〜第一章 埋もれた小石〜
23/171

精華 2

 朝、それぞれの寮から伸びる校舎への道は、ダンス大会を存分に楽しもうと薔薇色の空気を振りまく生徒達で和気藹々としている。誰もが、若々しい恋心を胸に、一夜の夢の時間に心躍らせているのが見て分かる程に。

 そんな中、この世の終わりだとでも言わん顔つきのセリアが一人トボトボと歩みを進めていた。その周りだけ、どんよりとした空気が漂っているのは気のせいではないだろう。

歩調を緩めずとも現状を思い出す度に、昨日から何度目かになる重いため息が口から吐かれるばかり。せめて立ち方だけでもどうにかしようと夜遅くまで頑張ってみたのだが、やはり一夜漬けでどうにかなる訳もなく、先行きは暗い。

「セリアちゃぁん」

 セリアの淀んだ気分を吹き飛ばす勢いで明るい声を投げかけてくる人物。日課としている朝の日向ぼっこの最中のクルーセルが、ニコニコ顔で手を振っている。そのまま手招きでセリアを呼び寄せると、その暗い顔を覗き込んだ。

「あら、どうしたの?なんだか元気がないわよ」

「いえ、その……」

 ハハハ、と乾いた笑いを零すセリアに、クルーセルは疑問符を浮かべる。

一体どうしたというのだろうか。年に一度のこの時期、年頃の娘なら誰もが浮き足立つだろうに。

「ダンスのテストですが、自信が無くて」

「テスト……?」

 テストと聞いてクルーセルは一瞬疑問符を浮かべた。このイベントで意中の相手とのダンスよりもテストの方を気にする生徒など聞いたことが無かったし、クルーセル自身その事を完璧に忘れていた。しかし、直ぐに思い直し、ニコリと笑う。

「そんなに気にしなくても大丈夫よ。最低限踊れれば悪い点数は取らないわ」

「でも……」

「それより、パートナーは決まった?」

「えっと、一応ザウルにお願いすることにしました」

「あら、ザウル君?素敵じゃない」

 それより、とはなんだ。仮にも教師なのだから、テストの方を気にするべきだろう。とセリアが心で突っ込んでみるも、クルーセルの楽しそうな顔は変わらない。

「でもそうなると、ラン君達はがっかりしてるでしょうね」

「……?」

「ああ、羨ましいわ。私がもう少し若ければ皆とトキメキの青春を送っていたのに」

「………………?」

 一人で盛り上がっているクルーセルだが、その言葉をセリアは全く理解しちゃいない。

何故ラン達ががっかりするのだろう。そんな要因一つも無いように思うのだが。

「セリアちゃんも頑張ってね」

「…………はあ」

 その後も校舎への道中も、若さね、とか、恋っていいわ、とかセリアには理解不能な言葉を続けていた。







 その日の授業も滞り無く終わり、ヨークが教室を出て行くのを見送ると、セリアは素早く仕度をすませた。今日から特訓、と言われているのだが、出来ればもう少し待っていただきたい。昨日課せられた基本の立ち方を覚えるという課題が、まだ出来ていないのだ。曲目も複数あるので一つ一つ覚えるのですら一苦労なのに、何処をどう間違えたのか、男性用のステップが身体に染み付いているので一筋縄ではいかなかった。

 その状態で、練習に付き合って下さいと候補生達に言える訳もなく、出来れば最低限の立ち方が出来る様になるまで特訓は是非とも待って欲しい。

「セリア。行こう」

 教室から顔を出すと同時に、何故か目の前にいたルネに呼び止められた。出来れば逃げたいなぁ、と少しでも考えていたセリアは、まるで思考を読まれたような気がしてかなり焦る。ルネの姿を目にした女生徒達から、途端にギョロリと敵意を向けられる、というお決まりの展開になったのだがそんな事気にする間もなく、セリアはルネに連行されていった。

