2人を返せ…!
医療室に着くと、そこには既にヒナの姿は無かった。
代わりに居たのは先生で…
「…先生、ヒナはどこですか…?」
怒り任せに殴りかかっててしまいそうな自分をなるべく冷静に、しかし静かな怒りの炎は消さぬよう、先生を睨みつけながら尋ねた。
「ヒナちゃんは、今日は来てないねぇ?」
眠そうで気怠げな表情で、ニヤリと笑った。
「…先生、俺はこれでも理性を保つのが精一杯なんです、ヒナはどこですか?ノアも…先生が隠してるんですよね…?」
「……………」
「答えてくれないと、俺、何するか分かりませんよ…2人を返して下さい…!!!」
「君はまだ、予定になかったんだけどねぇ…」
「んーーーー……」
「色々知っちゃったみたいだし、よし、取引をしようじゃないか!」
先生は満面の笑みで、まるでこちらを品定めしてくるかのように見つめてきた。
「取引…?それは2人を『無事』に返すという取引ですか?」
「んー、そうだなぁ…あんまり質問に答えるのは得意じゃないんだけど…ヒナちゃんは無事に帰そう!ノア君には会わせてあげるって形でどうだい?」
「ヒナの無事しか保証出来ないってことは、ノアは無事じゃないんですか?あんた一体ノアに何したんだ!!」
危うく掴み掛かって殴りかけたところに、静電気がピリッと起きる…
「…っ!!!」
「おやおや、兄弟喧嘩は犬も食わないよ?」
ケタケタと奇妙に笑う神無月を、俺は恨めしく睨む。
「兄弟?あんたと兄弟になった覚えはない!」
「…ノアは…………生きてるんですか…?」
したくもない質問を、しなければならなかった…
聞きたくもない返答を、待たなければならなかった…
「……………」
(ま、さか…ノア…し…)