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第九十話 隠し旅館『迷宮』


 この辺りで有名な隠し旅館『迷宮』。


 ここもダンジョンが出来た後で新しく建てた旅館らしいんだけど、普段は本来完全予約制でこんな形でいきなり泊まったりはできないって話だ。結構な高級旅館としても知られてる。


 宿の親父さんやおかみさんたちがちょっと頑固で、十年くらい前からそれが悪化したって聞いたけど……。


 なお、ここもかなり有名な冒険者お断りの旅館らしい。いったいどんな冒険者が何をやらかしたんだよ。


 一応俺はすでに菅笠を脱いでるし、玲奈(れいな)達もウサギや猫の仮面なんかを外してある。着物や巫女装束はそのままだけどさ。


 流石にあのままだと不審者確定だしな。


「ここだね。隠し旅館『迷宮』」


「趣のあるいい旅館だ~。こうして何処かに遠征に行って泊まるなんて初めてだよね?」


「そうだな。おじさんたちと一緒に温泉に行ったことはあるけどさ」


 あれももう十年近く前の話だ。


 たまには玲奈(れいな)ちゃんを旅行に連れてやったらどうだとか親父が急に言いだしたんだよね。


 で、あの時は熱海方面の旅館だったかな?


「あったね~。あの時もホントに楽しかったよ」


「家族ぐるみの付き合いとか……」


「家も近所だしね。一応あの家の位置とかなにから、いろいろ仕込まれてた訳だけどさ」


 主に勇者とヒーローの監視。


 全員揃って勇者パーティだったからさぞかし監視しやすかっただろうて。


 護衛対象って考えもあるけど、親父以上の戦力なんていないし何かあるとすれば搦め手なんだよね。


 舞莉愛(まりあ)おばさんの一件以来、いろんな組織が家の周りを守ってるって話は聞いてる。だからまるっきり護衛してない訳じゃないんだよな。


「で、ここは本当に大丈夫なの?」


「ネットで調べたら、十年位前から冒険者は一切お断り。門前払いらしいですよ」


「だよな……。俺もその情報が目についた」


 隠し旅館『迷宮』。


 一般客からの評価は驚異の星五。さっき言ってた通り、ご飯がもう絶品らしくてそれだけでも泊まる価値があるって書かれまくってる。


 温泉施設も綺麗で、いろんな泉質の温泉が楽しめるそうだ。


「とりあえず行くしかないか。ダメだったら一旦戻ろう」


「そうですね。……すみませ~ん!!」


「は~い。ご予約を頂いた菅笠侍様一行ですね」


「はい、そうなんですが。大丈夫ですか?」


「もちろんですよ!! 職員一同お待ちしておりました!!」


 女将さんかな?


 あれ? 冒険者嫌いって話なのにおかしくない? 結構歓迎されてる感じだよ?


 いくら俺の活動が知られてるとしても一応冒険者だしさ……。


 あと、なんとなく女将さんの目が赤かったのは気になった。


 それに、この女将さんってちょっと体の調子も悪そうだ。何も言ってこなかったら、黙って治癒の魔法をかけた方がいいかもしれないレベル……。


 後でこっそり何とかするか。


◇◇◇


 案内されたのは当然受付だ。


 入口からすぐでいきなり靴は脱いでスリッパに履き替えての移動となった。久しぶりに旅館に来たって感じがするよね。


「本当にありがとうございます!! まさか、十年前にダンジョンから戻って来なくなった息子が当時の姿のままで戻って来るとは思いもしませんでした。あれ以来、冒険者の姿を見る度に息子の事を思い出しますので、冒険者さんの利用を禁止していたんです」


「事情はすべてコイツから聞きました。なんでも、ダンジョンに手強い奴らが蔓延っていたとか……」


「詳しくは話せませんが、厄介な連中だったのは確かです。でも、もう安心ですよ」


 あの魔族を倒した以上、あいつ以上に厄介な敵はいないだろう。


 もう一匹、舞莉愛(まりあ)おばさんを攫ってる奴が居るけど、そいつもできる限り早い段階で見つけたいよね。


 俺達の未来の為に!!


