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森の創造館の主は、今日も騎士を癒している  作者: 桜桃
癒しの場所を守り続けます

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第26話 僕と騎士と約束と

 後ろから迫っているのは、小柄な男性だった。

 真っすぐ、こちらへ走ってくる。


 距離が、縮まっている――!!


「リヒトさん! 僕を下ろしてください!」


「駄目だ! 貴方の足では、すぐに追いつかれる!」


 そうかもしれない。

 けれど、このままではリヒトさんが危険な目に遭ってしまう!!


 再び後ろを向くと、もう姿がはっきり確認できるほど距離が詰まっていた。


 リヒトさんより白い髪。

 黒いシャツに黒いズボン。

 身軽な服装。


 赤い瞳が真っすぐ僕たちを見据え、その手には何かを――っ!?


「リヒトさん! 後ろの人、何か構えています!」


 僕の声にリヒトさんが振り返る。

 同時に、相手が手にしていたものを投げた。


 片手で僕を抱えたまま、振り返りざまに剣で――カキンッ!!


 金属音。


 弾かれたものが地面に落ちる。


 カラン、と転がったそれは――銀のナイフだった。


 リヒトさんが足を止める。

 追ってきていた男も、同じように足を止めた。


「…………」


 赤い瞳で、じっと僕たちを見る。


 何も言わない。


 その沈黙が、逆に怖い。


「…………一回しか言わない」


 右手を前に出し、鋭い視線を向ける。


「お前が抱えているその男、こちらに寄越せ」


 やっぱり――僕が狙いなんだ。


 でも、何で僕なんだ。

 確かに、創造したものを作れるのはチート級かもしれない。


 けれど、それだけだ。

 他には何もできない。


 本当に、できないんだ。


 僕を狙う意味が分からない。


「こちらも一回しか言わない」


 リヒトさんの腕に力が込められる。


「絶対に、こいつは渡さない」


 剣を構え、切っ先を男へ向けた。


「そう。予想していたから別に構わない。それなら、力づくで奪うのみ」


「させない」


 僕を地面へ下ろし、リヒトさんが前へ出る。


「クリエント。ここは私が足止めをする」


「え……」


「ここからオルレアン家までは走ればすぐだ。行ってくれ」


「なっ、それって、リヒトさんを置いて行けってことですか!? そんなの――」


「時間がない!」


 ――っ。


 強い口調だった。

 こんなふうに言われたのは初めてだ。


 リヒトさんはケント・ヴァロワを見据えたまま続ける。


「お願いだ。オルレアン家に着いたら、エレナ様へご報告を」


「報告……?」


「現状の報告だ。エレナ様に伝えれば、オルレアン家は動く」


 藍色の瞳が、鋭く細められる。


「今、ヴァロワ家が単体で動いているとは思えない。必ず大勢が動く」


「……っ」


「戦争になる可能性が高い」


 戦争。

 その言葉に息が止まる。


 そんなこと、嫌だ。

 でも、僕には何も――そうだ。


「リヒトさん、なら、約束です!」


 言いながら、僕はリヒトさんに後ろから抱き着いた。


「絶対に、また僕のもとに来てくださいね!」


 見上げると、リヒトさんは驚いたように目を開く。

 だが、すぐに頷いた。


 僕をやさしく引きはがし、リヒトさんは前を見る。


「頼んだぞ、クリエント」


「あっ、リヒトさん!」


 返事をする前に、リヒトさんが地面を蹴った。


 一気に距離を詰め、剣を振るう。

 けれど相手も戦闘に慣れていた。


 軽く身をひねって避け、腰の剣を抜く。


『主よ、これはリヒトに従った方がよい』


「でも……、やっぱり。リヒトさんを置いていくなんて」


『主』


 っ、クニーの声が硬い。


『厳しいことを言う。お主がここにいて、何ができる?』


 ――――っ。


 二人の動きは、もう目で追えない。


 鉄同士がぶつかる音だけが響く。

 何が起きているのか、分からない。


 確かに、戦えない僕がここにいても邪魔になるだけ。


 それなら――。


『……主、何か勘違いしているようだが』


「えっ」


『リヒトは、主を邪魔だと思って向かわせたのではない』


「……」


『信じたのだ』


「し、信じた?」


 そ、それは、どういうことだろうか。

 リヒトさんは、僕を逃がすために――……


『リヒトは、主に逃げろとは言わなかっただろう。逆に、頼みごとをした。それは、信じていなければ出ない言葉だ」


「っ!!」


 ――そうだ。


 僕は、報告しなければならない。

 今以上に大きな戦いになる前に。


 オルレアン家の令嬢へ現状を伝え、援軍を求める。


 それが、今の僕にできることだ。


 確かに、戦闘では足手まといだ。

 でも、それでもできることはある。


 今は、リヒトさんに託された役目を果たさなければならない。


 地面に座っている暇なんてない。


 立たなければ。


 僕は前線で戦うのではなく――裏方で戦う。


「――ありがとう、クニー!! 行こう!!」


『うむ!』


 クニーを抱きかかえ、案内されるままオルレアン家へ走る。


 後ろで「待て」と声が聞こえた気がした。

 けれど、それは鉄のぶつかる音にかき消された。


 気になる。

 でも、後ろはもうリヒトさんに託した。


 信じる。


 だから僕は、今の僕にできることをする。


 前世では何もできなかった。


 そんな僕でも、今は走れる。


 話せる。


「絶対に、報告する!!」

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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