第1話 転生後の安らぎ
透き通るような青空。
白い雲が風に乗り、気持ちよさそうに空の海を泳いでいる。
頬を撫でる風は優しく、僕の作った創造館の周りに立ち並ぶ木々も、心地よさそうに音を奏で揺れていた。
「今日も、あの人来てくれるかな」
館と呼んではいるけど、僕が作った創造館はそこまで大きくない。
むしろ隠れ家的な造りだから小さい。小屋と言ってもあまり違和感はない。
目の前に建つ木製の建物は、僕が創造の力で作り出した家だ。
外から見ればただの小屋。館と名乗るには少し大げさかもしれない。
でも、中はちゃんと“館らしく”している。
扉の横に木製の看板を置き、『open』と書かれた板を引っかけて準備完了。
あとは、自慢の館内を掃除するだけ。
扉を開けて中に戻る。
中は、温かみのある空間を意識して作った。
入ってすぐ、木の床と天井。
電球は明るすぎず、それでいて本を読むのに目に優しい明るさにしてある。
左右の壁にはたくさんの本棚。
料理本や写真集、小説や絵本まで、さまざまな本を揃えている。
奥には、角の方に螺旋階段がある。
二階にはテーブルと椅子を並べ、本をゆっくり楽しめる空間を作った。
癒しの空間と呼ぶなら、読書スペースは欠かせないよね。
二階には対面キッチンも、雰囲気を壊さないよう控えめに作ってある。
家具はすべて木製。
置物も控えめに配置し、少しでも温かいと感じてもらえるよう工夫した。
これは、すべて僕が創造で作った館。
箒で床の埃を払い、雑巾で拭く。
本棚の本もきちんと整える。
そこそこ広いから、一人で掃除するのは時間がかかる。
でも、この時間も嫌いじゃない。
蓄音機を鳴らし、穏やかな曲が流れる中で掃除をする。
それだけで、胸の奥がじんわり温かくなる。
僕は転生前、心臓が弱くて、病院と家を往復する毎日だった。
入退院を繰り返し、二十四歳で病に負けて死んだ。
次に目を覚ました時、そこは森の中だった。
服装は病院着ではなく、ワイシャツに黒いカーディガン。
着替えた記憶もないし、どうすればいいのか分からない。
そんなとき、目の前に現れたのが――
『主ー!! 掃除にどれだけ時間をかけているのですかぁぁぁあ!!』
「わっ!! クニー!!」
思い出に浸っていると、目の前に大きな兎の顔。
いきなり大声を出さないでよ……本当に驚くから。
黒いベストを着て、赤い瞳をこちらに向けているこの兎は、クニー。
僕の“使い兎”……らしい。
僕を召喚した召喚士の命令で、僕に仕えることになったらしい。
この世界のことや、なぜ僕が転生したのかも、全部クニーが教えてくれた。
「ふぅ、このくらいかな」
辺りを見回す。埃はない。
よし、これでお客様を迎える準備は――あ。
「僕も、髪くらい整えたほうがいいかな」
対面キッチンの近くにある全身鏡の前に立つ。
金糸雀色の猫っ毛に、金色の目。
視力が低いから、黒縁眼鏡をかけている。
服はクニーが用意してくれた、白いワイシャツと黒いカーディガン。
黒いパンツにビジネスシューズ。
腰エプロンを付ければ準備完了。
ここは隠れ家のような場所で、宣伝もしていない。
だから、人が来ない日も珍しくない。
それでも、なぜ森の中に館を作ったのか。
なぜこんなことをしているのか。
それは、召喚士がクニーに命じ、僕に癒しの空間を作ってほしいと言ったから。
理由はよく分からない。
でも、チート級の創造魔法を与えられたし……まあ、いいかと、今はこの生活を楽しんでいる。
それに、館の主をしていて――ある人と出会えた。
それだけで、ここにいる意味は十分だ。
「ふふっ」
『何を笑っているのですか、主』
「な、なんでもないよ!」
だめだ。
思い出しただけで顔がにやける。
頬を叩いて気を引き締める。
「よしっ!!」
――――カサカサ。
外から足音。
馬の足音だ。来てくれたんだ。
最近、毎日のように来てくれるお客様。
階段を下り、扉へ駆け寄る。
足音が止まるのと同時に扉を開けると、ちょうど騎士様が地面に降り立ったところだった。
「――驚いたな。気配を感じたか?」
「足音が聞こえたので、もしかしたらと思いお迎えしました」
オルレアン家の騎士、リヒトさん。
白銀の髪を後ろで一つに束ね、藍色の瞳は透き通るように美しい。
白を基調とした装いは貴族のようで、腰には剣。
文句なしに格好いい。
顔立ちも整っていて、同じ男の僕でも思わず見惚れてしまう。
「ん? どうした、そんなに見て」
「――はっ! い、いえ! なんでもありません! では、中へどうぞ」
「ああ」
リヒトさんは忙しい。
長居はできないけれど、それでも毎日来てくれる。
本を読んだり、少し話をしたり。
転生前の僕にはなかった時間。
だから、このひとときがたまらなく楽しい。
「今日は、どの本にしますか? リヒトさん」
「いつも通り、クリエントのおすすめで頼む」
「分かりました」
二階へ案内する。
――ここから、幸せな時間の始まりだ。
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