第27話 騎士と目的
無事にクリエントが駆け出したことを確認すると、リヒトは安堵の息を吐き、目の前に立つヴァロワ家の皇子――ケイト・ヴァロワへ意識を集中させた。
逃げられたことで若干の苛立ちは見せたが、ケイトはすぐに落ち着きを取り戻し、シルバーナイフを構える。
――さすがに冷静に対処するか。少しでも取り乱してくれた方が良かったのだが……。
内心で舌打ちしつつ、リヒトもすぐに剣を構え直す。
互いに一切警戒を解かず、隙を見せない。
少しでもケイトが、目的であるクリエントへ意識を向ければと思う。
だが、その隙を見せる相手ではない。
リヒトは静かに地面を踏みしめた。
――隙を見せないなら、作るしかない。
冷たい風が二人を包む。
静かな空間。
緊張の糸が限界まで張り詰め、今にも切れそうだった。
その均衡が崩れた瞬間――
「――っ」
――ダンッ!!
先に動いたのは、ケイトだった。
地面が抉れるほど強く蹴り、一気に間合いを詰める。
リヒトは即座に剣を水平に構え、受け止めた。
――ガキンッ!
金属音が森に響く。
体格差がある。
力ではリヒトに勝てない。
それを瞬時に理解したのか、ケイトはすぐに連撃へ切り替えた。
速い。
だが軽い。
全てを受け止めながらも、リヒトは徐々に後退する。
勢いは止まらない。
それでも冷静に軌道を読む。
――速さはあるが、力がない。
速さでは敵わない。
ならば力で崩す。
そう判断したリヒトは、鋭く息を吐いた。
シルバーナイフが振り上げられる。
その瞬間を待っていた。
再び水平に受け止め――力任せに押し返す。
「っ!」
ケイトの身体が浮く。
すぐに体勢を立て直そうとするが、その隙を逃さない。
一気に踏み込み、上から剣を叩きつけた。
頭上で受け止めるケイト。
だが、力の差は明らかだった。
顔がわずかに歪む。
「――なぜ、そこまでして、お前は守ろうとする」
突然の問い。
一瞬だけ意識が揺れる。
だが、力は緩めない。
「あそこは、私にとって安らぎの場所だからだ」
「そうか」
押し合いの最中、ケイトがシルバーナイフをわずかに傾けた。
重心がずれる。
リヒトは即座に踏み直したが、その一瞬でケイトは抜け出していた。
舌打ち。
再び剣を構える。
「――そんな安い理由なら、こちらも遠慮しない」
「安い理由だと?」
リヒトのこめかみに青筋が浮かぶ。
冷静さがわずかに崩れる。
ケイトはその変化を見逃さず、口角を上げた。
シルバーナイフが放たれる。
至近距離。
だが、その程度なら弾ける。
剣を横へ薙ぎ払う。
――カランッ!
全てのナイフが地面へ落ちた。
その瞬間――違和感。
視線を戻す。
さっきまでいた場所に、誰もいない。
――いない? っ、後ろから気配!!
反射的に振り向く。
眼前に――切っ先。
避けられない。
――ザシュッ。
・
・
・
森を抜けた先には、大きな城を中心に賑わう街が広がっていた。
歩く人々の表情は明るい。
活気がある。
その空気が、入口に立つ僕にも伝わってくる。
……本当に、追われている僕がこんな明るい街へ入っていいのだろうか。
不安で立ち止まる。
すると腕の中のクニーがこちらを見上げた。
『早く行かねばならぬのではないか?』
「そうなんだけど……」
……そうだ。
行かなければならない。
早く現状を伝えないと。
街へ入り、城へ向かう。
人通りが多い。
これまで人と関わることを避けてきたせいか、少しだけ人酔いする。
けれど止まれない。
歩き続ける。
やがて城門へ辿り着いた。
門の前には二人の護衛。
――そうだ。
僕なんかが入れるのだろうか。
この街に来たこともない。
名前も顔も知られていない。
赤の他人だ。
普通なら、こんな簡単に城へは入れない。
まして、ご令嬢であるエレナ様に会うなんて。
これでは、リヒトさんの指示を果たせない。
どうする。
考えないと――。
「――あら? いかがいたしました?」
後ろから女性の声。
振り向くと、最初に目に入ったのは、ピンク色の髪と、空色の瞳だった。
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