俺の勘違いなんかじゃない。
コンコンコン!
ガラッ!!!
「せんせーい!きたよー!ヒナだよー!」
返事を待たずにヒナは医療室の扉を開く。
(ヒナらしいといえば、ヒナらしい。
何せヒナは6歳だ、小学校入ったら、ちゃんと習うんだぞ?)
お兄ちゃん風を吹かせながら中に入るが、先生の姿は無かった。
「あれぇー?先生どこ行ってるのかな?」
勝手知ったる人の家の如く、ヒナは棚から飴を取り出し1つ拝借…もとい、普通に食べている。
もう、返せないから拝借ではないな。
「ヒナ、勝手に人の物食べたらダメなんだぞ?」
「んー、でも先生、ここの飴ならくれるって言ってたもん。先生来るまでに食べ終えちゃうよー」
「そうか、許可もらってるなら仕方ないな」
我ながら妹には甘いと思っている。
「………?これ…」
ふと、先生の机の上に見覚えのあるボールペンがあった。
(これは、俺のだ…俺が…誰かにあげた…誰か…に…)
『ありがとう、レイ!大事にするね!代わりにこれ、貰ってよ!』
(あ………れ………?)
なんだ、この記憶、俺の勘違い、だったはずなのに…………
「ちょっと、ごめん、ヒナ………確かめたい事があるんだ…先生が来るまでここで待っててくれるか?直ぐ戻るから…!」
「えっ…おにぃちゃん…?」
俺はヒナの返事を待つ前に、医療室から飛び出していた。
(…っなんだ!あれは…!もし、俺の記憶が正しいなら…アイツの、あの声の主は…!)
全速力で廊下を走り、寮長に注意を受けた気がしたがそんな事はどうでも良かった。
部屋に戻ると、直ぐ様筆箱をひっくり返す…!
(…ボールペン!アイツから貰った、ボールペン…!!!)
「…あっ………た………!」
「やっぱり、アイツは…ノアは存在してる、これは俺の勘違いなんかじゃ…ない…!」
俺はノアのボールペンを握りしめ、人知れず涙を零した…