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大地の宝石  作者: 森宮 スミレ
〜第一章 埋もれた小石〜
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苦手な物 1

 セリアはいつもの温室で、淡々と作業を繰り返していた。もう何時間も作業を繰り返しているので、そろそろ腕も疲れてきている。また一つ、作った物を横に山積みになった物の上に積み重ねて行く。


 山になっているのは大量の花。といっても、本当の花ではなく、正方形の紙を何枚か重ね、細く山折谷折を繰り返し、真ん中を紐で止め、1枚ずつ広げて作る手作りの花だ。一つ一つ手間がかかるこれを、セリアは脇目も振らずに延々と作り続けていた。


「セリア。少し休憩しよう」


 ふわりと香ばしい香りを放つ紅茶をテーブルに置いたのはルネだ。

 セリアがここに通うようになってから、紅茶を用意する回数がぐっと増えたなと考えながら、セリアに休息を勧める。終わらない作業にうんざりしていたセリアはテーブルに突っ伏して「ありがとう」と呟いた。その声にも、いつもの活力は無い。


「学園祭の飾りつけも大変だよね」


 温室の外では学園祭の準備に勤しむ生徒達が慌ただしく動き回っている。本来、セリアも生徒達に交じって自分のクラスで用意する出し物の手伝いをしている筈なのだが。実際彼女はルネが入って来るまで一人で、淡々と花を作り続けていた。


 セリアが一人で地味な作業をしているのは、別にサボっていた訳でも、楽をしているのでもない。きちんとした理由があるのである。


 セリアのクラスは特にこれといって案も出なかった為、無難に茶店の様な物を出す事にした。といっても、名門校であるフロース学園の学園祭である。よって出し物もそれなりにきちんとした物であり、茶店だからといって手を抜く事は一切ない。

 出す紅茶も茶菓子も周到に用意された物が使われ、飾り付けにも一工夫加えたりもする。そんな中、女子生徒はメニュー等内容の準備、男子生徒は力仕事を任せられ、各々が仕事に取りかかった。


 セリアも当然、食器を揃えたり茶菓子の材料を用意したりしていたのだが、持ち前の不器用さが災いし、何をやってもうまくいかなかった。それどころか、小麦粉を持たせればそれをぶちまけ、オロオロするものだから飾り付けようの機材を倒し、散々迷惑をかけてしまったのである。


 その結果、割り当てられたのがこの花の製作で大量の紙と一緒にクラスを追い出されてしまった訳だ。この花も当日の飾りに必要な物であるのでこれも一応仕事ではあるが。


 学園祭当日も、手伝いはいいと断られてしまった。つまり自分はその日、祭りを堪能出来る事になったのだが。心底申し訳ない気持ちで一杯である。


 そんな理由で淡々と大量の花を作り続けているセリアを、相変わらずのニコニコ笑顔で見守るルネ。


「でも、半分位は終わったんじゃない」

 山積みになった花に視線を移して聞いてみれば、セリアは小さく頷いた。

 終わった分だけでもクラスへ持って行ける頃だろう。飲み終えた紅茶のカップを置き、セリアは花を手に集め始めた。しかし、一人で運ぶのには少々無理がある数だ。何度か温室とクラスを往復する必要があるだろう。


「セリア、一人で大丈夫?」

 明らかに大丈夫ではない量を抱えようとしているセリアを見たルネが声をかける。それに精一杯答えるセリアだが、もはや花に邪魔されて声にすらなっていない。流石に手伝おうとルネが動こうとするとその横をスッと通り抜ける人物がいた。


「お手伝いしますよ。セリア殿」

「あっ、ありがとう。ザウル」


 急に現れたザウルは、セリアが抱えていた花の半分とまだ残っていた花の殆どを軽々と抱えた。思わぬ助っ人にセリアも一瞬戸惑うが、ここは有り難く言葉に甘える事にした。というより、彼は何時の間に温室に来ていたのだ。


