忘れられた君
ピーーーーー
頭を劈くような機械音がする
耳鳴りだろうか…?
煩い、こんなんじゃ眠れない、xxが起きるだろうが…
ピーーーーー
不愉快だ。
頭の中を機械音に支配されている…
何か、大切な事を、忘れてしまいそうな…何か…
やめろ、やめてくれ、頼むから…
忘れたくないんだ…………!
俺は、アイツを………!
ピーーーーー
カンカンカンカン!!!
「起床時間です、みなさーん、起きてくださーい」
寮長の大声と同時に鐘が鳴らされる
「ふぁ………眠い…」
…寝た気がしない
俺は、大事な…何かを忘れていくような感覚に、喪失感を覚えていた。
「…おい、朝だぞ、起きて飯行くぞ」
俺は2段ベッドの下に声をかけ覗くが、下の段は布団すら敷かれておらず、住人は暫くの間誰も居なかった
「…ん?……あれ………?」
(あー………そうか、ここは俺の一人部屋だった、何故下に人が居ると思ったんだ…?)
俺は3日前から自らに起きる不思議な現象に頭を悩ませながら、朝の身支度を済ませた。
「もーっ!おにぃちゃん!おそーいっ!」
食堂に着くと幼女が駆け寄ってきた。
「悪い悪い、ヒナ。今朝はなんか寝ぼけててな…」
膨れっ面のヒナの頭を撫でると、ヒナはくしゃりと笑った。
「おにぃちゃん、なんか最近寝惚けるの多くない?嫌な夢でも見るの?」
「あー…………いや、よく分からない。」
「ふーん?おにぃちゃん変なのっ」
ヒナは俺の手をとってテーブルに着く。
ヒナは俺の自慢の可愛い妹だ。
ヒナさえ居れば、ヒナが幸せなら、それでいい。
『xxはxxのxxxxでも、あるからね』
「…っ?!!!?」
瞬間、頭に誰かの声が響いた。
誰だ?!誰か…何か…知っているような…
「おにぃちゃん?頭痛いの…?」
横で心配そうにしているヒナが顔を覗かせていた。
「…っいや…今、なんか声がしなかったか…?」
「……?別にしてないよ?おにぃちゃんほんとは具合悪いの?」
ヒナが目をうるりと滲ませる。
「………そうか、いや、大丈夫だ、寝不足なだけかもしれない。心配することないよ。」
俺はヒナの頭をポンポンを軽く撫で、朝食を頂く。
(今朝は…昨夜のピーマンカレーの残りか…朝からカレーなんて胃がもたれるってのに…あいつはピーマン嫌いだからって俺の皿にいつもピーマン…を………?)
思い出しながらほくそ笑んでいると…ふと、存在しないはずの記憶に辿り着く。
この寮に、ピーマン嫌いなやつ…居たか?