「十年ぶりの再会で今日は休もうと思ったんだけどね。まさか恩人を追い返す訳にもいかないし、今日は存分に温泉を堪能していっておくれ。それで部屋割りなんだけど、……どっちが本命なんだい?」


「出来れば個室三つでお願いできます?」


「……意外に真面目なんだね。景色の良い個室があるから、この三部屋なんてどうだい?」


「ありがとうございます。それで、支払いですが」


「恩人からお礼はとれないって言いたいんだけど、あんたあの有名な菅笠侍さんだろ? 正規の料金は頂くけど、最高のサービスを約束するよ」


「ありがとうございます」


 支払いはチェックアウトの時でいいって話か。信用されまくってるな。


 いつも利用してるホテルみたいに先払いじゃないんだ……。


「流石に知られてるんだね……」


「この国の人間で、菅笠侍さんの事を知らない者なんていませんよ」


「いろいろやってますからね。何か困った事があったら相談に乗りますよ」


「お見通しですか。いえ、もうどうでもいいと思ってた人生ですが、こいつが戻ってきましたんでね。後で相談に行くかもしれません」


 おそらくあの親父さんが料理人なんだろうけど、足と腰に何か大きな病気を抱えてるな。


 跡継ぎの息子さんが行方不明で人生を投げてたけど、何とかその病気を治して息子さんを鍛えたいんだろう。


 あのダンジョンで十年以上冒険者をしてたんだろうし、もしかしたら十年分のスキルポイントで料理スキルカンストできるんじゃない?


「もしかして料理スキルに全部振った?」


「バレました? いや~、チートですよね。十年間振られてなかったステータスポイントとスキルポイントがこんなにあるとは思いませんで。で、冒険者引退の覚悟で限界まで料理スキルに振ってみました」


「料理スキル五か……。世界最高の料理人の扉が開きそうだね」


「おそらく世界初でしょ?」


 俺みたいな存在は別として、他に料理スキルを五まで上げてる冒険者や料理人はいない筈。


 そこまで上げたって人の話も聞かないしね。


「そうだね。それに力とかも強いだろうし、元冒険者の強みを生かしていろいろできると思う」


 元冒険者のアドバンテージはデカい。


 しかし、十年分のレベルアップで手に入ったステータスポイントがどの位かは知らないけど、あのダンジョンでそこまで戦闘があったのか?


