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第七十二話 ダンジョン協会への報告~地下九階以降に眠るお宝


 牧場型ダンジョン一階の受付。


 今この場所では俺の目の前で受付のお姉さんが、俺が採ってきた地下九階以降の映像や収穫物の一部を見て頭を抱えていたりする。当然と言えば当然の反応だけどさ。


 多少の収穫だったら喜ばしい事なんだけど、今回の収穫は間違いなく異常というか、九階の農場型フロアに関してもそうだし、三階ある海エリアも海産資源の宝庫と言っても過言じゃないからね。


「ダンジョンアコヤガイは確認されませんでしたが、それ以外の海産物も凄かったですね」


「海エリアの情報も重要ですが、九階の農場フロアは前例がないどころか、ここまで大規模な農産物の宝庫はおそらく世界初だと思います」


「そうですよね……。だた、八階の赤火竜(レッドドラゴン)を倒さないと九階へのルートが開けないのが問題です」


「菅笠侍さんクラスの冒険者もなかなかいませんからね。……ふた月ほどここでバイトとかしてみません?」


「わたしはこれでも学生なんで無理ですね。勇者パーティに頼むのが無難だと思いますよ」


 時給百万近い高額バイトになるんだろうけど、流石にうちの学校でも二ヶ月も休めば退学になるだろ。


 うちの学校は冒険者活動に関してはかなり緩くて、一週間程度ダンジョンに籠って攻略している場合なんかは実績次第で公休扱いにして貰えたりする。


 今回の牧場型ダンジョン攻略はキッチリと休みな土日を使った攻略になったけど、これが平日の二日でもこれだけ実績をあげれば喜んで公休として認めてくれるだろう。


 フロアボスの赤火竜(レッドドラゴン)討伐もそうだけど、最下層にいた海龍討伐に成功してダンジョンを初制覇したのもデカい。


 この国は米を主食にしてるし、一部の金持ちにはダンジョン米もかなり人気だ。でもそれはあくまで陸稲で今回みたいな水田で獲れた米じゃないんだよね。


 俺が今回採集して来た米一キロに対して、百万って額を提示してきたくらいには魅力的な商品なんだろう。実際に売りに出されるときには、ものすっごく高額に化けてるんだろうけどさ。


「このダンジョン米はしかるべき組織で色々分析されて、それが終わったらこの牧場型ダンジョンの特産品として登録されるでしょう。その時の売値も、おそらくキロ数百万を下る事は無いと思いますよ」


「これ美味しそうですもんね。……そんな目で見つめられても、これ以上納品しませんよ」


「今回の収穫物を全部売りに出せば、一生遊んで暮らせる額になると思うんですよ」


「その程度の額の財宝は持ち合わせてますんで、美味しい物は自分で食べる事にします」


 赤火竜(レッドドラゴン)や海龍からドロップした財貨だけでもひと財産だし、宝石箱に詰まったダンジョン真珠を売りに出せばいくらになる事やら……。


 こうして俺の特殊インベントリ内に財宝が積み上げ荒れていくのは問題だけど、これだけの財宝を一気に流すと市場が混乱するからね。


 こんなペースでダンジョンを攻略する奴なんて、他にいないとはおもうけど……。


 冒険者って言ってもそこまで積極的にダンジョン制覇を頑張ってる訳じゃなくて、この前の冒険者みたいに稼げる場所で延々と慣れた魔物を狩ってるだけってパターンも多い。その自分にあった稼げる狩り場を見つけるのも大変なんだけどね。


 ん? 受付のお姉さんが何か言いたげだ。


「いったいどんな大きさのインベントリを持ってるんですか」


「内緒。多分世界最高の大きさだと思う」


「言い切りましたね~。勇者パーティより多いって事ですか?」


「多いと思います」


 おじさんや親父のステータスもある程度的な感じで知ってるけど、確かオールステータスが高くても一万前後だった筈。親父に関しては変身をしたらもう少し高いらしいけど。


 流石にあのクラスになるとほとんどの冒険者は勝てないし、魔族でもそこまで強くないんじゃないかな?


