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1話 二人が付き合ってくれて嬉しいです。 

下記短編だったものを、長編化したものです。


https://ncode.syosetu.com/n9002ie/


短編の続きは6話からです

「オレ、お前の幼馴染と付き合うことになったわ」


 中庭に呼び出されて来てみたら、突然そんなことを宣言された。

 勝ち誇った顔をして、成島隼人(なるしまはやと)は隣にいる女の肩を抱き寄せる。


「そういうことだから、朔夜ごめんねぇ」


 幼馴染である早川蛍は憎たらしい表情をして告げた。


「……ああ、そうか。わかった」

「はっはっは、なぁ、悔しいか? お前が調子に乗ってるからこうなった、まあ自業自得ってやつだ」

「調子に乗ってる? 俺が?」

「一年の時からオレに敵対心剥き出しだったじゃねえか、二年になってからもよくガン飛ばしてくるよな? 知ってるぞ、オレは」


 そんなことした覚えがないし、第一こんな男に喧嘩を売るほど俺も暇じゃない。


朔夜(さくや)、謝るなら今のうちだよぉ」

「いいねぇ、土下座して謝れ。一日中謝罪してくれるなら許してやってもいい」


 バカ二人が笑い合ってる中、俺は虚無の時間を過ごしていた。

 ため息と共に俺の足は回れ右をして歩き出す。


「……帰るか」

「おい、どこ行くんだよ。まだ話は終わってねえよ」


 成島はさっきまでのお気楽ムードから一変して、お怒りの様子。

 しぶしぶ足を止めて俺は二人にもう一度向き直る。


「まだなにか言いたい事でもあるのか?」

「あたりめえだろ、そのスカした態度が気に入らねえ。これからもオレに歯向かうってつもりなら容赦はしねえぞ」

「なんだそれ」


 思わずこぼれたこの言葉に成島は口元を歪ませて苛立ちを見せた。


「一年の時、同じクラスだったからわかるだろ? ムードメーカーであるこのオレが二年三組の中心人物になる、お前一人をハブく(イジメる)ことなんて造作もねえんだよ」

「隼人、かっこうぃ! 隼人がクラスリーダーになれば最高のクラスになるね」 

「だろぉ? オレが王様だ」


 俺に対して言いたいことをぶちまけた成島はいつの間にか上機嫌になっていた。

 隣にいる早川はキラキラとした眼差しで成島を見ている。

 ただ早川は知らない、この成島隼人という人物のカラクリを。

 おそらく今日、早川は俺に彼氏自慢をしに来たはずだ。

 学年でも知名度が高く、人気者の陽キャ彼氏を捕まえたぞ。お前は陰キャぼっちで可哀想だな、と。


「おいおい、黙るなよ。綺堂(きどう)くん」


 だが、成島隼人の正体はただの勘違いナルシストウザ陽キャ野郎だ。

 決して学年の人気者、ましてやクラスでナンバーワンになれるポテンシャルはない。

 たまたま一年の時、クラスで一番目立っている男と仲がよかった。それだけでこの男はここまでイキっている。


 イケメン陽キャの友達というだけで、友好の輪が広がってクラスの連中からチヤホヤされ、自分の意見が正しいと勘違いしてきた。

 自分がただの金魚の糞だということに気付かず、調子に乗ってる男。

 これが成島隼人だ。


「ねえ、隼人。もう教室戻ろ、休み時間終わるよ?」

「うおっと、もうそんな時間か」


 成島はスマホを取り出し、時間を確認した。

 じろっと俺を一瞥した後、早川と手を繋いで歩いて行く。


「お前の幼馴染はもらっていくぜ、二度と喧嘩売ってくんなよ、雑魚が」

「ばいばい、朔夜(さくや)


 中庭に取り残された俺はゆっくりと空を見上げた。それから十秒、二十秒と時間が経っていくのを感じる。

 そろそろ休み時間が終わる、というところで大きく息を吸って吐き出した。


「よっ、しゃああああああああああああああああああああああ」


 チャイムの音と共に俺の声が重なる。

 自分でも信じられないくらいの声量が飛び出し、無意識にガッツポーズもしていた。


「俺は自由だ!」


 早川蛍から解放されたこと、早川と成島が付き合っていること、この二つが特に嬉しい。

 できれば早川だけでなく成島とも別のクラスが良かったが、それは高望みというものか。

 しかしまさかこんなハッピーなことが起こるなんて思いもしなかった。


 正直、中庭にいきなり呼び出されてめんどくせえな、って思ってたけどこんなサプライズが待っていたとは。

 付き合ってる、って宣言をされた時は嬉し過ぎて言葉が出なかった。


「あいつらには末永く幸せでいてもらいたいものだ」


 ぶっちゃけ、俺もびっくりしている。

 早川蛍から解放されることにここまで喜びを感じているとは。

 幼馴染だから色々と面倒を見てきたりしたが、あの女は特に性格が終わっている。

 悪い所を挙げればキリないが、自己中、自意識過剰、自己肯定感が異常に高い、承認欲求が強くしょーもないことで自慢してくる、などなど様々だ。

 早川に彼氏は一生できない、そう思っていたが世の中何が起こるかわからない。


「そろそろ教室戻るか」


 既に授業は始まっている。

 一年の時は無遅刻無欠席の真面目人間、綺堂朔夜だったがここでその記録も途切れてしまった。

 しかし今日の出来事はそんな授業の遅刻に比べれば、十分過ぎるほどのお釣りが出る。


「……そういや、成島(なるしま)から早川に告白したのか? それとも早川から」


 どっちからでもおかしくはない。

 早川も黙っていれば可愛いのは、幼馴染という前提を抜きにしても認める。

 成島も黙っていれば多少はカッコいいのは、認めよう。

 ん? もしかして。


「あの二人って案外お似合いなのか」

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