 ……もしかして偽装の為に定期的に戦闘行為もしていたのかもしれないね。


 だからみんなあんなに装備がボロボロだった。


 鉄ですら錆びたりしないダンジョンの中で、あそこまで劣化する理由なんて他にないしな。でなけりゃ、四百ポイントもスキルポイントは入らないか……。


「こいつはまだまだな部分もありますが、今日は最高の料理をお約束しますよ」


「そこなんだよな……。なんで料理スキルが五なのに、親父に勝てない料理が多いんだよ」


「あ、料理スキル以外にも関連スキルがあるっぽくて、その辺りに経験値が足りてないと駄目みたいだね」


「ほれみろ。やっぱりお前はまだ修行中なんだよ」


「でも、そこを乗り越えたら本気で世界最高の料理人になれると思いますよ」


 本気で料理スキルレベル五の料理人がいる旅館とか凄まじい事になるだろうね。


 元々のクラスが何か知らないけど、調理関連のスキルを幾つか持ってれば本気で世界最高の料理人になれるよ。


「足りない部分は今から何とかします。だから今日は親父の料理を堪能してください」


「楽しみにしていますよ」


 とりあえず部屋に案内されたら範囲型のパーフェクト・ヒールでも使うか。


 自分用に使った魔法が漏れたっていえばいいだろうし……。


 ……って、案内された部屋が個室なのにかなり広い。


 旅館にある謎スペースもあるし、窓から見える景色も絶景だ。


「うわぁ、素晴らしい景色ですね」


「はい。三部屋とも少しは変わりますが、絶景は保証いたしますよ」


「庭園も素晴らしいですね」


 手入れが行き届いた日本庭園。


 普段殺風景なダンジョンに籠る事が多いから、こういった景色を見ると心が癒されるよな。


 実は旅館を利用するかどうかは結構悩んだんだけど、偶には心に栄養じゃないけど安らぎって必要だと思うんだ。


 ほぼ毎日、殺風景なダンジョンで魔物との殺し合い。そこに癒しなんて欠片も存在しやしねぇ。


 そのダンジョンで求めるものが名声や経験値、それに使い切れない財宝の山。それぞれの冒険者が求める物は少々違うとはいえ、貪欲にダンジョンで欲望にまみれていろんな物を求めているのは変わらない。


 俺だって他の冒険者に偉そうに言えるような立場じゃないけどね。


「では、お食事はどういたしましょうか?」


「ああ。このままだとそれぞれの部屋で食べる事になるんですね」


 盲点だった。


 別にご飯くらいそれぞれの部屋で食べりゃいいんだけど、せっかくこんな場所に泊っているんだしみんなで食べるのも悪くないよな。


 何より、一緒に食べた方が旅館に来てるって感じになるしね。


「小宴会場をご用意いたしましょうか?」


「三人なのに大丈夫なんですか?」


「はい、その為の部屋ですので。少し離れた場所になりますがお食事の時にはお呼びしますね」


 小宴会場。そんな部屋も用意してくれるのか。


 本当にありがたい。


 その分、支払いはキッチリとしないとね。


 さて、素晴らしい部屋にいるのは俺一人。 


 玲奈(れいな)達も今は浴衣に着替えてるだろうし、俺も浴衣に着替えておくかな。


 っと、その前に。


「パーフェクト・ヒール!!」


 この旅館全体を範囲に指定したかなり大規模なパーフェクト・ヒール。


 流石にこの範囲でパーフェクト・ヒールを使えるのは俺くらいだろうね。消費魔力も百万近かったし……。


 しばらくしたら誰かが飛び込んできたんだけど。仲居さんか?


「おおお、お客様。今この旅館全体に強力な治癒魔法が……」


「すみません。ちょっと回復魔法を使ったら漏れちゃったみたいで……。問題が無ければいいんですが」


「問題って。旦那様や女将さんの病気に気が付いての行動ですよね?」


「漏れただけです」


「……ほんと、菅笠侍さんの噂って本当だったんですね」


 一度俺が漏れたと申請した以上、旅館側から追及してくることは無い筈。


 不利益が出る攻撃魔法だったらともかく、ちょっと強力な治癒魔法だしね。


「どんな噂かは知りませんけど、何時もだいたいこんな感じですよ」


「旦那様の病気も治りましたし、女将さんの病気まで……。本当に感謝いたします」


「いろいろあるから大っぴらに活動できないのがきついんですよね。病院なんかもありますし、全部魔法で解決って訳にはいかないのもわかるんですけど。あ、ちょっとかかりつけ医に見て貰えるんだったら見て貰った方がいいかもしれませんよ。薬とか色々あると思いますから」


 薬の開発とかしなけりゃ企業も倒産しちゃうし、病院が潰れまくって医療産業が壊滅しても困る。


 いろいろ暴走してすでに医療産業が壊滅した国もあるし、この国に同じ轍を踏ませる訳にはいかないからね。


 それと問題の一つとして、白持ちの冒険者の数が意外に少ないって現実だ。


 白単の冒険者なんて本当に百万人に一人とか言われてるし、白混じりの冒険者の数もまだまだ足りてない。どうやったら白持ちの冒険者が出るって研究も進んでないしね。


「それではこれで失礼します」


「ちょっとお騒がせしました」


「それでは……」


 さてと、これで後は食事を待つだけか。


 どんなご飯が出て来るのか、今から楽しみだよね。


◇◇◇


 サイド隠し旅館『迷宮』主人兼板長。鴛海(おしうみ)嘉徳(よしとく)



 眩い光がうちの宿全体を包み込んだ。


 なんだ? この光の粒子は心地いいが、身体に悪い物じゃなさそうか。


 一体何なんだ?


