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第五十二話 ダンジョン攻略後の分配作業


 朝も借りてたレンタルブース。この時間は意外に混んでたんだけど、生徒会が年契約してるブースを使わせて貰えることになったから事なきを得た。


 この時間にこういったブースが埋まるのは、ダンジョンで手に入れた戦利品とかの分配で使う事が多いからだね。流石にダンジョン内で分配作業なんてできないし、ダンジョンの外に出るとダンジョンリングの機能が使えないからさ。


 何ヶ月も一緒にパーティを組んでいたのに、分配で揉める事があるっていうのは驚きというかよくある話なんだよね~。


 金が絡むとどうしてみんなあんなに簡単に豹変するんだろうか?


「普通は揉める事なんてないんだけどね~。どうしても欲しいアイテムが手に入った時にダンカとかが足りないと起っちゃうのよ」


「他のアイテムとかを全部辞退しても価値が釣り合わない物も多い。魔宝石系が特に多いという話だ」


「魔宝石って高いからな……。色を増やす為に使える物は特に」


 でも増やせるのは原則一色だけ。


 もし元の色に青と黄のどっちかがあると、もう片方を追加する事で最低でも二色は増やせる。


 でも、この事実はあまり知られてないみたいだし、欠けている色に対応する魔法石を見つけて加工するのもひと手間だろう。


 売られてるのはその時点で馬鹿みたいな値段がするし。


 それに増やせるんだったら金か銀がいいのは間違いない。同じ一色でも結構差があるしね。


「今回のドロップはどんな感じですか?」


「例の魔素溜(まそだまり)で出た魔物二匹と最下層のケンタウルス分だね。他はほぼ戦闘無かったし」


「どんなものがあるの?」


「結構あるね。こんな感じかな」


 大き目のテーブルがあるから並べられるものを出してみる。


 オルトロスの牙が四本。オルトロスの爪が八本。オルトロスの毛皮が一つ。オルトロスの魔石が一つ。魔宝石が大がふたつと小が五つ。


 二匹目に出た魔物。超巨大なカブト虫のスラッシュビートルの外殻がふたつ。スラッシュビートルの魔石が一つ。スラッシュビートルの角が一つ。羽が二枚。


 そしてケンタウルスの皮膚が四つ。槍が一つ。魔石が一つ。魔宝石の大が三つと中が七つ。金塊がふたつ。後は指輪がふたつと蹄鉄が四つだ。


「……レアドロップ率がおかしい件について」


「え? これが普通じゃないの?」


「普通、ここまで魔宝石はドロップしないかな~。あと、スラッシュビートルの角はランス使いだったら誰でも欲しがるくらいに希少な物だよ」


「この前一緒に潜った時も感じましたが、眩耀(げんよう)ってドロップ率異常だよね」


 多分運のせいじゃないかな?


 元々の運が十七で高かったのも原因らしいけど、今はカンストしてるからね。


 毎回なにかしらレアドロップがある。


「いつもこんな感じなんでこれが普通だと思ってました」


「思ってたよりトンデモナイ能力を持ってるみたいだね~。これ、均等割りにするとすっごい額になるんだけど……」


「均等割りでいいと思いますよ。アイテムは売った額を基準にして、欲しいドロップがあれば値段相当でどうです?」


「問題は魔宝石だな。この純度でこの大きさの魔宝石は最低でも億を超えるぞ」


 ひとつダイヤがあるのが問題だろうね。


 確かこれだけは金か銀確定の増色用魔石に加工できるから価値が高いって話だし。


「そっちのダイヤひとつと残り全部が同じくらいの価値だよ」


「他のドロップもレアが多いし、値段割でも時間が掛かりそうだ」


「とりあえずオルトロスの爪とか牙は分けちゃいますか? 残りは欲しい物をいってくれれば優先しますよ」


眩耀(げんよう)君がそれでいいんだったら問題ないよ。大体討伐者に優先権がある話なんだし」


「優先権というか、私たちがこれを分けろと主張する事がすでに間違っている。今回は眩耀(げんよう)が分けるといったので分配が発生しただけだ。本当にいいんだな?」


「問題ありませんよ。独り占めなんて真似はしたくないだけです」


 というか、本来であれば今回のドロップはほぼ俺の物らしい。


 俺がそこまで必要としてないし、欲しいものがあればまた取りに行けばいいからね。


 魔物の素材を使った武器も確かに強力なんだけど、アレは大体防具として利用される事が多い。


 だから俺にはあまり必要ないんだよな。この格好でもダメージなんて喰らわないし。


「以前のダンジョン配信の時もそうでしたが、無欲というか強者の余裕ですよね。他の人との格の差が凄いです」


「オルトロスの爪や牙は別として、もう一つ選べるんだったら私はこれがいいわ」


「魔宝石のダイヤですね。それひとつでいいんですか?」


「確かにそれを選ぶともう他の者は諦めるほかないだろう。私はこの魔宝石だな」


「エメラルドとサファイヤ。増色魔石でも作るんですか?」


「いや、流石にこの辺りの色は増やさない。私でも選ぶとしたら金か銀だな。これはそのうち装備の強化に回す」


 というか、スキルで考えた場合に金が圧倒的過ぎるんだよな。


 死霊系や魔物にダメージを与える事が出来るスキルと、パーフェクトヒールみたいな強力な回復魔法。それにいざって時の切り札ともいえる天使降臨が唯一使える色だからね。


 攻守ともに揃った最高のスキルで間違いない。【緋】は流石に超えられないけどさ。


 銀を選ぶ理由はパッシブで常に強化される事と、テレポートなんかの移動系スキル欲しさだよな。


 あの辺りの魔法はスクロールでも覚えられるって話だけど。


「圧倒的に金ですよね。白持ちですと微妙かもしれませんが」


「白と金だとかなりスキルの内容が違う気はする。特にパーフェクトヒールがあるのは大きい」


「勉強熱心なんだね~。そのうち増やす気があるの?」


「増えるんだったらね」


 もう持ってるから増えないけどさ。


 それに、ダイヤの魔宝石はすっごいのがもうある。


 アレを使えばほぼ確実に金が増やせるから、おいそれと渡す訳にはいかないけど。


 そのうち誰かの色を増やすのに使うのもいいかな?


