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第百二話 ちょっとした違和感から導き出された答え


 夏休みに入って結構な日数が経過した。そろそろ親父もあの牧場型ダンジョンから帰ってくる筈だ。


 その間に俺はヒーローの力は手に入れたし、冒険者としての活動も順調。


 さて、ここで残された問題は当然玲奈(れいな)のお母さんである舞莉愛(まりあ)さんの奪還なんだけど。


 雄三おじさんも舞莉愛(まりあ)さんを取り戻したいんだろうけど、おじさんは流石に俺ほど自由に動けないしな。


 一度立場が出来ると、軽々には動けないって事なんだよね……。それが、世界で誰より大切な人でも……。


「魔族の関与は間違いない。俺はあの九州の温泉ダンジョンに囚われているんだと考えたんだけど、あそこにはいなかったしな」


 本気で可能な限りの情報を集め、ここだって乗り込んであの結果だったからね。


 結果的に悪くはなかったよ。


 あの隠し旅館『迷宮』のご夫婦とか息子さんとか色々助けられたしさ。


 本当に助けたい人を助けられないことが、ここまでもどかしいなんて……。


【世界の改変を行えば即時救出が可能ですが】


 そんな力技は使わない。


 大体お前はスリープモード中だろ?


 助けたいよ。本心から言えば今すぐに助けたい。でも、そんな方法で助けちゃだめだ。


 それがヒーローとしてどんなにいびつな行動なのか、俺は十分に理解しているし親父に話せばぶん殴られる事だろう。お前はヒーローの力を何だと思ってるんだって言われながら……。


 ほんと、大きすぎる力ってのは厄介だったりするな。


「問題は最近ネットの情報が滅茶苦茶な所かな?」


 菅笠侍関係のスレが何百もあるし、何処で見てたんだよってネタまで書き込まれてる。


 あの九州の温泉ダンジョンの件も配信をしてない時のバージョンまで当然流れてるし、いったいどこの誰があの映像を流しやがったんだ?


 あのダンジョンはあの魔族が支配していたし、あそこの映像が流れる事はあの魔族にも不利に働く筈。


 その上俺がマリオネット形態の秘密を暴いた挙句、一方的にぼっこぼこにした映像は魔族の存在を危ぶませる可能性すらある。


 こんな真似をする奴か……。


「間違いなく楢丈(ならたけ)だな」


 あいつの正体は何だ?


 あの過疎ダンジョンをあそこまで改造できる力を持つ奴だ、低レベルな魔族って事はあり得ない。間違いなく幹部候補、しかも最強の部類に君臨するタイプだ。


 でも、魔族の中で幹部連中は軒並み倒した筈。


 俺が色々調べたネームドの奴で俺が知っている限り生き残っているのはトレジャーのみ。他にもネームドがいたのか?


 今までの情報や能力を考えればトレジャーは間違いなく女性型の魔族だし、楢丈(ならたけ)の正体がトレジャーだって事はあり得ない。


 大体あいつは朝から夕方まであの過疎ダンジョンの魔改造にいそしみ、そしてその後はかなり離れた場所で活動をしていたんだろう。


 魔族の被害は表に出にくい。


 あのトレインが異常で馬鹿だっただけでダンジョン犯罪はそのほとんどが水面下……、誰にも知られないように行われているしね。


 舞莉愛(まりあ)さんが行方不明になった時の状況ですら、いまだに真相が分かっていないんだから……。


「俺の正体がバレないように、色々と細工をしてくれてるのが楢丈(ならたけ)の憎い所だけど、こいつどんな犯罪をしてるんだ?」


 魔族によるダンジョン犯罪で有名なのはトレジャーで、はっきりいえばそれ以外の被害は今までほとんど知られていなかった。


 先日の温泉ダンジョンで、マリオネットの犯罪は明らかになったし、その被害者も相当な数に上る事が後でわかってる。


 俺が助け出した人で全員だったのは間違いんないんだけど、あの人たちは歳も取らずに冒険者活動を強要されていた。


 助けた時に周りがみんな年老いてる状況ってのは本当にホラーだったと思うよ。


 一番長い人は十五年近くあのダンジョンに囚われてたらしいし、そんなに昔から魔族のダンジョン犯罪者が暗躍してたのが恐ろしい……。


「冷静に考えれば、舞莉愛(まりあ)さんが攫われたのも相当昔だし、助け出した後で雄三おじさんとの歳の差が激しすぎるよな」


 いざって時は若返りの薬位提供するけど、俺より少し年上な人に『娘さんをください』もちょっとどうかな?


 でもその瞬間には絶対に二人揃ってないと駄目なんだよね。


 数年以内に助ける事が出来れば結婚式には間に合う。この後学院を卒業して冒険者大学に進んでその後の話だろうし、最低でも七年位かかる訳か……。


 玲奈(れいな)がいないと雄三おじさんはあの広い家に一人っきりだし、おじさんにもそんなにさみしい思いはさせたくないしさ。


 それ以外の目標は、後は魔王討伐位しかないか。


 それ以外は本当に揃っちまったからね……。


「純金鋼晶(きんこうしょう)製、魔道展開式太刀。武器レベル二十で、攻撃力の補正は驚異の五億」


 いやホント、使う為に必要な魔力があって、それが億超えるからこれを使いこなせるのも俺くらいだろうけど、世界最強の武器ができちまったよな。


 他の人にも打ってみたけど、どうやっても使う為に必要魔力が発生するし、それが最低でも数千万なんだよ。


 あそこの人が使い物にならないっていった意味が骨身に染みたぜ……。


 という訳で、金鋼晶(きんこうしょう)製の武器は俺専用になりましたとさ。おかげであの時に買った大量の金鋼晶(きんこうしょう)は、永久に特殊インベントリ内に塩漬けとなりました~。


