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第八十五話 どこで行うか、ダンジョンバーベキュー大会


 親父と雄三おじさんたちは牧場型ダンジョンの八階の番人、フロアボスの赤火竜(レッドドラゴン)討伐の手伝いに出かけたので最低でも二週間くらいは帰ってこない。


 ここで問題が出来たというか、例のバーベキュー大会の会場をあの牧場型ダンジョンにする訳に行かなくなったって事だ。


 というのも、せっかくあの牧場型ダンジョンで親父たちに依頼する訳だし、暇な待ち時間にあのダンジョンで色々狩ろうって冒険者が多いらしく、ダンジョン内は冒険者で溢れてるって情報が入った。ダンジョン使用料が百万もかかるんだし、そりゃ当然だよな……。


 情報源は親父だが、虎宮(とらみや)達の方でも同じ情報を手に入れて来たから確定だろう。


「ちょっと困った事になったね」


「あの高級バーベキューセットの効果を発揮させる為にはダンジョン内で使う必要があるし、だけど誰にも迷惑が掛からない場所ってのがホントに難しいです」


「そこだよね。ダンジョン内でのバーベキューなんて本来歓迎されないから~。安全でバーベキューをする場所って事になると、あの牧場型ダンジョンが最高だったんだけど」


 ある程度広くて、周りに迷惑を掛けずにバーベキューが出来るダンジョン。


 あの過疎ダンジョンでもいいんだけど、流石にあそこでバーベキューをする訳にはいかないだろう。最近はあそこを使う冒険者もいるって話だし。


「過疎ダンジョンでも問題だね。初心者用ダンジョンなんて使ったら、生徒会の方にすっごい規模でクレームが来るよ」


「かと言ってなんでわざわざダンジョン内でバーベキューをしているかばらす訳にはいかんだろう。人が殺到するぞ」


 超高級肉を使ってステータスポイントとスキルポイントを増やすバーベキュー。


 しかも一回に増える数値が数値なんで、タダでお零れにあずかろうって奴が押し寄せて来るだろうね。


 スキルポイントが十増えるあのアワビ。


 大きさの割に増えるポイントが少ないから今回はあまり人気が無いって予測されてるけど、アレだってタダで食わせてやるって事になると本気で全生徒が押し寄せかねない。


 一色のレベル五個分のスキルポイント。


 本当にどう振るか毎回悩むスキルポイントが十増えるとか、にわかには信じられないような話なんだよね。


「ん~、高難易度ダンジョンの地下九階って選択肢もありますけど」


「……あんな場所で出来るの?」


「十階まで行けば古龍の食材も手に入りますし、神域を展開すれば魔物も入ってこれませんよ」


「あ~、眩耀(げんよう)がいるからその手が可能なのか。……ほんと、信じられない話だよね」


「高難易度ダンジョンの九階でキャンプとか、普通でしたら自殺行為ですよ?」


 キャンプじゃなくて、バーベキューだけだけどね。


 三時間利用するだけだし、あそこまで潜れる冒険者なんてこの辺りにも滅多にいない。


 問題は、俺以外は九階に直行できないって事か。


「それで、事前に全員でレイドパーティを組んで古竜を撃破。こうすれば今度からいつでも九階に直行できます」


「確かにいい方法だけど、オンブに抱っこで高難易度ダンジョン攻略ってのはどうかな?」


「そうですね。ダンジョン攻略情報はステータスカードに残りますし、卒業時の評価にも大いに関係します」


「とりあえずあそこを使うのは今回だけにして、次からは牧場型ダンジョンに戻さない?」


「それがいいですね。毎回百万円かかりますが、少し潜ればすぐに元は取れますし」


 前回の赤火竜(レッドドラゴン)はフロアボスだから実際にダンジョンボスを攻略した訳じゃないんで、そこまで評価の対象にはならない。全然ない訳じゃないけど、姫華(ひめか)先輩たちの今までの実績から考えたらそこまでプラスでもないしね。


 ただそれがあの高難易度ダンジョンの古龍となるとかなり話が変わる。


 アレを倒せるだけの実力があると判断されれば、同じレベルのレイドボスの討伐の際にダンジョン協会の方から必ず声がかかるし……。


 卒業まであのバーベキュー大会を続ければ、余裕で覚醒するだけのステータスポイントといろんなスキルをレベル十まで上げられるだけのスキルポイントが手に入るだろうけど、それでもあの古龍を倒せるだけの実力が身に付くかって事になると少々話は変わってくるしね。


