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アラランド帝国物語  作者: レオレオ
アマウス国とケセラと竜神との約束
7/13

七、 モグラのディガーさん

(1)モグラのディガーさん

「魔力って、生まれつき色が決まっているものだと思ってた」

 

 バベリー男爵家の魔力は、火だと聞いたわ。私は彼らが魔法を使ってるのを見たことはないけど、男爵も姉も兄も火の魔法を使うっていう話だった。私、火の魔力が家族の絆のような気がしていた。


「初めて使う魔力は、みんな無色透明さ。色のついてない魔力で、例えば、火の力を出そうとしても、全く火はでないが、出す練習をするうちに僅かに火の色に自分の魔力が染まるのさ。そしたら、小さな火が出せるようになる。たいていの人は、これを幼い頃に終えているんだ。魔力持ちは、親もそうであることが多いからね。無意識のうちに、親の真似をしてるのさ。でも、お前さんは、生まれた時から生みの親御さんとは別で暮らしてたというし、魔力を持たないと小さい頃から植え付けられてたからね。色に染まる機会もなかったんだろう。無色透明さ。色が付かないと、常人には魔力は使えないからね」


「常人じゃなければ、無色透明な魔力をそのままで使えるってこと? オリビアさんは、使える人ってあった事ある?」


「口にするのも畏れ多いが、神様がそうさ。 竜神のように水の神という存在もいるが、その一段上の神様は色の制約を受けないからね。 無色透明な力をお持ちだよ。 生まれたばかりの赤ん坊の魔力が無色透明なのは、神様の力を分けてもらって、この世界に生まれてくるからだと、私は思ってるがね。それに神様の無色透明な力は全てを極められた末の究極の力だから、われわれには関係ないね。常人は色が濃ければ濃い程、強い魔力を持っていることになる。どれだけ色を付けれるかは、どれだけその魔法を使ったかによるんだよ」

 


 で、結局 私は土魔法を選んだの。

 セオドラさんが貸してくれた土地には、小さなお家と可愛い管理者が付いていたわ。


 モグラのディガーさん


「薬草には色々あるが、葛のように有用だが繁殖力がありすぎて、アンナの手に負えなくなるものもあるじゃろう。その時はティガーは役に立つ」


 と、ディガーさんを紹介されたの。

 


 私って、都会っ子だったけど、王都で薬草探しの仕事をした時に、モグラを見たことはあるのよ。でも、ディガーさんは私が知ってるモグラとは体の大きさと毛の色が違ってたわ。


 黄色いモグラ?


 って、私の頭が???だらけになっている間に、ティガーさんが挨拶をしてくれたわ。


「はじめまして。 アンナさん。 僕はティガー。 精霊になる前はモグラだったんだ。だから、今も土潜りは得意だよ。 僕の身体の色、奇麗だろう。 セオドラのおじさんに連れられて、この庭に来た時に咲いていたタンポポの花を見て、感動して体の色をタンポポ色にしてもらったんだよ。何せ、僕はモグラだったから、目が弱くて花を見たのは初めてだったから、花の美しさに魅せられたんだ。花はどんな花でも好きだよ。よろしくね」

「驚いた。あなた、話せるのね」

「この子は、優秀な精霊じゃよ。 人の言葉くらい話せるわい」


「アンナ、このディガーも、もとはセオドラの可愛がっていた仔の一人なんだよ。この度転生を果たして精霊に生まれたんだ」


「失礼なことを言ってごめんなさい。私は、アンナです。ディガーさん。 これからどうぞよろしくお願いします。わからないことがたくさんあるから教えて欲しいの」

「いいよ。 ねぇ アンナが迷子にならないでこの畑に辿り着けるように、僕と契約する?」

「契約?」

「魂と魂の結びつけることじゃな。 お互いがお互いを助けるんじゃが、ディガーよ。 アンナに助けて欲しい事があるのかい?」


「セオドラおじさん。アンナさんが世界中の薬草を調べるのに、旅をするなら僕は色々な風景が見れるよ。 僕は精霊になる前モグラだったから、地面の上をあまり知らないんだ。それは、とってももったいない気がしてる。 それに、アンナさんが薬草学の本を作ってくれたら、僕の学びに繋がるよ」


