第六十六話 単独で先行攻略、牧場型ダンジョン その一
牧場型ダンジョン。ここは夢と希望に満ち溢れた美食のダンジョンだ。
各階で入手できる魔物肉の他にダンジョン内に生息する動物や植物など様々な食材が溢れまくる本当に夢の様な空間。大切なんで二度言ってみました~。
受付のあるダンジョン一階は他とほとんど変わらない空間だけど、ダンジョン二階には小さな川と池があり、ダンジョン鮎やダンジョン蟹をはじめとするダンジョン動物の宝庫で、枇杷や柿など様々な果物が季節を無視してあちこちで実をつけているそうだ。ここは二階で既にそんなお宝溢れる場所なんだぜ。
ダンジョン三階からは本格的にダンジョン肉の宝庫で、三階では特殊な催眠系の術を使う睡眠羊などを相手にして旨味の多い羊肉などを入手する事が出来る。
四階は割と臭みもあって好みが分かれる山羊。この階でとれるダンジョン産の岩塩も調味料として人気が高い。四階には汽水湖もあるから、ダンジョンスッポンやダンジョンウナギなんかも獲れるそうだ。
五階に生息する影豚、六階に生息するチャージレッドブル、七階に生息する大鶏なども有名で、特に七階に生息する大鶏の卵は栄養価が高い上に絶品で、その卵を使った卵かけご飯は本当に至高の逸品なんだとか……。
卵をよく洗って解毒魔法を使う事が卵かけご飯を食べる最低条件らしいけどな。
そして地下八階の番人にしてこいつのお陰で地下九階より下に何があるのか分からない原因の赤火竜!!
ドラゴン肉まで用意してくれてるのがありがたいよな。
高難易度ダンジョンの古龍の肉もあるけど、やっぱり今回のキャンプではこのダンジョン産のダンジョン肉を使いたいしね。
一体倒せば結構な量の肉が手に入るし、九人で食べる分には十分な量が手に入るだろう。
他の肉や海産物もあるしな。
今回は配信しないけど、俺は菅笠侍の格好でここを訪れている。
能力からの身バレじゃないけど、ダンジョン内で支援ヒールとするんだったらこの姿の方が都合がいいしな。
「という訳で今回はひとりで突入します、牧場型ダンジョン!! よく考えたらキャンプ当日に全員でダンジョン肉の調達に動いたら遊んでる暇なんてないじゃんって気が付いたんだよね」
当然だよな。
キャンプ当日にダンジョン内で肉の調達なんて、マラソン中に同じ距離の障害物競走とかしてるようなもんだよ。
せっかくのキャンプなのに遊んでる暇なんてないし、一日中狩りして終わっちゃう。
罠を仕掛けて蟹とか獲る程度だったらいいけど、フル装備でチャージレッドブル狩りとか冗談じゃないぜ。
「えっと、受付はここでいいですか?」
「いらっしゃいませ~。この牧場型ダンジョンの利用方法はご存じですか?」
「えっと、利用ルールですよね。良ければ説明して頂けますか?」
「ご新規さんでしたか~。このダンジョンは割と複数回利用される冒険者も多かったりもしますので……」
この格好で来てるのに反応は無しか……。割と有名になってると思ったけど、どうやら杞憂だったみたいだね。
受付のお姉ちゃんが取り出したのはダンジョン利用規約が書かれた書類だ。利用料の高いダンジョンほどいろいろ厳しいって聞く。それだけ価値のある物がダンジョン内に溢れてるからなんだけど……。
分かりやすい大きな字で、【八階の赤火竜に注意!! 強化種です】ってかかれてるよ。
「このマップはダンジョン内の魔物や採集物の発生エリアですね……。いいんですか? こんなに詳しく」
「ダンジョン利用料を百万円も請求するからにはそれなりに情報を提供しますよ。この一階と地下二階でキャンプも可能です。流石に三階以降のキャンプ場を利用したって記録は無いですね」
地下一階のコテージ利用料金とか、ダンジョンア内での火の取り扱いについてとか細かい事が色々書かれてるな。
基本、ダンジョン内で火を焚いても酸欠になる事は無い。
ダンジョン内の不思議の一つだよね。
そうでなけりゃ、ドラゴンがブレス噴いて酸欠死とか十分にあり得るもんな。
「やっぱり地下八階以降は情報なしですか?」
「すみませんが、赤火竜を倒さない限り調査にも行けませんので」
「今まで誰も倒せてないんですよね?」
「そうですね。あ、でも今日幻の竜狩人のパーティが赤火竜討伐に向かいましたので、もしかしたら倒しちゃうかもしれませんよ」
「竜狩人って四色のレアクラスですよね? 存在したんですね」
竜狩人。ある意味当たりで最大のハズレって言われてる四色のクラスだ。よっぽど竜狩りが好きな人でもない限り、世間で言われている通りに不遇クラスなのは間違いないよね。
同じ四色だったら英雄とかの方が遥かに歓迎されるし、持ってるスキルも汎用性が高いから……。
竜狩人はドラゴン系だけじゃなくて、リザードマンの様な亜竜種やヘビ系の様な爬虫類種との戦闘時にも割とバフがかかるんだけど、肝心のドラゴンが強すぎるのでその真価を発揮する事が無いとまで言われてるんだよな。
普通の冒険者には竜種は荷が重いしね。
「もし仮に赤火竜の討伐に成功すれば、その下の階にある食材が何なのか分かっちゃうんですよ」
「それに関しては興味がありますね」
七階の大鶏もそうだけど、下の階に行くほど高級食材が手に入る傾向にある。
ただ、長年の予想で十五階までの何処かの階は海なんじゃないかって言われてるんだよね。
それが本当だったら、海産物まで手に入っちゃうんだよな……。
「海産物が見つかれば大発見ですよね」
「そうなんですよ!! ダンジョン利用料はしばらく変わらないと思いますが、九階以降を利用できる方は優遇される可能性もあります」
「とりあえず八階の赤火竜を倒せる人じゃないと利用できませんもんね」
赤火竜は強いからな……。というか、この世界は竜種全般が異様に強いんだよ。特に多くが飛行能力を持っているのが問題だ。
大邪竜は飛ばなかったけど、アレが飛行タイプだったらまず封印なんてできなかっただろうし、まともに戦いにすらならなかっただろうね。その時は最終的には親父が蹴り殺しただろうけどさ。
覚醒してない冒険者四人パーティで倒せる竜種っていえば、飛行能力が低くてブレスも吐けないレッサードラゴン位かな?