「大丈夫だから、逃げないでね」

「いえ、とくに逃げようとはしていない、ような……」

 途端に目を逸らしたセリアを、深緑の瞳が笑顔で捉える。

「そんなに深く考えることないよ。ザウルも、セリアと踊れるってだけで楽しみにしてるんだから」

 いや、何故そんな事を楽しみするんだ。むしろ迷惑がってやしないだろうか。というのがセリアの素直な疑問である。

 ニコニコ顔のルネと歩いている間も、温室は確実に近づいている訳で、セリアはなんとなく肩が重くなる気がした。









「あんまり女にこういう事は言いたかないんだけどなぁ………」


 なんなんだ、そのへっぴり腰は!


 イアンが言った先では、ザウルの手を取りながらも、大きく腰を引いたセリアがかなり不恰好な状態で足下を注意深く見下ろしていた。あまりにも不安定なその姿勢に、イアンが遂に声を発したのだ。本来なら、女の姿勢をどうこう言うのは男としてどうかと思うのだが、はっきりいってセリアの状態は性別を超越している。

「ちょっと見てろよ」

 そういってイアンはセリア達の間に入ると、ザウルの手を取った。言うより見せる方が早いだろうと思っての行動だ。そして、流石は候補生、と賛美の声を送りたくなるほど見事な立ち姿を見せる。やはり彼等はどんな事でも完璧にこなしてしまえる様だ。

「お前の場合、もう少しザウルとの距離を詰めた方が良いだろうな」

 本音を言えば、二人に接近して欲しくなど無いのだが、今回はどうしようもない。

 そのままセリアに見せる為、イアンがザウルとその場で少し体を揺らす。イアンは女用のステップだろうと軽々と踏んでみせるし、ザウルも自分より若干体格の良いイアンとも違和感を感じさせず流れる様に動いている。

 その姿はまさに光輝いていて、セリアですら感心する程だ。この場に他の女生徒が居ようものなら、鼻血を吹いて失神するに違いない。むしろ、この二人がパートナーになった方が良いのではないだろうか、と本気で思う。

 折角手本になってくれているのだから習得せねば、とイアンの動きに集中しているセリアは、そのイアンの表情が段々と曇っているのに気付いていない。


 ザウルの手を取りながら、イアンは釈然としない気持ちに襲われていた。

 可笑しい。明らかにこの状況は可笑しい。成り行きでこうなってしまったが、どうも納得が行かない。本当なら、自分が手を握りたい相手はセリアであって、決してザウルではない。しかも、何故自分は女用の振り付けを踊っているのだ。聖花祭の夜の相手は取られるし、なんだか訳の分からない事態になっているしで、本気で頭を掻きむしりたくなってくる。なんなのだこの仕打ちは。セリアに惚れた時点で甘い事態は期待していなかったが、これは余りにも酷すぎないだろうか。

 イアンが心中穏やかでないことを握っている手から感じ取ったザウルは、苦笑しながらも全く同じ心境であった。とはいっても、自分はイアンには無い特権があるのだから文句はないが。

 セリアは必死で二人の動きを目で追いかけるが、基礎も何も出来ていないのに、いきなり超上級の動きを習得しろと言う方が無理な話だ。見ているだけで十分である。

だんだん頭も混乱してきたセリアが、ふわりと香ばしい香りに気づきそちらを見ると、ルネがティーカップとポットを持ってこちらを凝視していた。

 茶の用意をしに少しの間温室から離れていたルネは、帰ってきて目に飛び込んだ友人達のなんとも奇怪な行動に迷わず噴出する。長い付き合いの中でも、こんな光景は見たことがない。いくら自分達は仲間だといってもこの状況はそれとは別の問題だろう。それに加え、当の二人が何処か冴えない顔をしているので、なお面白い。

