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第七十五話 牧場型ダンジョンでキャンプの申し込みをしよう


 牧場型ダンジョン地下一階。


 この牧場型ダンジョンは大人数に対応できる受付カウンターといろんなダンジョン肉なんかの査定を行う大型清算用カウンターを設置されている事が特徴で、今日は週末という事もあって各カウンター共に多くの冒険者でにぎわっていた。


 いや、ここのダンジョン使用料って一回百万だよ? こんなに多くの冒険者が利用できるものなの? 流石に全員学生じゃなくて専門の冒険者みたいだけど……。


「……半分くらいの冒険者は受付をせずに、あの辺りの飲食スペースで情報だけを漁っているようだな。ダンジョンの一階に関しては何処でも無料で色々利用できる場所があるからな」


「そうだね~。此処でも鍛冶場はあるし、貸し出しスペースも用意されてるからね」


「他と違うのは、有料のキャンプスペースがあるからその辺りの警備が厳重なくらいですか」


 置き引きじゃないけど、高価なダンジョン用キャンプ道具を盗もうって奴が居るらしい。


 ここはダンジョン内だからダンジョンリングの機能が使えるし、リング内のインベントリを使って盗みを働かれるとかなり面倒だしね。


「後はほら、あそこの屋台料理とかが目当てかな? 美味しそうな物がたくさん売られてるし……」


「ダンジョン羊の串焼き。ここはダンジョンの地下一階なのにかなり天井が高いし、煙とかが出てもそこまで問題じゃないのか」


「キャンプが出来る位だからね。あ、受付開いたみたいだよ」


「受付を済ませて地下二階のキャンプ場に向かおうか。いろいろ用意してきたからご飯は期待してくれてもいいよ」


「あれ? (げん)ちゃんってそんなに料理好きだったっけ?」


 昔っからおじさんや親父が一緒に出掛けてる時には俺が玲奈(れいな)に色々作ってやってる気がするけどな。


 ん? どうして俺が飯担当だったんだっけ? 玲奈(れいな)も料理が出来ないって訳じゃないのにさ……。


「色々あって、今は割と料理好きだぞ」


「それは期待しちゃうな~」


「おそらく期待以上の物が出て来るんだろう」


眩耀(げんよう)の手料理~。すっごく楽しみ」


 ちゃんとキャンプ向きのメニューも考えて来たけど、晩飯がバーベキューなのは元々予定通りだしね。


 昼食なんかはパスタも作るつもりだし、おやつもいろいろ用意して来たぞ。


 さて、受付だ。


「いらっしゃいませ。かなり軽装のようですが、キャンプをご希望ですか?」


「はい、地下二階のキャンプ場に九人です」


「地下二階ですと魔物も出物しますよ。このダンジョンにアクティブタイプの魔物は少ないですが……」


「問題ありません。それに、装備も持ってきてますし」


 特殊インベントリ内にはいつもの装備はあるし、他のみんなもダンジョンリング内に装備を用意してきてる。


 ここの地下二階程度に出る魔物程度だと、素手で何とかしそうなメンツだけどね。


「そうでしたか……。それでは九人分で九百万円になります」


「はい。これでいいですか」


「買い取りグループの帯付き札束ですか。若そうに見えますが、一流冒険者さんだったんですね」


 例の買い取りグループは業界最大手なんであそこの札束を持っているだけで冒険者としての格が上がるって言われてるらしい。


 あまり変な物ばかり持ち込むと出入り禁止にされるそうだし。


「億を超える取引はあそこ位しか当日対応して貰えませんしね」


「……億ですか」


「高純度な魔石や大き目の魔宝石が取引に絡むと、億って簡単に行くよな」


「そうだね~。わたしはあそこは割と客で態度を変えるからあまり好きじゃないんだ~。適正価格で買い取ってくれるのは確かなんだけど……」


 姫華(ひめか)さんもあそこを利用してる訳か。


 俺達の住む場所っていうか全国的に見てもあそこは最大手だし、近くにある店の品揃えもいいからついでに利用するにもちょうどいいしね。


「なんだあいつら……。多分まだ学生だよな?」


「だろうな。深淵の奴らじゃないのか?」


「深淵か。にしても、学生のくせにここの地下二階でキャンプとかふざけてやがるな」


 いや、社会人になってくるより学生の時の方が時間的な余裕が多いからいいと思うんだけどね。


 社会人でここに来るんだったらやっぱり採集メインになるだろうし。


「はい。こちらが利用証明のリングになります。こちらが無いと転移用ポーターがあるエリアへの立ち入りは禁止となっておりますのでご注意ください」


「ありがとうございます……。七月二十日から開催される、勇者パーティと合同での地下九階転移許可証獲得ツアー?」


「これですか~。先日、地下九階以降の情報が入りましたので、半月ほど許可証獲得のパーティを募集しているんですよ~。参加費用は高めですが、すぐに元が取れる事は間違いないですね」