 花を抱えた二人が温室を出て行くと、残されたルネはカップを片付け、自分も本来の仕事に戻る事にした。






 あの密輸事件以来、ザウルのセリアに対する態度が少し変わった。セリアに対して、かなり友好的になったのだ。それにセリアへの距離が明らかに近くなった。元々の親しみ易い性質に加え、セリアはおろかザウル本人でさえ気付いていない程なので、他の誰もその違いに気付いていないが。


 ザウルの変化に唯一気付いた人物が、連れ立って歩く二人を偶然見つけ、そのまま暫く眺めていた。ザウルの変化に気付いてから、何故だか二人が一緒にいる時はつい視線で追ってしまうのだ。

 特に不満があるわけでも、嫌だと感じるわけでも無いが、何となく気になってしまう。


「イアン、どうかしたのか?」


 遠くで自分を呼ぶ声に適当に返事を返すと、二人から視線を外し、その場を離れた。












「どうかね、クルーセル君。生徒達は頑張っているかね」

「一年に一度のイベントだもの。皆一生懸命よ」


 相変わらず、校長室で面白そうに会話を繰り返す二人は窓の外からせっせと勤しむ生徒達を眺めている。いってしまえば高見の見物だ。


「そうか。今年は何か特別なイベントがあるそうだな」

「ふふ。女子生徒達の強い希望でね。彼等にも協力してもらわなくちゃね」

「しかし、最近の女子生徒の考えは理解しにくい」

「あら。女の子はいつでも恋多き乙女なのよ」


 何を企んでいるのか、二人は心底楽しそうである。しかし、その空気に割って入る者がいた。

「私は反対です。この名門校フロース学園の催しにしては、いささか程度が低いように思います」

「あら、ハンスちゃん。そんな事言ってると、女子の怨みを買っちゃうわよ」

 言われた言葉にハンスはうっと言葉を詰まらせる。実際、彼はその女子の怨みを何度か目の当たりにしているのだ。彼の堅い考えは、恋に燃える女生徒達には理解し難い物らしい。


「まあまあハンス君。こういうイベントもたまには良いではないか」

 元来お祭り好きな校長も、この催しには賛成のようだ。堅物なだけに校長が決めた事には口を出さないハンスだが、やはり何処か納得出来ていない様子である。


 校長室でのやり取りがされている間も、学園祭の準備は着々と進んでいるのであった。







 学園祭当日、校舎と敷地内は色とりどりに装飾され、大変な活気に溢れていた。生徒達は勿論、この日は興味をそそられた街からぞろぞろと人が押し寄せてくるので、毎年の学園祭は随分な盛況である。


 今は、記念式典に出席するため、生徒達は大きな講堂に集まっていた。だが、ここにも明らかに部外者がチラホラと見える。


 周りから送られる興味津々の視線を全く気にせず、校長は堂々と卓上に現れた。正に校長の威厳というのか。普段おちゃらけている様に見えても、こういう所ではしっかり校長の格というものを示していたりする。


 そして、挨拶と説明等を終えた頃、校長が思い出したようにもう一つ、と加えた。

「生徒諸君。今年は少し面白い趣向を取り入れる事にした」

 そう言いながら一枚の紙を取り出す。

「それぞれ幾つかのクラスの出し物に課題を用意させた。それをこなすと、紙に印が押される。全ての印をより早く集める、という物だ。これと同じ紙は校門の所で配るので、みな是非参加してくれ。なお、上位十二名には、景品が与えられるものとする」

 そういって、今度こそ生徒達を解散させた校長にクルーセルが何やら耳打ちしていた。


 講堂を出た生徒達の大半は、例の紙を手にするべく校門へ向かった。その中には勿論セリアの姿もある。根っからの負けず嫌いを燃やしながら、ちょっとワクワクした気分になっている。