 それもこれも、全て栗毛の少女の為かと思うと、どうしても可笑しくて堪らないのだ。

「クッ……少し休憩しよう」

 肩を揺らしながらのルネの提案に、お互い離れる機会を窺っていたイアンとザウルはこれ幸いとばかりに応じた。



「どうだ。少しは出来そうか?」

「………」

 テーブルに並べられた紅茶を手に取りながらイアンが聞くと、セリアは難しそうな顔をした。やはり、二人のダンスは完璧そのもので、とても真似出来る様な代物ではない。彼等には悪いが、はっきりいってあまり参考にはならなかった。

 そう言えば途端に顔を渋めるイアン。

 ではなにか。自分が野郎と手を取って耐えたにも拘らず、何の意味もなさなかったということか!?

 イアンは今度こそ頭を抱えて俯いてしまった。

 それを見てルネがもう一度クスリと笑ったのには、誰も気づいていない。








 食器のぶつかる音が響く食堂では、候補生達が勢ぞろいしていた。数ヶ月前まではそれだけだったのだが、ここ最近は栗毛の地味な少女がその中に混じっている。

「すみませんでした」

 結局その後も特訓は続いたのだが、殆ど成果は得られなかった。ヘトヘトの体を動かしながら、遅い時間まで付き合わせてしまった彼等に謝罪の言葉を告げる。

 しかし、実は奮闘したのはセリアだけで、候補生達にはそれほどの苦ではなかった。本来貴族のダンスとは曲の流れに身を任せ、優雅に舞うものである。コツさえ掴めばそれほど体力を要するものではないのだ。何の苦もなくステップを踏む候補生達に対して、体に余計な力が入り、必要以上に動き回り、緊張で気を張り続けたセリアが、かなりの疲労を感じるのは当然だろう。

「そう落ち込むことないよ。まだ時間はあるんだし。気長に練習しよう」

「……でも」

 時間があるといっても、あと二週間ちょっとである。それまでに、最低でも一曲は踊れる様にしなければならない。

 テストは三曲用意されており、その中で最も高い点数が採用される。それが終われば、あとは自由。大会はそのままパーティーへと変わり、踊り続けるも良し、恋人と抜け出すも良しで、それぞれが思い思いの場所へ向かう。そして、最後にその日のダンス大会優勝者が発表されるのだ。

 候補生の中でもランとカールは優勝経験があるらしい。そして、優勝は逃しているものの、残る候補生達も負けず劣らずの成績を叩き出しているようだ。

 聞くだけでも、本気で申し訳ない気持ちになってくる。

「鬱陶しい」

ブツブツと理解不能な言葉を呟くセリアを、不機嫌顔のカールが一刀両断した。その表情は、鬼のそれよりも恐ろしい。

「カール。機嫌悪そうだけど、どうかしたの?」

 カールの表情からその心情を読み取る事の出来る、数少ない貴重な存在のルネが聞くと、カールは更に眉間の皺を寄せる。

 これを機嫌が悪い、の一言で済ましてしまえるルネはある意味大物かもしれない。他人からしてみれば、縮み上がって訳も分からず謝罪してくるだろう程の形相を。

 その横で、ランも厳しい表情を見せている。それを見てルネは、ああ、と頷いた。

「大変だったね。今年も」

「…………」

 セリアが覗くと、ランとカールの食はあまり進みが良くない。何かあったのだろうか

「また逃げられなかったのか?」

「どうしても、と詰め寄られてしまっては、断ることも出来ない」

 ぐったりしたランがそれだけいうと、またスープを無理やり口に含んだ。


 ランスロットとカールハインツ。その麗しの美貌と揺るぎない実力に、羨望の眼差しを向ける者は数知れない。まぁ、それは他の候補生達にも言えることだが。

 とにかく、恋人達の季節に彼等の隣を勝ち得た者が、それを機に一気にお近づきになろうと、練習を口実に押しかけてきたのである。既にパートナーが決まっているザウル、逃げる術を身に着けているイアン、温室で花の世話という盾を持ったルネ。この三人は逃れられても、残った二人にはそれが出来なかった。

