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第百四話 助け出せたひとたち……


 これだけ近い距離に居ながら、雄三おじさんや親父が舞莉愛(まりあ)さんの存在に気が付かなかったのは不思議だけど、あの商業ダンジョンも色々と特殊な結界が張られて内部を調べられないようになっていたらしい。


 ダンジョンからドロップしたお宝とかを扱っているし、近くに色街とかもあるからあそこで探索魔法を使ったりするのは正直かなり制限されていたって話だ。


 流石にその辺りは細かく考えられていたって事だね。


「次の人~、開いている窓口で手続けをお願いします」


「あの、いきなり元に戻ったので正直これからの……」


「大丈夫ですよ。かなり大口の資金援助もありますので生活資金はかなりの額を用意しておりますし、その為の手続きも可能な限り簡略化されて……」


 あれだけいた犠牲者がものすごいペースで処理されていく。


 雄三おじさんと親父には連絡したから、今頃ものすっごいスピードでこっちに向かっているだろう。


 当然、玲奈(れいな)にもね……。


(げん)ちゃん!! お母さんが見つかったって!!」


「早かったな。今、向こうのスペースでいろんな手続きをしてる所さ」


「こんな近くに囚われていたなんて……。私もここを利用した事があるんだよ」


 ここは地下八階じゃなくて、地下一階に用意された支援専門の特設会場なんだけど、ここに来るまでには結構な時間を必要とした。


 裸にされてる人が多かったからとりあえず用意した大量の服の中からそれぞれに合った服を選んで貰って着替えて貰い、とりあえず簡単な食事などを提供。軽い説明の後にこうしてここで今後の対応と、犠牲者の状況を調べたりしてるって話。