 自分は今日、手伝いは断られているのだから、これに専念しても良いであろう。周りを見てみると、何故か女生徒達が妙に急いでいるように見えるのが気になるが。


 校門で手渡された紙には、成る程、幾つかの枠が書いてある。ここに印を押すわけか。等と納得しながらセリアはもう一度来た道を引き返し、喧騒の中に突っ込んで行った。






 学園祭の間にも、例の催しの話が広まったらく、今や生徒だけに留まらず一般の客までが印を求めて上へ下へと回っていた。そして、ここでも何故か妙に急ぐ女性の姿が目立つ。


 枠の空白が半分以上は埋まった紙を見ながら、セリアはちょっとした達成感に浸っていた。課題というのは思ったよりも簡単で、ゲームを用意したクラスならば単純にそれをクリアする事だったり、展示物を用意したクラスならばそれらの感想を述べたり、といった物ばかりだった。

 やはり、目的は生徒達に色々なクラスに赴いてもらう事らしい。しかし、上位十二名に与えられる景品というのが気になる。よし、と気合いをいれて次のクラスへ向かおうとすると唐突に肩を突つかれた。


「よっ。お嬢さん」

 軽快な口調で自分を呼び止めた人物が自分にニッと笑うと自分も笑い返した。遠くで響く女性の黄色い声には、相変わらず慣れないが。

「これはこれは、マリオス候補生様」

「印集め、進んでるみたいだな」


 セリアの紙を覗き見ると、イアンは自分の物も見せてきた。セリアが見てみると、どうも自分が埋めた枠と大体同じ様な場所に印が押されている。


「どうだ、残りは一緒に回らねえか」


 セリアは驚いた。正に今自分が考えていた事と同じだったからだ。イアンの提案に二つ返事で頷いた。

 しかし、彼が一人でいるとは珍しい。いつもなら他の候補生と行動を共にしているからだ。学園祭など当然彼等と一緒に回るものと思っていたのに。それでなくとも、彼が一人でいれば、女子生徒のお誘いが必ずあるだろうに。


「ラン達は?」

「ああ。ランとルネはクラスの手伝い。ザウルは他のお嬢さんに誘われてダンス。カールは……あいつは学園祭なんてくだらないって、一人で読書中だ」


 イアンも、当然の如くお誘いがあったのだが、何とか躱していた所であった。上手い断り方が思い浮かばなかったのであろう、ザウルには気の毒だが。

 やはり、女生徒達の猛攻ともいえる熱烈なアピールは休む事を知らないらしい。


 イアンの説明に納得している間にも、二人は一緒に次々と課題をこなしていった。その間にも、のほほんとしたセリアは、あちこちをふらりとし、物珍しげに殆どのクラスを覗いていく。楽しそうなのは良いのだが、どうも迷子になりそうだな、とイアンは思った。


 学園の中なのだからそれは絶対に有り得ないのだが、そんな当たり前の事を忘れ去れる程、セリアはフラフラと不規則な動きを繰り返している。押し寄せる人波にのまれそうになるセリアを見ては、自身がそれを掻き分けて近くへ行くわけだが。

 なんとなく、ザウルが放っておかないのも分からないでもない。というより、真面目な彼のことだ、どうしても気になってしまうのだろう。かく言う自分も、どうしても目が離せないのだから。


 それにしても、セリアは見れば見る程掴めない少女である。始めて見た時は、キリリとして自分の友人達の間に勇ましくも割って入った。その時は正に凛々しいとか勇ましい等の言葉が似合う姿であったにも関わらず、今はこうしてまるで子供の様に学園の行事を楽しんでいる。

 その事を言っても、彼女はまたきょとんとした顔で、「そう?」と平気で聞くのであろう。

 そもそも、こいつの存在がどれだけ自分達にとって斬新かを、こいつは少しも理解していないだろう。だからザウルが必要以上に彼女に構っているのにも気付かないのだ。実際、そこまで構っている訳ではなく、イアンの目にそう映っているだけなのだが。

 鈍感なのは構わないが、少しは自覚を持って欲しい。こちらはこれほどまでに内を掻き乱されているのだから。そう考えると少々苛々してくる。


 ……とそこまで考えイアンは我に返った。何故自分が苛立つ必要がある?と自問してみるが行き着いた答えに愕然とした。

 いやいや、何かの間違いだろう。そうだ。これは、ザウルのセリアへの接し方が焦れったいので苛々していただけだ。そうに違いない。と無理やり結論づける。つい先程、必要以上に構っているといっていたのに。

