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第八十二話 牧場型ダンジョンに隠されたお宝を探せ


 朝六時。かなり早い時間から赤火竜(レッドドラゴン)討伐が始まり、そしてめでたく戦闘が終わりましたとさ。


 っていうか、まさか三パーティ編成にしてレイドボスパーティ登録するとは思わなかった。


 確かにこの方法だと討伐は一回で済むし、リポップされる二時間を無駄にしないで済むけどさ。ただ、赤火竜(レッドドラゴン)の素材とかは殆どはいらない。


「まさかこの手で行くとは思いませんでしたよ」


赤火竜(レッドドラゴン)の素材は貴重だけど、わたしたちの目的はこれだからね」


「そうだな。これで次からこの階をスキップできる」


「かなり強そうな赤火竜(レッドドラゴン)だった。何度も戦闘するのは面倒」


「この方法だと、経験値もほとんど入りませんよね?」


「経験値もまた今度でいいさ。そんな事より、噂通りなのか地下九階を拝ませて貰おうじゃないか」


 なぜか虎宮(とらみや)も収穫する気満々だ。


 ああ、こいつは紫峰田(しほうだ)さん用に食材を確保したいのか?


 愛妻家というか、意外とわかりやすい所があるよな。


「それじゃあ、そこのポーターから行くよ」


「どんな場所なのかワクワクするね~」


「情報通りだと、本当に宝の山だろう」


 農作物と果物の楽園。


 あの大規模な農場の何をどの位確保するのか……、おそらく永遠に答えが出る事は無いだろう。


 俺だってあの農場の端から端まで何が生えてるのか、完全に把握してる訳じゃないからな。


「……これは、凄いね」


「特に向こうの田んぼや麦畑は目を疑う光景だ。結構な種類の米や麦という話だが」


「そうですね。小麦は特にすごいですよ。何種類も生えていますので目的ごとに刈り取る麦が変わりますし、あんな規模で生えてる場所なんてここくらいだと思います」


 ホントに、普通のダンジョンで見かけるダンジョン麦なんて、数本ずつランダムに生えてるだけなんだ。


 こんな規模で、しかも綺麗に種類別に生えてるなんてありえない。


 米もそうだし、ダンジョンもち米なんてあの時初めて存在を知ったからね。


「で、収穫して生えてくるまで二時間程度なのか?」


「そんな感じかな?」


「二時間だとホントに僅かな量しか収獲できないよね。つまり、収穫に終わりなんてない?」


「無いですね~。それどころか、今日一日かけてもここに生えてるすべての農作物や果実を把握する事は不可能だと思います」


 奥の方にはメロンがある事は知ってるし、前回の時に流石にメロンは見逃さなかった。


 でも、この農場だけじゃなくて下の階にもまだ色々あるんだろうしね。

 

「わたしたちはここで収穫かな? 眩耀(げんよう)君は()()をお願いね」


「ダンジョンカカオ豆ですね。何とか見つけてきます」


「もし見つかれば、あのレベルのガトーショコラが食べられるのか~」


「ダメ、絶対ホールで食べちゃう」


「何号がいいかな? 四号?」


「六号くらいいけそう。四号だとあっという間に食べきっちゃうよ?」


 恐ろしい会話を聞いた気がする。


 へ~、六号のチョコレートケーキを一人で食べられるんだ~。


 氣力が上がってると食欲が増すからその位は余裕だろうけど、流石に途中で飽きない?


 流石にケーキをホールで食うのは俺にはきついぞ。


「お前が作ったショートケーキだったら、俺でも六号をたぶん食えるぞ」


「マジか」


 虎宮(とらみや)の奴まで六号食いきれる宣言してくるとはな。


 六号のショーケーキって、たっぷりと生クリームとイチゴが乗った状態の直径十八センチのケーキだぞ?


