第10話 僕と約束
驚いているサグラモールさんは、クニーを指差しながら口をパクパクさせている。
「ま、まさか……こいつ、モンスター?」
──ゲシッ!
「クニー!? なんで蹴ったの!?」
いきなりクニーがサグラモールさんの顔を蹴った。
慌ててクニーを抱き上げるが、鼻息が荒い。
「す、すいません! 本当にすいません! まさか蹴り飛ばすなんて……。普段はこんなことしないのに……」
やばい。騎士様を怒らせてしまったかもしれない。
もうここには来ないと、こんな暴力的な場所には来るものかと、思われてしまったかもしれない。
「クニーも謝って!」
『我は何も悪くない』
「蹴っ飛ばしたのは悪いことだよ!」
僕たちの声が聞こえたのか、モナ様とリヒトさんがキッチンへやってきた。
「何があった?」
「どうしたのかしら?」
「え、えぇっと……。く、クニーが……その……サグラモールさんを……」
サグラモールさんは直撃を受けたのか、まだしゃがみ込んで顔を押さえている。
誤魔化すことはできないし、誤魔化してはいけない。
「すいません。クニーを紹介しようとしたら、なぜかサグラモールさんの顔を蹴ってしまって……。本当に申し訳ありません!」
腰を折り、二人にも謝罪する。
何か言われる覚悟をしていたが、返ってきた言葉は予想外だった。
「また、サグラモールが何かしたんだろう」
「まったく。サグラモール、私の騎士として情けないわ。何をしたのかは分からないけれど、謝りなさい」
え、え?
僕を怒るのではなく、逆にサグラモールさんに呆れている?
「あ、あの……」
「クリエントは気にしなくていい。おそらく、サグラモールが余計なことを言ったのだろう」
余計なこと……?
…………あっ、もしかして。
「クニー、もしかして、サグラモールさんがモンスターって言ったのが気に入らなかったの?」
そう聞くと、クニーはさらに鼻息を荒くした。
多分、当たりだ。
喋るうさぎって、普通に考えれば変だもんね。
モンスターと言われても仕方ない気がするけど……。
苦笑いしていると、リヒトさんが肩を落とした。
「やっぱりか。今回はサグラモールが悪い」
「で、ですが、蹴ってしまったこちらにも非があるので……」
「先に怒らせるようなことを言ったのはあいつだ。クリエントは何も悪くない」
まだ納得はできないけど、これ以上言うのも迷惑な気がする。
サグラモールさんはようやく復活したようだが、モナ様に何か言われている。
心の中で謝っておこう。
「まだ飲み物の準備はできていないみたいだな」
「あっ。す、すぐに準備します!」
「いや、、もうそろそろ時間が……。今日はここまでにしようと思う」
え、そんな……。
僕、何もおもてなしができなかった。
せっかくリヒトさんが来てくれたのに……。
それに、ご令嬢まで来てくれたのに、僕は何をしていたんだ。
落ち込んでいると、リヒトさんが僕の頭を撫でた。
「また来る。その時に、飲ませてくれ」
「は、はい……。よろしくお願いします」
「こちらこそです」
仕方ないよね。
次に来てくれた時には、すぐおもてなしできるよう準備しておこう。
そう決意していると、モナ様が隣に来た。
「今度、タイミングを見て私の城にいらっしゃい。もちろん、リヒトも一緒に」
「え、モナ様のお城ということは、クラウド家ですか!?」
思わず大きな声を出してしまった。
モナ様は落ち着いて頷く。
「私もですか?」
「リヒトがいた方が安心すると思うわ。でも、一度はサグラモールに話を通してちょうだい」
「わかりました」
リヒトさんが礼をして了承する。
そしてこちらを見て微笑んだ。
「クラウド家の書斎は以前見たが、本当にすごいぞ。クリエントもきっと興奮すると思う」
そ、そんなに?
「それはすごく気になります!」
「また予定を合わせて行こう」
「はい!」
本当に嬉しい。
早く行きたい。
でも焦ってはいけない。
気持ちを落ち着かせるため深呼吸をした――その時。
ふと、視線を感じた。
どこから?
周りを見ていると、リヒトさんが声をかけた。
「どうした?」
「――い、いえ」
リヒトさんたちは気づいていない。
ということは、気のせい?
その可能性もある。
でも……胸騒ぎがする。
ここで引き下がってはいけない気がする。
「――リヒトさん。さっきの話なんですが」
「さっきの話? 書斎に行こうという話か?」
「はい」
頷くと、リヒトさんは首をかしげた。
「どうしましたか?」
「あの……約束、してもいいですか?」
「約束?」
「はい。必ずクラウド家の書斎に一緒に来てくれるという約束です! だ、ダメでしょうか?」
自分で言っていて思う。
約束なんて、子供みたいだ。
でも、今はこれしか思いつかない。
リヒトさんを見上げると、数回瞬きをした後、クスッと笑った。
「よくわからんが……約束、いいな」
「っ! ありがとうございます!」
断られてもおかしくなかったのに。
安心していると、モナ様が近づいてきた。
「では、指切りげんまんをするのはどうでしょう」
「指切りげんまん?」
「知らないかしら?」
「いや、知ってはいるのですが……」
僕は知っているけど、リヒトさんは分からないらしい。
モナ様は自分の小指を絡めて見せた。
「このように小指と小指を絡めるの。そして“指切りげんまん”と歌う。最後に“指切った”と言いながら指を離す。約束の儀式よ」
「モナ様、その知識はどちらから?」
サグラモールさんが近づき聞いた。
「本で読んだの。一度見てみたかったのよ。さあ、早く」
真顔で急かされる。
リヒトさんが小指を差し出した。
「これでいいのか?」
「――はい」
僕も小指を立てる。
そして、リヒトさんの小指に絡めた。
――ゆーびきーりげんまん。
約束は、本当に果たされるのか。
――嘘ついたら。
いや、きっと大丈夫。
――針千本のーます。
この約束は、きっと果たされる。
――ゆびきった。
なのに、なんで。
胸騒ぎが消えてくれないんだろう。
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