 紳士的な態度を貫くランは、練習したいと目を潤ませる女生徒に背を向けること叶わず、捕獲。

 カールハインツの場合、魔人の睨みを浴びせたが、恋に燃える乙女達の方が強かった。議論になるとあんなに多弁になるくせに、それ以外では無駄を一切口にしないカールの無言の拒否を、女生徒方が受け入れる筈もなく、捕獲。

 そのままこの時間まで、ずっと練習にお付き合いさせられていた、という訳である。

同じ練習でも、絶えず乙女心と一緒に身を任せてくる女生徒と、セリアとではやはり違う。

「はぁ、それは…」

 大変だったね、と続けようとした言葉を、カールの睨みが制した。これ以上、その話題について一切語られるのを嫌ったらしい。というより、思い出したくもないのだろう。

 一方、睨まれたセリアはヒィッ、と悲鳴を上げ縮こまる。なぜ自分がそんなに睨まれなくてはならないんだ。という不満は、目の前の魔人には言わないでおく。










「ルネ、居るか?」

 昼休みの隙に、イアンは校舎を抜け出し温室へ来ていた。普段は授業の後に皆で集まるため、この時間には誰も居ない筈だ。しかし、花の世話一切を請け負っているルネは、朝だろうと昼だろうと決まってこの場で水を撒いている。

「珍しいね。どうかした?」

 校舎から幾分離れているこの場所に、まだ授業中にも構わず顔を覗かせる者は少ない。例えそれが候補生であっても同じだ。にも関わらず彼がこの場へ赴いたのには、何か理由があるに違いない。まあ、大方の見当はつくが。

「忙しいのは分かってるんだけどよ、花ってまだ頼めるか?」

 この時期、聖花祭の本来の趣旨である相手に花を贈り想いを伝えるという行為。それを、ダンスに浮かれているとはいえ、生徒達が忘れる筈もない。そんな彼等にとって、この温室の中、ルネの天使の微笑みと愛情をたっぷり注がれ育った草花は、祭りを彩る絶好の材料である。お目当ての相手がいる者はこぞってこの場を訪れ、祭りで想い人に贈る花束を用意して貰えるよう頼んでいくのである。

 普段から花と接している為か、ルネの作る花束は、それはもう芸術技と称される程素晴らしい物だった。相手のイメージ通りか、それ以上の花々をあしらい完成したそれは、ほぼ確実に相手の心を掴む。なので、ルネの花束はかなり人気があるのだ。

ルネもそれを分かっているので、この時期に間に合う様、随分前から大量の花をこの温室で用意し始めた。その花を入荷する為の資金は、毎年校長が惜しげもなく提供するらしい。

「大丈夫だよ。でも、今まで花を頼んだ事なんてなかったのに」

「ま、まぁな。でも、女がどんな花を欲しがるかなんて分かんねぇんだよな」

 そう言ってイアンは温室内をグルリと見回す。ガラス張りの空間では季節に似つかわしく、パンジーやシクラメンといった冬らしい花がこの場を彩らせていた。しかし、イアンにとってはどれがどれやらさっぱり分からない。花は嫌いではないが、自分で愛でたことなどないのだから仕方の無い事だが。

「うーん。大体は華やかな感じの花を使うけど、セリアならもうちょっと小さめの花かな」

「ああ……」

 ルネの言う通り、セリアに贈るのであれば大きく派手な大輪の花よりも、可憐で野花の様な花の方がイメージにあっているように思う。イアンも同意見で納得し、その言葉に頷いたが、うん?と一瞬違和感に包まれる。

「ちょっと待て!誰がセリアにって…」

「あれ、違うの?」

 あっけらかんと言われてイアンはうっ、と言葉に詰まった。

 違いはしない。正にその通り、セリアに贈ろうと思っていた花だ。しかし、考えてみれば少し決まりが悪い。自分で言うのもなんだが、自分の様な人間が人に花を贈るなど、似合わなすぎる。今まで考えた事もなかったのだから。それでも、この行事に便乗しようとする姿を少し前の自分が見れば、目を点にして驚くだろう。