 俺に関しては菅笠侍として活躍していることが多いんで、ダンジョン協会の方でも俺が此処まで強いって把握してない可能性すらある。 


 この辺りも魔王対策として役にたってるんだけど、姫華(ひめか)先輩たちはそうもいかないからね。


「わたしはもう覚醒してるからそのうち倒せるようになるとは思うけど、流石にあの古龍は卒業するまでには実力的にギリギリかな~って」


「私も覚醒した。やはり前回食べた古龍のヒレステーキはかなり大きい」


「俺も覚醒済みだ。おそらく他の人も今回で覚醒すると思うが……」


「そうだね。頑張って三百グラム食べればみんな行くんじゃないかな? もし今回行かなくても、次回には間違いなく届くと思うけど」


 それでステータスポイントとスキルポイントが三百ずつ。


 運でかなり変わるステータスポイントが三百はかなり大きいよね。


 三色だと一番多い数値で二十四。これに運のボーナスが入る訳だけど、割と運は後回しになってる事が多い。


 レベル十個分以上のステータスポイントがボーナスでいきなり入る訳だし、それを全部運に突っ込めば上手くいけば次のレベルアップ時に二十四ほど運のボーナスが入る。


 今どの位か知らないけど、二回で六百もボーナスポイントが入れば覚醒に届いてもおかしくない。


 スキルポイントが三百もあれば緑を増やせる状況だと確実に一色増える訳だし、そうなると次のレベルアップから入手するステータスボーナスとスキルポイントは倍だ。


「この情報はまずい。特にこの高級バーベキューコンロの存在が問題視されるだろうな」


「確実にあの過疎ダンジョンで再ドロップするまでボス部屋が攻略され続けるだろうね」


「あそこでドロップしたのが分かっているからな。とはいえ、その情報も流していないんだったか?」


「流してないですね。何処で何をドロップしたのかは配信の一部以外は秘匿していますよ」


 魔物からのドロップ情報はかなり重要な情報だしね。


 ネットでもライブ配信以外だと編集してる人も多い位だ。魔物が何をドロップしたのかとか知られると他の人が狙い始めるからさ。


「魔宝石系はそうでもないけど、武器とかアクセ類は大体秘密にされてるよね」


「特に強力な武器は独占される傾向にある。高レベルな武器を打てるドワーフがいないこの国だと、ダンジョンドロップの武器が最高の武器だと考えられているからな」


「実際には眩耀(げんよう)の打った武器があるけど、この武器の存在も秘密だしね」


 あまりにも現実離れした性能なんで、おいそれと渡す訳にはいかないからな。


 あの冒険者に打った程度の武器だったらいいけど、アレでも普通に売ってる武器に比べたらかなり強力なんだよね。


 特に耐久力と切れ味は同じクラスの武器と比べると別物だ。


「今はうちのクラスの勢多(せた)が打った武器がありますよ。値段は相場ですけど、払うだけの価値のある武器です」


「ああ、噂の彼だね。この時点で鍛冶レベル三に到達するなんてすごいよね~」


「ドワーフの血が入ってるんじゃ無いかともっぱらの噂です。冒険者としても活動していますんで、魔力や生命力がそこそこあるのは大きいですね」


 鍛冶一筋の鍛冶師より冒険者兼任の鍛冶師の方が有利な部分だけど、本来は料理スキルみたいにそれに関する様々な技術が必要なんで鍛冶一筋の鍛冶師の方が同じスキルレベルでもいい武器が打てる。しかし何故か勢多(せた)の打つ武器類はその専門に打ってる鍛冶師を超える武器なんだよな~。


