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【連載版】彼の幻想のインテグラル  作者: おおとりことり
「貴女を守る」
1/10

プロローグ

 人は誰しも何かを隠して生きているものだ。

本当の自分を隠し、都合の良い虚栄を張り、自分自身を守る。 そういう身勝手なことをするのが人間だ。

 私はそう考え続けてきた。

誰かの都合でこの身体を得てしまい、周囲から恐れられても、それが人間としての醜い本性の表れなのだと。 誰だって同じなのだから、それならば自分も同じように隠してしまえばいいと、そう思うようになった。

 だから私は隠す。 

自分の出自を。 

自分の醜い場所を。

自分の湧き上がる感情を。

 こうしてしまえばきっとこれから先の長い人生の中、苦しむことはないはずだとそう思っていた。 そのはずなのに。 

なのにどうやら人生とは、苦悩とトラブルが不可欠らしい。

 目の前に現れた彼女は───、私の考えていた人生を全てめちゃくちゃにしてしまった。 

ああ、身勝手なものだな。 と思う。 

私の身勝手な、自分だけの幻想のような夢に、彼女という存在はきっと最初から必要不可欠だったのだろうか?

 

「ああ、解らないな───」

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