「おっ、腰が痛くない!! 肩が軽いぞ!!」


 気のせいか目もかなり見えるようになってるし、手に無数にあった包丁傷までなくなってやがる。


 超強力な治癒魔法? 一体……。


「親父。これは、おそらくだけどパーフェクト・ヒールだね。俺もこの魔法で助けられたって聞いてる」


「という事は、あの菅笠侍さんか? 確かに後で話をしたいっていったが」


 見当違いだ。


 後で相談に行くとは言ったが、相談したかったことは俺の腰や肩じゃなくてあいつの病気だったんだが……。


「あんた!! 身体が……」


「また何処か傷むか? どこか悪いようだったら、今からかかりつけの先生ん所に行くぞ?」


「違うんだよ。息が……苦しくないのさ。今までの身体の重さが嘘みたいに軽いし、何処も痛くなんてないんだよ」


 ……まさか、こいつには黙っていたが、こいつの病気はもう本当にあと数ヶ月持てばいいとか言われてたんだぞ。


 本人のやる気があるうちは気力を持たせる為に働かせといたほうがいいって事だったが、それももう限界だろうって言われてたくらいだ。


「……おかしい。パーフェクト・ヒールにそこまでの治癒能力は無い筈なのに……」


「そうなのか?」


「俺も元冒険者だからね。憧れれてる魔法の知識位あるよ」


 どういうことだ?


 だがこいつの顔色は今までにない位にいい。


 やっぱりここは病院に行くべきじゃないか?