「地下十四階の探索って私たちだと無理そうなの?」


「空を飛べて、だだっ広い海に浮かぶ島を巡ってそこに生えてるお宝からカカオ豆を見つけられるんだったら……」


「大人しくここで収穫作業してた方が利口じゃない?」


「そうですね……。探索する時間が惜しいですし、空を飛ぶのも正直……」


 慣れないと割と空を飛ぶのって難しいからな。


 特に女性はスカート問題が発生する事が多い。


 ちゃんと隠蔽魔法使わないと、下から丸見えだからね。


「ダンジョンカカオ豆の探索は俺がひとりで行くよ。時間もかかると思うし」


「頼んだよ。見つかった場所のマーキングもお願い」


「あそこ飛んでいける冒険者って、相当条件限られると思うよ」


 確かに飛行型の魔物は少ないし、危険は少ない。


 海の方は鮫とか水生の魔物が意外に多いし見た目以上に危険なんだけど、空は魔物がいないんだよな。


 たまに鳥が邪魔だけど……。


「集合時間は?」


「今八時だから、十六時? 帰る時間を気にしなくていいのがいいよね」


「転移で一瞬ですから~。限界ギリギリまで農作物の収穫にいそしみます」


「俺はダンジョンカカオ豆団の探索ですね。他にも色々探していますけど」


 ダンジョンバナナとかの南国系フルーツ。


 あの農場になかった果物類はあの島にあるに違いないからね。


◇◇◇


 ひとりで牧場型ダンジョンの地下十四階に下りた一時間後。


 俺は相変わらず空を飛んでは目についた島に上陸し、そこに生えている様々な植物などをダンジョン協会に提出する用の地図に書き込んでいた。いつも配信用に使っているドローンも駆使して情報を収取しているぞ。


 これもかなりの高額報酬になるんだけど、こういった行動を多くしているとダンジョン協会の覚えが良くなり、色々と便宜を図って貰えるようになるという噂もあるんだよね。


 親父や雄三おじさんクラスになるとダンジョン協会が大体の事は何とかしてくれるって話だし、あながち冗談でもなさそうだ。


「ゴムの木とかが見つかったら凄いだろうな。この牧場型ダンジョン、トンデモナイお宝を隠してた事になる」


 食材じゃないけど、この気候だったらゴムの木とかが生えてても不思議じゃない。


 というか、生えてない方がおかしい気がする。


 コーヒー豆は何種類も見つかったし、ダンジョンバナナも既に見つけてあるから後はダンジョンカカオ豆だけなんだよな……。


 他にも見つかったらありがたい果物とか欲しい果物はあるけどさ。


「おっ、ここからでも流石にアレは何かわかるぞ!! カカオ豆って意外に目立つな」


 赤みがかったオレンジというか、あれだけ木にゴロゴロなってたら流石にわかるぜ。


 それも島全体にダンジョンカカオ豆の木しかない。ここからでもチョコレートの匂いが漂ってくる気がする。


「あれだけあれば十分だ。っていうか、あの島全体に生えてるカカオ豆を二時間に一回収穫出来たら、トンデモナイ量のカカオ豆が手に入るぞ。しかも、全部ダンジョン産だ」


 ダンジョン産の食品類は味がいいし、不思議な効果がある物も多い。


 おそらく中に籠ってる魔素の影響だろうけど、それだけであそこまで味が良くなるものなのかな?


 そんな事よりとりあえず収穫だ。まだまだ時間はあるけど、あいつらどのくらいチョコレート消費するか分からないからね。


「特殊インベントリの方でチョコレートに加工はできるっポイな。最近色々作ってるから錬金術スキルの方が進化していろんな機能が追加されてるんだよな」


 こっちの特殊インベントリは何なのかホントわかんないけど、裏画面で自動的に行ってくれる便利機能?


 消費魔力に関してはずっと吸い上げられ続けてるみたいなんだけど、魔力はこのリングの効果で毎秒二十億回復するから心配する必要がこれっぽっちもない。


 というか、ある程度こっちに魔力をプールできる機能もあるみたいなんで、毎秒十億ずつ魔力を送り込んでいる。おかげでプールされてる魔力もすっごい事になってるよ。


「……流石にもういいだろう。当分カカオ豆はみたくない」


 何トン収穫した? 収穫しても収獲しても無限に生えて完熟していくカカオ豆に恐怖しながら、すでに三時間ほどカカオ豆を収穫するマシンと化していた。


 上の戻る時間を考えると、そろそろ引き上げないといけないな。


「残念ながらこのフロアに存在する島の半分も調べられなかった。他にもいろいろ生ってるんだろうけど……」


 とはいえ、ダンジョンバナナは結構な量を収穫したし、他にもライチとかの南国系果物が結構な量で収穫できたのは大きい。


 今まで南国系ダンジョンなんて存在すら聞かないし、この辺りは他の国でも手に入らない食材かもしれないね。




読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただければ幸いです。

誤字などの報告も受け付けていますので、よろしくお願いします。

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