 怪我や病気に関しては神治癒(ゴッド・ヒール)で治癒しているから、その辺りの問題が無いのが幸いだ。


 流石にトレジャーは妊婦を襲わなかったし、コレクションに加える事もなかった。


「俺もさ。何度もここを利用しておきながら気が付く事すらなかった」


「でも、どうして今回は気が付いたの?」


「いろいろ考えてね。こういった事は本当に運の面がデカいと思うよ」


 マジで偶然だからな。


 下手したらずっと気が付かないなんて事も十分にあり得た。


「でも、ものすごい数の人だね。こんなに多くの人がお母さんみたいに何年も囚われてたの?」


「一番長い人は二十年以上って話だしな。失った時間が大きすぎて想像もできないよ」


「二十年。もう、取り返しの出来ない時間だね。こんなに多くの人が……」


「流石に犠牲者の数が多い。今回はあの温泉ダンジョンより多いんじゃないかな?」


「そうだね……。これだけの人を助け出すなんて(げん)ちゃんは本当に凄いよ」


「それがヒーローの務めだからな。今回のこれで割と正体がバレちまったけど」


 今回の件でトレジャーを助ける為にいろいろと面倒な話し合いを繰り返した結果、俺が菅笠侍だって事が結構な規模でバレた。


 舞莉愛(まりあ)さんを助け出したって事を説明するには、どうやっても避けられない話だったんだよな。


 菅笠侍もそろそろ潮時かなって思っていたから、思い切って正体をばらす事にしました~。


 ま、仕方ないよね。


「えっと、お父さんはまだつかないの?」


「隣の県からだからな。流石にあと二時間はかかるだろう」


「いつも一瞬だから忘れてたよ」


「ちょうど今日で契約期間が終わったみたいだし、違約金無しで戻ってこれて本当によかった」


 っていうか、流石にその辺りは調べて行動するさ。


 本当は明日の方がよかったんだろうけど、俺はトレジャーの奴も助けてやりたかった。


 犯した罪は相当に重いし、決して許される事じゃない。


 もし仮におじさんがいたら、魔族って事実だけでトレジャーを殺す事に躊躇しなかっただろうからね。


 むしろ生かしている理由が無い。


「調べてたんでしょ?」


「おかげで向こうでやる予定だった今日の打ち上げは無し。代わりに今日はうちで舞莉愛(まりあ)さんの帰還お祝いパ-ティを行う予定だ」


「今日!! 準備は間に合うの?」


「準備はもうしておいた。料理も特殊インベントリの中に山ほど用意しているし、問題は何もないよ」


 助け出すんだからこうなる事くらい予測してるさ。


 だから今日は家を出る前に歓迎会の準備は済ませて来たし、会場をうちにする事もはじめっから決めていた。


 玲奈(れいな)の家って選択肢もあったけど、宴会をした後の片付けとかもある訳だし、流石に舞莉愛(まりあ)さんにはゆっくりして欲しいじゃん。


「会場をうちにしないあたり、ホント(げん)ちゃんって細かい気配りができるよね~」


「宴会は楽しいけど、後片付けとか大量に出るゴミの処理とか面倒じゃないか。いきなり舞莉愛(まりあ)さんにそんな仕事を押し付けられないよ」


「本当に細かい所にまで気が付くんですね」


「お母さん!!」


「えっと、初めまして。神崎かんざき眩耀(げんよう)です。パーティメンバーの(ひじり)希沙羅(きさら)の息子になります」


 舞莉愛(まりあ)さんにはこの説明の方が分かりやすいだろう。


 あれ? なんとなく表情がおかしい気がするけど。


 頬に指を当てて、何か不満げといううか。


「助けて貰った事は本当に感謝しているわ。それで、玲奈(れいな)との関係は何なのかしら?」


「あ……」


「俺は恋人同士だと思っていますよ。ちょっと面倒な事があって、複雑な状態なのは否定しませんが」


(げん)ちゃん!!」


 ようやく舞莉愛(まりあ)さんを助け出したんだ。恋人宣言位しても問題ないだろう。


 今までの反応から言って、玲奈(れいな)が俺を嫌ってるって事は絶対に無い。


 今回の救出劇で多少散財したけど生涯食わせていけるだけの財産はあるし、守り抜くだけの力も持ってるぞ。


「そのブレス……、あなたもヒーローなの?」


「はい。玲奈(れいな)を守る為の力です」


「今日の(げん)ちゃんってグイグイ来るよ……。嬉しんだけど」


 あ。せっかくの母親との再会なのに、結構邪魔をした気がするな。


 どうする?


 親父たちは最低でも後二時間近く戻って来る事は無い筈。


 いったん家に戻って……。


舞莉愛(まりあ)!!」


「あなた!! それに希沙羅(きさら)(ひじり)君も……」


「本当に助け出されたのね。眩耀(げんよう)、本当にごくろうさま」


「よく頑張ったな眩耀(げんよう)。……おまえ、その腕のブレスは」


 そういえば、ブレイブに変身できるようになった事は知らなかったか。


 今回は急いでたから、必用な情報しか話してないしね。


「ブレイブに変身できるようになったのさ。それも今回救出できるようになった理由の一つだし」


「確かにブレイブの力は大きいからな。とうとう本物のヒーローになったか」


舞莉愛(まりあ)を助けてくれてありがとう。本当だったら俺が助け出さなきゃいけない筈だったんだが……」


「まさかこんな場所に囚われていたとはな……。灯台下暗しというか、本当に不覚だ」


「本当にね。眩耀(げんよう)、大金星よ」


 その件に関しては全員が頭を抱えて反省していた。


 親父たちはマジで十何年もこの商業ダンジョンを利用している訳で、その間にただの一回もこのダンジョンの最下層に舞莉愛(まりあ)さんが囚われてるなんて思いもしなかった訳だ。


 何かの弾みでこのダンジョンを攻略しようなんて考えてれば気が付けた訳で、ダンジョン攻略にあまり積極的じゃなかった事に対しても反省しているっポイ。


「……今気が付いたんだけど、希沙羅(きさら)のその肌っておかしくない? 今の私と殆ど変わらないじゃない!!」


「むしろ若干若いまであるわよ。この肌の状態と張りを見なさい」


「信じられない……。この十数年で何か革新的な何かがあった?」


 化粧品も日々進化してるけど、流石に若返りの薬は販売されていない。


 助ける際に神治癒(ゴッド・ヒール)を使ったから、全身の傷や染みなんて全部消えてるし、肌の状態は負けてない筈なんだけど。


「その辺りは家に戻ってから詳しく。よくこんな時間に戻って来れましたね」


「荷物は全部ダンジョンリングに突っ込んで、後はテレポートだ」


「それでもダンジョンから出たり向こうの後始末もあったから時間が掛かったのよ~。転移先はこの人の家だったしね」


 テレポートで雄三おじさんの家に戻ってきてたのか。


 まあ、確かにその方が早いよな。


「タクシーは呼んでおいた。ちょうどスマホに連絡も来たぞ」


「ここに来る時に使ったタクシーを待たせればよかったのに」


「いろいろと手続きがあるかもしれないんでな。それに、この周りだとすぐに手配できる」


 普段でも馬鹿みたいにタクシーが走ってるしな。


 さて、そろそろ家に帰るか……。


「周りの人が揃って頭を下げてるのはお前だよな?」


「正体がバレたし、色々あるからね」


「活躍は聞いている。本当に立派なヒーローになった」


「まだまだこれからさ」


 ヒーローとしても、冒険者としてもね。


 この後はそれぞれお互いの家に戻って、いったん休んでから宴会って事になった。


 親父たちが疲れているだろうと思って既に風呂も沸かしておいたし、後は宴会の為の細かい準備を済ませるだけだ。


 十数年ぶりの再会。


 積もる話もあるだろうからね……。




読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただければ幸いです。

誤字などの報告も受け付けていますので、よろしくお願いします。

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