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第百八話 エピローグ。ヒーローとして得た物と、ホンの少し先の未来を……

この話で最凶不遇と呼ばれる灰色カードのステータスカード持ち冒険者が真のヒーローに至るまで~は完結となります

最後まで読んでいただきましてありがとうございます


 エピローグ。


 あの決戦から時が流れて八年後。


 俺はヒーローや冒険者としてだけじゃなくて、会社経営者としても様々な分野に手出しをしている。


 あまり大掛かりに行うと方々に迷惑が掛かるから、割と小さな会社を運営する事にしたんだよね。


 ダンジョン関係の仕事だからトレジャーさんのところとも取引があるし、今は少なくない部下を抱えて順風満帆って感じに過ごしている。


◇◇◇


 大安吉日。今日俺は念願かなって玲奈(れいな)との結婚式を行おうとしていた。


 一応人じゃなくて最上位神なんで立場としては微妙なんだけど、この場はこうするしか仕方が無いと思うんだ。


(げん)ちゃん。とうとうこの時が来たね……。」


玲奈(れいな)と出会って約二十年。玲奈(れいな)だけのヒーローを目指していた俺が、ようやくその地位を手に入れた訳かな」


 場所は都内でも有名なホテルにある教会。


 参加者はかなり制限されて、参加できたのは冒険者仲間や一部の人に限られている。


 それでも参加を諦めきれずにこのホテルの周りにはものすごい数の人が詰めかけているけど、俺が今までして来たことを考えると仕方がないんだろうね。


「結婚式か。まさか虎宮(とらみや)夫妻より先になるとは思わなかったよ」


虎宮(とらみや)君は冒険者としての活動が大変らしいから。お父さんたちの他にダンジョンのフロアボスを倒せる貴重な冒険者だし……」


「やっぱり二色増やしたのが大きかったし、毎回例の高級バーベキューセットでステータスの底上げをしているのが大きいか」


 毎回俺を呼ぶのが悪いと思ったのか、虎宮(とらみや)の奴はとうとうスキルポイントを四百も犠牲にして料理スキルを五まで上げた。


 それに伴って、高級バーベキューセットは虎宮(とらみや)が管理するようになり、食材も極力自分たちで調達するようになった。


 流石に古龍の肉は無理だけど、赤火竜(レッドドラゴン)なんかを中心に強化種の竜種の肉を中心にしてステータスをあげるようにしたみたいだ。


 それでも回数を重ねればすっごい量のポイントを入手できるみたいだしね。


 その上、いろんな調整が入ってアイテム類のドロップ率が上がった結果、あの高級バーベキューセットをいくつか入手する事に成功したらしい。


 おかげでほぼ毎週、どこかのダンジョンで神域を展開してバーベキュー大会を行っているそうだ。


 さてと、そんな事より結婚式だな。


「この扉が開くと、憧れのバージンロードが広がってるんだね」


「そうだな。最上位神が神前結婚式とか、何の冗談だって散々からかわれたもんな」


「ここに来るまでは色々あったよね。特に留美(るみ)や生徒会関係とかさ~」


桜輝(さくらぎ)さんには本当に悪い事をしたよ。ビンタ一発ずつで許してくれたみんなに感謝だ」


「あれって、ホントに必要だったの?」


「笑いながらされたビンタだったけど、今までのどんな攻撃より痛かったよ」


 心がね。


 みんな素敵な人だし、今は吹っ切ってそれぞれが素敵なパートナーを見つけている。


 桜輝(さくらぎ)さんは玲奈(れいな)の大親友になったし、二人して俺抜きで旅行に行ってたりしてる位だ。