 一人で、唸ったり頭を抱えたりを繰り返すイアンに全く気付く事なく、セリアは目の前の課題に集中していた。





「残りも少なくなってきたな。次はここか」


 そう言ってイアンが立ち止まったのは、大きく『ホラーハウス』と描かれた看板の前。課題は一目瞭然。恐らくこのホラーハウスの出口に印が設置されているのだろう。といっても、流石フロース学園の出し物。手抜きは一切入っていない。外のデザインにもかなりこだわりが見れるので、中もそれなりの物が期待できそうだ。


 早速入ろう、と隣にいる少女に声をかけたが、返事が無い。「どうした?」と肩を軽く叩いてみるが、全く無反応。どうしたのだろうかと思い顔を覗き込めば、血の気が引いて青くなっている顔が現れた。


「もしかして、こういうの……」

「………苦手…です」

「………………」


 まさかここに来てこのような関門が待ち受けていたとは。どうしたものか、とセリアは頭を悩ませた。

 昔から、幽霊やお化け等の類いが全く駄目だったのだ。これは、苦手とか嫌いとかいう次元を超えて、生理的に受け付けないのである。


 しかし、ここで引き下がるのも出来ればしたくない。枠はもうすぐ埋まるのだ。一度始めたのだから、達成したいではないか。と、余計な意地で引くに引けず、セリアはジリジリとホラーハウスの扉に手をかけた。

 数分後、ホラーハウスの中から奇妙な悲鳴が響く事になる。





「ぎょええええええええ」

 セリアは薄暗い部屋を一生懸命早足で突き進む。その後を追うイアンもどうしたものかと参っていた。ここで「キャー」とか言って自分に抱きつきでもすれば可愛い物を。なんとも奇妙な悲鳴を挙げながら蹲ったり走り回ったりでどうしようもない。


 時折、前を見ずに走るからか、壁に勢いよく激突している。駆け寄ろうとするが、誰かが近付く気配すらも恐ろしいのか、その度にまた悲鳴を挙げられるので下手に近づけない。

 

 驚かすのが仕事なのだろう色々な物に扮した生徒達も助けようとするが、メイクされた顔を近づければ再び逃げられるのだ。しかも、わけも分からず動き回るので、全く出口に辿り着く気配が無い。ここまで苦手なのなら、何故来たのだ。たかだか学園祭の催し程度で。


 と思っている内にも、数メートル前でセリアが激しく転んだ。もう見てられん、といった風にイアンは走り寄り蹲るセリアの背中とひざ裏に腕を回し軽々と抱き上げた。


「ぎゃあああああああ」

「俺だ。大丈夫だから暫く目と耳塞いでろ」


 セリアをお姫様抱っこした状態のイアンは足早に出口に向かう。その途中でも、係の生徒達が心配気な視線を送って来る。


 出口の扉を蹴り開ける勢いで出たイアンは早速好奇の視線に晒されてしまった。ホラーハウスの中から奇妙な悲鳴が聞こえた時点で興味をそそられた者達がジロジロとその出口を興味深げに見張っていたのだ。そこから出てきたのが、震える少女を抱いたマリオス候補生ともなれば、一気に注目を浴びるのは当然である。

 その視線にも苛立ったが今はセリアを落ち着かせるのが先と腕の中の少女にイアンは視線を移した。


 明るい場所に出て幾らか落ち着きを取り戻し、無事ホラーハウスを抜けれた事に安堵感を覚えたセリアは大きな溜め息を一つはあっと吐いた。しかし、気分は一気に急降下でかなり辛い。極度の緊張感からか吐き気がする。


「お前、もう今日は寮に帰った方が良いぞ」


 イアンの言葉に思わずばっと顔を上げる。冗談ではない。なんの為にこんな思いまでしてここに入ったのだ。全ては印を集める為ではないか。こんな所で諦めるなど、したくはない。