「ディガー。お前は良くできた精霊()じゃよ。 アンナ、聞いて分かったと思うが、ディガーはまだ精霊に成りたてだ。お互いに協力して成長していってほしい」


「セオドラおじさん、 果樹はどうしよう? アンナの畑に植える?。 果樹を植えるんだったら、この土地は少し狭いよ」

「果物?」


「果実には、薬になるものが多いんじゃよ。金柑は、咳や喉痛に効くし、イチジクの実は腸に水分を送るから、消化不良に聞く。葉っぱはお風呂に入れたら、神経痛を和らげるしな。ザクロの皮は、腹の中の寄生虫を外に出すし、止血作用もあるから有用じゃ。桃の葉も汗疹や湿疹、腫物に効く。後、枇杷の葉も咳や夏バテした胃を癒す。ああそうそう、柿の葉は 」


「セオドラ、もういい。果実はお前さんの所にもあるんだろう。必要な時に分けてあげるんじゃ駄目なのかい?」


「わしは構わないが、アンナはそれでもいいのかい?」

「ええ。いきなりいっぱいの植物は育てられないから、分けて貰えるんだったら、その方がありがたいかなって」

「分かった。 いる時は、このディガーに言え。ディガーはわしの畑のほとんどを把握しておるからな」


 

 その後、私の薬草畑にいつでも どこにいても入れる鍵を貰ったの。

念のために私の許しがなければ、触れることができない呪い(まじな)もかけてもらった。ディガーさんとも契約したから、鍵に声をかけたら、私の声がティガーさんの耳に届くわ。 ティガーさんの声も鍵から聞こえてくるの。


 何から始めたらいいのか、さっぱりわからなかったけれど、ディガーさんの強力な勧めから、タンポポの花から始める事になったの。草を乾燥させて煎じて飲んだら、胃を正常に働かせる効果があるんですって。


「繁殖力があるから育てるつもりがなくても、育つよ。あと菊の花も解毒作用があるから、植えようよ。とってもきれいな花なんだ。解毒と言えば菫の花の葉にも解毒作用があるしな。どくだみの花も白くて可愛いし。うん。みんな植えようよ。 楽しみだな」


 土魔法を上達させて、薬草に触れていくうちに薬の『鑑定』の魔法が使えるようになるらしいの。それを覚えるまでは、ディガーさんの言う通りにするしかないんだけど、きっと、その頃にはディガーさんの花園が出来上がってる気がする。




(2)シャーロット・コリンズ


 エイブリーさんには、世界各国に弟子のような存在がいるらしいの。

あの元気が出るスープも、そのお弟子さんたちにも引き継がれているそうよ。


 そのお弟子さんの一人から応援要請があったそうで、エイブリーさんは留守宅を私とオリビアさんに託して出かけて行ったわ。


 エイブリーさんから留守宅にも入る事が許されたから、毎日、『ケセラ』の中にいた彼女のお見舞いは行ってた。


 白い繭に包まれて、中の様子が全く分からなかったんだけど、日にちが経つにつれて、薄くなってきていて、今は透明になってきている。 お祖母さんのように皺だらけだった肌が、若返ってるのが分かるわ。といっても、『ケセラ』の花嫁になった年齢に戻っているわけじゃなくて、丁度私の親くらいの年齢の女性に見える。


「ガルクのお姉さんなのかな?」


 彼女はきれいな金髪をしているの。姉弟だったら、髪の色が似ると思うんだけど、ガルクと初めて会った時には、もう白髪だったから、元の髪の色を知らないのよね。


 彼女が目を覚ましたら、知らせるようにエイブリーさんとは約束したんだけど、もう時間の問題になってきて、いつ目を覚ましてもいいようにと、オリビアさんの家の空いてる部屋に移したの。だって、目が覚めた時に、奇麗にしてあるとはいえ、知らない家の屋根裏部屋だったら、テンションが下がると思うのね。



 その日、彼女を覆っていた繭が全くなっていることに気付いたの。

すぐにエイブリーさんに伝えてもらうようにオリビアさんに頼んだわ。


 彼女は眠ったままで、身動きしなかったけど、頬に血の気が戻ってきてる気がした。いつ、目を覚ましてもいいように、ベッド脇で座って待ってたんだけど、私が起きてる時間には目を覚まさなかった。