 隠し旅館『迷宮』にはほとんど毎年行ってるみたいで、普通は数年待ちの予約を無視してあの最高の温泉と料理を楽しんでいるみたいだね。


 去年はとうとう俺も呼ばれたんだけど、あのダンジョンで助け出した健次(けんじ)陽美夏(ひみか)の間にできた紗菜(さな)ちゃんを俺にも紹介してくれた。


 玲奈(れいな)達は生まれた年から紗菜(さな)ちゃんにあってたみたいだけどさ。


「広島のあのホテルとか、他にも牧場型ダンジョンの近くのホテルとかさ、色々いったのにいつも忙しいって……」


「仕事をしてないとさ、なんとなく嫌じゃん。大学のレポート提出もそうだけど」


「三年の後期には全部終わってたでしょ? 冒険者大学だから実績だけで十分卒業できたんだし」


「実績か……、ダンジョン攻略も色々あったな」


 見つかったんだよ。


 新しく農場型ダンジョンが三つも。


 全部俺が発見したんで、俺が作ってるんじゃないかって噂まで流れたぐらいだ。


 いや、流石に創造まではしないって。


「あの件の真相はどうだったの?」


「真相も何も、俺は普通に冒険者活動をしただけだ。創っちゃいないさ」


「三つ目の時は酷かったよね~。ゴッドハンドさん」


「いわれたな~。しばらく業者とダンジョン協会からの会合というか、お誘いがすっごい事になってたし」


 あの戦いの後、俺に対する扱いって本当に微妙で腫物を触るが如く、いろんな意味で近付いてくる奴はホントに少なかった。


 人類側の神を怒らせただけで滅んだ国はいくつもある。


 それ以上の力を持つ最上位神の俺に対する扱いなんて、本当にできる限り関わりたくないって意志を感じまくったもんな。


 あ、自然災害に対しても俺達を責めたりする事もないし、人類側の神の『その星の自然現象です。我々がその程度の事で関与するとでも?』という一言で完全に決着が付いた。流石にそんな事にまで責任は負えないからね。


 あ、そろそろなのか。


「すみません、そろそろ始まりますので……」


「ありがとうございます。それじゃあ行こうか」


「そうだね」


 目の前の扉が開き、有名な曲が流れ始めた。


 この歌を何にするかもずいぶんと揉めたらしい。


「新郎新婦の入場です!!」


「おめでとう!!」


「本当におめでとう!!」


 みんな、心の底から祝ってくれているのが分かる。


 俺のしてきた事は、間違いじゃなかった。


 これから先、俺は玲奈(れいな)と歩み続けるだろう。


 あの日。守ると自分の心に誓ったけれど、今日こうして大勢の人の前でもう一度誓う事となった。


「それでは誓いの口付けを……」


玲奈(れいな)……」


(げん)ちゃん」


 この瞬間、俺は本当の意味でヒーローになれた事だろう。


 他の誰の為でもない。


 玲奈(れいな)の……。心から愛する人の為だけのヒーローに……。


 この瞬間、最凶不遇と呼ばれる灰色カードのステータスカード持ちだったこの俺が、真のヒーローに至る事が出来ったって訳だ。


◇◇◇


 月日が流れ、俺は冒険者として、そしてヒーローとして毎日活動を続けている。


 玲奈(れいな)との間には三人の子宝に恵まれ~、といっても普通の方法だと子供なんてできないから、色々と裏技を使っての事となった。


 桜輝(さくらぎ)さんはなんと虎宮(とらみや)家の長男の虎宮(とらみや)創夜(そうや)と結婚した。


 虎宮(とらみや)創夜(そうや)は冒険者家系の虎宮(とらみや)家に生まれながら、冒険者として活動するより研究者として活動する道を好んでいた為、なかなか冒険者として名前が挙がってこなかったそうだ。


