第八話 激闘レッサーゴブリン!!
レッサーゴブリンの群れに守られたポーターを諦めて、少し離れた場所にある森に来た。
流石に最初の森よりはレッサーゴブリンがいるみたいで、既に五匹のレッサーゴブリンを斬り倒す事に成功してる。って、ここまで弱いんだったらあの群れに突撃しても勝てそうな気がするんだけど。
豆腐か? こいつら魔物型の豆腐なのか?
「ショートソード一振りで確殺。三匹位だったらまとめて斬り殺す事も可能……」
一匹経験値一しか入らないけど、これだけ弱けりゃ当然か。
現在の獲得経験値は六。あと百九十四だな。
必要経験値が十な単色の人だと後四匹であがるのか。そりゃ簡単にレベル二に上がるぜ。
「あの群れを倒しても経験値は二十程度。赤単の奴だったら余裕でレベルが上がってるんだろうけど」
簡単にレベルが上がる赤単ってほんとに楽だろうな。
その分能力値の頭打ちは早いけど、序盤っていうか冒険者なりたての頃は楽しくて仕方がないだろう。
「しっかし、灰色の必要経験値二百ってどうよ? この調子だと、レベル三には三百くらい必要になりそうだし……」
って、またレッサーゴブリンの群れを見つけた。
この辺りのこいつらですら手に武器を持って無いんだけど、素手の状態がこいつらの基本スタイルなのか?
「という訳で突撃。森の中は戦いにくいけど、こうしてショートソードを振りぬく位の余裕はあるんだよな」
素手で向かって来るレッサーゴブリンの群れをショートソードで切り倒す。
いやもう、こいつら本気で身体が豆腐か何かで出来てんのかってくらい簡単に斬れるんだよ。
確か棍棒で殴っても一撃だって話だし。
「で、今回も手に入ったのは小さな魔石だけか。毎回袋を取り出して収納するのも手間なんだけどさ」
袋に入れたまま持ち歩くと音がしてうるさいし、一つずつダンジョンリングに取り込むとスペースの無駄になるしな。
手間だけど毎回袋を取り出してそこに入れるしかない。
「意を決してさっきの場所に行くか。二十匹でも難易度変わらないだろ」
レベル一にしては俺のステータスは結構高い。
下手すりゃスキルを使えないだけで、単色のレベル三程度の数値はあるんじゃないかってくらいだ。
だったらあの程度の群れ位倒せるはず。
◇◇◇
現場の神崎で~す。
はい、レッサーゴブリンとはいえ魔物の群れを舐めてました~。
現在森の中をかなりの速さで逃走中!! っつても、これは作戦の一環だけどね。
いや、最初に見たあの数だったら余裕だったよ。あの数だったらね。動きは遅いし、十五匹ずつ倒していってもまだ余裕があった。
ところが三十匹くらい倒したところでリーダー格のレッサーゴブリンが吠えて、森にいたレッサーゴブリンを馬鹿みたいに呼び寄せやがったんだよ。
「どこかで見たこの戦術を試す事になるなんてね」
とりあえず走って逃げて、振り返って数匹斬り殺す。
レッサーゴブリンを倒した後、俺は残された魔石の回収は諦めて再び走って逃げるをひたすら繰り返している。とはいえ、レッサーゴブリンは足が超遅いからジョギング程度の感覚でいいから割と楽だ。
たまに前を塞ぐレッサーゴブリンもいるけど、蹴り倒したり斬り殺したりして何とかその場を切り抜けた。
ここで肝心なのはこいつらを振り切っちゃいけないって事だ。ばらけられると、また探して倒すのが面倒だからな。
この場に留まってまとめて相手にしても勝てると思えるけど、群がってくる無数のレッサーゴブリンを倒し続けるなんて流石に無理ゲー過ぎだっつーの。
「弱いんだけど、たまに足掴んできたりする個体もいるしな。油断大敵注意一秒怪我一生。生きてりゃまだいいけど、そのまま生命力を削りきられたら終わりだ」
ダンジョンが出来てからこっち、生きてりゃ怪我は何とかなるけどさ。
金さえ出せば四肢の欠損とかも治るご時世だしな。状態次第で一億円位請求されるらしけど。
現在の生命力は三十九/二十七。ほぼノーダメかと思ってたんだけど、それでも十二くらいダメージをくらってたのか。
違う!! 三十分に一程度自然回復してるから、ダメージ自体はもう少し食らってるって事だ。
次のレベルに必要な経験値は四十二。最初のレッサーゴブリンも含めて、もう百五十八匹も倒してたんだな。
くそっ、唯一のドロップアイテムである魔石の回収すらできちゃいねぇ!! 流石にこの状況で余裕ぶっこいて魔石なんて拾ってたらレッサーゴブリンに袋叩きだぜ。
「刃こぼれしまくってるし、このショートソードは今日でお別れだな」
レッサーゴブリンを斬っても刃こぼれなんてしないけど、たまに木とか岩にあたって刃が欠けるんだよ。
刃に着いた血も死体と一緒に消えるし、そのあたりはホントに助かるけどさ。
……というか、後四十二匹か。今日中にレベルが上がりそうだな。
「これで後四十!! 追いかけて来てる数がもうその位か」
リーダー格のレッサーゴブリンが叫んでももう周りからレッサーゴブリンが増える事は無くなった。
つまり、この森にいたレッサーゴブリンを殺し尽くしちまったって事だね。
「あのくらいだったらもう一時間くらいで何とかなりそうだ。でも、確実に家に帰るのが真夜中だろうな」
疲れてなけりゃ一気に決める所だけど、流石にこんなに走り回った後だと無理がある。
スマホを出して時間を確認できないから今何時か分からないけど、夜中の十時を回ってるのは間違いない。
後ろを確認しながら足を止めて、数匹斬り殺してまた走る。
たまに休むけど、ほんとにしつこい奴らだ。
「これだけ仲間を切り殺されたら、こっちを仕留めるまで追いかけて来るか」
残りの数が二十匹になった時、俺は覚悟を決めて反撃に転じた。
この瞬間を待っていたのか、レッサーゴブリンは嬉々として向かってきたが、リーダー格はともかく他の個体はすでに走り疲れてるみたいだ。
リーダー格のレッサーゴブリンは少しだけ強かったけど、俺は何とか追いかけて来たレッサーゴブリンの群れの撃退に成功した。
こうして、俺のダンジョン探索初日は終了する。
【レベルが上がりました】
頭の中にファンファーレが響き、レベル二になった事を知らせてくれた。
レベルアップ時に生命力と魔力は全快する。だけど欠損とかは何故かそのままなんだよな。
生命力は最大値まで回復するのにさ。っていうか、生命力ってホントなんなんだろうね?
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