 翌朝、オリビアさんと一緒にいる彼女をダイニングで見かけてびっくりしたの。  だって、普通に喋ってるんだもん。

 喋るなんて、当たり前の事なんだけど、この二か月間、毎日繭の中で身動きしない姿を見てたから、もしかしたら、このまま目を覚まさない気がしてたの。


「おはようございます」


 落ち着いた声であいさつをされたので、緊張したけど、ちゃんと返したよ。



 彼女の名前は、シャーロット・コリンズ

やっぱり、ガルクのお姉さんだったわ。


「そうですか。貴女の家で、執事をしてるんですね」

「はい。 一度、お姉さまが【神の花嫁】になったいう話をしていたことがあって、もしやって思ってたんです」

「あの時から五十年が経ったんだとしたら、あの子もいいお爺ちゃんですね。あの子は幸せそうにしていますか?」

「ごめんなさい。 私は、別宅で暮らしていたから、弟さんの事は、あまり知らないんです」


 お姉さんが【神の花嫁】になったことで、随分人生が歪んだようなことを言っていたけど、本人には言えないしね。 


「それはそうと、他の人はどうなったんでしょうか」


 シャーロットさんは、オリビアさんの方へ顔を向ける。


「他の人とは誰の事だい?」

「私と一緒にいたお二人の事ですが、一緒に、発見されませんでしたか?」

「そういえばいたね。 でも、辛うじて命があったのはお前さんだけだよ」


 シャーロットさんは、しばらく絶句してたけど、


「そうですね。 最後に目覚めた時、声をかけても返事を貰えなかったので、そんな気がしてました」


 と少し目を潤ませたわ。


「ごめんよ。 少し詳しく聞かせておくれ。(ケセラの)中では、その二人と会話ができていたのかい?」


「 はい。 ケセラの中では、ほとんど眠っていたのですが、時々、起きてる時が重なることがあって、簡単な挨拶をする程度でしたが、お話ししました。 ただ …… 」


「 どうしたんだい? 言いたくないなら、無理しなくていいんだよ 」


「 いえ、ただ、中にいる時は不思議には感じなかったんですが、外で口に出すと少し変な気がして」


「変とは?」


「私たち、夢を共有していたんです。。 私が見る夢はあの方々も見ていたし、私もあの方々の夢を見ていました。 夢は大体、荒唐無稽な話ではなくて、大概家族と過ごした日の何気ないやり取りだったり、子供の頃に行った避暑地での追体験だったりで、何ていうんでしょう。お二人の暮らしを追体験させてもらったお陰で、あの方々の人生は私の一部のような気がしていたんです。最後の方、夢を見なくなって、目を覚ました時に、声をかけたんですが、返事を貰えなかった」

 

 シャーロットさんが、最後の言葉を飲んだのが分かった。


「一人、残されたとお思いかい? お前さんには、まだ寿命が残ってたんだから仕方がないね。 生き残ったんなら、その二人がどんな人生を送ったのか、その夢の中で見たことを何かに書いておいてくれないかい。それを知りたがっているお方の目に触れるかもしれないからね」


 オリビアさんの声も沈みがちだった。


「あの。 シャーロットさんが話したのは、三人ではなく二人なんですか?」


 あの時、遺体は三体あったはず。 一人、仲間外れになってる。


「ええ、二人ですよ。 一人は十歳くらいの少年。 夢の中で、ライアンって呼ばれてました。 ケセラの中に一番初めに放り込まれた人 」

「放り込まれた?」

「そう、お母様と隠れて住んでるところを兵士に踏み込まれて、無理やりにね」

 

「で、もう一人は、私の一つ前の【神の花嫁】に選ばれた、ソフィア姫。選ばれた理由が、マルク王の第二王子の庶子であるからでしたわ」


「【神の花嫁】って、悲しい理由で選ばれた人が多いんですね」

「悲しい理由っていうか、昔は王家にとって都合の悪い人を放り込む、都合の良い人捨て場だったみたいですね」

「シャーロットさんが【神の花嫁】に選ばれたのも、王家にとって都合が悪かったから?」

「私は伯爵家の娘だから、王家は関係ないんです。 唯、お父様が早くに亡くなって、お母様がお父様の従弟と再婚して弟を産んだもんだから、周りが煩かったのは覚えてます。でも、そんな話はどこの貴族の家でも転がってるものでしょう。 私の場合は、王家が建前にしてる『未婚で魔力量が多い乙女』だったからでしょうね」

  

 ガルクは、自分の身代わりに姉がなったと言っていたわ。

 ガルクに伯爵家を相続させたくない誰かが、動いたせいで、この女性(ひと)が犠牲になったんだろうな。 その誰かは、自分の行いが裏目に出て、余計にガルクにきつく当たったんだろうなと、勝手に想像してみる。でも、あながち、間違いではない気がする。


「ありがとう。 お前さんのお陰で、『ケセラ』が人の魔力程度の補給で、こんなに長い間持った理由がわかったよ」


 オリビアさんの顔がいつになく沈んでいるのが気になったわ。



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