 別にいいんだけどね。


「夏休み期間だし、何処かに遊びに行く?」


 と言っても、この前キャンプは終わらしたし、バーベキューはほぼ毎月行う事が確定してるからこれ以上やる必要もないだろうしさ。


 温泉旅行も直近で二ヶ所もいってるし、他に何かやることなんてないよな。


 桜輝(さくらぎ)さんと玲奈(れいな)は二人でレベル上げにいってるし、最近は俺の方がパーティから外されてるんだよな。


 レベル四十になるまで俺は不要らしい。


 強力な武器はあるし、玲奈(れいな)があの錫杖で神域を展開できるから、攻守ともに何の問題もないって事だ。


 ……桜輝(さくらぎ)さんって、何かそこまで高レベルな魔法が使えたっけ?


 例のバーベキュー大会でかなりスキルポイントを稼いでるから、いろんなスキルをカンストさせてるかもしれないけどさ。


「無理してスキルポイントを六百も稼いだみたいだしね。二人ともそこそこきつそうだったけど」


 いくら美味しい肉でも合計四百グラムはきついよね。


 笑いながらライスやサラダまで追加してた虎宮(とらみや)依理耶(いりや)先輩とは胃袋の大きさが違う。


 スキルポイントが六百あると、料理スキルをレベル五まで上げられるぞ。


 流石にそんな真似はしないだろうけど。


「俺もダンジョン攻略に行くか? 既にレベル上げは終わってるし、装備も揃ってるからモチベが上げにくいんだよな……」


 ダンジョン食材を求めるにしても、牧場型ダンジョンは既に人で溢れている。


 流石に地下十四階とかは俺以外にはなかなか探索出来ないけど、それ以外の場所は本当に凄いらしいんだよね。


 その情報は何処から手に入ったかって、そりゃあそこで採集してる連中がネットに現状の映像を山ほど上げまくってるからさ。


 その映像を見てさらに申し込みをする人間が殺到、おかげであの牧場型ダンジョンの周りがあの有様って事だ。


 ダンジョンニュータウン?


「アレがあるから、みんなダンジョンにいろんな夢を見るんだよな。何が隠されてるか分からないけど、あの牧場型ダンジョンみたいな状況だと無限の利益が約束される」


 ダンジョン肉やダンジョン産の野菜類の価格が毎日すっごい乱降下してるんだよね。


 あまり加工に向かない果物類が意外に苦戦してるというか、やっぱりメジャー処の果物類に比べて価格が安定しないんだ。


 目の前にメロンやイチゴと加工の難しい南国産のフルーツがあった場合、どっちを選ぶか~って事。


「今全力で探索されているのが、あの牧場型ダンジョン以外に存在しているダンジョン水田。同じレベル以上の水田を見つけたら、その情報に億を出してもいいって企業がある位だ」


 ダンジョン日本酒。


 本気で醸造を始めたそうで、計算するとコップ一杯億の日本酒を堪能できる舌を持ってるのが凄いよな。


 それで、他にもダンジョン水田が存在していないか血眼になって探してるそうだ。


 探すか? 第二の牧場型ダンジョン!!


【創造すれば……】


 大却下!!


 迷惑は掛からないだろうけど、流石にそれは常軌を逸してる。


 世界の改変レベルと変わらないだろ? それ。


【世界に対する影響が多少は軽減されます】


 でるんじゃねぇか、影響が!!


 思ったより厄介な力だよ。


 本当に欲しい物は、自分の力で探し出すさ。


 でも、新しい牧場型ダンジョンというか農場型ダンジョンか~。見つかったら世紀の発見で、おそらくそれだけで歴史に名が残るぞ。


「一時間ごとに更新される全国ダンジョンマップ。それと衛星写真の解析組と専用の冒険者で編成されたダンジョン探索部隊の新規ダンジョン発掘部隊。この二つを出し抜いて新しいダンジョンを見つける方法なんてほとんどない」


 凄いんだよ、あの人たち。


 個人的に魔素探知能力に優れているうえに、様々な機材を使って未発見のダンジョンを幾つも見つけ出している。


 大体外れだけど、中には近年人気になったダンジョンもあるって話だ。


「この無数にあるダンジョンの何処かに舞莉愛(まりあ)さんがいる。何処だ……」


 魔族が拠点にしそうなダンジョン。


 楢丈(ならたけ)が拠点にしていた過疎ダンジョンも、マリオネットが暗躍していた温泉ダンジョンも意外と街中だったんだよな。


 それじゃあ、トレジャーが拠点にしているダンジョンは何処だ? 


 お宝が多く集うダンジョン?


 そんな場所なんて……。


 ん?


「まさか、あそこなのか? 確かに街中なのに冒険者に見つかりにくいって条件は揃うし、楢丈(ならたけ)のパターンからいって十分に可能性がある!!」


 俺は何て間抜けなんだ。


 今の今までその可能性を考えてもいなかった。


 そうだよ!! 魔族は意外に近場で俺達を見張っている。


 俺が無事に成長した時、いったいどこを利用する?


 絶対に利用する場所があるだろ!!


「明日だ。明日準備を整えてあそこに向かおう」


 なに、あそこまで行くには大して時間はかからない。


 焦って奴を取り逃がすなんてありえないからな。


 待ってろよ。明日絶対に舞莉愛(まりあ)さんを助け出してやるぞ。



読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただければ幸いです。

誤字などの報告も受け付けていますので、よろしくお願いします。

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