 それにしても、ザウルとランには教えた気持ちだが、ルネには何も言っていない筈である。にも関わらず、何故さも当然の様に言ってくるのだ。

「いや、その………とにかく、それで頼む」

 非常に微妙な空気を醸し出しながら、イアンはそれだけ言うとさっさと退散してしまった。温室を出る前に、この事は内密に、と釘を刺すのも忘れない。

 バツが悪そうにそそくさとその場を立ち去るイアンは、ルネが後ろでクスクスと笑っていることには気付かなかった。


 少しからかい過ぎただろうか。別に今更隠す必要は無いのだし、彼が隠しているとも思っていなかったのだが。まあ、今まで花などろくに選んだ事の無かった彼が、この季節にそれを用意しようと決心したのだ。それだけでも賞賛に値する行為だろう。

「でも、ちょっと遅かったかな」

 実は、今年初めて自分に花を頼んできた友人は一人では無い。イアンは四番目なのである。残る一人が花を用意しようなどと考えているとは思えないので、事実上彼は最後に来た事になる。それで花束に優劣を付けようとは思わないが、花の数にも限界がある。まあ、予想していた順位であるし、彼はそういう事に敏感な方ではないので良しとしよう。

 しかし、最初の人物がこの温室に現れた時は正直言って驚いた。まさか花を頼んでくるとは思いもしない人物だったからだ。全くそんな気は見せなかったのに。そして、誰よりも早かった事にも驚いた。

「花、足りるかなぁ?」

 花を贈ろうとするなど初めての友人達だ。折角なので、少しサービスしてやろうとも思ったのだが、どうも数が少々足りなくなるかもしれない。

 フゥ、と息を吐くルネの顔は、それでも何処か楽しげであった。








「いやいや、今年もこの学園は色鮮やかに飾られるだろう」

 校長室では上機嫌の校長が、相変わらず寛いでいるクルーセルに笑みを向けていた。

彼の言う色が、自らが資金提供した花か、それによって咲かせる恋の花かは分からないが。恐らく両方なのだろう。

「いいわねぇ。私もルネ君にお花頼もうかしら」

「それは面白いな。では、今年は教師全員から生徒に花を配って貰おうか?」

 職権乱用も甚だしい、とんでもない提案にクルーセルの相方が透かさず口を出す。

「校長。あまりご冗談を」

「おや。私は何時でも本気だよ、ハンス君」

 だとしたら尚更質が悪い。ハンスが顔を青くしているのを、彼の同僚が忍び笑いで見守る。

「それに、これはただ愛を伝えるだけの行いでは無いよ。もう一つ意味があるのも知っているだろう」

「確かにそうですが、年の若い生徒達が理解するでしょうか?」

「それもそうだな。では仕方無い。今回は愛を伝えて貰おうか」

「何故そうなるのですか……」

 ハンスの答えをケロッと答えた校長なら、本気でやりかねない。勘弁してくれ、とハンスが必死に食い下がると、校長は渋々ながら引き下がった。全く、何処までが冗談なのか、本気なのか分からない。

「ほらほらハンスちゃん。早くしないと授業が始まっちゃうわよ」

「っ!私がなんの為にここまで来たと思っているのですか!!」

 休み時間になった途端姿を消したクルーセルの次の行動は分かり切っている。どうせこのままこの場に留まる積もりだったのだろう。なので、ハンスが自ら確保しに来たのだ。

 そのまま同僚をズルズルと引きずって、ハンスは校長室を後にした。



不運の事故、というのは色々な所で起きる。それは分かってるけど……なんでよりにもよってこんな時に。今回は私だけの問題じゃないのに、どうして。

いや、私の不注意だったのかもしれないけど。それでも納得出来ない。


やっぱり、隠しておくしかないよね。



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