表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第一章 1-2 星降る夜と亡国の姫

世界と世界を繋ぐもの。

平凡な日常を送る高校生 神居ゼンは

ある日、非日常の摩訶不思議な光景と出会う。




ゼンは、学校の昼休み、教室の隅でスマホを眺めていた。ニュースアプリをぼんやりとスクロールしていると、「前代未聞の流星群、2日後にピークを迎える」という見出しが目に飛び込んできた。


「世界中で観測可能か……」

ゼンは記事を開き、流星群が地球のどこからでも観測できるという説明を読みながら、どこか現実感のない感覚に包まれていた。クラスメイトの笑い声や机を叩く音が背景に響く中、彼の意識はその一文から遠のいていく。


「おいゼン、何読んでんだよ?」

突然、後ろから声がかかり、ゼンは驚いてスマホを握り直した。振り返ると、同級生のユウキが悪戯っぽい笑みを浮かべて立っていた。


「いや、ニュースだよ。なんかすごい流星群がくるらしい」

「へえ、じゃあ願い事でも考えとけよ。『イケメンになりますように』とか?」

「うるせぇよ」


軽口を叩き合いながらも、ゼンの胸には妙な違和感がくすぶり続けていた。

普段から星を観測する、みたいな趣味があるわけではない。ただ少しの高揚感を感じていたのは間違いない。



放課後、帰り道でふと見上げた空は、まだ流星群の気配など微塵も感じさせない澄み切った青さだった。

歩道の脇にある自販機の光がちらつき、目の隅で何かが動いたような錯覚に襲われるたびに、ゼンは立ち止まって周囲を見渡した。


「気のせい……だよな」


そう自分に言い聞かせて再び歩き出すが、頭の奥で何かが引っかかっていた。


その夜、晩御飯の後、リビングでテレビを見ていると再び流星群の話題が耳に入った。「天文ファン必見!史上最大規模の流星群」と、キャスターが興奮気味に語っている。両親は気にも留めない様子で会話を続けていたが、ゼンは無意識にその言葉に聞き入っていた。


「天体ショーねえ、何か大きな事件でも起きなきゃいいけどな」

父の何気ない一言が、ゼンの心に妙に刺さった。


――そして、その翌日。


学校帰りの夜道を歩いていると、突然、女性の声が

ゼンの足を止めた。


「あ、あの!」



突拍子もない声かけに少し驚く。

普段から別に女性に全く話しかけられないわけではないし、クラスメイトの女子と会話することもある。

女性へ免疫がないわけではなく、ただ街中で、

それも夜道に話しかけられる事は今まで経験がない。

ナンパ、なんて時代錯誤もいいところだし、

ましてや逆ナンなんてご時世としてあまり見かけない体験ではないか。

知り合い。時間も時間だ。夜9時に突然

話しかけてくる知人はきっとクラスメイトかも。

塾の帰り道かもしれない。こんな遅い時間に。


振り返るとゼンの後ろに少女が立っていた。



概ね予想は外れていたらしい。

知り合いではない。初めて会うその女性は

フード付きのローブ、マントの様な服装を身に纏っている。

パッと見えた印象は、普段生活している中で

出会った事のない服装をしている人。

少し見にくいが顔も見た事がない。

初対面。よくよくみているとコスプレ感のある

出立ちの様に感じる。


「えーーっと、すみません。何かお困りごとですか?」


突然、通りがかった人間に話しかけるのだ。

きっと自分1人では解決できない状況に直面しているのかもしれないと思い、相手の様子を伺ってみた。


「あ、あなたは、神居ゼンさん、でしょうか?」



………!!!!突然、声を掛けられた事に驚いたが

再度、自分を認識して話しかけていた事を知り、

再び驚いた。


もしかして自分が忘れてしまっている人物なのかも。

とても失礼な態度だったのでは?!



気まずい空気を感じ、その場を取り繕おうと

何か発しようとしたその時。


目の端で何かが通り過ぎた気がした……


意識が少女から視界に映った動くそれに向けられる。

暗い空を見上げると一筋の光が目に飛び込んできた。

一瞬の出来事も束の間に、その一線は瞬く間に

無数の放物線を描き、突然の幕開けを告げ、空を駆け巡る。



(……………流星群!)


と、ニュースの映像が頭をよぎる。



辺りが異様に静かになった。






そして、美しさに感嘆する間もなく、ましてや突然声を掛けられた少女に応対する暇もなく、ゼンの足元が暗く歪み始める。


「え……?」


黒い影が地面から湧き出し、渦を巻いてゼンの体を飲み込もうとしていた。逃げようと足を踏み出すが、吸い込まれるような強い力が彼を捕らえ、ゼンは声を上げる間もなく宙へ浮き上がった。


必死に叫ぶゼン。

その言葉に呼応する様に目の前の少女も

突如の出来事にこちらに手を伸ばす。






黒い渦に飲み込まれたゼンは、突然の出来事を

理解できず手足をがむしゃらに動かしてみる。





視界も朧げに、何か強い力に引っ張られる身体は

言うことを聞かず、なす術なく渦に呑まれていく。



最後に目に入ったのは、先程、声を掛けられた

少女の苦しそうな顔と懸命にこちらを引き寄せようと伸ばした手だった……………






ーーーーーそして、時間は前述に戻る。




初めての投稿です。

不定期に更新します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