通常種ですら覚醒してないとまともに攻撃が入らないし、更に強化種になれば覚醒してかなりステータスをあげた状態で戦うか、オールステータス最低五百以上の複数パーティで対応するかのどっちかだろう。
俺も魔王関係で最近はいろいろ調べてるんだけど、雄三おじさんや親父クラスだと強化種相手でも単独で討伐可能なんだよな……。
ただ、普通の冒険者はカンストしたとしてもそこまで強くは無い。たとえ四色持ちでもね。
「あの赤火竜は門番扱いされていますが、討伐予定とかは無いんですか?」
「え? ああ、勇者や高レベルレイドパーティに依頼ですか。うちは七階まででも割と需要があるので、今のところはないですね」
「やっぱり勇者への依頼って高いんですか?」
「勇者パーティの誰に頼んでも億仕事ですね。確実にドラゴンは始末してくれますし、お願いしてる期間で十パーティは最低でも九階へ向う転移ポーターの使用許可を手にするとは思いますが」
勇者パーティって、結局勇者の雄三おじさんと組んでるヒーローの親父と回復担当のお袋だからな。
昔はおばさんも含めて四人だったらしい。
で、偶にこういったダンジョンで門番をしている階層ボスを討伐する手伝いをしてるそうだけど、なるほどそのたびにダンジョンの管理者は億単位の費用が掛かってた訳だ。
たまにしか働きに出ないけどどうやってうちの家計は成り立ってるんだろうとは思ってたけど、年に一度でも依頼を受けりゃ左団扇だったって訳ね。
「今回、最下層までの配置が割れたら依頼したりします?」
「ん~、募集して参加する冒険者がいるかどうかですね。大体十パーティが依頼して、何とか勇者パーティの誰かを一人雇えるくらいですので」
「その人たちが今後ここで荒稼ぎする訳ですか」
「何があるか次第ですね。希少な食用動物やお宝がどれだけあるかも重要ですが」
「確かにそれは重要ですね」
海があるといろんな食材が手に入るし、ダンジョンアコヤガイ系から大粒のダンジョン真珠が手に入る可能性もある。
ダンジョン真珠は宝石であっても色を増やす魔石とかにはできないけど、装飾品に加工したらその美しさのせいで馬鹿みたいに人気があるみたいで、世界中でものすっごい需要があるんだよね。
特に現存する王家では王冠の装飾に使うのが流行ってて、戴冠式とかが近いと狂ってるのかってくらいに高騰して偽物も大量に市場に流れるって話だ。
偽物はすぐばれるらしいし、そんな物を売り込んで捕まれば即死刑だけどね。
「それじゃあこれが百万円です。このリングが利用許可証なんですか?」
「はい。出る時に返却して貰いますが、それがある限り何日でもこのダンジョンを利用できますよ」
「キャンプとかでここに来ても同じですか?」
「同じですね~。このダンジョンは何泊しても百万円ですよ。流石にダンジョンの中に入浴設備はありませんので、我慢の限界は早いと思いますけど」
この辺りは良心的というか、泊数で一日あたり百万取られたらたまらないしな。
最低二百万掛かるって話になるし、知り合いをキャンプに誘いにくくなる。
入浴設備に関してだけど、どうしても我慢しないといけない部分だよね。かなり身体が汚れるから、何処まで我慢できるかは本当に大きい。
ダンジョン動物の場合は魔物と違って肉類をドロップする訳じゃないからダンジョンに吸収され始める前に解体しないといけないし、そうなると割と血なんかで体が汚れるから他のダンジョンでも数日が限度とか言われてる。
川や湖がある時はそこで水浴びすればいいけど、物騒な水生型の魔物がいないとも限らないしね……。
俺は前回のキャンプ道具購入時に簡易型シャワーユニットを三セット買ってきたから、排水にだけ気を付ければシャワーくらいは使えるんだよな。
さて、そろそろダンジョンへと向かいますかね。
下の方から結構濃い目の死の気配を感じるし、出来るだけ早めに七階まで行くとしますか。
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