実験体の生体
【ノアサイド】
先生の生んだ実験体は、便利なようで不便だった…
人間と変わらない動作が出来、水さえあれば老いる事も朽ちる事もなく永遠に生きながらえる。
おまけに胸に咲いた花が動いて棘付きの蔓が伸び、鞭やロープのようにも使える。特殊能力付きだ。
起きたばかりの頃は胸の薔薇が恥ずかしいやら邪魔やらで、先生に取ってくれるよう懇願した事もあったが、これを取ると、どうやら死ぬらしい。
つまり僕の弱点だ。
そんなのを見せびらかして、ここを攻撃して下さいって、僕が馬鹿みたいじゃないか…と何度ため息をついた事か…
しかしなかなか、この薔薇はちょっとやそっとじゃダメージを受けない。
自分で触る分には感覚があったのに、先生でハンマーで思いっきり殴られても、全くの無痛だったのだ。
薔薇が弱点だと言いながらもあの凶行には、心底恐怖した。
そしてもう1つ、絶対的で厄介な条件があった。
【先生を守る事】
この条件のせいで、いつどこで先生が危険な目にあっても必ず先生の身を守らなければならない。
例えそれが誰に攻撃されたとしても、どんな事で攻撃されたとしても、絶対的な味方にならなければならないのだ。
「…はぁ………先生は、こんな実験して、何がしたかったんですか?」
「愚問だな、助手君よ」
「…助手じゃないでs…」
「実験したかったからに決まってるじゃないか!ははは」
「……………はぁ………」
もう何も驚く事は無かった。
この状況を受け入れてしまってからは、この人はそういう人なんだと、納得するしかなかった。
そんな先生が診療所という隠れ家から出て、孤児院に行くと言うので、とてもじゃないが黙ってお留守番等してられず、こっそりついてきてみれば…
先生が危険だという信号を受取、僕の特殊能力の1つである雷から静電気をちょこっとだけ送った後、我に返ると、そこには紅茶を飲んで倒れゆくレイの姿があった…