風邪と抱擁
次の日、黒崎は早めに学校に来ていた。
「とっとと上着返してもらわねえと、、」
昨日霧島に貸した上着を返してもらうためだ。
「誰かに見られたら何かめんどそうだし、、」
霧島に上着を返してもらっているところを蒼空や星宮に見られたらめんどくさそうなので早めに返してもらいたいのだ。
「あれ?委員長いねえな」
教室に入っても委員長はいなかった。委員長はほとんど毎日1番に来ているのでもう来ているかと思ったが、教室に委員長はいなかった。
「んまあたまには遅れてきたりもするか」
そう思っていたが、徐々に教室に人が集まりホームルーム開始のチャイムが鳴った。
(結局来なかったな)
そう思っていると担任からのお知らせがあった。
「霧島は今日風邪でお休みだ」
どうやら霧島は今日休みらしい。
(ったく、、だから言ったのに、、)
昨日はびしょ濡れだったので風邪を引かないか心配だったが、案の定であった。
(まあ仕方ねえ、、次来た時返して貰うか、、)
いないものは仕方ないので今は潔く諦めることにした。
昼休み、一人で昼食を食べていると、隣に蒼空がやってきた。
「龍ちゃん委員長いなくて寂しい?」
「あ?」
急に言われた言葉に対して黒崎は蒼空を睨んだ。
「今日は愛しのガールフレンドがいなくて残念だね」
「ぶっ殺すぞお前」
ニヤニヤしながら煽る蒼空に思わず手が出そうになった。
「まあまあ落ち着いてよ龍っち!」
「今度はなんだ?」
その間に入ってくるように今度は星宮がやってきた。
「玲奈っちのプリント玲奈っちの家まで届けてきてよ!」
星宮の手には宿題などのプリントがあった。
「なんで俺なんだよ、お前が行けばいいだろ」
「うちバイトだからさ!それに龍っちなら玲奈っちの家もわかるだろうし!」
「めんどくさいな、、、いや待てよ、、?」
黒崎は閃いた。
(ついでに上着も受け取りに行けばいいのでは?)
プリントを届けに行くついでに上着も受け取れば今日の目標は達成出来る。更に誰かに見られる心配もないので一石二鳥だ。
「わかった、俺が持っていく」
「なんだ?急にやる気満々じゃん」
「まあ、どうせ今日は暇だったしな」
「あ、風邪で弱ってるからって玲奈っち襲っちゃダメだよ?」
「んな事するわけねえだろ!」
やはりこの2人には終始いじられっぱなしの黒崎であった。
「さて、着いたな」
放課後、黒崎はプリントを届けるのを口実に上着を受け取りに霧島の家にやってきた。
「おーい、いるかー?」
ピンポンを鳴らし霧島を呼ぶと、しばらくしてドアが開いた。
「よう、プリント届けに、!?!?!?」
「はあ、はあ、、」
ドアが開いた瞬間明らかに体調の悪そうな霧島が黒崎の体へと倒れ込んできた。
「おい!大丈夫かよ!」
「だ、大丈夫、、、ちょっとクラっとしただけ、、」
「歩けるか?とりあえず部屋まで戻んねえと」
「はあはあ、、、歩ける、、、」
「いや絶対無理だろ!」
どう考えても1歩でも動いたら倒れそうなくらいにふらついていた。
「くそっ、、しょうがねえな、、、とりあえず今は許してくれ」
そう言って黒崎は霧島をお姫様抱っこのように抱えた。
「部屋はどこだ?」
「真っ直ぐ行って、、、右、、、」
「ここか、ほら下ろすからベッドで横になれ」
「うん、、、」
霧島をベットに下ろし布団をかけた。
「家に誰もいねえのか?'
「うん、、、」
「リビングの冷蔵庫勝手に漁るけどいいか?」
「うん、、、」
そうして黒崎はリビングから親が買ったであろうゼリーと飲み物を取り出した。
「ほら、とりあえず飲み物は飲め」
「うーん、、、飲ませて、、、」
「は、?しょうがねえな、、」
霧島は自分で飲もうとしなかったため黒崎は渋々飲ませることにした。
「後で怒っても知らねえからな、、?」
「うーん、、、おいしい、、、」
「なんでこんなことしてんだろ俺、、」
まるで赤ちゃんに飲み物を飲ませてる感じがしてなんだか黒崎までとても恥ずかしかった。
「ゼリーは食えるか?」
「うーん、、、たべる、、、」
「これも食わせねえといけねえか、、、ほら、口開けろ」
「うーん、、おいひい、、、」
「そりゃよかった、んじゃ俺帰るから。じゃねえよ!危ねえ上着忘れるとこだった!」
看病に必死すぎて本来の目的を忘れるところだった。
「どこにあんだ、、?わかんねえな、、でもさすがに部屋の中漁る訳にもいかねえし、、」
いくら自分のものがあるとはいえ流石に女の子の部屋の中を探し回るのは気が引ける。
「どうしたものか、、」
そう悩んでいると、黒崎の目にとあるものが映りこんだ。
「ちょっと待てお前が着てる服俺の上着じゃねえか!」
「うーん、、、?」
よくよく見てみると霧島が着ている服は黒崎の上着だった。
「具合悪いとこすまんがそれ脱いで返してくれ」
「うーん、、、、、いや、、、」
「なんでだよ!」
上着を要求すると普通に断られた。
「しょうがねえ、、また今度返してもらうか、、」
強引に取り返す訳にもいかないので渋々諦めることにした。
「んじゃ俺帰るからな?安静にしてろよ?」
「んー、、、、だめ、、、!」
「おいちょっと待て!」
帰ろうとすると手を引っ張られてそのままベッドに引きずり込まれた。
「んー、、、あったかい、、、」
「おい落ち着けお前、、!自分で何してるかわかってんのか、、!」
なんとかベッドの外に出ようとしたが、がっちり抱きしめられていて身動きが取れなかった。
「ただいま〜」
「まずい!」
そうこうしてるとどうやら霧島の母が帰ってきたようだ。
「こんなとこ見られたら絶対誤解される、、!」
傍から見れば完全にベッドで添い寝している仲良しカップルだ。こんなところを見られたら絶対にめんどくさい事になる。
「おい、、!離せ、、!」
「うーん、、、いや、、」
「いや、、じゃねえよ!」
結局なんにもできないまま霧島の母が部屋に入ってきた。
「れな〜?体調大丈夫〜?」
「あ、、こ、こんにちは、、」
「あらあらお友達?もしかしてお邪魔しちゃった?」
「ちょ、、ほんとに違います、、!出ようとしても離れられなくて、、、!」
黒崎は何とか弁解した。
「ごめんなさいね〜、玲奈は抱きつき癖があるのよ〜」
「なんですかそれ!」
「でも玲奈は信頼した人にしか抱きつこうとしないからそこは安心してもらって大丈夫よ?」
「何も大丈夫じゃないですよ!?」
「しょうがないわね〜」
そうして霧島母の助けもあり、何とか引き剥がされることに成功した。
「あれが、、これで、、こうで、、」
黒崎は霧島母に事情を説明した。
「わざわざありがとうね〜助かったわ〜」
「すみません1つ頼みがあるんですけど、、」
「なにかしら?」
「その、、あいつが着てるの俺の上着なんで返してもらいたくて、、」
「あらあら、ラブラブねえ」
「だからそういうのじゃないですからね!?」
色々誤解された気がするが、何とか上着も取り戻し無事に家から出ることができたのであった。