 だから対勇者的な存在で魔王がいるんだろうけど、別に人類は今のところ魔族と戦争してる訳でもないし、表立って敵対もしてないんだよね。決戦が始まる時は向こう側から宣言があるって事だし。


 大きな被害を出してるダンジョン犯罪者の多くは魔族らしいけど、人間模倣犯もいるからその辺りはややこしんだよな……。


 魔族がこれ以上人類にちょっかいを出してくるんだったら俺も奴らの殲滅の為に力を貸すし、積極的に奴らの情報を集めて倒しに行く必要もある。


 でも、今は勇者の雄三おじさんや親父もそこまで魔族殲滅に動いていないし、今はまだその時じゃないんだろうね。


「今学生さんなんですよね?」


「……そうですね~」


「二ヶ月休めないって事は、大学じゃないですよね?」


「ダンジョン大学は攻略休学を認めてますからね……。ダンジョン研究用の長期探索もありますし」


 うちの学校を卒業した後、国立のダンジョン大学に進学するって選択肢もある。


 ダンジョン大学はダンジョン解放後に十年位で設立した教育機関なんだけど、高レベルな冒険者でダンジョン内の生態系とか採集物なんかの研究も行ってたりする。


 その情報の多くは企業に売られたりしているし、その売り上げで大学の運営をしているそうだけどそこの在籍する学生へのメリットはあまりない。


 一応大学卒業の資格は手に入るけど、四年間かなり搾取されるって話だしな……。


 基本冒険者ってレベルを上げてステータスを強化するから、知力の数値が百を越えたら一般的に見たら超がつく位の天才なんだよね。普通の人間の最高値が十八な訳だし。ただ、レベル一のステータス上限が十八って話だけど、それを越えたイレギュラーな存在も確認されてたりする。だからまだステータスの謎ってのは完全に解明されてる訳じゃないんだよね。


 俺の場合はかなり能力を抑えてても各種の能力は常人離れしてるし、ちょっと本気で考えればスパコンを遥かに超える速度で計算が出来たりするんだよね。


 知力が二百五十六の最高値に達した冒険者は全員同じ様な状態だろうし、いろいろなれないと普通に生活するのすら困難だ。


 一部の大学では冒険者や元冒険者のステ―タスの一部開示請求したり、入学を制限してるって話も聞くんだよね。


 そうでもしないと一般人が全員落とされるし……。


「となると高校生? 菅笠侍さんみたいに強い冒険者はすぐに噂になると思うんですけど……」


「冒険者の特定はダメですよ。高校生冒険者だって有望な人は多いですし」


 多分虎宮(とらみや)姉弟はかなり強い部類に入るし、そのうち覚醒まで行きそうな気はする。


 同級生の虎宮(とらみや)に至ってはたぶん二色増やして五色持ちが確定してるし、成長しきると最低でも全ステータス四桁は確実だろう。


 俺と同じ位とまでは流石にいわないけど、同年代でも最強クラスのステータスを持っている筈だ。


 今一番脂がのってるというか活躍してる冒険者は俺達の十歳くらい上の世代なんだけど、ある程度財宝を手に入れてる連中はそろそろ活動を控えてるって話だし、運悪く財宝にあり付けなかった冒険者もそこまで本気でダンジョンを攻略してないんだよね。


 鉱山型ダンジョンあたりに籠ってるのが一番確実だと思うけど、あそこに出て来る魔物も強くて硬いからな……。


「余計な詮索はやめておきます。上に怒られても面倒ですし」


「それはどうも。で、探索部隊の募集は何時くらいになりそうですか?」


「今回の結果や映像を報告して、ダンジョン協会が募集を掛けるのがひと月後くらいですかね。勇者パーティの予定次第ってのもありますけど」


「他のダンジョンで攻略組募集とかしてたら、流石にそっちを優先するでしょうしね」


「そこなんですよ~。これだけのお宝が眠ってるのに、取りに行ける人がいなんですよ!! あの赤火竜(レッドドラゴン)さえいなければ……」


「今回赤火竜(レッドドラゴン)戦の映像も提出しましたし、少しは参考に……」


 配信はしないけど、一応何かの参考になればと思って赤火竜(レッドドラゴン)戦の映像も用意してみた。


 ただ、あまりに速すぎて赤火竜(レッドドラゴン)の首を斬る俺の姿は映らなかったし、あの倒し方は参考になるかどうかが怪しい。


「なると思いますか?」


「頑張れば……、多分」


 竜魔法の存在と射程範囲が分かったのはデカいでしょ。


 ドラゴンと言えばみんなブレスしか警戒してないから、あの魔法を使うって知れたのは冒険者にとっては大きいんだぞ。


 やっぱり一番怖いのは初見殺しで、あの竜魔法の存在があったからこそ赤火竜(レッドドラゴン)は無敗を誇ってたんだろうしな。


 生かして帰る奴の心は二度とは向かわないようにポッキリ折ってたみたいだし、手の内を知られたくなかったんだろう。


「普通の冒険者で、赤火竜(レッドドラゴン)を討伐できると思いますか?」


「確実に狩るんだったら、勇者パーティあたりを呼んでください。レベル十の武器や装備で固めて、ごっそりバフを掛ければ普通の冒険者でも勝てますけど」


「レベル十の武器なんてどこで手に入るんですか!! そんな武器存在するとおもいます?」


「多分ドワーフだと打てると思いますよ。国内にはいないんでしたっけ?」


「ダンジョンから出現したドワーフと共生してるのはアメリカや欧州にある一部の地域だけですね。そうか、それであの辺りはダンジョン攻略状態が他より多かったんだ……」


 ダンジョン内で発生した魔物なのに自我を形成してダンジョンの一階まで上がってきた種族がいる。それがドワーフたちで、一部の国ではダンジョン内の森でエルフの存在も確認されている。


