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2話 カッコつけてるのが滑稽です。

 教室は少し騒がしい。

 というより、成島が勝手にバカ騒ぎしているだけだが……。

 彼女ができたということもあるのか、一年の頃よりもオラオラ感が増している。


「今度、オレ試合出るんだよ! 女子たち皆で見に来いよ」

「いや、ウチ予定あるし……」

「あ、あたしも……ごめん」


 次々と断られていく成島(なるしま)は不満そうな表情をして唇を尖らせた。


「んだよ、オレの超スーパービッグシュートが見られるのによ、もったいねえぇ」

「え? 成島ってサッカー部だったんだ」


 一人の女子が目を丸くして驚いていたが、すぐに興味なさそうにスマホを操作し始めた。

 しかし成島はそんな彼女に対してニカっと笑顔を見せる。


「知らなかったのかよ、オレって結構有名なんだぜ。去年は公式戦出れなかったけど、今年はレギュラー取れるし、監督から一番期待されてるしな」

「す、すごいね。成島くん」


 四人目の女子がなんとか反応してくれ、成島は鼻息を荒くして言う。


「だろぉ!」


 傍から見ている限りだと、あまり盛り上がっているようには見えないが、成島隼人は上機嫌に笑っている。

 周りの女子や成島の近くにいたサッカー部仲間は苦笑いを浮かべていた。

 やっぱりコイツがクラスリーダーになることはない。なったとしてもすぐに失墜するだろう。


 ……だが、このクラスは他クラスに比べれば地味な面子ばかりだ。俺含めて陰キャというか、顔も名前も全く知らないような奴等が集まっている。

 成島隼人が一番目立っているのは否定しないし、まともな人間性を持っていれば楽々と中心人物になれている状況。


「あ、そうそうこの前ね、美味しいケーキ屋みつけちゃってさ」

「どこどこ? 教えてー」

「うーん、どうしようかな」


 女子たちで会話しだし、成島はぽつんと一人浮いていた。成島もこの会話に入っていくのは不可能と判断したのかくるりと背を向けた。


「けっ、オレのことよりスイーツかよ」


 そう言った成島と、俺は目が合ってしまった。

 慌てて顔を逸らしたが時すでに遅し。

 段々と誰かがこちらに近づいてくるのを肌で感じながら、俺は敢えて何もせず待った。


綺堂(きどう)、お前こっちのこと見てニヤニヤ笑ってたよな?」

「……笑ってねえよ」


 バカにしてただけだ。


「クソ陰キャのクセに調子乗りやがって。お前がオレを笑える立場か?」


 流石に一年の時からこう何度も突っかかってこられると、慣れたものだ。こういう時は変に相手せずに無視しとけば難は過ぎ去っていく。


「そういや、さっきの授業遅刻してきたけどよ。もしかしてトイレで泣いてたのか? だとしたら哀れだな」


 成島は大きな声で曝け出すよう叫び、笑い声を上げた。

 ここで否定しても煽られるだけ、何も言わずに黙り続ける。

 そんな俺の様子が癪に障ったのか、成島は少し語気を強めて言葉を続けた。


「なんとか言えよ。二度と学校に来れなくするぞ」

「……そろそろ授業が始まる」


 黒板の上にある時計に目を向けてぽつりと呟いた。

 そこで成島はクラスメイトから注目を集めていることに気が付く。

 さっきまでの怒りの雰囲気は消えて、まるでスーパースターかのような立ち振る舞いで言葉を告げる。


「フラれたら悲しいもんな、そうやって誤魔化したくなるもわかるわかる! でも人間は成長して乗り越える生き物だ。いつか、お前もオレのようになれる日が来るからそう落ち込むなよ、ぶははははっ」


 ……全体的に何言ってるかわからなかったが、お前が盛大な勘違いをしていることだけはわかった。


「早く自分の席に戻れよ」

「綺堂、今ここで土下座すれば許してやるがどうする?」

「しねえよ、アホかお前」


 思わず強い口調で返事してしまったが、成島はピクリと眉を動かしただけで何も言い返してはこない。

 逆にニコニコと気色の悪い笑みを浮かべている。


「土下座したくなったらいつでもしていいんだぜ、幼馴染にあっさりとフラれた綺堂くん」


 そんな捨て台詞を残して成島は俺の席から離れて行った。

 幼馴染のことは好きじゃないし、フラれてもない。そう強く否定したい気持ちをグッと堪えて俺は深くため息を吐いた。


 午後の授業も一つ終わり、あと一時間もすれば放課後になる。

 俺は軽く睡眠でもしようかと思っていると、また例の声が聞こえてきた。

 休み時間くらいゆっくりしたいものだが、アイツの声のお陰で全く休まることはない。


 どうせまた変な自慢話でもしているのだろうと思って視線を向けると、さっきに比べて女子が一人足りない。

 トイレに行ってるだけだろうが、おそらく日を追うごとに成島の話を聞く女子は減っていくだろう。

 一年の頃の成島を見ていればわかる。

 超強力な友人がいたからあの会話スタイルがギリギリ成り立っていただけだ。


「おーっす、綺堂くん」


 背中から声が聞こえ、俺の頭の中が真っ白になった。

 ……今、俺の名前呼ばれたのか。

 おもむろに振り返ると、そこには金色の髪をなびかせたギャルが立っていた。

 一人足りない女子、ここにいた。

 彼女は髪の毛を弄りながらちょっと照れ臭そうに言葉を告げる。


「ちょっといいかな?」

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