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炊事遠足

迎えた炊事遠足当日、バスの中では早速戦いが起こっていた。

「なんであんたが隣なのよ!」

「仕方ねえだろ先生が決めてんだから」

開始早々黒崎と霧島の2人はバスの席順で揉めていた。

「あんたでかいんだからもうちょっと窓側寄ってよ!」

「無茶言うなよこっちもギリギリなんだよ」

「こっちだってギリギリよ、ってきゃあっ!」

「おっと、!」

バスが揺れて思い切り霧島が黒崎の方に倒れ込んできたので、思わず黒崎は手で支えた。

「な、何触ってんのよ!!変態!!」

「いやお前が倒れ込んで来たんだろ!」

「相変わらず大変そうだね向こうは」

「そうだなー」

向かい側の席には痴話喧嘩を眺める星宮と蒼空がいた。

「玲奈っちのカレー楽しみだねー」

「別に委員長1人で作る訳じゃないからね!?」

「あれ、そうだっけ」

「大丈夫かなこれ、、」

行きのバスから幸先不安な蒼空であった。


「ようやく着いたわね」

「そうだな、、、」

キャンプ場が山道だったため、バスで体が揺れないように神経を研ぎ澄まさせていたため、もう既に疲れていた黒崎である。

「では皆さん、それぞれお昼ご飯を作り始めてください」

「「「はーい」」」

そうしてお昼ご飯作りが始まった。

「まずは野菜を切るわよ」

「はいよ」

霧島と黒崎は手分けして野菜を切ることにした。

「いやあいつら2人は?」

「知らないわよ、どうせいてもいなくても変わらないんだからほっときましょ」

蒼空と星宮の2人はどこか遊びに行ってしまった。正直あの2人に手伝わせる仕事があまりないのでとりあえず気にしないことにした。

「あんた、意外と料理上手いのね」

黒崎の切っている野菜の形を見ると、ばらつきなく切られた玉ねぎ、しっかり皮をむいたじゃがいもなどがあった。

「そりゃ一人暮らしだからな、俺でも自炊くらいするよ」

そう、黒崎は一人暮らしである。小さい頃から家によく親がいなかった黒崎は、自然と自分で料理をするようになっていたのだ。

「へえ、意外ね。てっきりカップ麺ばっかり食べてるものかと思ってたわ」

「節約しねえと金欠で死んじまうからな」

いくらアルバイトをしているとはいえ所詮学生のアルバイトだ。贅沢はしてられないのだ。

「そうなのね、っ痛!?」

「どうした!?」

突然大きめの声を出した霧島に黒崎は驚いた。

「ごめんなさい、ちょっと指を切ってしまって、、」

霧島の指を見ると血が溢れてきていた。

「ったく、、!よそ見してるからだぞ!」

どうやら黒崎の手元をばかり気にしていたせいで、自分の手元を見れていなかったらしい。

「ほら、絆創膏持ってるからこれ貼れ」

「あ、ありがとう、、用意周到ね、、」

霧島は、黒崎から貰った絆創膏を貼った。

「どうだ?大丈夫か?」

「ええ、大丈夫よ。続きやりましょ」

「いやお前は安静にしてろよ、万一そんな怪我した指でやったら危ねえだろ」

「いやでも、、、私がいなかったらあんた一人でやることになるのよ、、?」

「ん、カレーぐらい俺1人でも余裕だ」

「でもさすがに、、」

「いいから座ってろ、お前はいつもなんでも頑張ろうとしすぎなんだよ」

黒崎は霧島の肩を掴んでベンチまで戻そうとした。

「わ、わかったから!自分で戻るから!」

「それでよろしい」

「と、とりあえずそこで見てるから何かあったらなんでも言ってちょうだい」

「あいよ」

そうして黒崎は1人で黙々と作業し始めた。

(それにしてもほんとに手際がいいわね、、)

