委員長と昼休みの勝負事
「おーい龍鬼帰るぞー」
そんな声が放課後の教室に響いた。
「ああもうこんな時間か、んじゃ俺帰るからまたな委員長」
放課後残っていた黒崎は、委員長と今日も勉強会をしていた。
「あ!何逃げようとしてんのよ!まだまだ時間あるわよ!!」
霧島は逃げるように机から飛び出した黒崎の袖を掴もうとした。
「あっぶね〜、んじゃばいば〜い」
「あ!こら!」
何とか抜け出した黒崎は友達と下校することにした。
「なあ、龍ちゃんって委員長と付き合ってんの?」
「は、?そ、そんなわけないだろうが」
そんな野暮なことを聞いてきたのは黒崎の幼稚園からの幼なじみ、山田蒼空である。とても背が低く、男だが可愛らしい顔をしているため女子にとても人気がある。
「えーいっつも一緒にいるのにー?」
「それはあいつが俺にちょっかいをかけてくるからであってだな」
「んー、でも龍ちゃん嫌がんないじゃん、だから好きなのかなーって」
「だからと言ってそうはならねえよ、ただの友達だ」
「それにちょっかいをかけてるって言うよりどっちかと言うと世話を焼いてくれてるって感じ?奥さんみたいっていうか」
「今すぐボコボコにしてやってもいいんだぞ?」
ニッコニコでからかってくる蒼空に少々イライラして思わず右手拳が出そうになった。
「それにしても龍ちゃんに仲のいい女の子の友達が出来て僕嬉しいんだよ?」
「なんでだよ」
「みんな怖がって龍ちゃんに近づかないからさ、龍ちゃんいい人なのにもったいないなあって思ってたし」
龍鬼は今までまともに女友達ができたことがなかった。顔も圧があって不良だと知れ渡ってしまっていたので、女の子はみんな怖がって誰も近寄ろうとしなかった。
「でも楽しそうに委員長と話してる龍ちゃん見ると、良かったなあって」
「別にそんなしんみりすることでもねえよ」
「楽しいのは否定しないんだ」
「今すぐ海に放り投げてもいいんだからな?」
「結婚式は呼んでほしいなあ」
「ぶっ殺す」
黒崎は山田蒼空には勝てないのであった。
「昼休みも寝ているなんて相変わらずね」
とある日の昼休み、机に突っ伏して寝ているところを霧島にちょっかいを出された。
「うるせえよ、ほっとけ」
「あら、暇そうな坊やと遊んであげようと思ったのだけれど?」
そういう霧島の右手には、トランプがあった。
「委員長は大人しく1人で勉強でもしてろよ」
「わ、わざわざ昼休みにまで勉強しないわよ!」
「素直に一緒に遊びてえって言えばやってやるんだけどな〜」
「な、!そんな、別に遊びたい訳じゃ、、!」
霧島は露骨にあたふたしだした。
「遊びたくねえなら寝るからどっか行ってくれ」
「あーもう!暇なのよ!だからババ抜きで勝負よ!」
「はぁ、しょうがねえなあ」
「負けた方はアイス奢りよ?」
「お、ありがとありがと」
「なんで私が負ける前提なのよ!」
プンスカ怒ってる霧島を横目に黒崎はカードを配り始め、ババ抜きを開始した。
(開幕ババはないな)
そう思っているとその目の前でババを引いて震えている霧島がいた。
「委員長がババか」
「ち、違うわよ!!」
「いや2人しかいねえんだから俺じゃなかったら委員長しか持ってるやついねえだろ」
「う、、それはそうね、、」
「んじゃ委員長からどうぞ」
「見てなさい、速攻で上がってやるわよ」
そうしてどんどんカードが無くなっていき、1度もババが移ることなく黒崎が勝利した。
「どうしてよ、なんでこんなにもババが移らないのよ、、」
「だって委員長、俺がババを取ろうとしたら顔ちょっとにっこりしてるし」
「は!?顔ばっか見ないでよ変態!」
「いやそういうゲームじゃねえのこれ」
「いやーお熱いっすねーお2人さん」
プンスカ屁理屈を言う霧島の隣に、蒼空がやってきた。
「昼休みに2人きりでババ抜きとか仲良しだねえ」
「こいつが勝手に始めただけだ」
「あんたがやりたそうな顔をしているから付き合ってあげただけよ」
「うわめちゃくちゃだこいつ」
霧島のむちゃくちゃ理論に少々引いた黒崎である。
「え?付き合ってる?」
「こいつの方がむちゃくちゃだ」
もっとむちゃくちゃなことを言ってるものもいた。
「だっていっつも一緒にいるのにさあ、どちらにもその気がないなんてなあ、信じ難いなあ」
「うるさいわよチビ」
「おい、それはライン越えだぞ」
「間違えたわ、どチビね」
「もっと酷くなってる!!」
委員長にボコボコにされる蒼空であった。
結局ボロ負けした霧島は、放課後黒崎にアイスを奢るため2人でコンビニに来ていた。
「もう、なんであんたこんなにも強いのよ、、」
「いや、俺が強いというより委員長が弱すぎるというか」
ババを掴んだら一瞬で顔に出るため負けるわけが無い。むしろ負けてやろうかとも思ったがそれはそれでウザそうなので普通に全勝した。
「でも私友達とのババ抜き全然負けたことないのに、、」
「弱すぎて手加減されてんじゃね?」
「そ、そんな事ないわよ!きっと!」
あまりにボロボロに負けすぎたので、はっきりと否定できなかった。
「はあ、ほら何のアイスが欲しいのよ、早く選んで」
「ん、じゃあポピコにしようかな」
「はいはい、わかったわよ」
そうして霧島はポピコを買い、黒崎の元に戻った。
「ほら、勝者のアイスを存分に楽しみなさい」
「ん、半分やるよ、ほら」
「え!?い、いらないわよ!負けたのに貰うなんてなんかみじめじゃない!」
「アイス食いてえからババ抜きしたんだろ?別に俺そこまで食いたくねえし、なんなら全部やるか?」
元はと言えば勝手に罰ゲームを付けたのは霧島の方だ。黒崎は別にアイスを食べたくてババ抜きをしていたわけではないので特にこだわりはなかった。
「わ、わかったから!半分だけでいいわよ!」
「ん、敗者のアイスを存分に楽しめよ〜」
「う、うるさいわよ!!」
霧島は怒りながらアイスを頬張った。
「あ、そんなに一気に食ったら、、」
「あたまいたい!キーンってする!!」
「ほら言わんこっちゃない」
霧島は頭を抱えその場でくるくる回っていた。
「ふははは!やっぱ委員長面白いな!」
「うるさい!そ、そんなことより!どうよアイスは、美味しい?」
「ん、人の金で食うアイスは美味えぞ〜」
「ふん、別にアイスぐらいならいつでも奢ってあげるわよ?」
「でも委員長バイトしてないし俺の方が多分金持ってるぞ?」
黒崎は高校に入った頃からずっとバイトをしているので、遊ぶ金には困らない。一方で委員長は学業専念のためバイトをしていないので、親のお小遣いでやりくりしているらしい。
「あら、毎日アイスをご馳走してくれるって?」
「んな事は言ってねえよ」
「それじゃあ今度は神経衰弱で勝負よ、頭を使うゲームなら負けないんだから」
「あ、ご馳走様です!」
「だからなんで私が負ける前提なのよ!!」
やっぱり黒崎にはまだ勝てなそうな霧島であった。




