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森の創造館の主は、今日も騎士を癒している  作者: 桜桃
第一章 癒しの時間をお届けします

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第2話 僕と騎士様

 二階へ案内したリヒトさんを椅子へ促し、おすすめの本を一冊手渡す。


「こちらは最近創造した物語です。心が癒やされる、ほのぼのとしたお話ですよ」


 僕の魔法――創造は、頭の中で思い描いたものを具現化できる、かなりチートな力だ。


 館にある本は、僕が生前読んでいた本を思い出して作り出したもの。

 病院生活が長く、体を動かせなかった僕は、本ばかり読んでいた。


 何百冊と読んできたから、再現できる本も多い。

 けれど、さすがに限界が見えてきた。


 一階の本棚は埋められたけれど、二階はまだ余裕がある。

 埋めたい気持ちはあるけど……正直、もう出し尽くした感があるんだよなぁ。


 僕が考え込んでいたからか、リヒトさんが本から顔を上げた。


「どうした、クリエント」


「あ、すみません。少し考え事を……」


「考え事?」


 僕がうなずくと、リヒトさんは本を静かに閉じ、テーブルへ置いた。

 そして体ごとこちらを向き、僕を見上げる。


 ど、どうしたんだろう。


 お客様の前で考え込んでしまい、気分を害してしまっただろうか。

 謝ろうと口を開いた瞬間、リヒトさんが僕の右手を掴み、ぐっと引き寄せた。


「わっ」


「クリエント、何を考えていた?」


 藍色の瞳が、真っ直ぐ僕を映す。

 腰に手を回され、身動きが取れない。


 視線に捕らえられたまま、逸らすこともできない。

 緊張のせいか、喉が詰まり、頭が真っ白になる。


「クリエント、俺には話せないか?」


「い、いえ……あ、あの――」


 必死に言葉を探していると、ふいにリヒトさんが視線を横へ向けた。

 拘束が解けたのに、なぜか少し寂しい。


 同じ方向を見ると、柵の上にクニーが座り、じっとこちらを見ていた。


 ……なんか、訴えている。

 とても強い目で、何かを。


 するりとリヒトさんの腕から抜け、クニーを抱き上げると、ぷいっと顔を逸らされた。


「怒ってるの? クニー」


『怒っておりませんよ、主。ただ、仲睦まじいなぁと思っただけでございます』


 いやいや、完全に怒っているよね?

 これまでも、リヒトさんが来るとクニーは少し不機嫌になる。


 苦手なのかな。でも、ひどいことをされた様子もないし……。

 首を傾げていると、いつの間にかリヒトさんが背後に立っていた。


 顔を上げると、藍色の瞳と目が合う。


 ――ドキッ。


 心臓が跳ねる。

 けれどリヒトさんはすぐに視線を外し、僕の腕の中で鼻を鳴らしているクニーを見つめた。


「…………」


 無言で見つめ合う一人と一匹。


「あ、あの?」


「……それで。俺には言えない悩みか?」


 結局クニーには何も言わず、僕に問い直してくる。


「あ、えっと。本を作るのが難しくなってきてしまって」


「難しい?」


「はい。今までは僕が読んできた本を再現していたのですが、もう作り尽くしてしまって。でも、二階の本棚はまだ空きがあるので……埋めたいな、と」


 壁一面の本棚。

 本立てで倒れないようにしているけれど、できれば隙間なく本で満たしたい。


 できれば、再現ではなく、新しい物語を読みたい。

 でも僕はこの世界のお金を持っていないし、街にも行けない。


 そう思っていると、リヒトさんが僕の腰に手を回したまま、顎に手を当て考え込んだ。


「――それなら、私の休暇の日に街へ出よう」


「え、いいのですか?」


「ああ。本屋も多い。きっと、君も楽しめる」


 柔らかな笑みを向けられ、胸が高鳴る。

 この世界に来てまだ数か月。

 街へ行ったことがないから、本当に嬉しい。


 ……あ、でも。


「あの、すみません。僕、お金を持っていなくて……」


「それも問題ない。私が出そう」


「え、それはさすがに申し訳ないです!」


「構わない。私には金の使い道があまりない。こういう時のためのものだ」


 でも、それは……。

 せっかくの休暇を使ってくれるだけでも十分なのに、さらにお金まで。

 困っていると、リヒトさんが別案を出した。


「では、これまで癒やしの時間をくれた礼、というのはどうだ?」


 館を作ってすぐ、リヒトさんはここを見つけてくれた。

 それ以来、通ってくれている。


 本を勧め、話をして。

 その時間は、僕にとっても癒やしだった。


 もう十分お礼はもらっている。

 けれど、ここで強く断るのも失礼かもしれない。


「……それなら、よろしくお願いします」


「ああ。任せてくれ」


 微笑み合った、その瞬間。

 我慢の限界とばかりに、クニーが僕の腕から飛び出した。


 そして――なんと、リヒトさんの顔へ蹴りを放とうとした。


「クニー! 駄目!!」


 止めようとしたけれど遅い。

 クニーの足が――


 ――スカッ。


『――プゥ!!』


「甘いぞ、兎」


 あっさりと避けられた。


 騎士なのだから当然かもしれないけれど、あまりにも軽やかだ。


 その後もクニーは何度も蹴りを繰り出すが、リヒトさんは赤子をあやすようにすべて受け流す。


 その光景があまりにも可笑しくて、思わず笑ってしまった。


ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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