 今も専門機関で、ダンジョンア内で発見された薬草などの研究を行っているそうだ。夫婦仲はとてもよく、既に二人の子宝に恵まれてるという話だね。


 親父は政府に掛け合ってヒーロー養成機関や専用の部隊を創設する事に成功した。


 ダンジョン犯罪は無いけど、魔素溜(まそだまり)なんかから出て来る強力な魔物を討伐したりする専用の部隊って話だね。


 灰色カードは最凶って話は聞かなくなり、代わりにヒーローに至る為の栄光のカードって認識が浸透した。


 出現率が低いからそこまで目にする事は無いけど、本当に極稀に灰色のカード持ちが出るらしい。


 俺は懐かしの私立深淵学が管理する初心用ダンジョンの一階で、ステータスカードを発行するのを見ていた。


 あれから色々あって、ちゃんと初心者用ダンジョンの中で新一年が待たせて貰えるようになったらしい。喜ばしい事だ。


「今年も恒例のステータスカードの発行式が始まるな」


「ああ。学院長は大変か?」


「毎年やんちゃな生徒はいるからな。でも、ちゃんとみんな立派な冒険者に育てて見せるさ」


 虎宮(とらみや)は私立深淵学院の学院長に就任して、今は後進の育成に精を出している。


 あの過疎ダンジョンの件もあるし、初心者ダンジョンでも怪我人が出ないように尽力をしている。しかし、決して甘やかしたりはしない。


「怪我をしないに越した事は無い。だけど、痛くないと覚えないからな」


「最近は回復薬も安くなったし、即死耐性付きのアクセも安くなった。俺達の時とは大違いだ」


「武器もな……。勢多(せた)の弟子も多いし、勢多(せた)工房から輩出された鍛冶師の数も多い。信じられるか? 今の新人、こんな武器を持ってやがるんだぜ」


 攻撃力補正千付きの武器?


 おいおい、過保護もいい所だろ?


「甘やかしすぎだ」


「まったくだ。ゴブリン相手に苦戦するくらいがちょうどいいのにな。お、何かあったな」


 あの光り方は四色持ちか?


 いや、まさか……。


「はい……、いろ? マジか!! 俺、灰色のステータスカードを引いたよ!!」


 新一年の少年。その手には燦然と輝かない灰色のカードが握りしめられていた。


 今の光り方だと白、黒、赤、青の四色か。残念ながら金銀が無いからラメは無しだな。


「おめでとう。苦労するが、その先には輝かしい未来が待ってるさ」


「あの。貴方はもしかして……」


「ずいぶん前にここで同じ灰色のステイタスカードを引いた者さ。レベル上げはきついが、頑張って栄光を掴め」


「はい!!」


 時代は流れる。


 この世界も魔法に適応して殆ど法整備も終わった。


 魔法医療も本格化したし、それぞれの分野で出来る事と出来ない事の住み分けもかなり進んでいる。


 誰もが笑顔でいられるように、いい方向に向かっているとおもう。


「俺はヒーローになれたと思うか?」


「あの日、お前をパーティに誘えなかったことはいまだに後悔しているが、お前は間違いなくヒーローだよ。いつだってな」


「それも昔の話だ。そうか、俺はちゃんとヒーローになれたんだな」


 あの子もヒーローを目指してくれるだろう。


 これからも多くのヒーローが生み出され、様々な場所で活躍するだろう。


「冒険者でヒーローは割と反則だよな」


「苦労はするが、強すぎる」


「だよな……」


 まだステータスカードを発行する歳じゃないが、俺の息子たちもヒーローか勇者だ。


 もう魔王がいないから勇者は必要ないし、雄三おじさんがひ孫の顔を見るとか言ってる限り、勇者が生まれてくる事は無い。


 だから高確率で灰色カードを手にする事だろうね。


 俺も色々あったけど、真のヒーローになれたと思う。


 後は、この世界を見守るだけか……。


 さて、それも力の限り頑張らないとな。


 ダンジョンがあって冒険者がいる。それが今俺達が生きている世界なんだから……。


 ダンジョンにはいろんな夢が隠されている。冒険者たちが努力して手を伸ばせば、お宝も食材も思いのままなのさ。





最後まで読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただけていれば幸いです。

誤字などの報告も受け付けていますので、よろしくお願いします。

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