第百一話 初変身!! その名はブレイブシャイニングフェニックス
遠征から帰還後、俺はすぐにバックル内にある超小型のスマホを取り出してブレスへの登録を開始した。
バックルに付属のベルトが無いのは当たり前で、こいつは選ばれた者が装着しない限りベルト部分を自動で生成したりしない。
逆に言えばこれは何故か誰も使った事の無い新品で、本当に俺とこのブレスが来る時をずっと待ち続けてたって話なんだ。
このブレスを俺に届けてくれた姫華先輩にも感謝だな。
「そして俺は相変わらず誰もいない過疎ダンジョンで、フルセットアップしたブレスを試そうとしてたりするわけだ」
今回試すのは基本フォームである【ブレイブシャイニングフェニックス】。
フュージョンフォームだけど、これが俺の基本形態っぽい。
戦闘力は変身前の姿の数百倍は軽いって話だけど、俺のステータスでそんな倍率にしたら星が砕けるよ。
【大丈夫ですマスター。その辺りの調整はブレスで行います】
……で、頭に流れて来たこの声は何?
【ブレイブシステムのサポートです。ブレスの方にメインの装置が収められています】
なるほど、変身前のサポートとかしてくれる訳か。
このままだと何もわからないし、説明してくれるのは正直ありがたい。
【この世界にはメインのスターシステムが展開されておりません。その為にワールドリンク機能を利用し、時空タイムテーブルを参照。リンク先のメビウスポイント&ブレイカーポイントの設定を完了させましたので、今後このシステムを利用してブレイブの力を十分に発揮する事が出来ます】
何か知らないワードがポンポン出て来た。
それ、大丈夫なのか?
【力の行使には問題ありません】
いきなり世界を破壊したりしないだろうな?
【マスターが望む場合は可能です】
可能なのかよ!!
恐ろしい、本当に正義の力なのか。これ?
まあいい、変身しないと話が進まない。
……行くか!!
「セットブレス、神崎眩耀」
【セット、神崎眩耀。アクセス】
特殊インベントリから二枚のメモリーチップを取り出す。
一枚は親父の力を秘めたシャイニングブレイブチップ。
もう一枚は俺専用に生成されたフェニックスチップ。
「シャイニングブレイブ、そしてフェニックスチップをセット完了!!」
【フュージョンフォーム発動!!】
「滅びる事のない勇気はここに!! フェニックス!!」
【ブレイブシャイニングフェニックス、ベーシスフォーム!!】
光を纏った鳳凰。何度でも蘇り、破壊と再生を司る光の化身。ブレイブシャイニングフェニックス。
凄まじい力を秘めている事は、変身しただけで理解出来た。
正直恐ろしい。
力を行使しようとしても警告文が出ない事もそうだけど、その結果何が起こっても何事もなかった事にされていそうなこの感覚が恐ろしい。
【神力を使った神加速が可能です】
神加速?
神力って力も初めて聞いたけど、俺に使いこなせるのか?
【マスターは十分に成長していますので、ノーリスクですべての力を行使できます。神加速を使いますか?】
どんな力かは分からないけど、使ってみなけりゃ分かる訳がないよな!!
「神加速!!」
全身を光の粒子が包み、視界が今まで見た事のないような状態になる。
試しに軽く地面を蹴ると、一瞬でダンジョンの中央付の上空に俺は移動していた。
驚く事に俺は空中に問題なく立っているのに、その状態で体が安定しているって事だ。
それだけじゃない、世界が止まっている?
視界に入ったレッサーゴブリンは、みんなまるで時間が止まっているようなそんな印象を受けるんだけど。
【神加速状態の時は特殊時空を展開していますので、周りとの時間軸が若干異なります。なお、神力の時空復元力を利用しておりますので、通常状態に戻った時に通常空間に影響はありません】
ここまで行くと流石についていけない。
この力、強すぎない?
いったい何と戦う事を想定して作られているの?
【フュージョンフォームは、暴走する神を止める為のシステムです。マスターの元々の能力を加えれば、どんな神の暴走でも止める事が可能でしょう】
二柱の神がふたつの世界を繋げて、この世界にダンジョンや魔素なんかを持ち込んだ。
それを元に戻すとか……。
【可能です】
俺はそれ以上の力を手に入れてる訳か。
もしかして、世界を造り変えたりとか……。
【可能です】
神加速で移動した時から思ってたけど、この力は強すぎる。
親父はこんな力を抱えながらあんなにのほほんと生きてこれたのか?
【ここまでの力を行使できるのは、旧システムではアルティメットブレイブのみです。それ以外の存在ですと、フュージョンフォームをフルカスタムで使えるマスター位です】
親父には無理って話?
【旧式のブレスシステムで変身する、シャイニングブレイブにはこれだけの力はありません】
なるほどね……。
って、得た力がデカすぎるわ!!
もうすこしこう、使いやすい力だと思ってたよ。
親父みたいにホントに必要な時だけ変身すりゃいいか。
「説明とチュートリアルサンキュ。えっと普段はオフってていいの?」
【マスターが必要とした時だけ対応いたします。また、緊急時には事前に起動してお知らせします】
未来予知か……。
俺も使えるけど、あまり使いたくない力なんだよね。
なんとな~く、ズルしてる感じが嫌で。
【人命を尊重しますが、それ以外は可能な限りスリープモードで対応します】
それでいい。
誰かが危ない時ってなんとなく感覚でわかるし、助けられる人は極力助けたいからね。
でも流石に俺だって全ての人を助けられるなんて思わない。
ヒーローは神様じゃない、そこを間違えるなって親父にも何度か言われてるしね。
この力はしばらく封印。
必要とするその時までね、俺にはいくつも力があるんだからさ……。
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