 俺は親父から何も聞いていないが、という事は雄三おじさんも半月ほど家を空ける訳だ。


 玲奈(れいな)も驚いてるみたいだけど、何も聞かされてないみたいだな。


「参加するのか?」


「俺は遠慮しておくよ。詳しい話はキャンプ中に……な」


「了解~。どんな場所なのか楽しみだな~」


「そうですね~。冒険者になってからはこんな形のキャンプなんて初めてです」


「基本キャンプと言えば地獄の宿泊ダンジョン攻略くらいだしな。三日目までは我慢できるが、それ以上続くといろいろと地獄なんだ」


 周りの冒険者の多くが頷いてる!!


 そうか、普通ダンジョンってそんなに日数をかけて攻略する場所だったんだよな。


 今まで一度もそこまで苦労した事が無いから忘れてたよ。


「それじゃあ目的の場所に移動するよ」


「は~い」


「こんなに気の抜けたダンジョン内の移動なんて初めてだぞ」


「今日くらいは羽目を外してもいいんじゃないかな?」


 基本的にこのダンジョンで緊張する事なんて……、いやあるか。


 例の農場エリアとかで採集する時は下手なダンジョンで戦闘する時以上に緊張するだろう。


 限られた時間内でどれだけいい物を収穫するか、あそこに生ってる物は全部超がつくほどの品質の物ばかりだ。


 手に入れずに帰る事があれば、そりゃもう死ぬほど後悔するだろうからね。


「ついで仕事になるけど、湖でダンジョン海老とかを獲るのもいいかも」


「ダンジョン海老か~。どのタイプの海老がいるかだよね~」


「手長海老タイプの生息場所とかありますよ。ダンジョンガザミのいる場所もチェック済です」


 汽水湖エリアのダンジョンガザミもあるし、獲れた獲物はお土産として持ち帰ってもいいかもね。


 下拵えが必要な食材も多いし、前回来た時に手に入れたダンジョンハマグリとかは既に砂抜きが完了しているぜ。


 バーベキューの時にはダンジョンアワビの地獄焼きとかも出す予定だし……。


「流石だね~」


「ダンジョンガザミ高いんですよね。この位のサイズでも軽く数万円しますし」


「味噌も旨いですけど、身の甘さも格別ですからね。向こうで買い取りもしていますよ」


「ドロップ品のダンジョン肉系じゃないと買い叩かれるのがオチだよ。お土産に持って帰る方がいいかな」


 そういえば親父も先日獲ったダンジョンサザエとかを壺焼きにして出したら感動してた。やっぱり身のうまさというか、ダンジョン産は全然レベルが違うみたいだね。


 今まで碌に小遣いなんてくれなかったあの親父が、珍しく小遣いをくれた位だしな。


 その代わり、ダンジョンサザエとダンジョンアワビを結構な数要求されたが……。


「本気で採集に行ってしまいそうだ」


「それはまたの機会にお願いします。たまにはこうしたキャンプもいいと思いますよ」


「そうだね。わたしたちも頑張りすぎだし、偶には羽根を伸ばしてもいいと思うんだ~」


 生徒会メンバーは本当にがんばってるからね。


 生徒会が主催している学内のイベントもあるし、緊急時には初心者用ダンジョンで迷子になった生徒の探索まで行う事もある。


 先日の天城(あまぎ)さんたちは俺が何とかしたけど、手遅れな場合も多いって聞くから精神的なダメージも結構蓄積してるんだろうね。


 だから今回みたいな冒険者としてじゃなくて、普通にキャンプを楽しんで貰いたくてこんな事を企画した訳だし……。


「そこの冒険者さん。それ以上向こうに移動するんだったらダンジョン利用料を払ってください」


「くそっ。……仕方ない、今は見逃すか」


「いつやる?」


「ここは二十四時間職員がうじゃうじゃいるからな。とはいえ、深夜になれば数が減る」


 ……ステータスの高い俺は耳がいいから小声でもばっちり聞こえるぞ。それに、怪しい気配の奴もいる。魔族じゃなさそうだが、……まさかトレインか? こんなトレイン行為に一番向かないダンジョンで? 一体何考えてるんだ? とはいえ、こっちから仕掛ける訳にもいかないし、とりあえずは様子見だな。


 というか、姫華(ひめか) さんたちも気付いてるっぽいし……。


 覚醒はしているんだろうが、あいつらの能力だと俺達の敵じゃない気がするんだけどね。




読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただければ幸いです。

誤字などの報告も受け付けていますので、よろしくお願いします。

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