 友好的な種族に関してはいろいろと面倒な勢力がいるから共生が進んでるけど、ドワーフの作る武具に関しては人間の鍛冶以上の性能なのでかなり高額で取引されているって話だ。その為にドワーフに関してはどの国ででも歓迎されてるし、積極的に受け入れられている。


 それでも彼らの鍛冶レベルは五だろうし、俺と同じ武器を打つ事は出来ないけどさ。


「国内のダンジョンでドワーフが発生すればいいんですけど」


「そのあたりも運ですしね~。国内では亜人種系の魔物の出現情報なんて無いですし」


「一応オーガとかゴブリンも亜人種系ですよ。コミュニケーション不可ですけど」


「わたしはアレを亜人種とは認めないわ。あいつら女性冒険者を捕まえて強姦とかするのよ」


「国内でも何例もありますよね……。あの辺りを退治する時、女性の方が容赦ないって聞きますし」


 リザードマンの様に人を喰らう魔物は多いけど、それ以上に女性冒険者に嫌われてるのがオークとゴブリンだ。


 女性だけでパーティを組んでいると殺すよりも捕まえようとしてくるし、捕まえた後は犠牲者の心が壊れる位に酷い凌辱が待っていると聞く。


 長く生存している個体は知能が高い事もあり、狡猾な手段で冒険者を嵌めるって話だ。


 まあ、どれだけ長く生存しててもあいつらは基本的にレベルアップしないし、ある程度成長した冒険者には敵わないんだけどね。


「ドワーフや亜人種の話はどうでもいいです。それで、菅笠侍さんはその武器をドワーフにでも打って貰ったんですか?」


「そこに気付きましたか……。これは自作ですよ」


「ドワーフ以上の鍛冶師がいるんじゃないですか!! 他の人に武器を打ったりとか……」


「滅多にしませんよ。俺が打った武器が誰かを傷付けたりしたら嫌ですし」


「ああ、その辺りはよく聞く話ですよね」


 これにはいくつものパターンがある。


 武器を打って貰った奴がその切れ味に魅せられて人斬りを始めたり、その武器欲しさに他の誰かが持ち主を襲ったりと本当に色々だ。


 だから俺はこれからも信頼できそうなやつにしか武器は打たないし、頼まれても打つつもりはない。


「そういう事ですので……。必要な報告は以上ですかね?」


「はい。今回の報酬はダンカカードに直接振り込んでおきますね。支払日はたぶん来月になりますが」


「お願いします。ダンカカードの取扱店が増えたらいいんですけど……」


「大手のコンビニとかはダンカペイに対応していますし、使える店も多いですよ」


 現金に近い使い方が出来るけど、現金とまではいかないダンカ。


 そういえば以前検索用アプリを導入するのにダンカが必要だったけど、俺自身が鑑定スキルを手に入れたから結局導入しなかったな。


「そのうちまたお世話になると思います」


「菅笠侍さんだったらいつでも歓迎ですよ。ついでに他の冒険者の攻略を手伝ってくださるんだったら最高なんですが……」


「時間が合えばそのうち。気の良い冒険者に限りますけどね」


「それは同意ですね~。わたしも横暴な人はちょっと」


 ダンジョン協会の職員さんでもやっぱり横暴な態度の冒険者には辟易してるんだな。


 粗暴な奴は中途半端なステの冒険者に多いって話だし、やっぱり一流の壁に阻まれた二流以下ってその位置にいるだけの理由があるんだよね。


 虎宮(とらみや)姉弟は本当にその辺りも立派だし、玲奈(れいな)も一緒にパーティを組んでるのがあいつでよかった。


 二流で終わりそうな小谷野(おやの)の奴は早々にパーティから追い出されたみたいだし、あいつが急成長して一流に至る確率はほぼゼロだ。


 赤青らしいから最高でも三色持ちだしな。


「それでは、またお願いします」


「はい。またのご利用をお待ちしていま~す」


 次にこの牧場型ダンジョンを利用する時はキャンプだな。


 今月最後の土日連休は六月の最終週だし、二週間後になるのか。


 その時は思いっきり楽しまないとな……。




読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただければ幸いです。

誤字などの報告も受け付けていますので、よろしくお願いします。

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