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8話 彼女彼氏に見栄るようです。

 柚希(ゆずき)に一緒に帰ろうと誘われて了承したのだが、他にも二人いるとは聞いていなかった。

 一人は夢咲萌花(ゆめさきもえか)、もう一人は例のイケメン陽キャ彼氏だ。


「なんで二人もいるんだ」


 てっきり二人で帰るものだと思っていた。

 柚希がげんなりした様子でため息を吐き出しながら答える。


「だって萌花が彼氏を紹介したいってうるさくて……、でウチ一人で対応するのも嫌だから朔夜(さくや)に来てもらったわけ」


 流石は女版成島と言ったところか。

 しかし、まさか夢咲の彼氏が横河敦也(よこがわあつや)だとはな。


 顔はカッコいいし、運動神経も良い。かなり女子からも人気がある。

 その証拠に一年の時から彼女が途絶えることはなかった。彼女ができたという噂が流れ、一ヵ月後には別の彼女ができたという噂が流れてくる。

 横河が女たらしなのか、一人と長続きしないのかよくわからないが女関係で良いイメージはない。 

 

 ただ、夢咲と付き合ったという情報は流れてこなかった。

 昼休みの時に聞いた話だと、三日前から付き合ったらしいが。


「じゃーん、私の彼氏です」


 夢咲は柚希に向かって堂々と告げた。


「萌花の彼氏って横河くんだったんだ」


 然して驚くこともなく、淡々と柚希は答えた。

 すると横河が俺を一瞥してから告げる。


「まあな。いやでも、俺は二人が付き合ってる方に驚いたよ。あの相良が普通に男と付き合うなんて思わなかった」

「ウチが付き合うのそんな意外?」

「相良って色々な人から告白されてそれを全部断ってただろ。男と付き合わないもんかと思ってたけど、まさかコイツとはな」


 今度はじろりと俺へと視線を向けて横河は鋭い眼差しで睨みつけてきた。

 俺と柚希が付き合っていることに納得がいってない様子。

 嫌味や文句の一つでも言ってくるのかと警戒していたが、横河は俺からすぐに視線を逸らした。

 そして夢咲ではなく、柚希に向かって笑顔を見せる。


「じゃあ帰ろうか」




 校門を出て高校の最寄駅に向かって歩いて行く。

 真ん中に横河が歩いて、その両隣に柚希と夢咲がいる。

 最初は俺と柚希が横並びだったのだが、ぐいぐいと横河が柚希に話しかけて俺が後ろに追いやられた。


 で、夢咲が横河を追いかけた結果、三人が前で俺一人が後ろにいる状態。 

 横河が話を展開しながら柚希が微妙な表情で受け答えしている。

 そこに夢咲が相槌を打ちながら話に加わっていた。


 まあ俺がハブられているのは別にいい。

 ただ、なんだか横河と夢咲の息が合ってないように見える。

 付き合って日が浅いだけかもしれないが、にしても会話が少ないというか目もほとんど合わせていない。

 

 ……本当に夢咲と横河は付き合っているのか。

 いや柚希と偽物の恋人やってる俺が言うなよ、って話だが。


 一つ思い当たるのは、夢咲の柚希への対抗心。

 見栄を張る為に、あの場で思わず彼氏ができたと言ってしまったから同じクラスの横河に代役を頼んだ。 

 でもそんなすぐバレる嘘を吐くのだろうか。


 そんなことを考えながら歩いていると、柚希が突然立ち止まって振り返る。


「あーそろそろウチらちょっと寄る所あるから」


 そう言って俺の手を取って二人とは別方向へ歩いて行こうとする。

 三人の会話を聞いてなかった為、俺は状況を理解するのに少し時間を要した。

 するとその僅かな隙に、横河が明るい声で提案する。


「じゃあ俺たちも一緒に行くよ。どうせ暇だし、人数多い方が楽しいじゃん?」

「いや横河くんと萌花は二人でお幸せに~。ウチらのことは気にしなくていいから」

「ゆずがそう言ってるんだから。……あっ私、横河くんと一緒に行きたいところあるんだけどいい?」


 夢咲は柚希に近づこうとした横河の手を引っ張って制する。

 二人が並んで駅の方へと向かって歩いて行くのを見届け、俺は柚希に尋ねた。


「なんで一緒に帰らなかったんだ?」

「わからない? これから、あの二人を尾行する為よ」


 意気揚々と告げる柚希。

 だがあまり表情は明るくなかった。どちらかと言えば、心配しているようにも見える。


「まあ何かあるとは思うけどな」  

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