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6話 【成島隼人は気付かない】~成島視点~

ここから短編の続きです。



 放課後、オレは一人で教室に残っていた。

 周りには誰もいない。


「こんなことが……」


 オレしか居ない元クラスグループを見ながら呟いた。

 未だに何が起こったのかわからない。なぜこうなったのか、原因を考えてみても思い当たらない。

 クラスを盛り上げようとしていたし、綺堂以外の奴等には優しく接していた。リーダーとしての役割は果たしていたはずだ。


 一つ思い当たるとすれば、綺堂だ。

 奴に対してだけはきつく当たっていた。

 それが原因であるなら、綺堂がクラスの連中を懐柔して俺を嵌めたと考えることができる。


「……ちっくしょうがぁ。綺堂のクセによぉ」


 下唇を噛み締め、オレはさらに思考を深めていく。

 すべてはオレを陥れる為に仕組まれていたとしたら……。


 もちろんデタラメな憶測じゃない。根拠はある。

 たとえば、相良だ。

 一年の時のアイツは男に関わろうとしない、女でグループを作ろうとする奴だった。それがなんで今になって綺堂に肩入れしていたのか。

 綺堂と相良は一年の時違うクラスで、二年になっても昨日まではまともに会話している様子もなかった。


 ……金を渡したとか? それなら納得がいく。

 でもだとしたら、なぜ今このタイミングでそんな手を使うのか。

 一年の時と今の状況は大して変わっていない。オレと綺堂は一年の時から犬猿の仲だったし、あいつがクラスで孤立しているのも去年と同じだ。

 二年になったタイミングでオレの出鼻を挫けに……いや、違うな。


 このタイミングで奴が仕掛けた理由、それは


「嫉妬だっ! そうだ、そうに違いない」


 あいつの幼馴染である早川とオレが付き合ったことによって嫉妬し、オレを狙っての今回の一件。

 これがあったな、オレとしたことが盲点だった。

 だとしたら、これはオレの失態だな。


 綺堂にとってオレの存在はあまりにも大きくなり過ぎたんだ、アイツを追い込み過ぎてお金を使わせての犯行にまでプレッシャーを与えてしまった。

 それとオレが焦ってしまったのも原因の一つだ。警戒度が低かったのもあるだろう、でも所詮は綺堂朔夜という雑魚だ。


 この程度のマイナスなど、すぐに取り返せる。


「……まだ二年生は始まったばかりだからな」


 オレは鞄を肩に担いで教室を出ようとする。

 丁度そのタイミングで、ひょっこりと女の子が顔を出した。

 肩くらいの身長、黒のショートカット。スカートは短く風が少しでも吹けば見えてしまいそうだ。


「隼人? まだ学校に居たんだ」


 彼女、早川蛍は嬉しそうな表情で声をあげた。


「……ああ、まあな」

「ん? なんか元気ない?」


 蛍は小首を傾げて尋ねた。

 そんなに元気ないように見えたのだろうか。

 リーダーのオレが落ち込んでいるようじゃ、クラスメイトに顔向けできんな。


「元気ありまくりだよ。今がオレの全盛期、これから学校生活が楽しくなるってのに、落ち込んでなんかいられねえからな」


 やっべぇ、いいこと言ったくね。

 チラッと蛍の反応を窺うと、キラキラと目を輝かせてこちらを見ていた。


「隼人っ、かっこうぅぃ!」


 ふはははっ、そうだろ、そうだろ。


「やっぱオレってカッコいいよなぁ!」

「カッコいいよ! ねえねえ、私は? どう? 可愛い?」

「当たり前だろ、カッコいいオレの彼女なんだから。可愛いに決まってる」


 そうだ、オレは間違ってない。

 今回、綺堂に一本取られたが、こんな奇襲攻撃がそう何度も決まるわけじゃない。直に皆気付くはずだ。

 二年三組にオレという存在が必要不可欠だとな。


「ところで、何でこんな時間に残ってたの? もしかして私の委員会が終わるまで待っててくれたの?」


 蛍が訝しむ目で尋ねた。

 そう言えば、午後の授業始まる時に今日は一緒に帰れないという連絡が来ていた。すっかり忘れていたが、正直に言うのはオレらしくない。


「当然だろ。それにちょっと面倒な課題が残ってたからな」

「それなら連絡しといてよ、私先に帰るところだったじゃん」


 ぷくっと頬を膨らませて地団駄を踏む蛍。


「課題に夢中で忘れていたんだ、悪いな。次からは気を付ける」

「そっか、それなら仕方ない」

「そろそろ帰るか」


 オレは蛍の少し前を歩くように動き出した。

 するとオレの隣に蛍が駆け足で追いついて隣に並ぶ。


「ねえねえ、今日はこの前見つけた美味しそうなスイーツの店に行っていい? 一回行ってみたかったんだよねぇ」


 蛍は寄り道をしたがる女の子だ。

 ただ彼女には少し明確な欠点がある。


「……今日はお金持ってるんだろうな?」


 そう言うと、蛍は立ち止まって鞄の中、ポケット、ブラの中を探して止まる。次の瞬間、にへらぁと物言いたげな目で笑った。


「ごめん、今日も忘れちゃった」


 もしオレが普通の男ならこの時点で彼女を見限っていることだろう。だがオレは人とは違う。

 キメ顔を作って堂々と告げる。


「仕方ない、オレが出してやるよ」


 こんな体たらくな彼女に奢る義理なんてないと言う人もいるだろう。

 だが、綺堂朔夜の幼馴染と付き合っている事実、これには唯一無二の価値がある。


「やったぁ! 隼人だーいすき」


 抱きついてきた蛍をそっと抱きしめ、オレは無意識に笑っていた。

 綺堂、オレはまだ負けてねえぞ。

 彼女の耳元でそっと囁いた。


「蛍、愛してる」

「うん、私も隼人が好き」 

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