「私も魔宝石が欲しいけど、こっちの大きいのを貰うと多分後のドロップアイテムの権利が無くなるよね。オルトロスの爪や牙も貰えるから十分すぎるんだけど」


「イエローサファイヤとルビーか。確かにそれで大きいのは品切れだな」


「こっちの魔宝石を全部集めてもこっちの大きさの魔宝石の価値には足元にも及ばない。この大きさのイエローダイヤがあれば最高なんだが」


「やっぱり宝石と大きさでホントに差があるんだな。こっちの金塊より価値が高いの?」


「オークションに出したら確実かな~。その辺りの換金アイテムはそこまで値はつかないよ。その金塊だと合計で一千万円行くかどうかだし」


 大きめで純度の高い魔宝石は軽く億超えるっていう話だしな。


 つまり、他のドロップを合わせもそれ以下って話なのか。


 世知辛いな。


「残りのアイテムは俺の総取りでホントにいいの? 使えそうなものもあるんだけど」


「この分配で文句を言ってこない眩耀(げんよう)の将来が不安」


「そうだね~、一度そのあたりの相場を勉強してみない? 将来の為にもさ~」


「私でよければ相談に乗るぞ。……スラッシュビートルの角は正直欲しいが、逆に渡されても困るな。だからそれは仕舞ってくれ」


「わかりました。必要な時は言ってくださいね」


 蛍川(ほたるがわ)先輩用にアレで魔道展開式ショートランスを作ってもいいかもしれない。


 デザイン的には男の方が喜びそうな武器が出来そうだけど……。


 ロマン系武器?


「それじゃあ今日はこれでお開きかな? ありがとう、おかげで天城(あまぎ)さんたちを失わなくて済んだよ」


「助けられてよかったです。一人残らず全員助けたいなんて烏滸がましい事は言いませんが、手の届く範囲は何とかしたいですしね」


「やりすぎると方々から苦情が来るし、怪我の治療だってそれで生計を立ててる人もいるからね。わたしもそのあたりはいろいろ考えたよ」


 桜輝(さくらぎ)さんも結構強力な回復術師になったから、情と責任の板挟みになる事は多いんだろうね。


 奇跡の再生や死者蘇生が使えるだけでどこのパーティからも引っ張りだこだし、無責任に怪我人とかを引き連れて来る人も多いって聞く。


 ダンジョン外で冒険者に治癒を依頼するのは法律で原則禁止されているし、錬金術師や薬師がダンジョン内の素材で作る回復薬なんかも色々規制が存在する。


 その辺りはダンジョンが出来てこの数十年で色々改定されたし、今はかなりマシな状況らしい。


 俺も昔の話なんで詳しくは知らないけどさ。


「ではまたな。次のダンジョン探索についてはメッセージコールで」


「例の配信。いろいろ考えてるからそっちの件でもメッセージコール送るね」


「了解、あの配信も面白いよね~」


「配信用パーティのメンツを増やしたりは……」


「今は考えてないですね。菅笠侍と猫巫女で十分です」


 例の配信用の変装。


 俺は身バレ防止で菅笠侍に変装しているけど、桜輝(さくらぎ)さんも身バレ防止で猫のお面と猫耳を装備している。


 そして衣装は巫女で、猫巫女と菅笠侍で和風に統一してるって形だ。


 桜輝(さくらぎ)さんはスタイルもいいから、顔を隠してても大人気なんだよね~。


 そのうち玲奈(れいな)も誘いたいんだけど、きっかけが無いんだよな……。


「わたしたちが参加すると侍ばかり増えそうだしね。こっちは生徒会で配信してるからそのうちコラボでもする?」


「非公式的なコラボは二度ありましたけどね。そのうち正式にコラボしてもいいかもしれません」


「六人パーティか。配信だしそれで問題無いな」


「本気でダンジョン攻略とかじゃ無いですしね」


 レイドだとあるけど、複数パーティでの攻略なんてあまりない。


 ステータスカードを利用したパーティ編成が四人までなのが割と問題なんだよな。


 もう少し多くてもいい気がするけど、こればっかりはこのシステムを考えた誰かが変更してくれないとどうにもならない。


 レイドの時みたいに複数パーティをひとつにすることは不可能じゃないけど、基本的に通常時の戦闘だと経験値とかは入らないからね。


「では今度こそホントにお疲れ様でした。またな」


「はい。お疲れ様でした~」


 ゴールデンウイーク中の活動記録とかは後でまとめればいいし、天城(あまぎ)先輩の件は姫華(ひめか)さんが何とかごまかしてくれるだろう。


 次は配信用のダンジョン攻略。


 いろいろ考えてるんだけど、鉱山型のダンジョンに行こうと思うんだ。


 あのタイプのダンジョンの方がなんとなくダンジョンって感じがするんだよね。


 気分の問題だけどさ。




読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただければ幸いです。

誤字などの報告も受け付けていますので、よろしくお願いします。

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