黒崎が1人暮らしなことは一応知っていたが、まさかここまで手際がいいとは思わなかった。大雑把で適当なイメージなので、ここまでテキパキできていることに心底驚いてる。

「じゃあ火起こすから怪我してない方の手でうちわでも仰いでてくれ」

「わかったわ」

確かにこれなら怪我してない方の手だけでできるので、指の被害もないし大丈夫そうだ。

「ほんとにごめんなさいね、、私がちゃんとしないといけないのに、、」

「なんだ?そんな落ち込んで、いつにも増して覇気がねえな。いっつも怖い顔で怒ってばっかなのに」

「一体私をなんだと思ってるの、、?さすがに今日は迷惑ばっかかけてるし怒れないわよ、、」

「ははは!なんかいつもは鬼みたいなのに今はしょぼくれた子猫みてえだな!面白え!」

「この火のついた炭をあんたに投げてやってもいいのよ」

「はい、すいません」

結構マジな顔とトーンで言われたので思わず謝罪した黒崎である。

一方その頃

「あの2人夫婦みたいだな」

「わかるー!なんか2人で支え合ってる感じする!」

料理出来ない組の星宮と蒼空は遠くで2人を眺めていた。

「喧嘩ばっかしてるけどなんだかんだ仲良いよねー」

「玲奈っち素直じゃないからなあー、素直になった玲奈っちはこの世で1番可愛いんだよ?」

「あ、はいそうすか」

「あ!めっちゃ興味無さそう!!」

いつも委員長にキツめに当たられる蒼空にとってはただの鬼のような存在なので、可愛いという言葉が微塵も出てこないのであった。


「うわー!!おいしそーーー!!!」

「だろ?」

長い戦いを経て、とうとうカレーが出来上がった。

「んじゃあ腹も減ったし早速食っちまうか」

「いただきまーーす!!」

「いただきます」

黒崎もお腹がすいたので早速食べることにした。

「うん、うめえな」

「おいしーね!!」

「そうね、しっかり美味しくできてるわ」

「苦労した甲斐があったね」

「蒼空はなんも苦労してないだろ」

「てへ」

「玲奈っちのカレーは世界1美味しいよ!」

「いや、私ほとんど味付けに関わってないから作ったのはほとんど黒崎君よ?」

「え?そうなの?」

霧島はせいぜい野菜を少し切った程度なので、米を炊くことや味付けにはほとんど関わっていない。なので味付けを作ったのはほぼ黒崎である。

「龍ちゃん結構料理上手いもんなー」

「へぇーー!そうなんだ!意外!でもなんで黒崎君が作ったの?班決めの時はめっちゃやる気無さそうだったのに」

「わ、私が指怪我しちゃって、、色々やって貰ってたのよ」

「そうなの!?怪我どこ!?!?舐めてあげる!!」

「キモイわよ!」

そうして全員大満足でカレーを食べ終え、炊事遠足は終わりを迎えた。

「いやーー!楽しかったねー!」

「僕もすごい楽しかった!」

「おまえらただ食ってただけだろ」

そうして黒崎のクラスは学校に戻るためバスに乗った。

「黒崎君、今日はほんとにありがとう。おかげで助かったわ」

黒崎がいなければとんでもない事になっていた気もするのでバスの中で霧島は黒崎に感謝を伝えた。

「黒崎君、、?」

しかし黒崎からの返答はない。思わず黒崎の顔を覗いてみるとそこには目をつぶって寝ている黒崎の姿があった。

「そ、そうよね、、ほとんど1人でやってたのだからそりゃ疲れるわよね」

更に申し訳ない気持ちになった霧島だが、ここで少しハプニングが起こった。

「!?!?!?」

なんと寝ている黒崎が霧島の肩にもたれかかってきた。

(しょ、しょうがないわね、今日だけ許してあげるわよ)

元はと言えば自分のせいでもあるので今日だけは寛容することにした。

(や、やっぱり顔はかっこいいのよね、、)

黒崎の寝顔を見て霧島はそう思った。

(私ってばなんでこんなやつの顔なんかまじまじ見てるの!?)

自分のした行動がめちゃめちゃ恥ずかしくなったと同時に、もたれかかられてるのもどんどん恥ずかしくなってきて、バスの中で悶えっぱなしの霧島であった。


おまけ 後日

「龍っちバスの帰りのこと覚えてる?」

「ん?帰りのバスのこと?」

「龍っちが玲奈っちの肩にもたれかかって玲奈っちの顔真っ赤だっt」

「あー!!!うるさいうるさい!!!」

実は隣でニヤニヤしながら眺めていた星宮であった。
















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