 初心者用ダンジョンの一階に勢多(せた)専用の鍛冶スペースが作られたし、既に学院から無償で様々な素材が提供されている。 


 学費はもう卒業するまで完全無料だし、それどころか国と学院から返済不要の奨学金まで出てるって話だ。


「流石にアクセ類は苦手みたいだけどね」


「アクセ類は覚醒した人間が作れるようになるしかないですね。錬金術を使いこなせれば、色々作れますよ」


「この先覚醒する冒険者も増えるだろう。今まででは考えられない話だ」


 最大で二千八百ポイント近く必要なステータスポイントが問題なんだよな。


 運良くラッキーダイスを発動させる飴玉を手に入れてたら結構入るんだけど、下手すると三色持ちでステータスボーナスが四とかありうるからね。


 俺の特殊インベントリ内にはラッキーラビットからのお礼であの飴玉が結構あるけど、覚醒組はラッキーダイス持ちになってるから意味ないし……。


「緑を増やせる組み合わせとの格差が酷い事になってるよね。最低でも三色まで増やせるってのは本当に大きいよ」


「レベルリセットが二回出来るようになるのも大きいです。ただ、青や黄色でも増色の魔石は高いですし、簡単に手に入らないのは痛いですね」


「金や銀ほどじゃないとはいえ、結構するからね」


 でも青や黄色の増色の魔石はうまくいけば一千万円くらいで入手できることもあるらしい。


 今まで使う人なんてほとんどいなかったから割と市場に溢れてるし、そこそこドロップするのも原因って話だ。


 赤の増色の魔宝石は更に価値が下がって、百万円でも売れないって話も聞いている。


 あれでも緋色を増やすのには必要な魔宝石なんだけどね。


「この数ヶ月で冒険者を取り巻く状況が大きく変化した。その中心人物は目の前にいる訳だが」


「そこまで大したことは……」


「してるよね? あの高級バーベキューセットもそうだけど、世に出したらイケナイ秘密をこの短期間でどれだけ暴いたのかな?」


「そこまでかな?」


 武器に関しては俺の個人的な能力の産物だし、俺が直接手出ししたのは緑がどうしたら増えるのかって検証位だろ?


 後は飲みやすい回復薬のレシピ作成?


「何を数えてるか知らないけど、折った指の数が二本しかない件について」


「逆に何と何を数えたのか知りたい位だよ」


「緑を増やす情報の検証と、回復薬のレシピくらいかな~と」


「公にはその位じゃないかな? 牧場型ダンジョンの地下九階以降の情報も大きいと思いますが」


「それもあったか……」


 牧場型ダンジョンの農作物とかについてはすでに企業が準備を始めているらしい。


 二時間に一度無限収穫が出来る畑や田んぼ。しかもそこに生えるのは全部ダンジョン産の高級食材だ。


 効率よく収穫したうえで、それを有効に活用する方法もいろいろ検討推されてるって話だね。


「牧場型ダンジョンで入手できるダンジョン米で日本酒を造ろうって話があるらしいよ。後はダンジョン産の地ビール。地ビール工場はもう稼働してるって話だし」


「醸造所をどこに作るんですか?」


「地下一階を改装するって話が出てるけど、もし実現したらすっごい高級酒が出来上がるよね……。地ビールの方はもう少し安いって話だけど……」


 今まではそこまで大量のダンジョン米が手に入らないから夢のまた夢だった日本酒の醸造。


 あの牧場型ダンジョンの水は良いし、酒作りに向いている水でも見つかったのかもしれないな。


 麦があればビールの醸造はできるし、それ以外の植物を使ってビールを醸造している国も結構あったりする。


「となるとダンジョン米は奪い合いですか? それと麦」


「酒造りにあうダンジョン米を吟味して、一種類だけ仕込むらしいよ。麦に関しては話し合いっぽいね」


「どんな農作物も二時間に一度収穫出来るから、仕込めるだけの量を収穫したらしばらく開放するそうだ」


 あの牧場型ダンジョンの強みだよな……。


 普通のダンジョンはリポップ時間がもう少し長い。でも、あのダンジョンはきっちり二時間でどんな物でもリポップするし、完全に刈り尽くした状態にしても二時間後には完璧な形で元に戻る。


 あのダンジョンは常に多くの冒険者が活動してるから、彼らが使う魔力でダンジョンに力が注がれてるって話も聞いているんだけど、その噂は本当かもしれない。という事は今後リポップ時間がさらに短縮される可能性すらあるんだよね。


 その反面、あの過疎ダンジョンのリポップ時間が長いわけだよ。


「とりあえず今回は高難易度ダンジョンの九階で開催。次回以降は牧場型ダンジョンの状況次第かな?」


「このまま冒険者で溢れてたら無理ですしね。元々あそこは冒険者の多いダンジョンでしたけど……」


「地下二階のキャンプ場を閉鎖させる事はないと思うけど、地下一階のコテージは数を減らされるらしいよ。そこを高級ホテルに改装するって噂が……」


 牧場型ダンジョンは元々高級食材の宝庫だったけど、この先は本気で企業が力を入れる場所になりそうだしね。


 ただ、企業でも一回百万円ってダンジョン使用料は払わないといけないし、今度から最大一週間って日数制限もできるそうだ。


 一週間でも余裕で百万くらい稼げるし、ダンジョン使用料を値上げしなかっただけマシかな?




読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただければ幸いです。

誤字などの報告も受け付けていますので、よろしくお願いします。

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