薔薇の花
………眩しい…
僕は閉じた瞼からでも分かるような明るさに嫌気をさしながら目を開く
「ここ…は…」
見たことのある部屋、ベッド、窓…
間違いない
寝惚けた頭ですら直ぐに分かった
ここは先生の診療所
「先生…?」
室内には誰の気配もない
「僕は、えーっと…どうしたんだっけ…」
確か、先生といつものように部屋の片付けをしながら、午後の紅茶を飲んで…それから…
ズキンッ!!ズキズキ…
起き上がると、全身に鈍い痛みが続く…
腕には点滴、胸には、電極パッド………
(ん…?……こ、れは………)
……………?
…………………………?
…………?!?!?!
目の前には…大きな一輪の薔薇が、
自分の胸の上で咲き誇っていた………
「ぇ………?」
頭が追いつかない、なんだ、これ……
薔薇の花を、そっと触る…
「……っ!!」
花、なのに…触った瞬間、自分の肌であるかのように…そう、本当の肌かのような感触を感じた
(まさか…?!!)
薔薇の花を見つめながら、胸の筋肉を動かすイメージをすると…
……モゾ…
「…………」
薔薇の花が、動いた…
見た目は普通の花、なのに…
それはまるで自分の腕かのように、モゾモゾと動き、触覚のような蔓を伸ばしたり縮ませたりしていた。
「………は…はは、ははは…」
「先生…これは、ないんじゃないですか…ね…」
乾いた笑いしか出なかった。
いつかやるだろうと思っていた、覚悟していた。
先生なら、やれるだろうと…
ただ、その実験体の1人目にまさか自分が選ばれるなんて、夢にも思っていなかったのだ…
「先生…、これで、満足ですか…?」
止められ無かった…自分に悔しさと、犠牲者が自分で良かったと思う感情で、自然と涙まで溢れてくる。
僕が複雑な感情に整理をつけられず笑いながら泣いていると…
…ガラッ!
扉が開く
「ノア君、ようやくお目覚めだね。気分はどうだい?」
僕の様子を見た先生が一瞬驚いたものの、直ぐニッコリと笑い
「おや、ご機嫌だねー。3日も眠っていたから失敗したかと思ったよー。成功して良かった良かった!」
僕は腕で涙を拭うと苦笑いで先生を見つめる
「先生…これは…成功なんですか?
僕…まだ人間ですか?」