僕は電話に出られない
着信音が鳴ると、胸がドクンと波打つ。
「はあ、はあ、はあ」
音が鳴り続けてる間はずっと息が苦しい。
着信ボタンを押そうと思っても指が動いてくれない。
「......はぁぁ」
ようやく音が鳴り止んで息苦しさがなくなる。額や耳の裏にはびっしょり汗をかいていた。
ピコンとスマホの画面の上部分にメッセージの通知が来る。父からだ。
『大事な話がある。電話に出なさい』
ああ、やっぱり会社を辞めたのがバレたらしい。
文面には威圧感があるが、父は間違いなく心配してくれている。そういう人だ。
だから、電話に出られない。