第九十四話 ネット掲示板回 その四
ネット掲示板その四。
【新、菅笠侍について語るスレ その二十一】
71 ななしの冒険者
今回は九州の温泉ダンジョンに出現!! っていうか、本当に日本各地で目撃されてるけどあの人の移動手段って何なんだろう?
72 ななしの冒険者
普通に新幹線か飛行機? 魔素が世界を満たした後でその辺りも色々手が入ったけど
73 ななしの冒険者
何も対策されてない普通の飛行機って飛ばした時点で落ちるしね
74 ななしの冒険者
魔素の壁だっけ? 空気の壁より濃いらしくてそれにぶつかると相当なダメージが入るらしい
75 ななしの冒険者
何故か飛行機の話になってる件について~
76 ななしの冒険者
脱線暴走はいつもの流れ。飛行機の話題なのに脱線とはこれ如何に
77 ななしの冒険者
親の顔より見た流れ。それはいいとして今回も色々と凄い実績を残していったよね
78 ななしの冒険者
光雷獣が一太刀で斬り殺されるとか流石に衝撃映像
79 ななしの冒険者
海外のダンジョンでもう数ランク落ちる走雷獣ってのが出てるらしんだけど、それすら討伐実績が無いのにな
80 ななしの冒険者
レイドクラスのフロアボスとか、流石に悪夢以外の何物でもない
81 ななしの冒険者
でももう二度と討伐されそうにない罠。あの下層の状況は流石に攻略するだけ時間の無駄だし
82 ななしの冒険者
夢も希望もない下層の状況。菅笠侍さんのお陰でそれが分かってよかった
83 ななしの冒険者
それはそれとして、魔族の暗躍というかあんな事件が起きてた事が驚き
84 ななしの冒険者
被害総数、数百人。関係者とかで人生を狂わせられた人の数はどれだけいる事やら……
85 ななしの冒険者
菅笠侍さんが解決しなかったらず~っとあのままだろ? ホントマジで神だよな
86 ななしの冒険者
そして今回も報酬すら受け取らずに被害者の支援に回してくれって神対応。他にもいろいろやってるみたいだけど
87 ななしの冒険者
犠牲者は全員パーフェクト・ヒールでフォロー済。何故か犠牲者は全員一歳たりとも歳を取ってなかったらしいし、問題は放置されてた家とかそっちらしいね
88 ななしの冒険者
駐車場代とか家賃はすっごい事になってるそうだけど、そもそも冒険者っていきなり行方不明とか結構聞くよね?
89 ななしの冒険者
職業柄その辺りの契約が年々きつくなる理由の一つだな。クレカの申し込みも年々厳しくなる
90 ななしの冒険者
クレカか~。ダンカカードである程度対応してもらえるけど、あのなかにそうとう溜め込んでないと駄目っぽいしね
91 ななしの冒険者
一流どころは億越えダンカを持ってるらしい。高純度の魔宝石ひとつで余裕だって
92 ななしの冒険者
億稼いだら引退するよ!! でも、その時のレベル次第かな……
93 ななしの冒険者
カンストしたら引退するかどうか問題~
94 ななしの冒険者
色数次第? 三色越えてたらその先も幾らでも稼げるしな
95 ななしの冒険者
いつもの大脱線。もう菅笠侍さん関係ないじゃん
96 ななしの冒険者
いや、いちおう関係あるんだよ。その辺りの資金援助で、ダンジョン金塊を百キロほど提供したそうだ
97 ななしの冒険者
菅笠侍さんが?
98 ななしの冒険者
他にそんな真似ができる人なんていないだろ。ダンジョン金塊百キロって、百五十億くらいしない?
99 ななしの冒険者
大体その位かな? 需要も多いから百キロ程度だと値崩れもしないけど
100 ななしの冒険者
百五十億をポンと寄付か……。ホント、真似ができないぜ
101 ななしの冒険者
あの菅笠の下はどんな顔なんだろうね。美形だって話は結構聞く
102 ななしの冒険者
あの人の正体を探ろうとしたら、シンパの連中から特定された挙句ボコられるぞ
103 ななしの冒険者
怖いな……。今回は九州か、うちの方にも来ないかな?
104 ななしの冒険者
何処?
105 ななしの冒険者
四国。詳しい場所は内緒だけどな
106 ななしの冒険者
四国もいいダンジョンおおいよな。ただダンジョンのある場所に向う交通の便が悪すぎる
107 ななしの冒険者
地方ダンジョンあるある。宿泊場所もないし、バスが一日一本とか……。そしてドロップがまずい
◇◇◇
毎回思うけど、掲示板の流れってほんとグダグダだよな~。
俺が流した動画も楽しんで貰えたみたいで結構。クソマリオネットが完全に破壊される様は何度も腹を抱えて笑わせて貰った。
いや~、同じ魔族の俺達相手でも高慢ちきで、散々威張り散らしてきたからな~、あいつは。いいざまさ。
へこへこしたバイトの楢丈君モードも楽しかったが、あのヒーロー君と接してたのは僅か数日の事だったしな。
しっかし、まさか奴をあの仕掛けで仕留めきれないとは思っちゃいなかった。若気の至りだし、いい教訓になったさ。
あいつがあのダンジョンに顔を出した瞬間、十年かけていろいろ仕込んできたかいがあると喜んだもんさ。午後の五時になっても戻ってこなかった時点で、俺は勝利を確信したね。
次の日、凝りもせずにまたあのダンジョンに顔を出しやがっときは、何事かと驚いたね。偶然に偶然が重なって、まさかレッサーゴブリンの相手だけしてたとは思わなかった。
でも、これで俺は今度こそ奴の死を確認した。
どれだけ運が悪くてももうすぐレベルがあがるだろうし、そうすればジ・エンド。最低でも太古の孤王の奴があいつを地獄に案内してくれるだろう……。
そう思ってたら、奴は太古の孤王やオーガの魔石を抱えて帰ってきやがった。どんなカラクリだよ? 低レベルの冒険者がなにをどうやったら太古の孤王を倒せるんだ?
それは同時に俺の闇魔法で奴を殺せなくなったことを意味するし、せっかく育てて来たあのダンジョンを、自分の手でダンジョン協会に報告しなきゃいけなくなっちまった。する義理も無いんだが、自分で幕を引くにはちょうどいいタイミングだしな。その時に奴と思わず変な掛け合いまでしちまったよ。
忌々しいがあのダンジョンは破棄だ。もう、役に立たないからね。
十年。
俺が十年もの歳月をかけて心血注いで用意してきた必殺の罠は、幾つかの偶然が重なり完全に突破された。
どんな悪夢だよ。何をどうやったら、あれだけ幾重にも張り巡らせた必殺の罠を切り抜けられるんだよ? 俺の何が悪かったってんだ?
「魔王が復活しようが関係ない。問題は俺がこれからどうするかだ……」
魔界の神の手でこっちの世界に送り込まれた俺達は、ゲートを使って魔界には帰れない。
このままいけば、人類側が圧勝。そして俺達は嬲り殺しか……。
今までやってきた事を考えれば、それでも優しい方だろう。
これで残った魔族の幹部はトレジャーだけか。
あいつは勘のいい奴だ。そのうち自分でアレに気が付くだろうさ。
読んでいただきましてありがとうございます。
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