 渋るセリアを見たイアンが、止めの一言を発する。


「でも、似たようなのがあと二つはあるぞ」

 その言葉に紙を見ると、確かに、同じように恐怖を煽るようなものが無情にも二つ残っている。

「……無理」


 先程までの威勢や決意は何処へ行ったのか、セリアは諦める事にした。しかも、ホラーと聞き先程の情景が思い起こされ、吐き気がぶり返してくる。流石に気分も悪いので、ここは やはりイアンの言う通り、寮へ戻って休む事にした。






 余程悔しかったのか、紙を未だ握りしめながらトボトボと寮に入って行くセリアを見送って、イアンは急に笑いがこみ上げてきた。後先考えず、学園祭如きにあれほどムキになるなど、まるで子供である。


 そして恐らく、彼女の苦手な物を知っているのは自分だけであろう。こんな事が起きない限り、知り得ない彼女の一面だ。そう思ったら、何故だか無性に嬉しくて笑ってしまう。


 遠くの方から聞こえる、毎年の学園祭での恒例行事を知らせる鐘が聞こえたので、イアンも来た道を引き返した。









「今日はフロース学園の学園祭に参加してくれた事を感謝する。みなのお陰で今年も成功を治めることが出来た。これより、最後の趣向であるダンスを始める」


 毎年学園祭の最後には、中庭に設置された広い舞台の上でのダンスが行われる。といっても、やはり貴族の生徒達が通う学園、ダンス一つでも十分華麗だ。


「その前に、ここで今日の印集めの勝者を発表する」


 校長がそういって一枚の紙を取り出すと、十二人の名前を読み上げた。名前を呼ばれた者は校長がたっている舞台の上に乗るのだが、何故だか全員女生徒であった。その全員が達成感に浸っている顔をしている。


「なお、景品はこれから行われるファーストダンスへ加わる権限とする」

 瞬間、ザワッと観衆がざわめき始めた。

 毎年、学園祭で最初の曲を踊るのは、マリオス候補生と決まっており、それをファーストダンスと呼ぶ。つまり、ファーストダンスに加わるという事は、必然的に一曲でもマリオス候補生のダンスのパートナーとなる事を意味する。


 舞台の上にいる校長を眺めながら、クルーセルはクスクスと笑っていた。女生徒達による強い希望で、なにかしら催しを決め、その上位の者にファーストダンスを踊る権限を与える事になったのだ。初めから景品狙いの殆どの女生徒は、それはもう凄い早さで課題をクリアしていった。なので、上位十二名はあっという間に決まった。


 自分の横で渋い顔をして眉間に皺を寄せている同僚にも、つい笑みが漏れてしまう。それでジロリと睨まれても気にしない。

 いつになっても、恋に燃える女生徒とは恐ろしいものである。




 舞台の上にいる者を確認して、少し複雑な顔をしたザウルをイアンは目敏く見つけた。これは完全にセリアが居ない事にがっかりしたのだろう。

 その後も周りをキョロキョロとするザウルに、セリアは寮に帰ったと教えてやると、一瞬落胆した顔を見せた後、「そうですか」と答えた。

 やはり彼の気持ちは分かりやすい。先日聞いた時には分からないと言っていたが、もう答えは出ていると見て良いだろう。しかし、それを知っても応援する気になれないのは何故だ。



 それぞれ複雑な想いを抱えたまま、学園祭は終わりを迎える。その間も、寮の自室でウンウン唸っているセリアの姿があった。




嫌だ!絶対に嫌だ!学園祭が終わったばかりなのに、なんであんな祭りを祝わなきゃいけないのよ!というより、意味の無い祭りだ。絶対に。

参加なんか絶対したくない。なんでこの学校はこんなに行事が多いんだ。でも逃げる事も出来ない。

ああ、もう!そもそも、なんであんな物がこの世に存在するんだ。

子供っぽいといわれても、嫌いなんだから仕方ない。

絶対に嫌だ!!

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