忘れられた君02
そういえば、隣の席が空いている。
俺のベッドの下も、靴箱もロッカーも…必ず1つ、空きがある。
…まるで、人1人分だけ忽然と綺麗に跡形も無く消されてしまったかのように…
誰かに引き取られたにしては、寮長から何の説明もなく…
こんな孤児院で誰か消えようものなら大騒ぎになるはずだ…
まず、その1人が誰なのか、記憶がない。
人が突然消えて、みんなの記憶からも消されているなんて…
そんなの、俺の勘違いに違いない。
そう、思うしかない気がした。
「おにぃちゃん、最近わたしね?たまにお腹が痛くなる時あるの…」
「そうか、じゃあ先生にちゃんと見てもらわないとな?ご飯食べたら連れてってやるからな」
「うんっ!先生いつも飴くれるから大好きっ!」
ヒナはこの孤児院の専門医である神無月先生に懐いている。
俺はというと…いつも寝不足でクマを生やしたいかにもイカれたって格好のドクターは信用ならないと思っているが…腕はしっかりしているらしい。
ヒナの健康の為だ、苦手な奴に会うのだって厭わない。
『xxxxx先生には、xxxかない方がいいよ…僕だって、あの先生のxxx性は、理解しているからね…』
また…あの声が聞こえた。
いつか、何処かで聞いたような、遠くて、近い存在だった…誰かの声…
忘れているのか、勘違いなのか…
ただ、1つだけ…
………声を聞くと、無性に会いたくなる、気がする…
…お前は、誰なんだ…………