「親父。今日のお客さんはあの人たちだけだ。料理の下拵えは俺でもできるし、ここには他の人もいるんだ」


「そうですよ、板長。あの人たちには俺達が責任を以て、最高の料理を必ずお出しして見せます」


「俺達の身体の調子も今までにないくらいいいですからね。ここは任せてください」


 こいつら。


 そうだな。帰って来たばかりのあいつも仕込んできた事は全部覚えてやがったし、手順も完璧だった。


「おい。病院に行くぞ」


「え? でも、身体の調子はいいんだよ?」


「だからだよ。何かあったらすぐに来いって言われてるだろ?」


「そうだけどさ……」


 問題は、この状況をどう説明するかだよな。


 俺達もいったい何が起こったのか……。


「女将さん。あの、菅笠侍さんが、ちょっと治癒魔法が漏れたから迷惑をかけたかもしれませんって……」


「漏れたって……、あの人の部屋からここまでどれだけ距離があると思ってるんだ? おかしい、そんな魔力絶対にありえないよ」


「凄いのか?」


「凄いとかって話じゃないよ。使った魔法は間違いなくパーフェクト・ヒール。それをこの辺りまで範囲入れるとなると、人の枠を超えたような魔力が必要なんだ」


 漏れたってのは間違いなく言い訳だろうな。


 あの人はこいつの病にも気が付いていた。


 俺の身体にも気が付いていたんだろうが、それを全部治す為にこんな真似を……。


「漏れちまったものは仕方がねえだろ。こっちに被害が出てない以上この話はこれでおしまいさ」


「でも、親父!!」


「世の中にはな、あんな人が本当に存在するんだよ。礼なんて求めてもいねぇよ」


 その代わり、絶対に最高のもてなしで答えなけりゃいけない。


 病院側にもこれでいいわけが出来た。


 たまたま宿泊した冒険者の治癒魔法が漏れたんじゃ、そういうしか仕方ねぇよな……。


◇◇◇


 かかりつけの病院。


 午後の診察という事もあって他の人は少ないな。


 こいつを連れて来たから、顔見知りの看護婦が慌てて駆け寄ってきた。


鴛海(おしうみ)さん!! どうされました?」


「いや、ちょっといろいろあってな。顔色は良いんだが診て貰いたいんだが」


「はい。……嘉徳(よしとく)さんもですか?」


「すまねぇが、二人とも頼む」


 この辺りがいつも手間取っちまうんだよな。


 こいつの状態はここの看護師さんの方がよく知ってるんだろうし、俺の病気が大した事が無いのも知ってるだろう。


 なげぇ検査が終わった。今回は本気で上から下まで調べる羽目になったみたいだ。


「血液検査、尿検査、CT、その他の結果から判断しますと、ほぼ間違いなく完治している状態です。何があったか説明して貰ってもよろしいですか?」


「うちの宿に泊まりに来た冒険者さんが使った治癒魔法が漏れたらしくてな。俺とこいつもその魔法を浴びちまったみたいなんだ」


「偶然という事ですか?」


「偶然だな。それで、悪いが先生に診て貰いたくて来たんだ」


 どこの病院でもそうだが、魔法での治療を毛嫌いする医者は多い。


 魔法は万能って訳じゃないが、現代医療でも手が届かない所に届いちまうのが気に入らないらしいな。


 俺も料理人なんでその感覚は分かるが、あのスキルだなんだでバカ息子の料理の腕があそこまで上がるとは思ってもみなかった。


 たかが料理でこれだ、人の生き死にに関わる先生方はもっと面白くないだろう。


「……確か今ここに来てる冒険者で有名な人と言えば菅笠侍さんですか、ダンジョンの方でも何やらやらかしてるそうですが」 


「おかげで息子も戻ってきたからな。いろいろ諦めてた所だが、ちょいと欲が出てきちまってたんでな……」


「奥さんの件はひと月後に再検査。それで問題が無ければ経過観察になります」


「俺の方は?」


「何かあれば来てください」


 俺の方は別に毎月世話になってた訳じゃないしな。


 だが、こいつもひと月後に検査して問題が無けりゃ大丈夫ってことか。


「本当に、もうどこも悪くないんですか?」


「普通の人よりよほど健康ですよ。白内障も治ってますし」


 そこなんだよ。


 俺も歳食っちまったせいで最近ちょっと目が悪くなってたんだが、それもついでとばかり治っちまった。


「あまりこういった行為は感心しないんですが、今回のような事故であれば仕方がありませんね」


「先生はそれでいいのか?」


「私も個人的にこの方の活動を知っていますので。我々や他の業界に気を使わずに力を振るっていれば、もっといろいろできる筈の人ですよ」


「あれで、気を使ってるのか?」


「何と言いますか、ちょっと理解できない人ですよね。精神的には人かどうかも怪しいです」


 俺も調べたがどれだけ人を助けても金とかを一切請求してこない、お礼の品も殆ど受け取らない。


 しかし、名を騙ったり誰かが悪事を働けば確実に報復する怖い人でもあるという。


「ヒーローってあんな感じじゃねぇのか?」


「ヒーローですか。確かに、それが一番近い表現かもしれませんね」


 さて、結構手間が掛かっちまったが、戻ったらギリギリ最後の仕上げくらいは何となりそうだ。


 最高の一皿。


 せめてその位は俺の手で出さなきゃならねぇだろ。


「お世話んなりました」


「お大事に……」


「もう、大丈夫だね」


「ああ。さてと、返しきれない恩を少しくらい返さねぇとな」


 あの人にして見りゃ大したことじゃないんだろうが、こっちは今日一日で人生が丸ごと変わる位の恩を幾つも受けた。


 だから、俺達にできる形で恩を返していこう。


 あのバカ息子をダンジョンから取り戻してくれたことが最大の恩なんだが、あいつは気が付いてねぇんだろうな。




読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただければ幸いです。

誤字などの報告も受け付けていますので、よろしくお願いします。

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